建築業界といえばハードワークで有名です。「休日出勤は当たり前」「毎日残業」という労働環境も珍しくありません。このとき海外転職であれば、そのようなハードな生活から抜け出すことができます。

実は建築業界である程度の経験・スキルがあれば、海外転職は難しくありません。海外でも日本のゼネコン・建築会社はクオリティー・信頼力の高さから需要があるからです。

また海外では、日本よりも良い労働環境下に身を置くことが期待できます。さらに、ほとんどの求人が日系企業のため語学力は求められません。その他、海外転職すると「現地スタッフの指導」「海外ならではの技術を学ぶ機会」など、日本にはない経験ができ、あなたのキャリアにとってもプラスとなります。

ここでは、建築士・設計士・施工管理者など建築業界の経験がある方に向けて、海外転職の魅力や仕事内容・雇用条件について紹介していきます。

海外の建築業界に転職する4つの魅力

まずは、海外の建築業界へ転職する魅力について述べていきます。大きく以下の4つが挙げられます。

  1. 日本よりも良い労働環境が期待できる
  2. 日本国内に比べ、年収アップが狙える
  3. 高い語学力を求められず、英語力ゼロでも問題ない
  4. 東南アジアに限らず、ヨーロッパ・アメリカでも勤務可能

それぞれ詳しく見ていきましょう。

日本よりも良い労働環境が期待できる

前述した通り、日本の建築業界は休日出勤や残業が多く、ハードワークは珍しくありません。特に、建築業界は重層下請構造があるため、下流の下請企業になるほど低利益・低賃金のブラックな環境になってしまいます。

一方で海外進出する日系企業の多くは大手建設会社であり、一次請負ができるので利益が多く、整った労働環境を期待できます。また海外の場合、労働者の権利が強い国が多く、長時間残業や休日出勤に対するルールが厳格に守られます。

そのため海外の建設業界に転職すると、日本で働くよりもストレスが減ることが期待できます。

日本国内に比べ、年収アップが狙える

なお建築士・設計士・施工管理者は日本においても賃金が高い職種です。ただ海外転職では、さらなる年収アップを狙えます。例えば以下の求人を見てみましょう。

ミャンマーで駐在する建築施工管理職を募集しています。具体的には、「物流施設・店舗開発のマネジメント業務」「計画案件のプロジェクトスケジュール作成」「概算工事費算出業務」「設計監理業務」といった施工管理や設計の業務に従事します。

日本での仕事と大きく異なる点は、「ローカルスタッフの技術面指導業務」です。現地スタッフを育成するのは日本人技術者の大きなミッションであり、ミャンマーの社会貢献にもつながります。

このとき給与は「経験・スキルによっては年収1200万円以上も提示有」となっています。ただし、一級建築士または一級建築施工管理技士の資格が必須です。物価の低いミャンマーでこれだけの給与が貰えたら、かなり贅沢に暮らせます。

このような求人に応募すれば年収アップを実現できます。

高い語学力を求められず、英語力ゼロでも問題ない

また海外転職を考えたときに、一番気がかりなのは「語学力に自信がない」という点ではないでしょうか。海外で仕事をする限り、一般的にはある程度の語学力が求められます。

しかし建築業界においては、就職先は日系企業が多く、あなたの語学力よりもスキルや経験が重視されます。そのため「日常会話レベルの英語力」「語学力不問」といった求人が多く見られます。例えば以下の求人がこれに該当します。

勤務地は中国・上海にある設計事務所です。ここで、「温泉施設の建築設計士」を募集しています。中国では温泉ブームが始まり、質の高い温泉施設の需要が高まっています。そのため日本で施設設計の経験がある人材を探しているのです。

仕事内容としては、温泉施設のインテリア・ランドスケープ・露天風呂といった建築設計に従事します。応募条件は「関連職務2年以上」のみです。ここでは「語学力不問」の記載があり、語学力に自信がない場合はこのような求人を探してみると良いです。

東南アジアに限らず、ヨーロッパ・アメリカでも勤務可能

日本のゼネコンや建築会社は、技術力・品質の高さ、また仕事が丁寧といった理由から海外において高い需要があります。特に東南アジアでは経済成長が著しく、海外から進出する企業も多いので工事の受注が増えています。

このような背景から、スキルを持った日本人の建築技術者は東南アジアで需要があり、大変重宝されます。

一方でヨーロッパやアメリカなどの企業も、高度な技術を持つ日系の建築・施工会社に依頼します。そのため、アジア以外にもアメリカやオセアニア、ヨーロッパなどでも求人を見つけることができます。例えば以下のような求人です。

勤務地は北米を含めた海外です。開発案件のプロジェクトマネジメントを担当します。

応募必須条件は「設計事務所・建設コンサルタント・ゼネコンなどで設計あるいは施工管理経験」「一級建築士あるいは一級建築施工管理技士の資格」「ビジネスレベルの英語力」などです。英語圏で働く場合、ビジネスレベルの英語力が求められることは一般的です。

ちなみに、東南アジアだと英語力は求められません。ただ「アジアではなくアメリカやオーストラリアなどで働きたい」という場合も、このような求人に応募すれば実現可能です。国の選択肢が豊富にあるのは魅力的ではないでしょうか。

建築設計・施工管理で海外就職する場合、何が必要か

それでは実際に海外の建築業界に転職する場合、具体的な仕事内容・雇用条件はどのようになるのでしょうか。また、日本国内で建築・設計・施工管理の経験がある人は、海外の就職先で何が求められるのでしょうか。

これについては、一般的に以下の経験があるといいです。

  • 一級建築士の資格があると優遇される
  • 設計の仕事に就くにはCADが必須
  • 施工管理は経験があればOK

それぞれ詳しく述べていきます。

一級建築士の資格があると優遇される

一級建築士の資格を持っている場合、多くの求人で優遇されます。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地は中国・上海にある建築設計会社です。ここで、「都市開発やリゾート開発のマスタープラン策定」「建築・室内・景観の設計」「施工指導」「デザインコンサルティング業務」を担当します。都市開発やリゾート開発といったスケールの大きいクリエイティブな仕事ができます。

必須条件に建築士の資格は不要ですが、「一級建築士」の資格があると優遇されます。中国は建築業界の世界シェア上位を占めています。そんな中国で建築士としての実績をつくれば、その後のあなたのキャリアにプラスに働きます。

設計の仕事に就く場合はCADが必須

海外で建築設計の仕事に就く場合、CADは必須となります。ただ使えるだけではなく、実務経験が必要です。例えば以下の求人を見てみましょう。

ニュージーランドにある建設会社で設計士を募集しています。ニュージーランドの住宅や店舗・学校などの新築・改築・増築の設計を担当します。住宅の場合だと、プランを作成してお客さんに提案し、AutoCADを使用して施工図面を作図します。

応募必須条件は「AutoCAD経験があること」です。また、設計士の資格保持者は優遇されます。こうした経験があるからこそ、求人に申し込むことができます。

ちなみにニュージーランドは世界中から移民が集まるため、ビザの取得が難しい国の一つです。しかしCADの実務経験があれば、自然の美しいニュージーランドで設計の仕事に就くことが可能となります。

CADマネージャーのポジションに就くことも可能

また、CADが使えると以下のようなマネージャー職での求人にも応募可能です。

フィリピンにある日系企業でCADマネージャー兼技術担当を募集しています。「鉄筋事業の積算」や「日本の大手住宅メーカーから受注した建築図面のCAD製図」を主な事業とした会社です。

ここで、「スタッフのマネジメント」「図面チェック」「新規クライアントの導入~運用」「見積書の作成」「プロジェクトの改善と発展」などに従事します。応募条件は「建築CAD経験」「木造住宅の知識」「英語でのコミュニケーションスキル」があることです。

このように建築業界でCADの実務経験のある方は、海外でも設計関係の仕事に就職できます。

施工管理は経験があればOK

なお日本と同様、施工管理業務は特に資格が必須ではありません。ある程度の経験があれば海外でも転職は可能です。例えば以下の求人を見てみましょう。

勤務地は日系大手建設会社のインドネシア支店です。工事現場で「安全管理」「品質管理」「工程管理」「工事現場の写真撮影」など施工管理業務全般を担当します。

応募条件は「ゼネコン企業で2年以上の経験」「英語の読み書きが堪能」のみです。ここで、「英語の読み書きが堪能」というのは、英語を読めること・英語で書けることであって、英語のスピーキング力は求めていないことを意味します。

つまり英語の文書を読んで理解でき、英語でメールのやりとりができればOKなレベルです。英語が苦手な場合でもこの程度であれば問題ないのではないでしょうか。

一方で、給与は手取り53~61万円との提示があります。インドネシアの最低賃金は月34,000円程度なのでかなりの高給と言えます。

物価の安いインドネシアで豪華なコンドミニアムに住み、お手伝いさんを雇って暮らすことも十分可能です。

建築施工管理技士があればさらに有利

ちなみに、施工管理の経験に加えて「建築施工管理技士」の資格があれば、さらに就職先の選択肢が広がります。二級建築施工管理技士であればハードルは高くありません。例えば以下のような求人にも応募できます。

マレーシアにある総合不動産企業が「設計・施工管理の管理職」を募集しています。賃貸コンドミニアム・貸店舗等の設計から工事監理・施工管理、さらに営業支援に至るまで幅広い業務に従事します。

応募必須条件は「普通自動車免許」「建築士あるいは建築施工管理技士の資格」を持つことのみです。「高卒以上」の記載があるので学歴は問われません。さらに語学も不問です。

建築ラッシュのマレーシアで日本の建築技術を浸透させることのできる、やりがいある仕事です。建築士や建築施工管理技士の資格があれば、施工管理のポジションに海外転職する場合に選択肢が増え、より希望に合った求人を見つけやすくなります。

施工管理であれば未経験や経験が浅くても海外転職は可能

一方で、海外の施工管理職に転職したいと考えている人の中には「経験が浅い」という方もいるでしょう。実は海外にある日系建設会社の施工管理担当者は不足傾向にあるので、経験があまり無い場合でも就職可能です。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務先はタイにある工場の建築や増改築などを手掛ける企業です。日本人ならではの提案力や質の高いサービスが現地で支持を集めています。人員が足りておらず、たとえ経験が浅くても日本人の施工管理を採用したいのです。

仕事内容は「プロジェクトスケジュールの作成」「職人の配置、重機の手配」「タイ人スタッフへの監督・指導」「施工スケジュールの管理・調整」などです。

日本での施工管理の業務と異なる点は「現地スタッフの教育」です。日本人の部下に指導するのとは勝手が違います。タイの文化やタイ人の性格、風習などをよく理解した上で教育を進めていく必要があります。最初は難しく感じるかもしれませんが、社会貢献度の高いやりがいのある仕事です。

応募必須条件は「建築系の現場管理経験」です。「〇年以上の経験」という指定はなく、「施工管理経験が浅くても応募可能」との記載があるので、あまり経験の無い人でも挑戦しやすいです。

未経験でもOKな求人もある

しかも中には、未経験でも施工管理として就職できる求人も存在します。建築系大学を出ていれば、新卒でそのまま海外に就職できるケースがあります。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

シンガポールにある建築会社で建設現場管理者を募集しています。ここで、管理業務・入札業務・建築図面の作成など建築に関わる業務全般を担当します。応募条件は「建築系大学を卒業している」ことのみです。英語は得意でなくても学んでいく意欲があればOKなので問題ありません。

「新卒を受け入れる」ので教育体制が整っています。このような求人に応募すれば、日本のブラックな労働環境で経験を積むことなく、そのまま海外就職が可能となります。

・イチから教育してくれる語学不問・経験不問の求人

さらには、求人件数は少なくなりますが「建築業界は初めて」という場合でも施工管理として就職できるチャンスがあります。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地はベトナムにある建築設計や施工管理を主に行う日系企業です。ここで「設備施工管理アシスタント」を募集しています。経済成長が著しいベトナムで事業を安定的に運営するため、日本人の施工管理を探しています。

仕事内容は、「空気設備・電気設備・クリーンルーム設備などの施工管理業務アシスタント」です。日本人マネージャーの下でイチから業務を学ぶことができます。しかも応募必須条件は「4年制大学を卒業していること」のみです。語学力も施工管理経験も問われません。

憧れの海外で働きながらスキルを身につけ、同時に経験も積めるので魅力的といえます。

まとめ

日本の建築業界で経験を積み、知識と技術を身につけていれば海外転職は簡単です。アジアだけでなく、アメリカやオセアニアといった英語圏やヨーロッパでも活躍できます。しかも日本の労働環境よりも整っていることを期待でき、収入アップも狙えます。

一方で語学力に自信がなくても応募できる求人が多く、建築業界の経験者にとって海外転職は魅力的だといえます。

さらに、「一級建築士」「CADの実務経験」「一級・二級建築施工管理技士」といった経験や資格を保持していれば就職の選択肢は大きく広がります。未経験ですら可能ですが、既に経験があって資格がある場合はより有利になるのです。

まずはあなたの条件で応募できる求人を探してみましょう。海外転職エージェントはそれぞれ紹介している求人内容が違うので、なるべく複数の転職サイトに登録することをおすすめします。

もしあなたが今の労働環境に満足できていないのであれば、海外の建築業界で納得のいく仕事を探してみましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。