海外転職をしたいけれど失敗や後悔を恐れて、仕方なく日本で働いている人は多いのではないでしょうか。海外に出れば、サービス残業や休日出勤に追われることなくプライベートを充実させることが可能です。

グローバル化が進み、海外転職のハードルは年々下がっています。ただ海外転職する人が多くいる一方で、会社選びに失敗して「思い描いていた海外生活とは違う……」と後悔する人も少なくありません。

しかし、求人選びの段階でポイントを押さえておけば、海外転職は成功します。ここでは海外転職に対して不安を抱えている人向けに、成功の秘訣や失敗例・リスクを伴うケースなどをそれぞれ解説していきます。

海外転職成功のための5つの秘訣

海外転職には大きな決断が必要です。転職に成功すれば楽しい海外生活が待っている一方、失敗すれば帰国後の転職が難しくなります。そうしたとき、海外転職に成功するための秘訣は何でしょうか。

あなたが求人を選ぶ際の基準にもなる秘訣は5つあります。以下の通りです。

  • 英語力を磨く
  • 複数の求人サイトに登録する
  • キャリアアップが明確なポジションを狙う
  • 思い立ったらすぐ動く
  • 受け入れることも大切

それぞれ詳しく解説していきます。

英語力を磨ける環境に身を置く

英語力が高くなくても海外転職は可能です。日本語のみで業務を遂行できる求人は豊富に存在します。また、日本人が多く暮らす国や街に住めば、英語をほとんど使わずに生活することだって可能です。

実際に、私はヨーロッパで英語がほとんど話せない駐在員に何度か出会ったことがあります。彼らは、「英語や現地の言葉を理解できる同僚がいるから、あまり苦労しない」と話していました。

確かに期間限定の海外駐在などでは、英語力が高くなくても生活できます。ただ、あなたが海外移住や海外でキャリアアップを目指したいと考えているのであれば、いま英語を話すことができなかったとしても、英語力を磨くことは必須です。

たとえ「英語不要」という仕事に就職する場合でも、積極的に英語スキルを延ばしていく努力が必要です。

また、海外で生活したからといって自然に英語力が身につくわけではありません。そのため英語が必須かどうかに関わらず、渡航後も英語力が伸びる環境に身を置くことをおすすめします。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務先はカンボジア・プノンペンにある焼肉レストランです。ここで日本人ホールマネージャーとして、店舗マネジメント全般に従事します。入社にあたり特に求められるスキルは無く、英語力が高くなくても応募可能です。

一方で就職後は、英語学習塾への費用を会社が負担してくれるという「英会話スキルアップのサポート」が付いています。

このような環境下で英語力を常に磨き、現地スタッフと積極的にコミュニケーションをとっていけば、働きながら英語スキルを身につけられます。同時に、任される業務の幅が広がりステップアップのチャンスが増えます。

また、渡航前もできるだけ英語に触れる時間を設けましょう。オンラインの英会話であれば隙間時間を利用しながら、いつでも受講できます。

英語でコミュニケーションをとれれば、キャリアアップにつながるだけではなく、世界中の人と交流できて海外生活自体が楽しくなります。取得できる情報の量や質も変わってきます。

たとえ日本語しか使わない仕事に就いたとしても、自ら英語のスキルを磨き続けることが海外転職で後悔しないコツといえます。

複数の求人サイトに登録して求人の選択肢を増やす

海外転職エージェント選びは非常に重要です。ただ、「ここが絶対おすすめ」というサイトは存在しません。むしろ一つに絞るのは危険です。なぜなら、「担当者との相性がある」「エージェントによって取り扱っている求人が異なる」からです。

特に後者では、エージェント毎に得意とする分野や職種があるので、それぞれチェックしてみる必要があります。

例えば、2つの海外転職サイトで「営業職」に絞って検索をかけてみると、求人数が倍以上異なることが分かります。例えば、以下は176件です。

一方で以下の転職サイトでは、合計で414件の求人数です。

同じ職種でも、転職サイトによってこれだけ取り扱っている求人数に違いがあるのです。ただ、「求人数が少ないからダメ」というわけではありません。少ない求人の中にあなたが受けたいと思える企業が見つかる可能性もあります。

複数の転職サイトを利用して、より多くの求人に目を通してみましょう。そうすると、給与の相場や雇用条件などの違いが分かりやすくなってきます。さらには、いわゆる「ブラックな条件の求人」を見極めることも可能です。

転職失敗のリスクを避けるためにも、複数の海外転職サイトを利用するようにしましょう。

キャリアアップが明確なポジションを狙えばモチベーションを維持できる

また、海外求人を探すときはキャリアアップが明確なポジションを狙うと、転職後に後悔する可能性が低くなります。

「経験不問」「語学不問」の求人を見つけることは容易ですが、ルーチンワークばかりでは仕事に面白みを感じなくなってしまいます。実際に「このまま海外で働いていて大丈夫なのか」といった将来に対しての不安を感じ、日本へ帰国してしまう人もいます。

そこで、長期的にキャリアを築ける仕事を狙うといいです。例えば以下のような求人であれば、経験を積みながら社内でステップアップが実現できます。

勤務先は大手グループ会社のフィリピン子会社です。ここで通訳兼アシスタント業務を募集しています。

経験を重視されることの多い通訳の仕事ですが、この求人ではビジネスレベル以上の英語力があれば未経験でも応募できます。

「副社長の会議の通訳」「資料の翻訳」「スケジュール管理・資料作成」などが主な仕事内容です。通訳の経験が積めるだけでなく、会社経営層の近くでビジネスにも触れることができます。

さらに、世界各国でビジネス展開するグループ会社内の他事業や、他国でのキャリアアップの機会もあり、あなたの頑張り次第でチャンスが大きく広がるポジションです。

このような仕事に就けば、徐々にステップアップしていけるのでモチベーションを保ちやすく、将来に対しての不安を抱えることなく働くことができます。

若いほど有利になるので、思い立ったらすぐ動く

海外転職は国内での就職活動よりも時間がかかるケースが多いです。海外にある日系企業であっても、人事担当者が外国人だと「面接の日程がなかなか決まらない」「次の選考の連絡が来ない」というケースは普通です。

このような転職事情を理解し、海外転職は長期戦になる事態を覚悟して、すぐに行動に移すことをおすすめします。

また特別なスキルや長年の経験がある場合を除いて、海外転職においても若ければ若いほど有利に働きます。あなたの選択肢を増やすためにも若いうちに海外転職に挑戦するべきです。

特に未経験者を歓迎しているポジションでは年齢制限を設けている求人が多いです。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務先は、ベトナムで日本人向けにフリーペーパー誌を発行している会社です。「広告デザイナー」「紙面デザイナー」「編集者」「営業」といったポジションを募集しています。特に必須条件もないので未経験から挑戦でき、紙媒体でクリエイティブな仕事に就きたいと考えている人にとっては魅力的な求人です。

ただ、年齢は「26~35歳まで」と表記されています。このように年齢制限のある求人も多く、せっかくの機会を年齢によって逃してしまうのはもったいないことです。あなたが早く動き出せば、それだけチャンスが増えるのです。

労働条件や環境を受け入れることで満足度が上がる

最後に、あなたが希望する条件を全て満たす求人は存在しません。「安定している」「高給」「休みがたくさんある」「定時に帰れる」「人間関係が良好」など、希望条件を挙げたらきりがないでしょう。これら全てを満たす求人を探していても月日だけが過ぎてしまいます。

希望する条件の中で「これだけは譲れない」というものを自分の中で決めて、あとは妥協する姿勢も必要です。

また、海外で働くとがっかりすることもあります。例えば私の場合だと、外国人上司の情報共有が遅く、長期休暇などの大事な情報を知らされるのが直前ということが当たり前でした。

最初はイライラしていたのですが、「自分から積極的に聞き出していくしかない」と考え方を変えました。仕事に対する姿勢や価値観などが大きく異なるので、時には「そういう人種だから仕方がない」と割り切ることも必要です。

このように求人条件や労働環境において「受け入れる姿勢」を持つことで、仕事に対する満足度が上がります。

海外転職で失敗しやすいケース

一方で海外転職の失敗例としては何があるのでしょうか。他人の失敗例を知ることで、あなたが同じ過ちを犯さないで済みます。よくある失敗例として以下があります。

  • 日本と変わらない職場環境の勤務先に就職してしまった
  • 渡航した国の食事や文化が合わない

まずは「海外転職したのに職場の環境が日本と変わらない」というケースについてです。

英語が苦手な人にとって日本語のみで仕事ができるのは魅力的なことです。ただ、海外転職したものの日本と同じ職場環境のため、「辞めたい」と考えるケースも少なくありません。例えば以下のような求人であれば、英語が話せなくても不自由なく働けます。

勤務地はマレーシア・クアラルンプールです。外資系BPO企業(外注された業務を請け負う企業)でネット通販のセラーサポートを担当します。

サイトに出品する業者の問い合わせ対応・サポート業務・在庫確認や価格交渉を日本語で行います。そのため業務で英語を使用することはありません。

未経験でも応募でき、特に必須となるスキルも求められないので挑戦しやすい求人といます。

ただ、「日本人スタッフが200名以上在籍」との記載があるので、日本国内で働く場合と環境があまり変わらない可能性があります。

また「日本語しか使わない=接する同僚は日本人のみ」の可能性が高く、日本語で仕事をして日本人の同僚や上司と付き合い、休日も日本人コミュニティーで過ごす……となると海外転職をした意義を感じられなくなってしまいます。

実際に、海外にある日系大手企業の現地採用として働いている私の友人は、「海外にある会社だけど労働環境は日本と全く変わらない」と愚痴をこぼしていました。

定時になっても帰りにくい雰囲気があり、駐在の日本人は遅くまでダラダラ働いているそうです。日本特有のたて社会であり、現地スタッフ(外国人)が入社しても、すぐに辞めてしまい、結局残っているのは日本人ばかりだと話していました。

このように、海外にある会社だからといって日本社会から解放されるわけではありません。特に、日本の労働環境や人付き合いに疲れて海外転職を目指した人が日本語のみの職場に就職すると「すぐ辞める」ことになりかねません。

もちろん日系企業であってもインターナショナルな環境で働くことが可能です。実際に入社してみないと社内の実情は分かりません。

  • 日本人の割合が少ない
  • 日本人の駐在員が少ない
  • 上司が外国人

日本特有の社風を避けるには、これらの条件を満たす企業を目安にしてみるといいです。

就職する国をよく理解しないで転職した

また「海外」と一言でいっても、国によって現地の人の気質や風習・文化・価値観は大きく異なります。あなたが渡航する国のことをよく知らないまま就職してしまうと、仕事は問題なくても実生活でその国に馴染めず「日本に帰国したい」という事態になってしまいます。

そのため、就職を考えている国に一度は訪れましょう。できるだけローカルな環境に身を置くといいです。必ず以下の項目はチェックしましょう。

  • 主流となる宗教
  • 食生活
  • 現地の人の性格や気質

それぞれ見ていきましょう。

主流となる宗教を理解して受け入れる

日本は宗教色が強くない国なので、日常で宗教を意識することはあまりありません。しかし、多民族国家の国では色々な宗教を信仰する人種が暮らしています。宗教のことを理解していないと、その国に馴染めなくなってしまいます。

例えばマレーシアではイスラム教が主流です。そのため、「豚肉を食べてはいけない」「お酒を飲んではいけない」という厳しいルールがあります。また、「ラマダン」というイスラム教行事の期間中では、日が出ている間に食べ物や飲み物を口にすることができません。

あなたがイスラム教に従う必要はありませんが、イスラム教を信仰する人々を尊重する必要があります。私自身、以前働いていた職場では、イスラム教の友人の前で豚肉を食べづらかったり、ラマダンのときは食事の匂いをさせては申し訳なかったりと非常に気を遣いました。

渡航する前はその国の宗教事情についてよく調べて理解し、信仰する人々を尊重するようにしましょう。

食生活が合わないと苦労する

日本の食文化のレベルの高さは世界一といっても過言ではありません。そのため、現地の食事が合わないと苦労します。自炊が、ある程度できればそれでも問題にならないかもしれませんが、外食が続くと大変です。

特にヨーロッパは食文化レベルが低く、私が暮らしているオランダではスーパーやローカルレストランで、おいしいものには出会えません。そのため、独身男性の駐在員は食事にとても苦労をしている印象を受けます。

まずは渡航を考えている国に滞在して、ローカルレストランで食事をしたり、地元のスーパーを覗いたりしてみるといいです。

現地の人の性格や気質を知り、共感する姿勢が重要

また、現地の人の性格を受け入れる姿勢も重要です。電車やバスが大幅に遅れたり、頻繁に停電が起きたりしても、いちいち怒っては身が持ちません。現地の人が時間に非常にルーズであっても、「またか」と冷静に受け入れる姿勢が重要です。

日本の基準が必ずしも世界のスタンダードではありません。現地の人の価値観を理解して受け入れましょう。

例えばオランダ人は良い意味で「倹約」、悪く言うと「ケチ」です。そのため基本的に高価な物が売れません。オランダの大都市であってもシャネルやルイヴィトンなどの高級ブランド店は存在しないのです。

ブランド品が好きな人にとっては退屈に感じるかもしれませんが、私は「お金持ちでもひけらかさずに質素に暮らすオランダ人精神」は素晴らしいと感じています。このように現地の人の性格や価値観を受け入れ、共感する姿勢が重要です。

その他、安全上の問題や衛生面はどうなのかについても、あらかじめ調べたり、現地に行って肌で感じたりしましょう。そうすることで渡航後にがっかりしないで済みます。

海外転職のリスクが高い人は誰か

なお、ここまで述べたことを全てクリアできたとしても残念ながら海外転職のリスクが高い人がいます。それは「健康上の問題がある人」です。

「持病があって定期的に病院へ通わないといけない」「体力がなく、頻繁に体調を崩す」という人は海外転職してもすぐに辞めて帰国してしまう可能性が高いです。

なぜなら、海外ではいつでも病院へ行けるわけではなく、その日に診てもらいたくても1週間後しか予約が取れなかったりする事態は普通です。また診療費が非常に高額なケースが多いです。

例えば私の子どもがお尻に出来物ができたとき、オランダで専門の小児科医に診てもらったのですが毎回の診察代が3万円程度かかり、立て替えるだけでも大変でした。

そもそも、日本ほど全ての人が平等に医療サービスを受けられる国は存在しません。海外では個人が民間の医療保険に加入して、保険の範囲内で医療を受けるというのが一般的です。

そのため、持病があったり、体が弱かったりする人は海外転職をおすすめできません。体力に自信のない人は、福利厚生に医療保険が含まれている求人を探しましょう。

特にアメリカなど医療費が非常に高額な国では、福利厚生に医療保険が含まれていないと、手元に残る給与が大きく減ってしまうので注意が必要です。

さらにいうと、福利厚生に医療保険が含まれていたとしても、保険の種類まで確認するようにしましょう。海外医療保険や民間医療保険など種類があるからです。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地はベトナムにある日系照明メーカーです。ルート営業のポジションであり、日系企業を回ります。そのため英語力はコミュニケーションレベルでOKです。営業あるいは接客経験があれば応募できます。

またこの求人票の福利厚生の項目には「海外医療保険」の記載があるので、自分で医療保険に加入する必要はありません。

一方で、こちらの求人票には「民間医療保険加入」の記載があります。

募集しているポジションはベトナムにある不動産会社の営業職です。日本人駐在員向けに物件を紹介していきます。福利厚生には「民間医療保険加入」との記載があります。

ここで、「海外か民間か、どちらの医療保険がいいのか」と疑問を持つ人がいると思います。海外・民間それぞれ保険会社で良し悪しがあるので一概に結論は言えませんが、私の経験上、民間医療保険の方が安心です。

なぜなら海外医療保険は「海外旅行者」や「長期滞在する外国人」を対象としているので、保険のカバーが限定されている場合が多いからです。

例えば、民間保険だと妊娠や出産に関わる費用がカバーされるのに対して、海外保険だと対象外となることがあります。

また、地元の病院で海外保険を提示しても「国外の保険会社に医療費の請求はできないから自分で立て替えて」と言われることがあります。そのため高額な医療費を立て替えて、自分で海外医療保険会社に請求しないといけません。

また医師に保険申請書を記入してもらう必要があり、非常に手間がかかります。書類に不備があると支払ってくれないこともあり、お金が戻ってくるまで落ち着きません。

このように海外生活において医療保険は非常に重要です。そのため、就職を希望している企業の保険の種類を聞いて調べてみるのが一番確実です。

まとめ

ここで紹介した海外転職成功の秘訣を押さえることは決して難しいことではありません。外国にて働きたい場合、1日も早く複数の転職サイトに登録して就職活動を開始しましょう。キャリアアップを目指せるポジションを選ぶのがベストですが、こだわりすぎるのはNGです。同時に今日から英語力を磨いていきましょう。

また就職失敗のリスクを避けるには、失敗例から学ぶ必要があります。特に、「日本の職場環境が嫌」という人は、何人くらいの日本人(駐在員)が求人先に在籍しているかを調べるといいです。

その他、渡航する国の食生活や現地の人々の気質・宗教についても事前によく調べて理解するようにしましょう。事前に興味のある国に渡航して現地の雰囲気に触れておけば、海外転職の不安はかなり低くなります。

最後に、健康であることは海外転職の大前提です。たとえ健康でも医療保険は注意が必要です。福利厚生に含まれているのか、どんな種類の保険なのかは確認することをおすすめします。これらを理解して、海外求人に申し込むようにしましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。