日本で保育士や幼稚園教諭として働いている場合、海外転職は他の職種に比べて容易です。「勤務地の選択肢が広い」「高い英語力が求められないことが多い」「求人数が多い」「ビザを取得してくれる企業が多い」など、恵まれた条件で転職活動を進めることができます。

もちろん、「求人が選び放題」というわけではありません。そのため、まずは海外転職において勤務する国・給与・教育方針など具体的に求める条件を挙げてみましょう。それからあなたの優先順位を決め、慎重に求人を選んでいく必要があります。

ここではどのような国の保育に関する求人があって、どんなことに注意しながら求人を選んでいくべきか、あなたが優先順位を決める上で役に立つ情報を交えながら説明していきます。

保育士や幼稚園教諭は海外で仕事が見つかりやすい

冒頭でも述べた通り、日本で教育者の仕事に就いている方は、海外転職において仕事探しには困りません。その理由は、現地の子どもに日本語・日本文化などを教えるためには、日本人の教育者でないと務まらないからです。

実際に私が住んでいるオランダにも、フリーランスビザを取得して移住している日本人がたくさんいます。その多くの方は教育関係の仕事に就いています。

具体的には、以下のような活躍をしています。

  • 日本人学校の先生
  • オランダの大学で日本文化の授業を担当
  • 外国人向けの日本語スクール講師
  • 日本人の子供向けのリトミック教室の先生
  • 日本人あるいは日本とのハーフの子ども向けの日本の塾の先生

他にもベビーシッターや学童保育に携わっている方もいます。皆さん日本でのバックグラウンドは違いますが、教育関係の仕事は見つかりやすいのです。

したがって幼稚園教諭や保育士の免許保有者で日本での勤務経験があれば、たとえ語学力が高くなくても海外転職は可能です。

さらに、勤務する国も幅広い選択肢の中から選べます。通常、日本国内にある海外の求人の多くはアジア圏に集中しています。アメリカやイギリスでは就労ビザの問題により求人はほとんどありません。

しかし北米やヨーロッパでも教育系の求人ならあります。日本の教育を提供できる教育指導者は現地の国の人では務まらないため、就労ビザの許可が下りやすいのです。

アメリカのバイリンガル幼稚園での求人

たとえば、アメリカは就労ビザの取得が世界で最も難しい国の一つです。それでも就労ビザサポートの付いた求人があります。

以下はアメリカ・ニューヨークのブルックリンにある幼稚園で担任教員を募集しています。

日本語と英語をバランスよく学べる幼稚園です。子ども達の健やかな成長と発達をサポートするためにふさわしい環境をつくり、年齢に応じた学習カリキュラムを作成・実施する仕事に従事します。

応募資格は「4年制大学(教育学部)を卒業している」「子どもの発達段階に応じたプログラムを開発できる」「チームワークで仕事ができる」「英語と日本語でコミュニケーションができる」ことです。つまり、この求人では、ある程度の英語力が求められます。

ただ、年齢制限は設けられていないので何歳からでも挑戦できます。給料は年間330~715万円(1ドル=110円とした場合)と提示されています。実際の金額は経験や能力を考慮して決められます。

日本の保育士の平均年収は200万円台ともいわれているので、かなりの年収アップにつながるといえます。現在の給料に満足できない幼稚園の先生や保育士さんは、日本で転職を考えるよりも海外転職した方が簡単に年収を上げられるのです。

イギリス・ロンドンの学園での求人

また、イギリスもアメリカ同様に就労ビザの取得が厳しい国です。EUとは離れて独自路線を取っていることもあり、ヨーロッパの人でさえイギリスに就職するのは難しいのが現状です。大企業の駐在員でも5年を超えて滞在できないと法律で定められています。

そのようなイギリスでも幼稚園であれば求人があります。以下はイギリス・ロンドンにある日系幼稚園で先生と園長を募集している求人内容です。

募集職種は幼稚園長1名、幼稚園教諭3名の合計4名です。イギリスの良さと日本の伝統を大切にした教育方針を立てている幼稚園です。

園長の応募資格は「短大または4年制大学の保育学科を卒業、あるいは幼稚園教諭の課程を卒業」「保育士または幼稚園教諭資格を保持」「園長経験」「自動車免許」の4つです。初めの契約期間は3年間ですが、延長可能な求人となります。

一方の幼稚園教諭の応募資格は「短大または4年制大学の保育学科を卒業、あるいは幼稚園教諭の課程を卒業」「保育士または幼稚園教諭資格を保持」の2つです。

契約期間は園長と同じく3年間です。ただし、YMSビザを持っている場合は2年間の契約となります。ただ、これについても就労期間は延長可能です。ただし、就労ビザの取得には英語のテストがあります。

なおYMSビザとは、イギリスのワーキングホリデービザのことです。YMSビザは「2年間の滞在が可能」「フルタイムで就労できる」など自由度が高く人気のあるビザです。ただ、YMSの定員数は決まっているため毎年抽選で決められます。

通常はYMSビザで働いても、なかなかビザの延長をサポートしてくれる企業は存在しません。ただし、教育機関の場合は就労許可が下りやすいため、延長が可能になります。

園長も幼稚園教諭のポジションもビザがない場合は、就労ビザ取得をサポートしてくれるので問題なく働けます。

また、この求人は福利厚生が非常に充実しています。週3回のランチ支給に加え、住宅(寮)が用意されています。なお園長の年収は住宅手当・税込みで472万円(1ポンド135円で算出した場合)、幼稚園教諭の年収は357万円と提示があります。

世界的に物価が高いといわれているロンドンでは、居住費・食費はかなり高くつきます。しかし、このように福利厚生が充実していると、家賃が不要で、食事も一部支給されるので出費を抑えられます。

さらに、アメリカやイギリスで働くとあなたの英語力は飛躍的に伸びます。このようなポジションに就けば、通常就労ビザの取得が難しいため求人すら見つからないアメリカやイギリスで働くことができ、年収アップ・英語力アップに加えて国際経験が積めるので非常に魅力的な求人といえるでしょう。

英語が苦手な方におすすめの求人

アメリカやイギリスで働く場合は英語力が求められます。ただ、「英語が苦手だけど海外で働きたい」という方には海外にある日本人幼稚園に転職することをおすすめします。

日本人幼稚園は日本人が多く住むエリアに存在します。生徒も教員も日本人なので日本語が正しく話せれば問題ありません。

こうした求人の多くは日本人街のある国(特にアジア)にあります。まずはベトナムの日本人幼稚園の求人情報について紹介します。

勤務地はベトナム・ハノイです。ベトナムで日本の教育を提供している幼稚園で2歳児クラスの担当をします。

応募資格は、幼稚園教諭あるいは保育士です。「年齢不問」との記載があり、実際に20~60代の幅広い年齢の方が活躍しているので、何歳からでもチャレンジできます。また、3年以上の実務経験があると優遇されます。

夏休みは2~3週間あるので、日本への一時帰省もゆっくり過ごすことができます。海外で働くと、なかなか日本に一時帰国できなくなるので、このような長期休みがあるのは教員ならではの大きなメリットといえます。

世界でも日本人が多く住むドイツ・デュッセルドルフでの求人

海外で働くことには誰しも多少の不安があると思います。しかしドイツのデュッセルドルフであれば、多くの日本人が生活しているため日本語のみでも暮らしていくことが可能です。

実際に私の知り合いにもデュッセルドルフで駐在している方がいますが、駐在員の中には日本語しか話せない人も結構いるそうです。

それでも300社以上の日系企業があり、7,000人ともいわれる日本人コミュニティーが存在するため問題ありません。

また、私の知り合いは独身ですが日本人同士の合コンも頻繁に開かれており、出会いに困ることもないそうです。実際に幼稚園の先生や保育士の女性が駐在員の日本人男性と結婚することもあります。

このようにドイツのデュッセルドルフを選べば「英語が話せないから海外転職は無理」「海外で働きたいけど、婚期が遅れる」などといった理由で海外転職を諦める必要はありません。

それではデュッセルドルフで募集している求人内容をみてみましょう。以下はドイツで認可を受け、日本の保育を実践している日本人幼稚園です。

日本流の保育を大事にしながらも、ヨーロッパで行われる体操の発表会に積極的に参加しています。また、夏にはオーストリアでサマースクールを開くなどインターナショナルな活動にも携わることができます。

仕事内容は幼稚園業務全般です。応募資格は「幼稚園教諭免許あるいは保育士免許保有者」「幼稚園で3年以上働いた経験」「健康で責任感・協調性がある」です。

語学力や年齢などについては全く記載がないので、求められていません。また、生活用品が備わったアパートも用意されているので生活費を抑えることができます。

もちろん、ここで紹介したベトナムやドイツ以外にも、中国・香港・フィリピン・インドネシア・タイなどの日本人が多く住むエリアに日本人幼稚園は存在します。複数の転職サイトに登録してこのような求人を探してみましょう。

モンテッソーリに興味のある方の海外求人

なお海外転職を考えている人の中には、海外の教育方針に興味がある方もいると思います。例えば、日本でもモンテッソーリ教育への関心が高まっています。

モンテッソーリとは、「子どもの自主性を尊重した教育法」のことです。もともとイタリアの女性医師が開発した教育法ですが、いまでは世界中で取り入れられています。

保育士や幼稚園教諭の方の中には「モンテッソーリ教育法を学びたい」と考え、海外のモンテッソーリ教育を実践している保育園や幼稚園の求人に転職を検討している人もいるでしょう。

私が住んでいるオランダでもモンテッソーリ教育は盛んです。オランダは公立の小学校でも教育方針を学校ごとに自由に決められるので、モンテッソーリ教育を取り入れた学校が多く存在します。

ただ私自身モンテッソーリには興味があったのですが、実際に子どもをモンテッソーリスクールの小学校に通わせている日本人のお母さんに聞くと、「実態はただの学級崩壊」と話していました。

チャイムが鳴っても教室の扉は閉められることなく、子ども達は自由に動き回り、工作をしたりおもちゃで遊んだりしています。

もちろん中には勉強をしている子もいますが、すぐ隣では大はしゃぎしている子どももいて、「よっぽどな集中力が備わっていないと、勉強できる環境ではない」と話していました。

それを聞いて、「のびのびした環境の中で学べるのはいいが、のびのびしすぎて勉強どころか机に座る習慣が身につかないのではないか」と心配になりました。

個人的には、アーティストなどの創造力豊かな才能を育んだり、何かを自ら学んだりすることが好きな子どもにとって、モンテッソーリは向いていると思います。またモンテッソーリといっても、その中身は教育機関ごとにバラバラなのが実情です。

一概に「モンテッソーリ教育は素晴らしい」とはいえません。現地で実際に教育者の視点からみてみると、良い点・課題点がさらに分かってくると思います。

一方で、海外の本格的なモンテッソーリ教育を導入した保育園や幼稚園で働くことは、貴重な経験になるといえます。実際、勉強を本格的に学ぶ小学校ではなく、保育園などであれば、モンテッソーリによって子どもがのびのびと学ぶのは意味があるといえます。

それではモンテッソーリ教育の現場で活躍できる求人を紹介していきます。以下はアメリカにあるプレスクール(幼稚園)で幼稚園教諭あるいは保育士を募集しています。

勤務地は、カリフォルニアのオレンジカウンティです。ディズニーランドやビーチが近く、年間を通して晴天率が高いことからアメリカの中でも暮らしやすいエリアです。また、ロサンゼルスから車で50分のところに位置しているため静かで安全な場所です。

こちらの学園は、モンテッソーリ教育・バイリンガル教育に力を入れています。国際色豊かな地域のため、日本人だけでなく様々な人種の生徒が通っています。常に入園待ちしている子どもがいるほど人気の学校です。

担当するクラスは「0~3歳」あるいは「3~6歳」です。保育士・幼稚園教諭・小学校教諭のいずれかの資格を持っており、日本で勤務経験があれば応募できます。

また英語力については、日本語担当の先生を任されるため応募の段階では英語力は求められません。ただし、渡航してから英語を学ぶ必要はあります。

シンガポールのインターナショナル保育園でモンテッソーリ教育に携わる

前述した通りモンテッソーリ教育は世界中で取り入れられています。世界で有数の教育先進国であるシンガポールでもモンテッソーリの保育園の求人があります。

募集職種は日本語教師・幼児教育者です。仕事内容は「日本語教育プランを計画・導入・管理すること」「生徒ごとに進捗レポートを作成し、学習計画を立てる」「子どもが積極的に参加できる日本語教育の環境を提供する」などです。

応募資格は「幼児教育の資格または経験」「4年制大学を卒業している」「2年以上の幼児教育経験」「正しく日本語が使え、ビギナーレベルの英語力がある」「PCスキル」です。

シンガポールは教育水準の高さから、日本からの教育移住者が増えています。グローバルに活躍できる人材を育てるための子どもの教育現場で指導者として活躍できるのは大きな魅力です。このようなポジションに就けば、日本の幼児教育現場では経験できない国際経験が積めます。

まとめ

ここで紹介した求人や注意点などをみて、あなたの転職活動における軸や優先順位が見えてきたでしょうか。学校選びのポイントとして、まずは教育方針に着目しましょう。

上記で紹介したように「海外で日本と同じ教育を受けられる日本人幼稚園」「現地の教育を取り入れ、日本とミックスした国際色豊かな教育」「モンテッソーリを取り入れている幼稚園」などの選択肢があります。

また生活環境において、英語が苦手なのであれば、言語力が求められない生活しやすい国を重視しても問題ありません。または給料アップか国際経験が積めるのか、さらには独身の方は出会いがあるのかどうかも重要なポイントになってくるでしょう。

海外転職は国内転職以上に人生の重大な分岐点となります。一人で進めるのが不安な場合は、複数の転職サイトに登録してプロのキャリアカウンセラーの力を借りましょう。そうすることで転職活動が上手くいきます。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。