日本では35歳を過ぎると転職が難しくなるといわれています。つまり、転職市場では35歳を境にして一気に市場価値が下がるのです。
それでは海外転職はどうなのでしょうか。「35歳過ぎたし、海外転職の夢は諦めよう……」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、結論から述べると35歳を過ぎても海外転職は可能です。
ただ、35歳を過ぎてからの転職では注意しなければならない点も多くあります。ここでは、実際に求人を紹介しながら30代以降の海外転職の方法についてみていきましょう。
もくじ
35歳以上を含め、海外転職において年齢は重要視されない
海外で転職するにあたり、年齢は重要視されません。それよりもあなたのパーソナリティーや経歴・能力を元に採用するかどうかを決めます。
例えば私が初めて海外で履歴書を記入したとき、その内容に衝撃を受けました。日本では履歴書に写真を貼り、「満○歳」と記入する箇所があります。
しかし、海外の履歴書には写真を貼る場所も年齢も性別すら記入する所がありませんでした。
単一民族で宗教色が強くない日本とは異なり、海外の多くの国では多国籍・さまざまな宗教の人々が働いています。さらにいうと、「人種や宗教・性別・年齢などで雇用上の差別をしてはいけない」と法律で定められている国が存在します。
また、手書きで履歴書を記入する必要もありません。確かに日本のようにわざわざ手書きで履歴書を記入するのは時間の無駄であり、海外の方が合理的だと思います。
参考までに、海外で一般的に使用される履歴書のテンプレートを以下に載せます。
このようなフォームをWordなどで作成して入力していきます。一度作成すると使い回せるのが便利です。
ちなみに、履歴書のフォーマットは特に存在しません。テンプレートを使用しないで、自分でオリジナルに履歴書を作成してもかまいません。海外では、あらゆる面で自由なのです。
人事配置は年齢ではなく実力で決まる
なお、日本でも年功序列という文化は崩れつつありますが、いまだに年齢で人事ポジションが決まるのが日本の会社では普通です。
一方で、実力主義の欧米では大企業のCEOが20代であることも珍しいことではありません。実際に私がオランダに渡航してすぐに働いた国際組織のCEOは30代前半の男性でした。40代・50代の年上の方も部下として働いていましたが、お互い遠慮することなく意見を交わし合っていました。
特に英語の場合、日本語のように敬語が存在しないのでフランクに話すことができます。また、海外では同僚や上司であっても苗字で呼ぶことはなく、下の名前で呼び合います。
言語や文化の違いなどの背景もあり、多くの国では年齢は重視されないのです。
女性に年齢を聞くのはタブー
また、そもそも海外では年齢を聞くことが失礼に当たるケースも多いです。実際、海外で就職してから日本人が気をつけなければならないことの一つですが、海外では特に女性に年齢を尋ねる行為はとても失礼なこととされています。
日本だと会社などで「○○さんて今いくつでしたっけ?」と聞かれたら、普通に答える方が大半だと思います。しかし同じような感覚で、海外で女性に年齢を聞くと白い眼で見られます。男性に対しても、何歳なのか尋ねるシチュエーションはあまり存在しません。
そのため海外勤務をする場合、オフィスの中で誰が何歳なのかきちんと把握している人はいないと考えていいでしょう。個人を尊重する海外では、年齢はどうでもいい要素なのです。
あなたが誰かに年齢を聞いた場合、外国人からは「そんなこと聞いて何になるの?」という風に捉えられるでしょう。入社前も入社後も年齢はその人を評価する何ものでもなく、要は関係ないのです。
また、既婚状況や子どもがいるのかといったことも面接などで聞いてはいけないと定められている国が多く存在します。
そもそも海外では日本にはない「パートナー制度」を設けている国があり、結婚はしていないけど事実婚といったカップルがたくさんいます。
国によっては結婚していなくても子どもがいても普通ですし、同性結婚も珍しくありません。ちなみに私の元上司はゲイでしたが、レズビアンカップルとパートナーシップを組んで2人の子どもを産み4人で育てていました。
日本では正直考えられないことですが、海外では珍しいことではありません。このように国が変われば年齢に対する考え方だけでなく、性別・宗教・文化などあらゆる違いがあり、それらをあなたも受け入れていく必要があります。
40代・50代以降で海外転職する場合に気をつけるべきこと
前述した通り、海外転職において年齢は重要な要素ではないため「20代だから選考が有利」ということはありません。海外では未経験の20代よりもスキルを持った40代・50代の方が市場価値は高いです。当然、35歳以上であっても問題なく転職できます。
ただ、40代以降の求職者が海外で新たな職種にチャレンジする場合は、求人が見つかりにくかったり、注意しなければならない点がいくつかあったります。
特に、給与面・健康面・年金・帰国後のことについては十分に検討しましょう。
未経験からの海外転職では年収・給料が低い
あなたが自分の専門分野を活かしてキャリアアップする場合を除いて、海外転職に未経験職種でチャレンジする場合、給与は低いと考えておいて間違いありません。
20代なら年収が多少低くてもこれから時間をかけてスキルアップすれば、徐々に昇給していくことが期待できます。しかし40代・50代から新たな職種にチャレンジしてスキルアップしていき、定年までにどのくらい給与が上がっているのか考えても、正直厳しい面があります。
「たとえ年収が低くても海外でのんびり生活していきたい」「ある程度の蓄えがあるから低所得でも問題ない」とあなたが考えるのであれば、給料がたとえ低くても挑戦してみる価値はあるでしょう。
いつまでも健康であるとは限らない
あなたが今健康であったとしても、歳を重ねるにつれて生活習慣病やがんを患う可能性があります。
医療が発達していない国に転職した場合、病気が悪化するリスクを伴います。また、アメリカのように医療費が恐ろしく高い国で病気になると、医療費が払えず破産してしまうことだってあり得ます。
日本ほど国民が平等に医療を受けられる国は存在しません。もし、すでにあなたに持病があり通院しなければならない場合、海外で働くことは慎重に検討した方がいいです。
年金問題を考え、永住か帰国かを検討する
40歳、50歳になって海外へ転職した場合、年金についてよく考えなければなりません。その国に移住するつもりなのか、数年で帰国するのか、定年後は日本に帰ってくるのかなどによって状況は大きく変わります。
例えば50歳の方が永住を視野に海外転職を考えている場合、50歳で現地の年金掛金を納め始めたとしても10年程度の積み立てでは定年後に受け取れる額はわずかです。
ただ渡航する国によっては、日本の年金を現地の国で受け取れる制度が存在します。海外へ渡航しても引き続き日本で年金を納め続けることは可能ですので、日本の年金を頼りにするのも一つの選択肢です。
また、年金だけでなく老後の蓄えのことも考えなければなりません。日本で50代である程度の収入があれば、老後の貯蓄に回せるでしょう。しかし海外転職して収入が大きく下がった場合、生活するのに一杯一杯では老後の資金が貯まりません。
例えば私の知り合いにヨーロッパに移住してきた家族がいたのですが、結局5年ほどで日本に帰国してしまいました。30代の夫婦で日系企業に勤めていましたが、「生活する分には不自由はないけど、このままでは老後の貯蓄ができない」と話していました。
その人は「30代の間に帰国すれば、日本の企業で駐在員として再び海外で生活できるチャンスがある」と言っていました。
このようにたとえ30代であっても老後の貯蓄のことを考え、日本に帰国する道を選ぶ方もいらっしゃいます。「とりあえず生活していけるからどうにかなる」ではなく、老後のことも考えて転職プランを立てましょう。
日本に戻ったときに仕事が見つからない
前述した夫婦のように30代であれば、日本に帰国してもまたすぐ仕事が見つかります。しかし40歳・50歳で海外転職して数年で戻ってきた場合、元のポジション・給与で再び雇ってもらえるところを探すのは難しいです。
日本では専門スキルを磨いている人材を除き、年齢が上がるにつれて転職は難しくなります。
したがって、日本に戻った場合の就職先や給与などのことも想定しておきましょう。「日本に戻るつもりは無い!」と決意していても、いつ状況が変わるかは分かりません。そこで、いくつかのケースをシュミレーションしておくことをおすすめします。
海外転職で募集されている「年齢不問」「年齢制限無し」の求人を紹介
それでは、実際にどのような年齢制限無しの海外求人が存在するのでしょうか。ここでは実際に海外転職サイトに掲載されている年齢不問の求人を紹介していきます。
海外では年齢は重要視されないと述べましたが、日系企業や海外の会社でも体力を使う仕事や若手を育てていく会社では「35歳まで」「45歳まで」といった年齢制限が設けられています。
しかし、「年齢不問!」と記載のある求人もたくさんあります。
例えば以下は、日本人が多く住む「ドイツ・デュッセルドルフにある日本食レストラン」での年齢制限無しの求人です。
デュッセルドルフで30年創業しているお店なので潰れる心配は要りません。経験やスキルに合わせて和食・寿司の調理全般を担当します。
特に「○歳まで」といった記載がなく、調理の実務経験があれば年数・ジャンル問わず優遇されるとのことなので何歳からでも挑戦できます。
また、未経験であっても英語やドイツ語が話せなくても、やる気があれば応募できます。月給は23万円~37万円程度とドイツで生活していくには困らない金額です。
また次に紹介するのは、焼肉レストランの海外店舗責任者の中途採用募集です。国内店舗でマネジメントスキルを身につけた後、海外店舗の運営を任されます。
飲食店での経験があったり店長経験・日常会話レベルの英語力があったりすると優遇されます。したがって30代以降であっても、飲食店で店長経験や日常会話レベルの英語力があれば採用されるチャンスがあります。
もちろん未経験でも意欲があれば応募できます。また、入社時に英語力は問われず国内での研修の間に身につければ問題ありません。
勤務地はアメリカ(ニューヨークまたはハワイ)です。
年収は入社1年目で未経験の場合は420万円、経験者だと入社1年目でも560万円です。国にもよりますが、年収560万円あれば老後に備えて貯蓄していくこともできるでしょう。
海外で年齢が問われない中途採用は多い
当然ながら、飲食店以外の求人もたくさん存在します。以下は海外でコンサルティング営業をする中途採用の募集です。
募集要項に「年齢不問」と記載があるので何歳からでも応募可能です。「保険・金融業界経験者優遇」と記されているので保険会社や銀行などでのキャリアがあると有利です。
ただ、入社後全国各地で研修があるので未経験であっても問題ありません。保険の基本や営業のノウハウを学び、商品知識・専門知識を身につけることができます。
充実した研修によって短期間でコンサルティングのプロとしてデビューできます。海外で働きながらスキルを身につけられる仕事は魅力的ではないでしょうか。
その他にも接客経験があれば、以下のようなベトナム・ホーチミンでのカスタマーケアスタッフの中途採用に応募できます。
こちらは日系旅行代理店のベトナム支店で顧客対応やツアー手配、資料作成などの業務を担当します。「シニア歓迎」との記載があるので40歳50歳からでもチャレンジ可能です。
接客・カスタマーサポートの経験があると優遇されます。また、業界未経験であってもやる気があれば問題ありません。
給与は1200~1400USD(1ドル100円だと12~14万円)です。日本円に換算すると少ないですが、ベトナムで生活する分には十分な金額です。
まとめ
海外では転職の際、年齢よりもあなた自身の性格や能力が重視されます。「40歳を超えたから仕事は見つからない」ということはありません。専門知識や特別な資格を持っていなくても大丈夫です。
年齢制限のある求人もありますが、「シニア歓迎」の求人も存在します。一つ一つの求人をチェックして探すのは大変なので、複数の海外専用転職サイトに登録することをおすすめします。担当者にあなたの条件を伝えておけば応募できる求人を紹介してくれます。
ただし、このとき「自分にピッタリの求人が見つかった!」と喜ぶ前に年収や健康、老後の貯蓄や年金、日本に戻った後のことなどまでよく考えてから決めるようにしましょう。
20代や30代前半であれば、たとえ海外転職してすぐに日本に戻ったとしても生活水準を下げることなく日本で生活していけます。しかし35歳以上、さらには40代・50代となると同じようにはいきません。
このようなことを考慮して「いずれ海外で働いてみたい」と考えているのであれば、1日でも早く海外転職に向けて行動し、情報収集してみることをおすすめします。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。