商品やサービスを提供している企業であれば、マーケティングは必須です。そのため多くの企業でマーケティングのポジションがあり、求人も豊富にあります。ただ、日本では多くの場合で即戦力となる経験者を求めています。

未経験からマーケティングのポジションに就くのは難しく、新卒で入社してスキルを身につけていくのが一般的です。

一方で海外転職では未経験からでもマーケティング職を狙えます。ただ、英語力が求められる求人は多いです。海外求人において経験を重視しない理由の一つとして、「日本のマーケティング方法が必ずしも通用するわけではない」ことが挙げられます。

それでは海外のマーケティング職では何が求められ、どのような仕事を担当するのでしょうか。詳しくみていきましょう。

日本と海外マーケティングの違い

マーケティングは「狙ったターゲットに対して自社商品やサービスを気に入ってもらい、購入や利用につながるアプローチをしていくこと」であり、この目的は世界共通です。ただ、海外ではマーケティングの方法や根本的な考え方が異なります。

例えば、海外ではマーケティングは分析よりもスピードを重視します。つまり、過程より結果を重んじるのです。

これは実際に私が日本と海外の両方でマーケティングに従事した経験からもいえることです。私は日本の大企業で商品企画部に所属して、マーケティングと企画を担当していました。分析に時間をかけ、戦略を十分に練った上でプランを実行します。

一方で海外の国際機関でマーケティングを担当したときは、何よりスピード重視でした。分析にはあまり時間をかけず、「とりあえずやってみてダメなら軌道修正していく」という方針で最初は驚きました。ただ、デジタルマーケティングにおいてはこちらのやり方の方が向いていると感じました。

このように日本と海外ではマーケティングのやり方が異なります。まずは行動してみるのが海外なのです。

現地の文化・風習を理解しなければマーケティングは難しい

また、言語の違いや文化・風習が異なる点も日本のマーケティングが通用しない大きな要因です。言語の違いでは、キャッチコピーを作成しても翻訳が難しかったり、意図しているニュアンスが伝わらなかったりといったミスマッチが生じます。

また、現地の風習を理解することも重要です。例えばマーケティングの一つとして商品のプロモーションを行うとき、商品を値引きします。このとき、日本では「半額」「50%オフ」「5割引き」といった手法を用いるのが一般的です。

一方で、欧米だと「1+1」「Buy 1 get 1 free」といった打ち出し方をします。これはどちらも「商品を1つ買えば、もう一つは無料」という意味です。実質半額なのですが、「おまけでもらえた」という感覚です。実際にスーパーでは以下の写真のような広告をよく見かけます。

また30%オフよりも、「2+1」「Buy 2 get 1 free」というプロモーション方法が使われます。この場合は「ある商品2つ買えば1つおまけ」ということで商品を3つ手に入れることになります。

なぜこのような打ち出し方をするのかというと、「値崩れ防止」「在庫削減」「計算が苦手」といった理由が挙げられます。

まず値崩れ防止について、割引き額を提示すると商品価格が下落したイメージを与えてしまいます。しかし、「1つおまけ」というアプローチだと定価を崩さないでお得感を打ち出せるのです。このようにして価格維持ができます。

続いて在庫削減という目的があります。小売店は在庫をできるだけ持ちたくないので1個単位での割引ではなく、2~3個単位で割引を提供するのです。

それだけでなく、国民の計算力も影響しています。日本人で義務教育を受けていれば「50%オフ」「30%オフ」をすべての人が理解できます。しかし海外では先進国・発展途上国関係なく計算が得意でない人たちがたくさんいます。

実際に私が住んでいるオランダでは、小学校の授業で電卓を使うことが許されています。そのため、簡単な足し算・引き算ですら暗算できない人がたくさんいます。

私がオランダ人の友人達と一緒に外食したとき、お会計の金額を割り勘するのに暗算で計算したところ、「天才なのか?」と真顔で聞かれました。決して難しい計算ではなく、日本人なら誰でも暗算できるレベルです。それでも彼らは電卓無しには計算できないことに驚きました。

そのため日本のように「30%オフ」と提示しても具体的な金額が伝わらない可能性があります。一方で、「1+1」や「2+1」は非常にシンプルで分かりやすいのです。

このように海外ではマーケティングのやり方、現地の文化・風習といった背景の違いから、日本と同じようなマーケティングが通用しない可能性があります。その国に合ったマーケティング方法でアプローチしなければ、成果を上げることはできません。

未経験でも海外でマーケティング職を目指せる

そうしたとき海外転職では、日本での経験が必ずしも重要視されず、未経験者でもマーケティング職に就くチャンスがあるのです。

そのため、日本では見つけにくいような未経験者OKなマーケティング求人が多く存在します。例えば以下のような求人がこれに該当します。

求人を募集しているのは中国市場に特化したデジタルマーケティングの会社です。クライアントにリサーチとデータ分析をして「売れる仕組み」を提案します。ここでSNSやWebサイトなどを使ったプロモーションの立案・コンテンツ立案・企画書制作を担当するデジタルマーケティング(マーケター)を募集しています。

語学については入社後に学ぶ姿勢があれば不問です。さらに社会人経験が2年以上あればマーケティングの経験は不要です。日本とは異なる中国市場について理解する必要があるため、経験は求められません。

英語力があれば経験は問われない

また、一定以上の英語力があれば経験を問わない求人も多いです。例えば以下のような求人がこれに該当します。

カンボジア・プノンペンでマーケティングスタッフを募集しています。「マーケティング戦略の策定」「パワーポイントを用いたプレゼンテーション」などに従事します。

応募必須条件には、マーケティング経験やスキルの記載は無く、「英語でのコミュニケーション能力」「資料作りにおいての注意深さ」「真面目な性格」が挙げられています。

このように日本とは異なり、海外求人ではある程度の英語力があればマーケティング未経験であってもマーケティング職に就くことができるのです。言い換えると、マーケティング経験よりも英語力を問われる求人が多いです。

海外マーケティングはどのような仕事内容なのか

それでは、マーケティングでは具体的にどのような仕事をすることになるのでしょうか。日本人を対象とした海外求人を基に、海外マーケティング職の仕事内容について見ていきましょう。

海外求人の特徴としてよく見られるのが「職種の兼任」です。採用する企業はポジション毎に日本人を雇うとコストがかかるので、なるべく複数の職種を兼任してもらいたいと考えます。

マーケティング職においても同じであり、例えば以下のように「マーケティングと営業職」を兼任する求人があります。

勤務先は商社のタイ・バンコク支社です。自動車関連部署においてマーケティング調査と営業を担当します。英語が話せれば年齢・経験は問われません。

また、マーケティングと営業に加え、さらに企画業務も担当するポジションもあります。

勤務先はフィリピンにあるオンラインゲーム開発企業です。ここでマーケティングのポジションを募集しています。

日本人をターゲットとしたオンラインゲームのマーケティングに従事します。マーケティングを基にオンラインゲームを企画し、さらに営業まで担当します。つまり、「マーケティング+企画+営業」業務を全て行います。

なお教育体制が整っているため、語学・経験不問で応募できます。

このように業務を兼任して経験を積めば、あなたはマルチスキルを身につけられるというメリットがあります。

マーケティングの一部であるマーチャンダイザーのポジション

他には、マーケティングを含めた商品開発から販売戦略まで一括して行う「マーチャンダイザー(MD)」という職種が存在します。特にアパレル業界・百貨店・スーパーなどで求人が豊富です。

海外求人でMDを担当する場合、多くの場合で日本と外国企業の間に入り、コミュニケーションを円滑に進めていくことになります。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

タイ・バンコクにある日系企業でMD補佐を募集しています。具体的な仕事内容としては、国内外の顧客と自社(日本本社とタイ人スタッフ)の間を取り持って、顧客からの要望をくみ取り、現場の企画担当(タイ人)に落とし込むまでの一連の流れを担当します。

顧客と自社のコミュニケーションのハブを担うため、高いコミュニケーション能力が必要となり、TOEIC800点程度の英語力が必要とされています。

ただ、マーケティング経験に関しては必ずしも必須ではなく、20代であれば不問です(30代は何かしらのマーケティング実務経験が求められます)。

このように海外転職サイトでは、マーケティングの仕事の中でも販売政策に特化したMDの求人もよく見られます。この場合は英語でのコミュニケーションが必須となることが多いです。

経験必須のマーケティング求人

ここまで紹介した求人は、未経験者でも応募できる求人案件が多かったため「日本でのマーケティング経験を活かせる求人はあるのか」と疑問に思っている方も多いでしょう。

もちろん、経験者を求めている求人も存在します。特に大手企業となると人材が集まってくるので経験者に限定している求人が多いです。ただ経験者募集の場合、高い英語力は求められません。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

日系大手食品メーカーのシンガポール支社でマーケティングポジションの募集です。シンガポールのマーケットに合わせて自社商品のブランド戦略を立て、プロモーションを行います。

応募必須条件は「マーケティング経験」と「日常会話レベルの英語力」です。「マーケティング経験者が日系企業に転職するなら英語は不要なのでは?」と考える人がいるかもしれませんが、前述した通り市場を理解するために最低限の英語力は必要になります。

また、キャッチコピーを考えそれを翻訳してもらうとしても、あなたが英語でニュアンスを説明する必要があります。

ただ、ビジネスレベルの英語力を問われるわけではありません。オンライン英会話など効率良く英語力を磨けるツールを駆使すれば、短期間に日常会話レベルの英語力を身につけることは可能です。

需要の高いWEBマーケティングに特化したポジション

一方でWEBマーケティングに特化したポジションについて、経験者に絞っている求人があります。WEBマーケティングはスピード勝負な部分があるので、海外で即戦力となる人材を採用したい企業が多いのです。

また、日本ではテレビメディア広告費よりもインターネット広告費の市場の方が大きく、WEBマーケティングの需要が高いです。これは日本に限った話ではなく海外においても同じです。そのため求人数自体豊富にあります。

WEBマーケティングの経験者募集では以下のような求人が見つかります。

勤務先はラオスにある日系投資会社です。ここで個人と法人を対象とした資金融資に関するWEBマーケティングを担当します。具体的にはSNSを活用してランディングページ(問い合わせページ)やリスティング広告(ネット広告)の運用・改善、問い合わせ対応、さらには広告戦略の企画・推進などに従事します。

SNSを活用するためFacebookマーケティングの経験が求められます。また、英語力は英検2級程度が応募必須条件です。

このように、日本で培ってきたマーケティング経験を活かせる海外求人も豊富にあります。ただ、最低限の英語力は必要になります。

まとめ

マーケティングは日本では花形職ともいわれ、非常に人気の高い職業です。そのため日本だと未経験からの転職は難しいですが、海外転職においては未経験からでも求人を見つけられます。

ただ、未経験者・経験者いずれにおいても最低限の英語力は必須となる求人が多いです。市場の理解やキャッチコピーの作成、現地スタッフとのコミュニケーションなどにおいて、英語が必要だからです。

また、豊富なマーケティング経験はプラスになりますが、日本でのやり方が必ずしも通用するわけではなく、その国に適したマーケティング方法を使ってアプローチしなければなりません。

海外転職サイトにおいてマーケティング関連の求人は豊富なので、一つ一つ求人を確認すれば、あなたの能力を活かせるポジションを見つけることは可能です。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。