海外転職を考えているとき、「子供がいる」「近い将来子供が欲しい」という人にとって大きな悩みとなるのが「現地での子供のこと」についてです。
「学校はどうするのか」「学費はどのくらいかかるのか」「治安面は問題ないか」「家族連れで海外生活はできるのか」など、様々な悩みに直面するでしょう。
これらの課題は、あなたが勤務する国・エリアによって大きく事情が異なります。希望に沿った求人を見つけたら、まずはその国の教育システムや治安・医療などについて詳しく調べる必要があります。
ここでは、子連れで海外転職する場合の求人について確認すべきポイント、子供の学校選びや学費の問題、駐在員か現地採用かどちらのポジションを狙うべきかといった具体的な課題と、それをクリアしていく方法について紹介していきます。
もくじ
子連れで海外赴任する場合の海外求人のチェックポイント
求人票には様々な情報が記載されています。仕事内容はもちろん、勤務地・給与条件・応募必須資格・福利厚生など確認すべき項目はたくさんあります。
そこで子連れで海外転職を考えている場合、「家族帯同で渡航できる求人なのかどうか」を最初に確認しましょう。例えば以下のような求人では、子連れの人は応募できません。
パラオでホテルレセプション業務の求人を募集しています。ただし求人票には「25~35歳までの独身女性に限る」との記載があります。子供どころか結婚している時点で応募できません。他にも「独身男性のみ」や「独身男女」など応募対象を限定した求人もたくさんあります。
このような求人は候補から外さなければなりません。
家族に対する配慮の記載がある
独身者のみを募集したいという求人があれば、家族帯同を歓迎する求人も存在します。例えば以下のような求人です。
勤務地はノルウェーにある和食レストランです。お寿司あるいは和食調理経験者を募集しています。応募必須資格は「調理師免許保持者で40歳くらいまでの男女」などで、語学力は求められません。
海辺の街で自然に囲まれており、治安もいいため家族連れにもおすすめとの記載があります。ここで、「わざわざ家族連れを歓迎するのはなぜ?」と考える方もいると思います。家族同伴での赴任は余分な経費がかかるため、会社側からすると独身者を雇うよりもコストが膨らみます。
ただ、ノルウェーなど北欧の寒さの厳しい国では単身者が赴任すると、うつ病など精神疾患を患って帰国してしまうリスクがあります。実際に私の知り合いの会社では北欧に赴任させる場合、「結婚している社員のみ」と限定しています。
以前に単身者が海外赴任した時に、うつ病を患ってしまい会社を辞めてしまったため、会社規定を変更したそうです。このように会社からすると家族同伴で渡航してもらった方が、辞めるリスクが少なく好都合なのです。
福利厚生の「家族手当」を確認するべき
また家族帯同を歓迎しているかどうかは、福利厚生を確認すれば分かります。例えば以下の求人では福利厚生欄に「家族手当」の記載があります。
タイのバンコクで和食調理人を募集しています。店内には通訳スタッフが常駐しているため、英語やタイ語は不要です。応募資格は「飲食店での調理経験がある」のみです。
福利厚生欄を確認すると「家族手当」「住宅手当」の記載があります。家族同伴の場合は家族寮を会社が用意してくれます。また、月給は25~35万円との提示があるため、物価の安いタイで家族を養っていくことは可能です。
このような福利厚生欄をみると、家族連れを想定して求人を募集していることがわかります。
扶養家族の医療費補助がある
子連れでの赴任を歓迎しているかどうかは、家族手当以外にも判断できます。例えば「医療費の補助」です。日本では、会社に正社員として雇用されると必然的に健康保険に加入します。そのため、病気や怪我をしても自己負担は一部で済みます。しかし海外は同じではありません。
欧米やアジアのほとんどの国では医療保険は自分で加入しなければならず、民間が運営している保険の中から選びます。保障内容は保険会社によって大きく異なり、「月額いくら納めるのか」「歯科はカバーされるのか」「薬代はいくらまで支払ってもらえるのか」などピンキリです。
保険会社のグレードもあり、信用度の低い保険会社に加入していると病院によっては診察を拒否されることもあります。また、日本のように平等に医療サービスを低価格で受けられる国は珍しく、例えばアメリカでは医療費が支払えずに自己破産する人が大勢いるくらいです。
そのため、扶養家族の医療費補助があると安心して家族を連れていけます。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地はタイ・バンコクの総合病院です。ここで医療通訳・日本人患者の対応とサポートができる人を募集しています。医療知識や医療通訳の経験は特に求められず、英語あるいはタイ語での意思疎通ができれば応募可能です。
福利厚生の欄には「本人と扶養家族の医療費補助」の記載があります。子供の分の医療費も会社が補助してくれます。子供は病気や怪我をしやすいため、医療サポートの補助がある会社はありがたいです。
子供の学校選びは慎重に!学費は高い所も
また海外で暮らす場合、子供の学校選びは大きな課題となります。なぜなら、子供が学校に馴染めないと日本に帰国しなければならない事態に陥るからです。
私が住んでいるオランダにも毎年多くの日本人が移住しています。しかし結局日本に帰ってしまう人も多く、その大半が「子供が学校に馴染めなかった」という理由です。例えば、白人ばかりの子供が通う学校に転校するとアジア人は浮いてしまい、なかなか溶け込むことができません。
また、治安の悪いエリアの学校では子供が暴力的で、「小柄な日本人はいじめの対象とされやすい」と聞いたこともあります。また現地の言葉が全く理解できない状態で、いきなり学校に入っても授業についていくのはもちろん、友達作りさえ大変です。
親としてできることは、なるべく子供が馴染みやすい環境を用意してあげることです。「学校に日本人の子供は通っているのか(在籍していたことがあるのか)」ということも重要なポイントになります。先生が日本人のことを少しでも知っているだけで、子供に対する理解度が大きく異なるからです。
また、住む場所を選ぶ際は極力校区の良いエリアを、そして人種的なことも考慮するといいです。例えば欧米などの場合は「白人だけでなく、アジア人も何人か通っている学校を選ぶ」「黒人の割合が多い学校は避ける」などです。
日本人学校やインターナショナルスクールという選択肢もある
なお国や地域にもよりますが、現地の学校以外にも「日本人学校」や「インターナショナルスクール」が存在します。駐在員として海外転職を考えているのであれば、このような学校も検討するといいです。
・日本人学校
日本人が多く住むエリアには日本人学校が存在する地域があります。海外で生活しながら日本の教育が受けられるため、駐在員家庭の子供が多く通っています。日本人学校の場合、子供は言語や文化の違和感なく学校に馴染めます。
しかし、移住を考えている家庭の子供が日本人学校に通うのはおすすめできません。日本人学校を卒業後、現地の学校への進学が難しくなってしまうからです。また、海外の日本人学校は私立に該当するため学費もかかります。
ただ、将来は確実に日本へ帰国する予定なのであれば日本人学校は優れています。
例えば、私の知り合いの駐在員家庭の子供は駐在中に現地の学校に通っていました。しかし、数年後日本に帰国したのですが逆に日本の学校に馴染めなくなってしまい、結局駐在していた国に戻ってきたのです。
このようなケースは希ですが、現地校に馴染みすぎると逆に日本の学校に戻れなくなってしまうことがあります。そのような意味でも日本人学校は海外で生活しながらも子供が混乱せずに日本の教育を受けられるので、ありがたいといえます。
・インターナショナルスクール
海外の学校の選択肢の一つにインターナショナルスクールもあります。英語で教育が受けられるため、「現地の言葉ではなく、子供に英語を学ばせたい」という親から人気があります。ちなみにオランダには、私立と公立のインターナショナルスクールが存在します。
私立は学費がとても高いため、会社の補助のない家庭が通わすことは難しいですが、公立であれば学費はかかりません。ただし、インターナショナルスクールの入学条件として「一時滞在を前提とした家庭の子供」という規定があります。
したがって移住・永住で渡航した家庭の子供を通わせることは基本的にできません。
もちろん、国によってルールが異なるため、あなたが海外勤務を検討している国ではどうなっているのか事前によく調べましょう。
海外勤務前に現地の教育システムをチェックする
また、国によって教育制度は大きく異なります。私が暮らしているオランダでは2歳の誕生日から幼稚園に入園でき、4歳の誕生日の次の日から小学校に入学し、5歳から義務教育がスタートします。
ちなみに以下の写真はオランダの小学校の校舎です。
また、オランダの公立学校は「モンテッソーリ」「イエナプラン」といった教育方針をそれぞれ取り入れています。そして親や子供は、学校の雰囲気や教育方針、教育理念、進学率などに納得できる学校を自分で選択するのです。
さらに、私たちのような日本人家庭の子供を現地校に入学させる場合は、人種的なことや治安面も考慮しなければなりません。
しかも、オランダでは小学校の数が足りておらず、人気のある小学校では子供が生まれた時点で申込みしなければ枠が埋まってしまい、希望している学校に入れられないという問題もあります。
そのため学校選びは本当に大変です。あなたが既に渡航を考えている国があるのであれば、その国の教育システムや問題点などについて詳しく調べておきましょう。
子供がなるべく小さいうちに移住することが大切
また、もしあなたが一時的な海外勤務ではなく、移住を見据えた上で海外で仕事を探しているのであれば、なるべく子供が小さいうちに海外転職することをおすすめします。日本で育った時間が長いほど日本の文化が染み込んでしまい、外国に馴染むのに時間がかかってしまうからです。
さらに語学を学ぶ上でも年齢が小さい方が、圧倒的に吸収スピードが上がります。
例えば中学生と3歳の子供とでは環境適応能力が全く異なります。日本人の中学生が海外の現地校に転校して、馴染むまでにはかなりの時間と忍耐力が必要になります。やがて「学校に行きたくない」あるいは嫌がるようになってしまいます。
一方で、3歳の子供であれば現地の保育園あるいは幼稚園に通えばすぐに現地の言葉を話すようになります。
そこで海外転職を考えているのであれば、なるべく子供が小さいうちに行動に移しましょう。もちろん、「駐在員として一時的に海外で生活する」という場合は、日本人学校やインターナショナルスクールに通えばいいので、基本的にこのような心配は要りません。
ただ駐在員の家庭でも子供が中学・高校・大学受験を控えていると帯同するのが難しくなり、日本と海外との別居を避けられない状況となってしまうことがあります。思春期の大事な時期に親子が離れ離れで生活するのは理想的ではありません。
子供の年齢・進路のことも考えて海外転職を計画しましょう。
子供の学費を補助してくれる求人が存在する
ただ海外で高いレベルの教育を受けさせる場合、高額な教育費がかかる場合があります。特に教育費の高い国への転職を検討している場合、福利厚生に学費の補助が含まれている求人を探すといいです。例えば、以下は世界14か国で展開する日本の塾の求人案内です。
勤務地はシンガポール・バンコク・ジャカルタ・香港のいずれかです。海外で暮らす小学生・中学生を対象に日本語で教えます。応募資格は「4年制大学を卒業していて2年以上の職歴があること」のみです。語学は不問で未経験であっても応募できるため異業種からチャレンジも可能です。
そして福利厚生には「家族手当」「子女教育費補助」「住居手当」の記載があります。教育費を補助してもらえるのは安心です。このような記載のある求人は家族同伴で渡航しても問題ありません。
・日本人学校の学費サポートや一時帰国の航空券代サポートがある求人
また、日本人学校の学費をサポートしてくれる求人もあります。日本人学校に通わせる場合、学費がかかるものの、福利厚生でこの費用が浮くのです。以下の求人がこれに該当します。
マレーシアにある日系自動車部品メーカーで営業を担当します。東南アジア担当としてタイ・日本・インドへの出張があります。
応募条件は「社会人経験3年以上」「ビジネスレベルの英語力」です。こちらは福利厚生が特に充実しています。社有車や住宅費の支給に加えて、小中学生の子供に対して日本人学校分の学費サポート、さらには年に1度家族全員分の日本一時帰国航空券代サポートまであります。
このような好待遇の求人であれば、お金のことは気にしないで家族を連れて海外に赴任できます。
子連れの海外転職は駐在員を狙うべき?現地採用の方がいいのか
それでは、駐在員と現地採用ではどちらがいいのでしょうか。結論から述べると、もし駐在員の求人であなたにピッタリ当てはまるものがあるのであれば迷わず駐在員として渡航することをおすすめします。駐在員の方が、圧倒的に待遇が良いからです。
駐在員は日本の本社で採用されます。そのため日本の社会保険料や年金はそのまま維持できます。国によっては日本の健康保険が一部で使えたり、一時帰国の際は日本の病院で治療を受けられたりします。
また、駐在の福利厚生には一時帰国の航空券の費用や子供の教育費の補助、その他さまざまな手当てが含まれます。もちろん会社によって待遇に開きはありますが、現地採用と比べると駐在員ははるかに恵まれているといえます。
ただし、駐在員の場合は任期が決まっているため、本社に帰任を命じられたら日本に帰国しなければなりません。一方で現地採用の場合は、日本への帰国辞令が出ることはありません。
あなたが「ずっと海外で暮らしていきたい」と考えているのであれば、「駐在員より現地採用の方が良いのではないか」と思う方もいるかもしれませんが、駐在員の任期が終わる時期を見計らって現地で就職することも可能です。
駐在中に子供を現地校に通わせて、勉強についていけるか、馴染めるかどうかを試すこともできます。もちろん、駐在のみに絞って求人を探すと選択肢が狭まるので、現地採用も含めて仕事を探すといいです。
現地採用での移住なら、夫婦共働きがおすすめ
なお現地採用で家族を連れて海外移住を検討している方には、共働きをおすすめします。渡航する国にもよりますが、先進国の中で日本ほど共働きが大変な国は珍しいと思います。特に子供が小さい家庭で共働きすると、女性の負担が膨大になります。
例えば、私の薬剤師の友人は「自分ばかり負担が増えるのに、何で働きに出ないといけないのか」と高給な仕事を辞めてしまいました。日本で働いている母親は、仕事と家事・育児を両立させなければなりません。いくら世帯収入が上がったとしても、それ以上に女性の苦労・ストレスが大きくなるのです。
一方で、海外で現地採用として働く場合、男性でも定時に帰宅できます。同僚との飲み会や付き合いのゴルフなどもありません。例えばオランダでは、子供が小さい家庭の父親が週休3日で勤務するのは普通です。したがって父親が余裕を持って家事・育児に参加できます。
また、ベビーシッターやお手伝いさんを雇うのが日本より簡単です。保育園の待機児童問題で悩まされる心配もありません。
実際、オランダで3人の子供を育てる日本人の友人は、「専業主婦で3人の子供を育てるより、働きに出る方がよっぽど楽」と話していました。それだけの環境が整っており、働くことが気分転換になり、給料ももらえるので生活の満足度が上がります。
このように女性にとって働きやすい環境が整えられている国では、夫婦共働きは普通です。また、経済的なゆとりを持つためにもダブルインカムは家族の大きな支えとなります。海外移住を考えているのであれば、夫婦共々仕事探しをしましょう。
ちなみに海外求人の中には夫婦で就職できる企業もあります。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務先はマレーシアにあるビジネスアウトソーシング企業です。外資系旅行サイトやオンラインショッピングサイトの事務、カスタマーサポートなど、参加するプロジェクトによって仕事内容は異なります。
しかし、日本語のみでも担当できる業務もあり、「高卒以上」「パソコンスキル」さえあれば応募できます。
そして、この企業には夫婦やカップルで勤務している社員がいます。このような会社に就職すれば、二人同時に仕事を見つけることが可能です。他にも夫婦での就職を募集している企業もあるので、そのような求人を探してみるのもいいです。
なお、共働きについて「現地採用の家庭」と限定したのは、駐在員の場合だと妻が就労することを禁止している会社もあるからです。また、私の友人の駐在員妻は日本での仕事を休職して旦那さんの海外転勤に付いてきていました。このような場合も海外で働くことはできません。
さらに駐在員の場合は担当国のエリアが広く、海外出張が頻繁に入るポジションもあります。数日間の出張だといいのですが、数週間・数ヶ月ということもあり得ます。そのようなとき、妻はワンオペ育児をしなければならないので働きに出ていると大変な場合があります。
もちろん会社の規則で自由に働くことができ、「働きたい」と希望するのであれば、駐在員の妻も仕事を探してみるといいです。
まとめ
子連れでの海外転職では、単身で求人を探す場合と比較して仕事の選び方が異なります。家族を連れて海外転職する場合、まず家族帯同が可能かどうかをチェックしましょう。
その指標として、「家族手当」「子供の教育費補助」「扶養家族の医療費補助」「家族におすすめ」などの記載があるかを確認するといいです。
また、渡航する国によって教育システムや教育課題・問題点などが大きく異なります。これらを事前によく調べておきましょう。できれば現地で実際に子育てしている知り合いや友人に直接聞くのがいいです。インターネットの情報は楽観的な内容が多く、事実と異なる記載もあるからです。
このとき駐在員としての海外赴任を除いて、海外移住を考えているのであれば夫婦で仕事を探すことをおすすめします。海外の場合、夫婦共働きは日本ほど大変ではありません。経済的にも余裕を持って暮らせる方がいいです。
そこで海外勤務を考える場合、複数の転職サイトに登録して仕事を探してみましょう。一つのエージェントに絞るよりも複数登録した方が求人の選択肢が広がるからです。そして、なるべく子供が小さいうちに海外転職を実現するといいです。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。