日本人の教師の需要は世界中にあります。「海外で日本の教育を受けたい日本人の子ども達」「日本語を学びたい外国人」がいるため、アジア諸国はもちろん、アメリカ・ヨーロッパなどでも求人を見つけられます。
そのため、あなたが「海外で教師として働くことはできないのか」と考えるのであれば、チャンスはたくさんあります。就職先の選択肢が幅広いので「教員免許がない」「英語が話せない」というのは、大きな支障にはなりません。
ここでは、あなたが海外転職で就職先として挙げられる求人を紹介し、応募条件や仕事内容について紹介していきます。
もくじ
日本の教員免許は海外で使えるのか?免許がない場合は?
日本の教員免許を持っている人が海外転職を考えたときに、「日本の教員免許が使えるのか」「現地で免許の書き換えが必要なのでは?」など不安や疑問を持つことでしょう。
例えば医療従事者など専門資格のいる職種の場合、現地で資格を取り直したり、免許を書き換えたりして就職するのが一般的です。ただ日本語・日本の教育を海外で実施する場合に関しては、現地の免許は基本的に不要です。
現地の教員免許を取得し直したところで、日本語や日本の教育内容が変わることがないからです。もちろん海外で「現地の子ども達(日本人以外)に日本語以外の科目(数学など)を教えたい」といった場合は、現地の教員免許を取得しなければなりません。
例えば以下の求人では、内定と同時に「日本の教員免許」を現地の免許に市が書き換えてくれます。
募集があるのはアメリカ・シカゴ市の公立学校です。ここでアメリカ人の子ども達に日本語を教えたり、日本の文化を伝えたりする「グローバル教育」に携わります。応募資格は「日本の小学校あるいは中学校の教員免許を持っている」「1~2年の職務経験」です。
内定すれば、シカゴ市が「日本の教員免許」を現地で使える「国際客員免許」に書き換えてくれます。その際に研修や教員試験を受ける必要はありません。
このように日本の教員免許があれば、アメリカで公立学校の日本語教師として転職が可能になります。
日本の教員免許が無い場合は?
日本の教員免許が無くても、海外で日本語教師や学習塾の先生として働くことは可能です。日本の教員免許が必要かどうかは赴任国が決めるわけではなく、雇用側の裁量に任されているからです。
ただ海外にある日本人学校の場合、「日本の学校と同等の教育が受けられる」と文部科学省から認定を受けています。そのため教壇に立つ教師は日本の教員免許が必須です。
一方で、週末や放課後などに行われる日本人学校が運営している「補習校(現地の学校に通っている子どもに対して部分的に行われる日本の授業)」については日本の教員免許を持っていない先生が教えることが認められています。
つまり補習校であれば日本人学校で子ども達に国語や算数を教えることができるのです。実際に私の友人はオランダにある日本人学校の補習校で「社会」を日本人の子ども達に教え、現地の大学ではオランダ人に日本語を教えています。
その友人は教員免許はもちろん、塾などの教育機関で働いた経験すらなく日本でずっとサラリーマンをしていました。友人いわく、補習校は週末に授業を実施することが多いので、教員不足になりやすいそうです。
ただし「非常勤講師」という扱いになるので、それだけで生活していくのは難しいでしょう。学習塾や大学講師などを掛け持ちする必要があります。
いずれにしても日本の教員免許が無くても、現地の大学や日本人学校の補習校で教師として活躍できます。例えば以下は、アメリカにある日本人補習校にて、教員免許や就労ビザを持っていなくても応募できる求人です。
募集しているのは米国連邦政府認可の私立教育法人が運営する日本人向け補習校です。ハワイ州ホノルル市に勤務の場合は、平日と土曜の補習校を担当します。生徒は小学生から大学生までと幅広いです。
日本の教員免許は不要であり、社会人経験が3年以上あるいは教育機関(塾や予備校含む)での指導経験が1年以上あれば応募できます。
ただ、「教員免許が不要なら誰でも海外で日本人を対象とした先生になれる」というわけではありません。特にアメリカなどの英語圏で現地採用だと、先生としての適性や能力、高い英語力がなければ採用してもらうことは難しいです。
教師として海外転職する場合の就職先候補
それでは就職先を実際に探す場合、どのような選択肢があるのでしょうか。まずは、あなたが誰に教えたいのかで就職先候補が大きく変わってきます。
主に以下の4つがあります。
- 教員免許が必須の日本人学校で常勤の教師
- 教員免許は不要だが、受験対策指導をする塾講師
- 子ども中心の現地小学校・中学・高校・大学の日本語教師
- 幅広い年齢層に教える語学学校の日本語教師
ここでは「日本人」と「外国人」に分けて説明していきます。
日本人学校や学習塾で英語力不要にて日本人に教える
あなたが「海外で暮らす日本人に教えたい」という場合は、日本人学校や学習塾を就職先として探すと良いです。日本人学校の場合は基本的には日本人の子どもが対象であり、学習塾の場合は教える内容によって子どもから大人まで対象は様々です。
また日本人に教える場合、現地の言葉や英語力が求められないことが多いのが大きなメリットと言えるでしょう。一方で、担当科目が多岐に渡る可能性があります。雇用側としては、海外で日本人の先生を複数人雇うのはコストがかかるので、一人の人材になるべく幅広く担当してもらいたいからです。
教員免許が必須の日本人学校で常勤の教師
例えば、日本人学校であれば以下のような求人を見つけられます。日本人学校で常勤のポジションとなるので「教員免許は必須」となります。
勤務先はドイツ・ハンブルクにある日本人学校です。日本人が安定して2000人近く暮らすハンブルクで小学生・中学生の子ども達に日本と同等の教育を提供します。
応募条件は「小学校あるいは中学校の教員免許を持っている」ことです。両方の免許を保持している場合は小学校でも中学校でも授業が担当できるので選考において有利になります。当然、担当科目は非常に幅広くなります。
また、学級担任を任されることもあるので、担任の経験があるとそれもプラスに働きます。ただ、このような日本人学校で常勤教員の求人は常に豊富にあるわけではありません。欠員が出たときに募集されるので、見つけたらすぐに応募することをおすすめします。
教員免許は不要だが受験対策指導をする塾講師
一方で、「教員免許がない」という場合は学習塾での求人を探してみるとよいです。求人数が多く、世界中で求人を見つけることができます。日本人が多く暮らしている国には帰国子女のための学習塾が存在するからです。
「日本に帰国したときに授業に遅れないように」「帰国後の受験対策に」といった目的で通っている子どもが大半です。一方で、「現地で働く日本人向けに英語や現地の言葉を教える塾」もあります。
学習塾の場合は基本教科に加えて、受験勉強を指導できる講師が求められます。また、学習塾の大きな特徴として「出勤時刻が遅い」「休日出勤がある」ことが挙げられます。例えば、以下のような求人がこれに該当します。
勤務先はオーストラリア・シドニーにある帰国子女専門の学習塾であり、小学生・中学生・高校生を対象に国語・算数・理科・社会・英語の5教科を教えます。教員免許は不要ですが、難関校の受験対策をメインに分かりやすく教えていかなければなりません。そのため「学習塾での集団授業の経験が3年以上ある人」が対象となります。
勤務時間は13時から22時、土曜日は9時から18時であり、日曜日と平日1日が休みになります。そのため、日本での生活スタイルと大きく変わらず、「海外でのんびり働きたい」という目的で海外転職を考えている場合は希望には沿わないでしょう。
海外の大学や語学学校で日本語を外国人に教える
続いて、「海外で日本語を外国人に教えたい」という場合の選択肢もあります。日本語の先生として働く場合、「子どもや若年層を中心に教える現地の中学・高校・大学の日本語教師」「幅広い年齢層に教える語学学校の日本語教師」の大きく2つに分けられます。
いずれも外国人に対しての指導となるので、英語あるいは現地の言語でコミュニケーションが十分にとれることが必須条件となります。もちろん、授業は「日本語オンリー」で実施するところが多いですが、質問などは英語や現地の言葉で投げかけられます。複雑な文法を理解するのに、日本語のみの説明では限界があるからです。
また、教員免許は不要ですが日本語教師の関連資格を求められることが多いです。
子ども中心の現地小学校・中学・高校・大学の日本語教師
日本では第二言語は英語を学び、大学に入ってから第三言語として中国語やドイツ語など英語以外の言語を選択するのが一般的です。しかし、海外では中学から第三言語を選択するのは普通です。そのため第三言語として、日本語を選択している子ども達がいます。
また母国語が英語圏の国(アメリカやオーストラリア)などでは小学校で教える第二言語として日本語が取り入れられているケースが多く見られます。実際に私のオーストラリアの友人も、子どもが小学校で第二言語として日本語を学んでいると話していました。
このような背景から日本語教師は海外の小学校から大学まで幅広く活躍できます。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務先はマーシャル諸島共和国(太平洋にある南の島)にある私立のインターナショナルスクールです。マーシャル諸島の公用語は英語ですが、日系人が多く暮らすため、この学校では外国語の必修科目に日本語が設定されています。
現地で暮らす中学生・高校生を対象に1日3~4コマの日本語の授業を担当します。勤務時間は平日7:45~15:45までなので日本に比べるとのんびりと働くことが可能です。
応募必須条件は「日本語教師養成講座420時間修了」あるいは「日本語教育能力検定試験に合格」していることです。これらの関連資格がある場合は未経験でも応募可能となっています。また、日本語教師の経験が2年以上ある場合、関連資格は問われません。
なお、この求人の場合だと英語力は英検2級レベルが必要です。生徒や校長先生とコミュニケーションが取れる程度の英語力を求められます。
一方、中学高校以外にも海外にある大学で日本語講師として活躍することが可能です。アジア諸国をはじめ、ロシア・ニュージーランド・ヨーロッパなどでも求人を見つけられます。いずれも日本語教師の関連資格や経験、語学力は必要です。
幅広い年齢層に教える語学学校の日本語教師
一方で語学学校の場合、生徒の年齢層が非常に幅広くなります。子どもから年配者まで様々な目的を持った生徒が集まります。例えば、「ビジネスで日本語を使えるようになりたい」「日本に旅行に行きたい」「日本の漫画が好きだから日本語に興味を持った」「日本で働きたい」などです。
ちなみに、私の友人もオランダにある語学学校で外国人に日本語を教えるアルバイトをしていますが、「レベルの違う生徒に分かりやすく授業をする」「生徒のモチベーションを維持する」ことが難しいと話していました。特に脱落者をできる限り少なくするところに教師としての腕がかかっているそうです。
こうした求人先としては、日本とビジネス上のつながりが多い中国や台湾・韓国・ベトナムをはじめ、欧米諸国でも求人があります。例えば、以下はカナダにある語学学校の募集要項です。
ここでは子どものクラス、大人のクラスを担当します。生徒の国籍はバラバラであり、カナダだけではなくアメリカ・中国・韓国・インドと非常にインターナショナルな環境です。
カナダのように移民の多い国の語学学校に勤務する場合、生徒が多国籍になる傾向が高いため、あなたの日本語講師としてのスキルを磨くには良い環境といえます。
応募資格は「英語で日本語の説明ができる」「直近3年以内に1年以上の日本語教授経験がある」ことです。前述した通り、外国人に教える場合は英語力が必須であり、特にカナダは英語圏なので高い英語力が求められます。
さらに、「日本語教師養成講座420時間修了」「日本語教育能力検定試験に合格」「大学あるいは大学院で日本語教育を専攻」のいずれかを満たしている必要があります。
語学学校の場合は受験用の日本語ではなく、実用的な日本語を身につけることが目的となります。そのため楽しく授業を行えることが重要視されます。
「教師として教えるだけではなく英語を学びたい」という方の中で、「日本語講師としてグローバルに活躍したい」という人は、このような求人を探すと良いです。
まとめ
日本人の教師が海外転職を考える場合、まずは教える対象が「日本人」か「外国人」かによって就職先が大きく異なります。前者の場合は日本人学校・補習校・学習塾などがあります。後者の場合、現地の小中高・大学あるいは語学学校になります。応募条件もそれぞれ異なります。
日本人学校に常勤する場合は基本的に日本語のみで業務を遂行できますが教員免許が必須です。ただ、求人は少ないので見つけた時点ですぐに応募しましょう。
一方で補習校の場合、教員免許は不要で求人も見つけやすいですが、それだけで生計を立てるのは難しくなります。同じく教員免許不要の塾講師は、幅広い教科の受験指導ができなければなりません。
続いて外国人に日本語を教える場合、多国籍の生徒を相手に日本の文化などについても伝えられるので国際教育に携われます。ただし高い語学力が必須です。
いずれのポジションも世界中で求人を見つけることが可能です。まずはあなたの希望する職種を絞り、海外転職エージェントを使って探してみましょう。たとえ、あなたが希望する就職先が見つからなかったとしても、欠員が出れば随時応募がかかるので諦めずに根気強く待つ必要があります。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。