終身雇用が当たり前だった時代も終わりに近づき、個人が自由に仕事を選んで多様な働き方ができる社会になってきました。例えば、会社に属さないフリーランスや好きな場所(国)で好きなときに仕事をするノマドワーカーを選択する人も増えています。
転職は一般化していますが、転職回数に関しては「多いとダメ」という思い込みがあります。実際、日本では転職回数が多いと書類審査で不合格になってしまったり、面接で良い印象を与えられなかったりします。
しかし、海外では転職は一般的なことです。「転職回数が多いから」という原因で採用を見送られることはありません。ただし、転職回数の多い日本人が海外で仕事を探す場合は、いくつか注意しなければならないポイントがあります。
ここでは転職回数が多くて次の転職に躊躇している方のために、「海外では転職回数は選考基準に含まれないこと」「海外転職のときに気をつけるべきこと4つ」について紹介していきます。
もくじ
日本と海外の転職回数に対する反応の違い
冒頭で述べた通り、日本では就職活動をするときに転職回数が多いと敬遠されがちです。
もちろん明確な基準があるわけではありません。しかし、例えば20代で既に3回以上の転職経験がある場合、人事採用者は「うちに来てもまたすぐに辞めるのでは」と判断して採用を見送るケースが多いです。
一方で海外の場合は、20代で3回は一般的な転職回数です。LinkedIn(Facebookのビジネスバージョン)が行った調査によると、大学卒業後10年以内に平均4回転職するというデータが公表されています。単純に計算すると2.5年に1回の頻度で転職していることになります。
日本のように「新卒前に一斉に就職活動を開始する制度」は欧米では存在しません。そのため欧米の若者は、時間をかけてゆっくりと自分に合った仕事や自分のやりたいことを探すのです。
このように転職が一般的なため、海外の基準からすると日本のような「転職がネガティブに捉われる社会」がおかしいことであり、転職回数が多いからマイナス評価になることはありません。
既に転職回数が多いのなら、海外転職がおすすめ
日本では転職回数が多いと経歴に傷が入ってしまうので、「仕事を辞めたいけど転職回数が多から、もう後がない」と転職に踏み出せない方がいます。
そのような場合は無理して仕事を続けずに、海外転職という選択肢を考えてみましょう。ハードワークに耐え続けたり、ブラック企業に身を置いていたりすると体調を壊す可能性があります。自分の身体を壊してまで、同じ会社で働き続ける必要はありません。
また「どの会社も長続きしない」という場合、海外の会社で働くと文化や労働環境が大きく変わるため継続できる可能性があります。
例えば、タイやマレーシアなどの東南アジアではみんな定時に帰るのが当然です。またインフラは整っていますし、日本人の場合はプール付きのコンドミニアムの賃貸マンションを会社の福利厚生で提供してもらえるのが一般的です。
日本で働くときとは条件が大きく異なるため、海外に飛び出してあなたのやりたいことに挑戦してみても問題ありません。
転職回数の多い日本人が海外で気をつけるべきこと4つ
海外転職においては「転職回数が選考に影響することはない」と述べましたが、「いくらでも求人の選択肢がある」というわけではありません。日本人が海外で求人を探すときに気をつけるべきポイントがあります。
具体的には、以下の4つになります。
- 未経験で求人を探すのが難しい国が存在する
- 海外転職についても若い方が有利になる
- 日系企業では、転職を繰り返しているとマイナス評価につながる可能性がある
- 未経験から挑戦でき、スキルが身につく求人を探す
それぞれ詳しくみていきましょう。
未経験で求人を探すのが難しい国が存在する
ヨーロッパの国の中には、専門性を高めて同じ業界や職種でのキャリアを積んでいかないと転職が難しい国が存在します。例えばオランダの場合、「未経験歓迎」と記載されている求人はほとんどありません。以下の求人のように、営業のポジションであっても業界の基礎知識は必要となります。
この求人の場合は、注文処理・配送管理・会計・請求に関する知識を持っていることが応募条件です。例えば、物流業界で経験のある人材は基本的に物流業界内で転職します。
ただ、専門スキルがある場合は別業界への転職も可能です。例えば、マーケティングやITエンジニア・デザイナーなどです。
参考までに、「新卒者や初めての業界への就職はどうするのか」というと、インターンシップに参加します。また職種を変える場合、大学や専門学校に通い直して即戦力となるスキルを身につけてから就職活動を行います。
実際に、私のオランダ人の友人は大学で法律を学び法律関係の仕事に就いていましたが、「学校の先生になりたい」と仕事を辞めて大学に通い直しています。彼女には2歳の子供がいて旦那さんも働いているので、日中は保育所に子供を預けて大学に通っています。
「大学に通い直すと、お金も時間もかかるのでは?」と心配になりますが、彼女は国が支援する教員育成プログラムに参加しており、大学で学びながら同時に学校の先生のアシスタントとして働いています。そのため大学の費用はほとんどかからず、給与ももらえるので生活に困ることはありません。
このようにキャリアチェンジをする場合、大学や専門学校に通い直すのが一般的な国では、未経験からいきなり仕事を見つけるのは難しくなります。
一方で、専門知識やスキルを身につけた上で仕事を探す場合は求人が見つかりやすいといえます。例えば、あなたに日本食レストランでの料理人としてのスキルがあるのであれば、さまざまな国で求人があります。以下の求人ではアメリカ・ハワイで料理人を募集しています。
勤務地は日本人観光客が多く訪れるハワイ・ホノルルにある鉄板焼きレストランです。料理長候補として調理全般を担当します。そのため、ある程度のスキル・経験が求められます。
年収は484~634万円との提示があります。アメリカは就労ビザの取得が非常に難しいため、求人自体が少ないです。ただ、「日本料理のシェフ」など日本人にしかないスキルを活かせる職種であれば比較的ビザの取得が容易なため、豊富な求人が存在するのです。
その他、ゲーム開発や世界的に人材が不足しているITエンジニアについても、海外転職のハードルは低いといえます。もちろん、そのときは転職回数を気にする必要はありません。
海外転職についても若い方が有利になる
ただ国内外問わず、転職は若い方が求人の選択肢が広がります。例えば海外求人の中には、以下のように年齢や既婚ステータスを制限している求人が存在します。
パラオ共和国にあるホテルでレセプション業務の求人を募集しています。ただし、「年齢25~35歳までの独身女性に限る」との記載があります。その他の応募条件を満たしていたとしても、年齢や既婚状況がクリアできなければ応募できません。
もちろん、海外では日本ほど年齢を気にしない傾向が強いです。実際、専門スキルを有する場合はシニアでも応募可能な求人がたくさん存在します。例えば以下のように定年退職者を歓迎している求人を見つけられます。
タイで1級建築士の資格を持った50歳以上の人材を募集しています。英語が少しでもできれば応募できます。
このように専門スキルがあれば年齢が高くても海外で仕事を探せますが、それでも若い方が柔軟性があるため、求人の選択肢は広がります。
したがって、若いうちに幅広い求人の中からあなたがやりたい仕事を選んで、経験を積んでおくことをおすすめします。
日系企業では転職を繰り返しているとマイナス評価につながる可能性がある
ただ海外で日本人向けの求人となると、圧倒的に日系企業が多くなります。英語力が低くても雇ってもらえるため、転職のハードルが低いといえます。しかし、日本で転職を繰り返していると海外にある日系企業においても、選考が不利になってしまう可能性があります。
その場合は外資系企業で日本人の需要がある求人を探してみましょう。外資系企業でも、日本人の顧客対応や日本のマーケット開拓・拡大のために日本人を募集しています。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地はマレーシアのペナン島です。ヨーロッパのサービス系会社が日本人オンライン広告コンシェルジュを募集しています。仕事内容は「日本人顧客へのメールやチャットによるカスタマーサービス」「日本語・英語を使ったデータ入力業務」「外国人上司への報告」などです。
外資系企業なので英語は必須となりますが、日常会話レベル(TOEIC650点以上)でOKです。また、この求人では年齢は不問です。「基本的なPC操作ができる」「短大・専門卒以上」をクリアすれば、応募条件を満たすことができます。
なお、月給は約20万円(1マレーシアリンギット26円で算出)と物価の低いマレーシアでは十分に暮らしていける金額です。
外資系企業の求人は日系企業に比べると少ないですが、日本人の需要はあります。そこで、なるべく求人の選択肢を増やすためにも複数の転職サイトに登録しつつ、多くの募集を見比べることをおすすめします。
未経験から挑戦できてスキルが身につく求人を探す
ここまで述べた通り、基本的に海外では転職回数がマイナス評価につながることはありません。ただ、年齢と共に専門スキルを身につけておかなければ、その先の転職が困難になる可能性があります。
ヨーロッパの例のように、特定のスキルがなければ就労できない国もあるからです。
したがって、あなたに専門スキルが身につくと同時にキャリアを積める仕事に就くことをおすすめします。例えば以下のような求人がこれに該当します。
未経験でも応募可能な会計監査・ビジネスコンサルティングのアシスタントです。勤務地はインドのバンガロールです。セキュリティー対策が十分に施されているため、治安上の心配は不要です。世界各国に拠点を持つ大手会計コンサルティングファームでグローバルな経験を積むことができます。
未経験でも応募可能であり、必須条件は「インドでの長期就業(3年以上)が可能である」ことのみです。年齢や性別も問われません。ただし、3年は継続して就労する必要があるので、「合わなければ、また転職すればいい」という安易な考えは許されません。
仕事内容は日本人スタッフのアシスタント業務から始まります。能力によって広範囲の業務経験を積める可能性があります。会計監査・税務・法務に関する専門知識を、働きながら身につけられる魅力的な職場です。
こうしたコンサルティング業界で経験を積めば、その後の転職や年収アップについても大きな期待ができます。
まとめ
「既に転職回数が多く、これ以上仕事を探すのは困難」という方は、転職回数が選考基準に含まれない海外で転職活動してみてはいかがでしょうか。
日本で転職を繰り返していた場合でも、海外の環境では継続して勤務できる可能性があります。ただし、海外転職では日本国内で仕事を探すよりも求人数が少ないため慎重に選ばなければなりません。ここで紹介した通り、未経験では希望の仕事に就けない可能性もあります。
少しでも可能性を広げるためには「できるだけ若いうちに転職する」「多くの求人を紹介してもらう」ようにするため、複数の転職サイトに登録することをおすすめします。それでも転職活動が上手くいかない場合は、日本人を募集している海外の外資系企業に絞って応募してみるといいです。
また、未経験から新たな職種に挑戦する場合はなるべく専門スキルが身につく職種を選ぶようにしましょう。スキルと経験を積めば、国内あるいは違う国への転職にも困りません。
まずは複数の転職サイトに登録して、あなたが挑戦できる仕事を紹介してもらい、そこから今後のビジョンを立てて海外転職を進めていくといいです。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。