「未経験から海外転職は難しいだろう」と海外転職を諦めている人は多いのではないでしょうか。実は正しいやり方で転職活動を進めれば、「未経験」「スキルなし」でも全く問題なく海外転職できます。

日本であれば未経験からの挑戦が難しいような職種であっても、海外だとむしろ求人が見つかりやすいというメリットがあります。一方で、未経験の海外求人は「業務で日本語しか使わない」「年齢制限がある」といったデメリットも存在します。

ここでは、未経験からの海外転職に不安を抱える人のために、「未経験でも挑戦しやすい職種」「デメリットを避け、メリットを活かした就職活動の方法」について解説していきます。

未経験からの海外転職は難しいのか

まずは、未経験からの海外転職はどのくらいハードルが高いのかについて解説します。これについては、「希望する職種」「働きたい国」「英語ができるかどうか」によります。

まず希望職種についてです。例えば経理職の場合、未経験OKな海外求人はまず見つからないでしょう。海外支社では即戦力となってもらえる日本人を探しており、未経験者に経理の仕事をイチから教える余裕はありません。

また、経理経験のある日本人は国内にいくらでもいるので人材が集まりやすいのです。そのため、求人票には「3年以上の経験」といった必須条件の記載があり、ある程度以上の専門的な経験が求められます。

一方で、「日本国内で人材が不足している業界・職種」であれば未経験からでも応募できる求人が多く存在します。例えばIT業界がこれに該当します。IT市場は拡大しているもののIT人材の供給が間に合っていません。

そのため以下のような求人があります。

勤務先はベトナムにある日系IT企業であり、「ブリッジプロジェクトマネージャー」を募集しています。ブリッジとは「橋渡し役」という意味があり、日本本社やクライアントと現地メンバーの間に入ってIT商品のプロジェクトマネジメントを行うポジションです。

求人票には「IT未経験者歓迎」との記載があり、「勤続での社会人経験が3年以上」「法人対応経験」を満たせば応募条件がクリアできます。

また、様々な国籍のスタッフが働いており、国際的な環境に身を置けます。語学不問なので英語に自信がなくても問題ありません。このように、人材が不足している業界は未経験OKな求人が見つかりやすいです。

さらに、希望の職種が「特別なスキルや資格を必要とするか」という点でもハードルが大きく変わってきます。例えば営業職の場合、基本的に必須となる資格は不要であり、入社後に自社商品の知識やセールスポイントを学べば営業活動が可能です。

そのため、以下のような求人が見つけられます。

インドネシア・ジャカルタにて日系企業向けに業務フロー上の課題点をシステムで補う「提案営業担当者」を募集しています。

応募条件は「何らかの折衝業務経験」「業務上コミュニケーションに困らないレベルの英語力」があることです。特別なスキルや資格は必要なく、未経験でも挑戦できる求人です。

この他、カスタマーサービスについても特別なスキルやバックグラウンドが問われないことが多いです。

このように未経験からの海外転職が難しいかどうかは、あなたの希望する職種が「人材の供給が間に合っている業界か」「特別なスキル・資格が必要か」によって大きく変わってきます。

人材不足傾向にあるIT業界、または基本的に特別なスキルが求められない営業職やカスタマーサポート職などは未経験からでも海外求人を見つけやすいです。

アジアは求人が豊富にあるが欧米だと難しい

なお未経験職種を検討するとき、働きたい国によっても転職の難易度が変わってきます。ここまで紹介した求人を見ても分かるように、未経験求人が豊富に見つかるのはアジア圏です。

基本的にアメリカやヨーロッパの求人では特別なスキルや豊富な経験が求められます。例えば以下の求人をみてみましょう。

アメリカ・ハワイにて財務会計責任者の求人があります。グループ事業の会計・監査全般を担当します。

応募必須条件は「公認会計士あるいはUS CPA(米国公認会計士)の資格」「実務経験3年以上」です。専門資格に加え、実務経験が求められます。

特にアメリカ・カナダ・オーストラリア・イギリスといった英語圏では就労ビザの取得が非常に難しいため、現地で人材を集められない職種(専門スキルが必要な職種)のみ、日本に対して募集をかけるのです。そのため、欧米に絞ると未経験から挑戦できる求人はあまり見つかりません。

英語力があれば未経験でも専門職に就くチャンスがある

このように未経験から応募できる職種は限られてきますが、あなたに英語力があれば職種の選択肢は広がります。具体的には、エンジニアや通訳・翻訳といった英語力が要求される専門職を目指すことが可能です。

例えば日本で通訳や翻訳といった専門職は、ほとんどの求人で高い英語力と豊富な経験が求められます。人気のある職種なため、ハイスキルな条件に絞っても人材が確保できるのです。

そのため未経験からの挑戦は難しく、ボランティアなどで経験を積んでチャンスを掴んでいくしかありません。

一方で、海外転職の場合は、ビジネスレベル以上の英語力があれば、未経験から挑戦できる通訳や翻訳業の求人は容易に見つかります。海外にある日系企業などで通訳の需要が一定数あり、以下の求人のように「未経験可」でも応募できるのです。

大手グループ企業のフィリピン支社にて通訳兼アシスタント業務の募集をしています。副社長と共に会議や打ち合わせに参加し、日本語・英語の通訳を行います。そのため「ビジネスレベル以上の英語力」が必須となります。その他、資料作成や副社長のスケジュール管理などアシスタント業務も兼任します。

このように、ある程度の英語力があれば未経験から通訳・翻訳といった専門性の高い仕事に就くことができます。

海外求人ならでは!未経験から挑戦できるメリット

それでは、海外転職において未経験から挑戦するメリットは何があるのでしょうか。未経験で新しい仕事に就くには不安が多いと思いますが、海外転職ならではの大きなメリットが2つあります。それは、以下の通りです。

  • 日本では未経験で応募できない職種の求人がある
  • ゼロからスキルを身につけられる

それぞれ詳しくみていきましょう。

日本では未経験から挑戦できない海外求人を見つけられる

海外求人の中には、日本国内だと未経験から応募できないような求人があります。例えば、医療事務がこれに該当します。

日本では医療事務は「ノルマが無い」「家庭と仕事を両立しやすい」「医療知識が身につく」といった理由から女性を中心に高い人気があります。そのため、多くの求人で関連資格や経験が求められることが多く、未経験・スキルゼロから挑戦するのは難しい職種です。

一方で、海外求人であれば医療事務に関する資格無し・未経験からでも応募できる求人があります。

勤務先はカンボジア・プノンペンにある日系病院です。ここで医療事務職を募集しています。日本人対応窓口、保険会社対応、事務、マーケティング、営業サポートに従事します。

応募資格は「日常英会話力」「基礎PCスキル」のみです。求人票には「業種経験不問」の記載があり、医療事務経験・医療知識・関連資格が無くても応募可能です。英語力も日常会話レベルなので難易度は高くありません。

このように日本では転職が難しい職種であっても、海外求人なら未経験から目指せるポジションがあります。

ゼロから世界で通用するスキルを身につけられる

また、未経験から就ける仕事は多くの場合で教育体制がきちんと整っており、世界で通用するスキルを身につけることも可能です。中には、高度な専門知識が必要な職種であっても未経験から応募できる海外求人が存在します。

例えば以下のようにプログラマーの求人を見つけることが可能です。

勤務地はIT大国と言われるインドです。IT企業にて未経験スタートのプログラマーを募集しています。

入社後プログラマー養成コースを受講して、プログラマーを目指します。さらに研修期間にプログラム開発に従事し、その後プロジェクトに参加していきます。最終的には顧客への提案からチームのマネジメントまでできる総合力の高いシステムエンジニアを目指します。

応募資格は「日常会話程度の英語力」のみです。この求人では、あえて「未経験者」を募集しています。前述した通りIT業界は人材不足なため、優秀な人材を日本から確保することが難しく、会社でゼロから一人前に育ててくれるのです。

このようなポジションに就けば、未経験から世界で通用するスキルを身につけた市場価値の高いIT技術者を未経験から目指すことが可能であり、長期的にキャリアを築いていけます。

海外転職で未経験OKな求人を選ぶデメリット

一方で、未経験者が応募できる海外求人にはデメリットも存在します。これについては、「年齢制限がある」「日本語しか使わない」の2つが挙げられます。

まず年齢制限についてです。未経験OKな海外求人の多くが年齢制限を設けています。企業としては未経験者を採用した場合、一人前に育てる必要があるので、投資しなければなりません。そうしたとき吸収が早く、できるだけ長く勤めてくれる若い人材を採用したいと考えるのです。

そのため、以下のように具体的な年齢を定めて求人募集をかけます。

例えばこの求人の場合は「30歳程度までを想定中」との記載があります。このような記載があると30代以降の人は応募しづらくなるでしょう。ちなみにタイ・ラヨーンでの「自動車部品の生産コーディネーター(未経験応募可)」のポジションです。

一方で具体的な年齢制限を設けずに、遠回しに20代・30代を歓迎している求人もあります。その他、「長く勤めてくれる」あるいは「第二新卒歓迎」という記載にも「未経験の若い人材を採用したい」という意図が伺えます。例えば以下のような求人がこれに該当します。

求人を募集しているのは、日本でネットサポート事業を展開する上場企業のベトナム支社です。語学・経験不問のネット管理者のポジションを募集しています。応募資格は特にありませんが、「長く勤められる方」との記載があります。

若くて長く勤めてくれる可能性の高い20代前半が選考において有利となります。

このように、未経験から応募できる海外求人の多くが年齢制限を設けていて、できるだけ若い人材を採用する傾向にあります。未経験の場合、会社が投資してイチから教育しないといけないので、当然とも言えます。

そのため、20代前半など若い人が未経験から海外転職を目指す場合は問題ありませんが、30代後半になってくると年齢のため選考において不利になるというデメリットが生じます。

日本語しか使わないポジションが多い

次に、スキルなしでも可能な求人のもう一つのデメリットとして「業務上、日本語しか使用しない」という点が挙げられます。英語が話せない人にとっては魅力的な職場ですが、自ら勉強し続けなければ語学力を磨くことができず、キャリアを築くことが難しくなってしまいます。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務先はマレーシアにあるビジネスアウトソーシング企業です。ここで大手通販企業の出品者サポート・問い合わせ対応に従事します。

語学・経験不問であり、業務は日本人相手なので日本語しか使用しません。誰でも挑戦しやすい職種である一方、英語を含めたスキルを身につけてキャリアアップを図ることは難しくなります。

もちろん自ら語学スクールなどに通い、積極的に現地の人と交流すれば英語力を向上させることは可能です。ただし、高いモチベーションが必要です。

ただきちんと探せば、英語を学べる職場環境が整った企業も存在します。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務先は日系大手ネット広告代理店のフィリピン法人です。PhotoshopやIllustratorを使い、ネット用の広告バナーを作成する「広告クリエイティブ作成担当」のポジションにおいて、未経験者からの応募を歓迎しています。

応募資格は「日常会話レベル以上の英語力」「基本的なPC操作ができること」のみです。広告のバナーを作成するポジションですが専門スキルは求められません。入社後にネット広告の知識やスキルを身につけられます。

さらに、求人票には「英語レッスン1日2時間まで(就業日)」との記載があります。出勤日に英語のレッスンを最大2時間まで受けられるのです。働きながら語学学校などに通うのは大変ですが、このように社内で英語のレッスンが2時間も受けられると英語力が大幅にアップするでしょう。

海外転職サイトにおいて、福利厚生に「語学サポート」が含まれている求人は決して珍しくありません。現時点で英語力に自信が無くても、未経験から挑戦できる海外求人は存在します。求人を探す際に、英語力を伸ばせる環境にあるかどうかも併せてチェックするといいです。

まとめ

スキルなし・未経験職種であっても海外転職は可能です。ただ、職種によってはハードルが上がります。ポイントは、「人材が不足している業種・業界(IT業界など)」「特殊な資格・スキルが不要な職種(営業職やカスタマーサービス・一般事務職など)」であり、さらには「アジア圏」を狙いましょう。

または、ある程度の英語力があなたにあれば通訳・翻訳といった専門職に就くことも可能です。

その他、日本では医療事務などスキルゼロ・未経験からの応募が難しい職種であっても、海外転職なら求人を見つけられます。

一方で、年齢制限や日本語しか使用しない求人には注意が必要です。特に後者の場合、「海外で働いているのに英語が習得できない」という事態に陥りかねません。可能であれば、業務上で英語を使用するポジションや語学サポートの就いた求人を選ぶといいです。そうすれば、その後のキャリアアップにも有利となります。

スキルゼロから未経験職種への海外転職を考えているのであれば、年齢制限をクリアするためにも、1日でも早く行動に移しましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。