日本国内で銀行員や証券会社社員としての経験を積んだ方の中には「海外で働いてみたい」と考える方がいます。
大手銀行や証券会社であれば駐在員として海外赴任できる可能性がありますが、これらは狭き門です。また、地方銀行に勤めている場合、海外駐在のチャンスはもっと少なくなります。
一方でIT技術が進み、仮想通貨や電子マネーが流通する中、銀行の存在自体が危ぶまれています。そのため金融機関で働く人の中には今後のことを心配して転職を考える方がいると思います。
金融機関の中でも違う分野への転職を検討したり、フィンテックが進んでいる海外へ目を向けたりする人もいるでしょう。
そこで、ここでは銀行員や金融業界で働いている人の中で海外転職を考えている方のために、「どのような転職先があるのか」「どのようにして求人を見つけるのか」について、求人票を交えながら説明していきます。
もくじ
銀行員などの海外転職は難しいのか
いまや銀行や証券会社では業務の機械化が進んだり、利用者が減少したりしている現状から従業員の数を減らしています。したがって国内で金融業界での転職はなかなか難しいのが現状です。ベンチャー企業やコンサルファームへのキャリアチェンジを選択する方が多い傾向にあります。
それでは海外転職の場合はどうなのでしょうか。「日本でも求人がないなら海外転職はもっと難しいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、実際に海外勤務の求人はあります。
ただし、ビジネスレベルの英語力は必須となります。海外で金融関係の仕事に就く場合、社内の公用語が英語だからです。担当顧客は主に日本人ですが、社内や支店連携などで英語でのコミュニケーションが取れないと仕事に支障をきたします。
もちろんビジネスレベルの英語力が乏しくても応募できる求人はありますが、かなり少ないです。あなたの仕事の選択肢を増やすためにも英語のスキルを高めておくことは大切です。
このとき、「ビジネスレベルの英語力は無理」と諦めてしまうと、海外転職の道はきびしくなってしまいます。前述した通り、フィンテックが進んでいくと、今後は金融機関で働く多くの人がリストラに遭ったりキャリアアップで悩んだりすることになるでしょう。
そのようなときに海外でのグローバルな経験を積んでいる銀行員や証券会社社員は、市場価値があるため生き残れます。
日本で義務教育を受け、大学を卒業している方であれば英語の基礎は既に身についているはずです。あとは金融系の専門用語と英会話のスキルを身につければいいです。
もちろん英会話のスキルは簡単に身につくものではありませんが、いまではオンラインでいつでもどこでも英会話レッスンが受けられます。
私自身、留学経験や語学学校に通ったことはありませんが、海外に住むことが決まってから必死にオンラインで英会話レッスンを受けて英語が話せるようになりました。
そのため海外転職を考えている人は、英語の勉強をすぐにでも開始しましょう。
海外転職サイトで募集のある金融業界の求人
それでは実際に海外の求人を取り扱っている転職サイトには、金融業界の求人募集があるのでしょうか。
例えば以下は銀行員としてのキャリア・知識をシンガポールで活かせる求人です。
勤務地はシンガポールですが、アジア全域の日本人顧客(個人投資家・機関投資家)を担当します。
募集しているポジションは、先物・為替仲介ディーラーです。業務内容は顧客の注文に応じた先物・為替等の売買取引や約定処理、口座開設サポート、資産運用のアドバイス、顧客の問い合わせ対応、その他事務などです。
投資商品として世界主要市場の株価指数先物、金利・債券先物、通貨先物・商品先物等を扱います。
応募要件は「金融業界でキャリアを築きたい」「ビジネスレベルの英語力」「個人投資家と関係を構築できる高いコミュニケーション力」「社内の多様な国籍の社員と効果的にコラボレーションできる能力」などです。
さらにプラス条件として「金融業界での勤務経験」「すぐに勤務開始できる」「2~3年の就業経験を持っている」などが挙げられており、銀行員としての経験があると選考において有利になります。
専門知識は必要になりますが、高いキャリアのバックグラウンドは問われません。また、「新卒でも経験を積みたければOK」なことから、若い人材が求められていることがわかります。
また、シンガポールは税率が低いため世界中から投資家が集まってきます。さらに国を挙げてフィンテックに力を入れており、国際金融拠点として競争力を強化しています。
そうした金融大国であるシンガポールのローカル金融企業で経験を積めるのは、あなたのキャリアにとって大きなメリットがあるといえます。
銀行で営業アシスタントの求人もある
ただ、「海外でいきなり専門的な仕事に就くのは難しい」という人もいます。そのような方には、以下のような求人がおすすめです。
インドにある銀行で日本人営業担当者のアシスタントを担当します。提案書作成のサポート、照会事項の対応、計算書を日本語で本社に送付、電話対応、事務業務などに従事します。
必須スキルは「3年以上の業務経験」「ビジネスレベルの英語力」「基本的なPCスキル」です。金融業界での就業経験があるとプラスに働きます。
インドもシンガポールと同様にフィンテックが進んでいる国の一つです。また経済成長も著しい国なので、インドの金融業界で経験を積むのもいいでしょう。
金融業界への海外転職なら、保険会社の営業職もある
転職先は銀行以外にも保険会社があります。日本だと、生命保険は一般的に節税や死亡保障などのために活用されます。ただ、海外では保険を資産運用のために用いるのが普通です。
例えば日本の生命保険だと、資産が増えても1.3倍ほどです。ただ、海外保険だと資産が12倍に増えます(35歳で生命保険に加入した場合)。具体的には1,000万円なら、12倍の1億2,000万円に化けます。
日本では法律で海外保険の宣伝が禁止されているのであまり知られていませんが、海外ではこうした保険商品が当然のように存在します。そのため知識のある日本人の場合、シンガポールや香港など金融が発展している国の保険商品の購入を検討するのです。
このような背景により、海外の保険会社でも日本人の求人募集が存在します。例えば以下はシンガポールにある外資系保険企業で中途採用募集のある求人です。
職種は営業職です。仕事内容は日本人顧客への保険営業、マーケティング、顧客のコンサルティングなど幅広い業務内容が挙げられています。
応募要件は「大学を卒業している」「ビジネスレベルの英語力」「マネージメントスキル」「5年以上の法人営業経験」などです。特別な資格は必要ありません。
証券会社・投資機関で顧客の資産運用を行う
このように投資を含む保険商品を販売している保険会社へ転職できるほか、海外の証券会社・投資機関の求人も存在します。特にシンガポールや香港などは金融で発展している国であるため、日本のメガバンク・証券会社に比べて圧倒的に巨大な投資機関や保険会社がいくつも存在します。
日本人向けの営業求人にはなりますが、シンガポールや香港で英語を活かしながら日本国内の大手メガバンクより大きな会社で勤務できるのです。例えば、以下は香港で出されている金融商品の営業ポジションの求人です。
香港にある日系金融機関で、資産運用アドバイスと金融商品の売買・仲介業務を行います。
具体的には日本人富裕層を対象としたウェルスマネジメント業務(資産を守るための業務)、海外在住の日本人を対象とした保険販売業務、金融セミナーの企画・開催などです。
応募条件は「3年程度の資産運用アドバイザリー業務経験」「投資信託や債券などの金融商品知識や経験を持っている」ことなどです。
入社後にSFC Paper1(香港の金融機関で働くための資格)の取得が必須になっています。幅広い知識や経験が求められますが、この求人において英語は必須とされていません。
そこで、まずはこのような求人に応募して転職して現地で英語を学び、経験を積んでから再び海外転職してキャリアアップを図るのもよいでしょう。
年収など好待遇なメガバンクに転職して、海外駐在や出向を狙う
ちなみに海外勤務の求人に応募する以外にも、国内のメガバンクに転職して海外駐在や提携会社の海外出向のポジションを狙うことを考える方もいるでしょう。
メガバンクであれば、駐在員の数も多く、チャンスはあります。しかもメガバンクの駐在員は非常に恵まれた待遇で海外に住むことができます。
例えば、家族には手厚い手当てが付与されます。家賃全額補助はもちろん、子どものインターナショナルスクール費用・家族のお稽古代・車代など日本では付かない手当てがもらえます。
このとき赴任する国によっては、日本人コミュニティーの中で駐在員特有のヒエラルキーが存在します。その中でトップに君臨するのは、政府機関関係者(大使など)とメガバンクの駐在員です。
周りの日本人に一目置かれる環境に身を置けることで、気持ちよく生活することが可能です。これを実現できるものとして、例えば以下のような求人が該当します。
大手銀行で海外駐在員候補として国際業務に携わります。仕事内容は「現地企業・金融機関等とのネットワークの開拓」「国内取引先のニーズに対応する情報収集」「クロスボーダーファイナンスに関する営業部店の支援」などです。
必須条件は「外資系案件への融資業務経験1年以上」「日系企業での勤務経験1年以上」「ビジネスレベルの日本語と英語」です。ただし、32歳以下の場合は「銀行での融資業務経験」「一定の英語力」の2つが揃っていれば条件をクリアすることができます。
年収は最大1,000万円であり、かなりの高収入といえます。しかも家賃も会社がカバーしてくれるので、実質的な給料はそれ以上です。
これだけの好条件ですが、注意しなければならないのは、「入行してすぐに海外駐在になるわけではなく1年以上は東京オフィスに勤務する」という点です。入社後に海外駐在員としての適性があるかどうかを見極められ、適性が無いと判断された場合は国内勤務のみになります。
海外赴任先は上海・香港・シンガポール・ニューヨーク・ロンドンなどです。ただし、赴任先はあなた自身が選ぶことはできません。これについては、これまでに記した求人と大きく異なる点です。参考までに、以下は海外にある大手メガバンクの支店の内部です。
「金融大国のシンガポールや香港で働きたい」「中国(上海)は絶対に行きたくない」など強いこだわりがあるのであれば、先に紹介した勤務地があらかじめ決まっている求人に応募することをおすすめします。
また、海外転勤は入行後1年以上先なので実際に海外で働き始めるのは3~4年後になる可能性があります。「すぐに海外で働きたい」という方には向いていません。
このように国内メガバンクの駐在員ポストにはメリット・デメリットがあります。
まとめ
単純に海外で働きたいという理由だけではなく、銀行員や証券会社社員として今後の生き残りをかけて海外でチャレンジするのは賢い選択です。
金融機関での海外転職は一見難しそうですが、英語力さえあれば求人はあります。また専門知識が問われるポジションの場合、若ければ無条件で申し込める求人があります。
つまり海外の金融業界でキャリアアップするには、「日本での豊富な経験・専門知識がある」あるいは「数年の実務経験しかないが年齢的に若い」のどちらかが有利だといえます。
金融業界の場合、日本国内での転職を考えるよりも海外に目を向けてチャレンジした方が、今後のあなたのキャリアにとって大きなプラスにつながります。もちろん、国内のメガバンクに転職して駐在員として海外赴任を狙うのも一つの方法です。
ただし、その場合は「勤務先の国を選べない」「海外赴任が何年後からなのか不明」というデメリットがあります。「すぐに海外の金融機関に転職したい」「行きたい国が決まっている」という場合、勤務先・勤務開始日(目安)が決まっている求人に応募することをおすすめします。
これらを理解して転職エージェントに登録・相談し、あなたの希望に合った海外求人を見つけてもらいましょう。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。