ITエンジニアは日本だけでなく、世界的に不足しており需要のある職種です。そのため、日本人のITエンジニアが海外移住・海外就職を目指すのは容易です。
ただ求人は豊富にありますが、「未経験でも簡単に仕事が見つかる」わけではありません。一方で、その業種でベテランである必要はありません。実務経験さえあれば、日本でのキャリアが浅くても採用してもらえるチャンスは十分にあります。
また、海外転職において一番大きな壁となるのが「英語力」です。しかし、ITエンジニアの場合はいずれの職種においても英語力は必須ではありません。もちろん英語力が高いと大きなアドバンテージになりますが、英語が苦手だからといって海外転職を諦める必要はないのです。英語が上手く話せなくても海外で需要があります。
ここでは、ITエンジニアの中でも需要の高い「ネットワークエンジニア」「プログラマー」「システムエンジニア(SE)」の海外転職について、
- 英語力が求められない求人
- 駐在求人は多いのか
- どのような仕事内容・待遇なのか
- どのくらいの実務経験が必要か(未経験で応募できる求人は?)
- 高収入を目指すには?
といったポイントから解説していきます。
もくじ
ネットワークエンジニア・プログラマー・システムエンジニア(SE)は英語力不要
ITエンジニア向け海外求人の中には、ビジネスレベル以上の英語力が必須となる求人もありますが、語学力不問の求人も多く存在します。
なぜなら海外で働いたとしても多くの場合、「取引するクライアント企業は日系企業」だからです。具体的には大きく以下の2つに分かれます。
- 常駐先が日系企業
- 日本の企業から依頼を受けて海外で開発を進める
それぞれ見ていきましょう。
ネットワークエンジニアは常駐先が日系企業
例えば、ネットワークエンジニア(インフラエンジニア)に多いのが、クライアント企業に派遣されITインフラを整える業務です。海外にある日系企業の場合、やはり日本語でコミュニケーションがとれる「日本人のネットワークエンジニア」が欲しいのです。
そのため英語力は必須となりません。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務先は日系大手IT企業のインドネシア法人です。インドネシア・ジャカルタにて日系企業を中心に顧客事務所や工場のITインフラの設計・構築・保守運用を提供しています。
顧客企業のサーバー構築や業務アプリ導入支援・セキュリティ関連の対応などを担うため、オフィスから工場まで幅広いクライアント先に数カ月ほど派遣されます。そのため、ネットワーク・サーバー構築の実務経験が必須となります。
ただ、英語力に関しては「入社後習得すれば構わない」との記載があります。英語ができた方が仕事の幅が広がるため後々勉強することになりますが、入社時点での英語力は求められません。
また給与は月22.6~45.2万円との提示があり、物価が日本の5分の1~3分の1といわれるインドネシアでは余裕のある暮らしができます。
プログラマーやSEは日本企業から依頼を受け、指示出しをする
一方でプログラマーやSEの場合、海外の開発プロジェクトに日本人エンジニアとして参加します。そのため、クライアントである日系企業とのやり取りや現地スタッフへの指示を担当する「ブリッジエンジニア」のポジションが多いです。
例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地はベトナムです。ここで日本の企業からのIT開発に関して、現地スタッフをまとめるベトナム人のマネージャーと日本企業との間に入り、橋渡しの役割を担います。
実際にプログラムの開発はベトナム人が行いますが、いずれは技術検証や性能検証を担当する可能性があります。
応募必須条件としてJAVAやc#など、WEBアプリケーションのプログラミング経験が求められます。求人票には「語学不問」の記載があるので英語が話せなくても大丈夫です。
・語学学校費用のサポートも普通
さらに入社後、英語力を磨くために語学学校の費用をサポートしてくれる求人も珍しくありません。例えば以下のような求人です。
フィリピンにあるWEBアプリの開発会社でブリッジSEを募集しています。具体的な仕事としては「ローカルエンジニアのマネジメント」「プログラム内容のチェックと修正」「顧客(日本)との打ち合わせ」「各エンジニアへの指示」などを担当します。
応募必須条件は「ITエンジニア、ブリッジSE経験が3年以上」「クラウドサービスの構築・運用経験」「ハイブリッドアプリの開発経験」など様々な専門スキルが求められます。
また、この求人最大の特徴として、入社時点で英語が話せない場合は語学学校の費用を支給してくれる点が挙げられます。就業後や土日を利用して英語力を磨き、自身のスキルアップにつなげます。
海外で働きながら、キャリアと同時に英語力を身につけられるのです。英語を話せるITエンジニアを目指せば、世界的にあなたの市場価値が上がり、その後は仕事に困ることはまずないです。
ITエンジニア未経験から海外転職は目指せるのか?
それでは、未経験の場合はどうなのでしょうか。IT業界ではITエンジニアの不足が叫ばれているものの、未経験からいきなり転職するのは日本国内でも難しいのが現状です。
そうしたとき、「海外でも通用するグローバルなIT系資格を取得すればどうか?」と考える人がいるかもしれません。実務経験を資格でカバーすれば日本市場では未経験から採用してもらえるチャンスがあります。ただ、海外転職では厳しいでしょう。
特に海外では即戦力となる人材を求めます。ITエンジニアは一人前になるのに時間がかかる職種なので、海外ではイチから教育に時間をかけられないのです。
ただ、ITエンジニアの中でもインフラエンジニアであれば未経験でも応募できる海外求人があります。一方で、その場合は高い技術力を求められないポジションなので「スキルを身につけてキャリアアップにつなげる」というのは難しいです。
例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地はシンガポール・ベトナム・タイ・フィリピンのいずれかです。日系コンサルティング会社にて社内IT担当を募集しています。日本本社の方針に基づきITインフラを構築するのが主な業務であり、社内のネットワーク・セキュリティ対策整備・PCヘルプデスクを担います。
社内でパソコンのセッティングやパソコンが故障したときの対応、新しいシステムを導入したときの窓口が仕事の中身です。つまり、プロフェッショナルなITエンジニアの仕事というよりも「困ったときに頼れるITに詳しい社員」という位置づけです。
そのため応募必須条件は「パソコンに詳しい」「日常会話レベルの英語力」のみです。求人票には「開発経験や社内IT未経験者でも応募可」との記載があります。
未経験でも応募可能ですが、ITエンジニアとしての腕を磨くことは期待できません。
特殊な分野なら、未経験でインフラエンジニアの求人がある
なおインフラエンジニアの活躍の場は幅広く、あらゆる分野の企業がIT化に伴いインフラエンジニアを必要としています。そのため特殊な分野であれば、そもそも経験者がほとんどいないため、未経験あるいは経験の浅いインフラエンジニアであっても採用されるチャンスがあります。
例えば以下のような求人がこれに該当します。
募集があるのは、国際通信に必要な海底ケーブルの設計・構築・保守運用サービスを提供している企業です。ここでインフラエンジニアを募集しています。
主な業務内容は「ルート設計」「施工管理」「通信試験」「グローバル保守」など多岐に渡ります。
ただ、勤務地は海外ではなく東京であり、プロジェクト毎に海外に長期出張することになります。船の上で施工を管理する海上勤務もあります。
非常に特殊な分野なので、入社後に海底ケーブルや通信インフラの基礎を学び実務を通して少しずつスキルを身につけていきます。そのため、応募条件は特にありません。ただ、ITインフラの知識があると選考において有利になります。
このような企業に就職すれば、インフラエンジニア未経験あるいは浅い経験から応募でき、入社後に知識・技術を身につけていくことができます。
このようにインフラエンジニアの場合は未経験から応募できる求人が存在しますが、プログラマーやシステムエンジニアについては一定以上の実務経験が求められる海外求人が基本です。
ITエンジニアの駐在求人は少ない!海外移住者向け求人は豊富
なお海外転職といえば、「駐在員として海外で働きたい」と希望する人がいるかもしれません。ただ、ITエンジニアは職種上、駐在ポジションが少ないです。
実際、私はヨーロッパに住む数多くの駐在員と知り合う機会が多いですがITエンジニアとして赴任している駐在員に出会ったことはありません。ITエンジニアの仕事は基本的にリモートで遂行できるものが多いので、海外に駐在する必要性があまりないのです。
ただ、海外駐在の求人もゼロではありません。例えば以下のような求人がこれに該当します。
駐在先はベトナムです。社内開発のプロジェクトマネージャーとしてアプリ開発やIoT技術を活かした新規事業のプロジェクトに参加します。
そのため「ソフトウェア開発の実務経験1年以上」と「PMの実務経験2年以上」が応募必須条件です。社内は日本語がメインなので英語力は不問です。
初年度の年収は380~800万円とかなり幅広く、経験に応じて決まります。ITエンジニアの世界では学歴・学位よりも「何ができるのか」ということが重視されます。
ちなみに、この求人票には「採用予定人数:5名」との記載があります。通常、中途採用の場合、空いた枠に対し「1名採用」が基本ですが、ITエンジニアの場合は慢性的に人手が不足していたり、新しいプロジェクトの立ち上げなどで一気に人材が必要となったりします。
そのため、ITエンジニアの求人票に採用予定人数が「5名」「10名」と記載があるのは決して珍しくありません。採用人数が多いほど受かる確率は高まります。
海外移住を考えているのであれば現地採用を狙う
駐在員求人を狙う人は多いですが、実際のところ駐在員は「期限付き」です。会社の都合で転勤を言い渡されたら、すぐに日本に帰任しなければなりません。そうしたとき、現地採用であればあなたが好きなだけその国で暮らせます。
一般的な職種の場合、現地採用と駐在員では待遇面で大きな差があるのですが、ITエンジニアに関しては給与面や福利厚生などにそこまで開きは見られません。現地採用であっても待遇の良い求人は豊富にあるので、駐在案件にこだわる必要はないでしょう。
例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務先はアメリカ各地です。インフラ系システムエンジニアの「ネットワークエンジニア」「プロジェクトマネージャー」「サーバー設計・構築」の各ポジションで募集があります。
「5年以上の実務経験」と「ビジネスレベルの英語力」があれば応募できます。アメリカは就労ビザの取得が難しい国ですが「ビザ取得サポートあり」の記載があります。就労ビザを取得できれば、アメリカで長く働くことで市民権(グリーンカード)を取得して永住することが可能です。
年収は440~1100万円(1米ドル110円で算出)との提示があり、日本で十分なキャリアがあれば高収入も実現できます。現地採用ではありますが、待遇の良い求人例です。
大幅な収入アップを実現したいのであれば、ITコンサルを目指すと良い
なお、海外転職の目的の一つが「より高い収入」であればITコンサルを狙うといいです。日本でもコンサルティング業界は高収入が期待でき、これは海外転職でも同様です。
例えば以下のような求人があります。
勤務先はインドネシアにあるITコンサルティング会社です。日系企業のデジタル変革や情報システム運営を支援するコンサルタントとして活躍します。応募必須条件は「システム導入の知識」「英語でのコミュニケーションがとれる」「分析スキルがある」ことなどです。
多くのITエンジニアが在籍しているので、あなたのこれまでの経験も活かせます。
月給は約60万円以上、年収750万円以上との提示があります。住宅補助に加え、運転手付きの車が貸与され、物価の安いインドネシアで裕福な暮らしが送れます。ITコンサルタントとしての海外でのキャリアがあれば、その先も仕事に困ることはないでしょう。
まとめ
ITエンジニアで海外転職を目指す場合、英語力に自信がなくても問題ありません。ただ、仕事のチャンスを広げるために海外赴任してから英語力を磨くといいです。
また、ある程度の実務経験があれば、豊富な求人の中から選べます。このとき、駐在ポジションにこだわる必要はありません。現地採用であっても待遇のいい求人があるからです。特に高収入にこだわるのであれば、ITコンサルタントがおすすめです。年収1000万円前後も狙えます。
なおITエンジニアの中でも職種によって求められるキャリアが異なります。インフラエンジニアであれば、未経験から応募できる求人が存在します。一方で、プログラマーやシステムエンジニアは実務経験無しでは海外転職は難しいです。
このようにIT業界で海外転職を考えたとき、あなたのキャリア・英語のレベル・希望職種によって「選べる求人」「提示される給与額」「仕事内容」が大きく変わってきます。複数の転職エージェントを利用し、あなたによりふさわしい求人を探してもらうといいです。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。