国内の空港でグランドスタッフとして働いている人や空港に関わる仕事に転職したいと考えている人の中には、「海外の空港で働くことはできないのだろうか」と考える方がいると思います。

最初に思いつくのは航空会社の国際線キャビンアテンダント(客室乗務員、CA)ではないでしょうか。いつの時代においても女性から高い人気がある職種です。

しかし、キャビンアテンダントは非常に競争率が高く、CA養成学校に通って、何十社と選考を受けても内定をもらえないといった現状があります。

私の友人にもキャビンアテンダントの夢が諦めきれず、新卒で入社した会社を辞めてCA養成学校に通った友達がいます。彼女は結局CAの内定を取得することはできず、外資系企業の事務職に転職しました。

もちろん夢を追いかけることは素敵なことではありますが、その間に歳を取ってしまうこと、他のキャリアのチャンスを逃してしまうことを忘れてはいけません。

そのため「海外の空港で働きたい」と考えているのであれば、グランドスタッフといった空港勤務の職種に就くことをおすすめします。あまり知られていませんが、特別な資格が不要で就けるポジションがいくつも存在します。

ここでは海外の空港で働くグランドスタッフ・その他の職種を説明し、実際に募集されている求人について、注意点も交えながら紹介していきます。

海外の空港で日本人の求人がある職種について

まずは海外の空港で日本人の需要がある職種には、どのようなものがあるのでしょうか。以下に4つの職種を挙げました。

  • グランドスタッフ(地上職)
  • 貨物ハンドリング業務
  • 空港内カスタマーサービス
  • 航空業界の企業の一般職(営業職・事務職など)

それぞれ詳しくみていきましょう。

・グランドスタッフ(地上職)

グランドスタッフは、航空会社の受付カウンターでチェックインの手続きをしたり、搭乗ゲートで搭乗の手伝いや乗務員との打ち合わせを行ったりするのが主な業務です。

海外のグランドスタッフの場合は、英語でのコミュニケーションが必要になるのでビジネスレベルの英語力が求められます。

特に日系の航空会社では海外の空港に日本人のグランドスタッフを配置しているため、一定の日本人の求人があります。

また、国際線のキャビンアテンダントのように国を行ったり来たりするわけではないので、「海外に腰を据えて生活したい」という方にはCAよりもグランドスタッフの方が向いています。

・貨物ハンドリング業務

ハンドリング業務と聞くと飛行機の誘導をする「グランドハンドリング」を思い浮かべるかもしれませんが、グランドハンドリングには特別な資格が必要です。

一方で貨物ハンドリングとは、航空機に搭載する貨物や郵便物などの受託や、引き渡し業務を担当する職種です。海外においても日系企業の対応を担当する日本人の貨物ハンドリングの需要があります。特別なスキルや資格が不要なので未経験からでも挑戦しやすい職種です。

・空港内カスタマーサービス

空港で働くスタッフは航空会社の社員だけではありません。例えば旅行会社のツアーなどで来たお客さんに、空港内を案内したり、ホテルまで送迎したりするカスタマーサービスの担当が必要です。

日本人のお客さんが安心して空港を利用できるようにサポートする、日本人のカスタマーサービスの求人があるのです。

・航空業界の企業の一般職(営業職・事務職など)

航空業界の企業には旅客分野だけではなく、貨物を運ぶ運送会社も含まれます。このような企業の営業職や事務職に就けば、空港内のオフィスで働けるチャンスがあります。

日系企業であれば、海外においても営業職や事務職で日本人を対象とした求人があります。

このように海外の空港においても、日本人が働ける職種はいくつも存在するのです。

海外の空港で働くグランドスタッフの求人

続いては、前述した空港で働く職種の実際の求人についてみていきましょう。最初に紹介するのはシンガポール空港所勤務の中途採用求人です。

募集ポジションは「空港旅客サービス地上職スーパーバイザー」です。搭乗手続き・出発および搭乗口や手荷物受取所でのカスタマーサービスに従事します。またスタッフ10名程度のマネージメントにも携わります。

応募要件は「航空会社での空港旅客業務における経験がある」「英語と日本語でのコミュニケーションが可能」「長期に渡りキャリアを築きたいと考えている」の3つです。

日本でグランドスタッフとしての経験があれば応募できます。短期間での海外勤務ではなく、長期に渡り海外で生活したいと考えている方に向いている求人です。

未経験・英語が苦手でも応募できる貨物ハンドリング業務の求人

ただ、中には「未経験」「英語が苦手」という方でも応募できる求人があります。以下は、日本航空(JAL)が募集している正社員での採用案内です。

勤務地は中国の大連周水子国際空港です。大連周水子国際空港は日本から近く、関西空港までは2.5時間ほどの距離です。海外勤務とはいえ気軽に日本に帰れるのが魅力的ではないでしょうか。

担当業務は貨物ハンドリング業務・営業・予約などです。

応募資格はTOEIC600点程度の英語力(日常会話レベル)なので、「英語に自信が無い」という方でも問題ありません。

現地の国のビザ申請が必要な求人には注意

なお、海外の空港で働ける求人の中には日本人から人気のあるアメリカ・ハワイでの募集もあります。例えば、以下の求人はハワイのホノルル空港が職場となる求人です。

ホノルル空港内でのガイダンス業務を担当します。ツアー参加のお客さんに送迎バスの案内などを行います。また、空港近くのオフィスにて事務業務全般も担当します。

応募資格は「基礎的な英語力」「サービス業経験者優遇」「Jビザの申請が可能な方」と記されています。ここで、「ビザが要るなら無理なのでは?」と諦める方がいるかもしれませんが、Jビザは基本的にインターンシップなどで用いられるビザです。

就労期間が最大1.5年と定められているビザなので、比較的容易に取得できます。「短大以上の学歴」などで申請が可能です。

したがってこちらの求人は最大1.5年の勤務期間となります。ただし、この期間にあなたの優秀性が認められたり、現地で就活して就労ビザ取得のスポンサーとなってくれる企業を見つけたりした場合には、ハワイで長期的に働くことができます。

日本から「ハワイで就労ビザを取得してくれる企業」へいきなり就職するのはかなり大変です。ただ、このような求人へ応募し、渡航して実際に生活しながら転職活動を行う場合は就労ビザの取得が有利になります。

一方で、日本航空(JAL)が募集している以下のような求人は、就労ビザが必要です。

勤務地はアメリカのシアトルです。貨物ハンドリング業務に従事します。

応募資格のところに「米国において就労できるステイタスを所持していること」との記載があるため、アメリカでの就労ビザを保持していない方は応募できません。したがって、このような求人には応募しても無駄です。

航空運送事業の営業職の求人もある

グランドスタッフのような空港内勤務ではありませんが、航空会社での営業職に就くポジションもあります。以下は全日本空輸(ANA)のジャカルタ駐在員事務所での募集要項です。

インドネシアの日系企業へ向けて、航空運送事業のセールスが主な業務内容です。「将来的にはジャカルタ空港所での勤務の可能性」との記載があるので空港内勤務も期待できます。

応募条件は「営業に必要なコミュニケーション能力がある」「PC操作(ワード、エクセル、パワーポイントなど)を含む基礎的なビジネスを有している」「5年以上の就業経験(就労ビザの取得で必要となるため)」「ビジネスレベルの英語力」です。未経験であっても問題ありません。

また、この求人の場合は契約期間が無く、期間の定めがない長期社員として採用されます。憧れのエアライン業界の営業職として経験を積むことができます。

海外インターンからグランドスタッフを目指すのは?

なお、航空業界で働きたいと考える人が多いため、海外の空港で働ける様々なインターンシッププログラムが組まれています。

就業経験のない大学生であれば、このようなプログラムに参加する価値はあります。就職活動のときに大きなアピール材料となるからです。ただ、社会人になって転職活動する上ではインターンの経験があるからといってメリットにはなりません。

しかも簡単に申し込みできるインターンシップのプログラムは無給どころか有料のプログラムが存在し、時間とお金をかけて参加しなければなりません。

例えばオーストラリアのブリスベン空港内のインフォメーションセンターにてインターンシップの募集が出されています。以下はそのインターンシップの期間と費用です。

4~6週間のインターンの参加費用は2,750オーストラリアドル(20万円程度)です。さらに別途、滞在費用や食費が必要になります。

しかもインターンシップに参加したところで、そのまま雇ってもらえることはなく、職歴にもならないので単なる経験として終わってしまいます。

これだけの時間とお金をかけるのであれば、複数の転職エージェントに足を運んで上記で説明したような求人を紹介してもらい、受けていく方が効率的です。そのため空港で働くことを考えているのであれば、インターンシップは考えないようにしましょう。

まとめ

海外の空港で働ける職種には、グランドスタッフ・貨物ハンドリング職・空港内カスタマーサービス・航空関係企業の一般職など様々なポジションがあります。

これらのポジションでは日本人顧客の対応をする日本人が必要なのです。そのため海外の空港で求人を探せば、意外と転職先が見つかります。

ただし求人数は多くなく、「海外の空港で働きたい」と考える人がたくさんいることなどから、受付が開始されると同時に申し込まなければ締め切られてしまいます。したがって複数の転職サイトに登録して、常に求人情報へのアンテナを張っておく必要があります。

海外勤務を考えるとき、空港業務は人気職種の一つです。そのため、事前にどのような対策をすればいいのか理解したうえで転職活動を進めましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。