海外転職でキャリアアップを目指すとき、あなたの職種や働いてきた業界によってその難易度は大きく異なります。

例えば一級建築士の場合、国内の求人需要は高いのでキャリア形成を図りやすいですが、海外転職でキャリアアップを目指すとなると、そのハードルは一気に上がります。

一方で、プラント業界の場合は日本国内である程度の経験があれば、キャリアアップを目的とした海外転職は難しくありません。

「英語が話せないから海外勤務は諦めている」「高学歴ではないため好待遇は期待できない」といった考えを持つ方もいるかもしれませんが、実際の求人を見てみると語学力も学歴も問われない求人が多いです。

しかも高待遇の条件が提示されている求人が豊富にあり、年収アップ・キャリアアップを目指せます。

海外のプラント業界に転職するのはチャンスです。そこで、ここでは海外勤務のプラント業界の求人について詳しく解説していきます。

日本と海外プラントの仕事内容の違いとは?

同じ職種であっても、日本と海外では仕事で求められることが変わってきます。最も大きな違いは「現地スタッフの指導・管理」です。日本人が海外勤務する場合、基本的にマネージャー以上の立場になるからです。

海外で現地社員の教育や技術指導を行う場合、日本の部下を指導するのとでは事情が大きく異なります。その国の文化や人々の性格、仕事に対する姿勢などを全て理解した上で教育を進めていく必要があります。

例えば私が暮らしているオランダでは、部下と上司は対等な立場にあります。そのため「上司だから」「CEOだから」という気づかいはなく、お互い堂々と意見を述べます。

印象的だったのは、私が勤めていた会社のCEOが「休暇中の私の上司」に仕事の件で連絡したときのことです。オランダ人はプライベートと仕事を完全に分けて考えるので、上司は「CEOが休暇中に仕事の連絡をしたこと」にとても憤っていました。

さらにCEOに対して「あなたの行為は失礼だ」と、はっきり発言していて驚きました。

あなたが指導する立場になるのであれば、このような文化の違いを理解して受け入れる姿勢が重要です。そうでなければ現地社員と良好な関係を築くことはできません。

これはアジアでも同じです。例えば、アジアの多くの国では「他の人の前で怒る」ことをすると、恥をかかされたと感じ、あなたのことを一生恨むようになります。日本と同じように叱ってはいけません。

また日本の技術や知識を伝授するだけが現地スタッフの指導・管理ではありません。日系企業の場合、日本人を雇う最大の目的は「現地スタッフのフォロー」であることが多いのです。

例えば、国によっては現地スタッフの仕事が驚くほどいい加減だったり、ミスが日常茶飯事だったりします。そこで日本人社員がいち早くミスに気づき「そのフォローをすること」「指導すること」が重要になってくるのです。

また、ミスを生じにくくするための業務フロー改善も大切です。このように日本国内で同じ職種に就く場合とは少し業務内容が異なることを理解しておく必要があります。

実際にプラントの求人票にも仕事内容の項目に「現地スタッフの指導」の記載があります。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地はタイです。日系化学プラント企業でプラントエンジニアを募集しています。プラント建設受注後の配管や機器設計、プロジェクトの管理 を担当します。そして仕事内容の一つに「タイ人部下の管理・教育」が含まれています。

月給は28~35万円との提示があります。日本の物価の3分の1程度とも言われるタイでは高給です。

応募資格は「プラント建設において機器、配管設計の経験5年以上」「日常会話レベル以上の英語力」であり、こうしたスキルがあれば現地スタッフをまとめ指導していくことが可能です。

海外勤務のプラント求人の特徴3つ

それでは、海外勤務のプラントエンジニアではどのような転職になるのでし ょうか。次に、海外で求人のあるプラント業界の求人の特徴を3つ紹介します。

  1. 学歴や高度な語学力は問われない
  2. 長期間働くことを前提としている求人が多い
  3. 豊富な経験があれば、高待遇や高給が提示される

それぞれ詳しくみていきましょう。

学歴や高度な語学力は問われない

一般的に海外のプラント業界では、学歴や語学力は問われない求人が多いです。

・学歴不問の求人

「海外勤務できるプラントエンジニアは高学歴でないと採用されないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実際の求人をみてみると「学歴不問」の記載をよく目にします。

例えば以下のような求人です。

勤務地はフィリピンです。住宅設備製造など住宅に関するあらゆる製品を生産している工場で、電気設備設計・管理・保全業務に従事します。日本人社員が約100人在籍しているので安心です。

求人票には「学歴不問」と記載されています。必要条件は「電気系統設備の管理・保全業務」あるいは「自家発電所(重油/軽油系)の点検・保守業務」のいずれかの業務経験があることです。学歴よりも、その業界での経験が求められます。

ちなみに学歴不問ですが、給与は月給50万円から(年収は600~1000万円)という求人です。また住宅は会社がコンドミニアムを用意してくれます。

その他、年3回もの帰国補助が支給されたり、社内にある日本食レストランで昼食が無料で支給されたりと充実した福利厚生が用意されています。学歴が無くてもこれだけの高待遇で転職できるのです。

・高い語学力は問われない

また学歴だけでなく、語学力も問われません。海外のプラント求人では「日常会話レベルの英語力」を求める企業が大半です。必ずしも、ビジネスレベルや流暢な英語を話せる必要はありません。

日本にいる間にオンライン英会話レッスンを受ければ、日常会話レベルの英語力は身につきます。また、英語を母国語としない国に就職する場合、セカンドスピーカー同士なので片言の英会話でも成り立ちます。

「英語が苦手だから海外転職は諦める」というのはもったいないです。英語が上手く話せなくても、あなたの経験が活かせる場所が豊富にあります。例えば以下の求人がこれに該当します。

勤務地はフィリピンです。電気工事の現場監理(設備)を担当します。応募条件は「45歳まで」「日常会話程度の英語力」「電気工事現場監理(設備)経験者」であり、決してビジネスレベルの英語は求められません。

顧客は日本人なので日本語が話せれば問題ないです。また現地スタッフも、ある程度の日本語を理解できます。したがって、日常会話レベルの英語が話せれば十分なのです。

月給は11~18万円(1ペソ2.2円で算出)ですが、別途社宅や社有車(運転手付き)は支給されます。年金・健康保険についても会社負担なので、物価の低いフィリピンでは十分な待遇です。

長期間働くことを前提としている求人が多い

またプラント業界に海外勤務する場合、長期間働くことを前提としている求人がほとんどです。たとえ1年毎の契約更新であっても、長期に渡り就労してもらうことが期待されています。

例えば以下の求人では永住希望者を歓迎しています。

勤務地は台湾であり、水処理プラントの設計または工事に従事します。ただ必要条件として「2年以上の職務経験」「台湾で永住を考えている」ことなどが提示されています。

したがって「お試しで海外で働いてみたい」という人には向いていません。「台湾が好きなので、ずっと台湾で暮らしたい」という方を求めています。

もちろん、海外のプラント求人で出される案件が永住を前提としているものばかりではありません。ただ、少なくとも2~3年は働く覚悟が必要です。プラント関係はプロジェクトが短期間で終わる案件は少ないため、どうしても長期で働くことが求められるようになるのです。

豊富な経験があれば、高待遇や高給が提示される

プラント勤務の求人の中には、国内で働くよりも高待遇のものが存在します。例えば以下のような求人であれば、これまでの経験を活かしてキャリアアップ・年収アップが目指せます。

勤務地はアブダビ首長国のムバラス島です。アブダビの石油プラントメンテナンスエンジニア(電気)を募集しています。主な業務は電気(発電機、電動機、変電所等)の設備担当です。

具体的にはアブダビ沖にあるムバラス島の製油所で、現地ローカルスタッフを率いて設備管理・保全業務を担当します。経験や専門知識、リーダーシップ・マネジメント力が求められるポジションです。

応募必須条件は「電気(発電機、電動機、変電所等)の設備保全経験5年以上(業界不問)」「英語力(日常会話レベル)」のみです。業界不問と記載があるので、石油プラント以外の工場で設備保全経験が5年以上あれば条件を満たします。

月給は100万円であるため、年収は1200万円以上と高額の提示です。また通勤手当・家族手当・住居手当等も支給されます。さらに年に2回最大30日間の休暇を取得できるため、日本に一時帰国することも可能です。

また、ステップアップも明確で「教育プログラム」に基づき、若手から長年に渡り活躍出来るキャリア形成が示されています。このような高給・高待遇の求人があるのも海外勤務のプラント業界ならではです。

プラントの海外転職では、どの分野の求人が多いのか

そうしたとき、海外のプラントで求人が多いのはどの分野なのか紹介していきます。海外ではインフラ系や化学系・環境系プラントの求人が多くみられます。

インフラ系プラント

インフラ整備が急速に進むアジアなどの新興国を中心に開発が進んでいるため、インフラ系プラントは求人が多い傾向にあります。大規模なプロジェクトになると予算も数百億円以上にのぼります。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地はインドあるいはフィリピンです。日系メーカーや商社の鉄道車両と併せて自社の自動制御装置や鉄道信号など商材をパッケージ型にし、新興国へ販売して技術サポートまで行います。

ここでインフラ開発プロジェクトのマネージャーを募集しています。

応募条件は「インフラ系業界での営業経験」「海外営業経験」あるいは「海外でのプラント等現地工事に従事した経験」のいずれかを満たし、ビジネスレベルの英語力があることです。

学歴については短大卒や専門学校卒でも応募でき、学歴不問といえます。一方で、年収は800~1000万円と高給です。その他、通勤手当・家族手当・独身寮などが用意されており充実した福利厚生があります。

前述した通り、インフラ系プラントの開発には莫大な予算がつぎ込まれるので高給・高待遇の求人が多いです。年収アップを期待してプラント業界の海外転職を考えているのであれば、インフラ系がおすすめです。

化学系プラント

化学系プラントは前述した石油プラントや以下のような火力発電プラントが該当します。

ここでは、火力発電プラントのエンジニアを募集しています。日本国内では火力発電所を新たに建設するケースは少ないですが、アジアの新興国では積極的に新設されています。

勤務地はベトナムです。「火力発電所建設工事に伴う客先のコンサルタント業務」「設計承認から現場での工事監理業務」に従事します。

応募条件は「火力発電プラントのエンジニアリング業務経験7年以上」「大学卒以上」「TOEIC650点位以上」です。TOEIC650点は日常会話レベルの英語力といえます。

化学系プラントの場合、その分野での専門知識や経験を求められることが多くなります。そのためこれまでの経験を活かしてハイスキルのポジションに転職することが可能です。

化学系プラントではキャリアアップを図った海外転職が容易です。

環境系プラント

他には環境意識への高まりから、環境系プラントの求人も増えています。前述した水処理プラントの求人も環境系に分類されます。また以下は、「建物内部のエネルギー効率を改善するシステム構築」に注力している企業の求人です。

勤務地はベトナムです。施工管理・技術指導に従事します。応募条件は「計装もしくは電気分野における施工管理経験」「ビジネスレベルの英語力」があることです。

環境への配慮から、各国で大気質や水質などの環境基準が設けられています。どのような工場や建物であってもこのような基準を満たす必要があります。そのため環境系プラントの場合、幅広い知識のある人を求める傾向にあります。

このような求人の場合、土木・建築・機械・電気など施工管理技士の他に、公害防止管理者、作業環境測定士、環境計量士、といった化学物質に対する幅広い見識を持っていると転職において有利です。

このようにインフラ系・化学系・環境系の求人が多く見られます。必ずしも同じ分野での経験が求められるわけではないので、海外転職を機に新たな分野のプラント業務に挑戦してみるのもおすすめです。

まとめ

海外転職は職種によってハードルの高さが大きく異なります。プラント業界の場合は求人数が多く、ある程度の経験があればあなたの希望を満たす求人を探すことは難しくありません。

しかも「海外で働きたい」という夢が叶うだけでなく、同時にキャリアアップ・年収アップが実現できます。また、「学歴不問・高い語学力は問われない」「長期間働くことを前提としている」というのも、プラント業界の求人ならではの特徴です。

また、プラント業界はここで紹介したインフラ系・化学系・環境系以外にも様々な分野があり、必ずしも同じ分野での経験が求められるわけではありません。そこで、新たな分野に挑戦しキャリアアップしてみるのも良いです。

まずは転職サイトを活用して多くの求人に目を通し、どのような選択肢があるのかを洗い出してみましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。