あなたがもし、「日本のパンが大好き」「パン作りが楽しい」というパン職人なら、海外で働くチャンスはいくらでもあります。しかも他の職種ではあまり求人を見かけないような国でも、比較的簡単に仕事を見つけられます。

「しかし、英語が話せない……」と躊躇する方もいるかもしれませんが、手に職を持った経験豊富なパン職人であれば、語学力は問題になりません。現在、もしあなたが日々の業務に対して物足りなさを感じているのであれば、海外転職は最大のチャンスといえます。

海外でパン職人として転職する場合、パン製造から商品管理・スタッフのマネジメント・新商品開発に至るまで幅広いポジションを任される業務が多いです。特に、自分が開発した商品がパン屋やホテル・ベーカリーカフェに並び、地元の人から支持を得られたら大きなやりがいを感じるでしょう。

日本のパンは世界で十分通用する美味しさです。そのため海外で経験を積み、いずれ独立して海外で自分のパン屋を開くのも一つの選択肢です。

それではパン職人として海外で活躍するためには、どのような国で求人があり、どのようにして仕事を探せば良いのでしょうか。その方法について詳しく紹介していきます。

パン職人の修行先として海外はふさわしい?

自分の技術を世界に広めるために海外転職を考える人がいれば、パン職人として腕を磨くために、「海外で修行を積みたい」と考える方もいると思います。しかし、私はフランスを含め世界各国でパンを食べてきましたが、日本のパンが一番おいしいと断言します。

もちろんこれには賛否両論あると思いますが、日本のパンが十分おいしいのに「わざわざ海外に出て腕を磨く必要はあるのか」と疑問に感じてしまいます。また、海外で修行する大きな問題点として「日本の小麦粉と海外の小麦粉は性質が違う」という点が挙げられます。

ヨーロッパでプロのパティシエとして活躍している友人に聞いたのですが、日本の小麦粉とヨーロッパの小麦粉では「味・仕上がり・色の全てにおいて異なるため、扱い方が全く異なる」と話していました。

その中でも、日本の小麦粉の方が圧倒的においしく仕上がるそうです。そのため彼女の店では、小麦粉は全て日本から輸入しています。

また、外国でパン作りを学んだとしても前述の通り小麦粉の取り扱いが異なるため、日本に帰って日本の原材料を使用して全く同じように仕上がるわけではありません。

海外は湿気や気温なども日本とは異なるため、日本のおいしいパン屋で日本と同じ気候の条件で学ぶほうが、学んだことをそのままパン作りに活かせます。また、ヨーロッパには日本の惣菜パン(焼きそばパン・カレーパン・たらこパンなど)やあんパン・メロンパンなどは存在しません。クロワッサンやバケットが主流です。

フランスのパン屋さんのクロワッサンやフランスパンは確かにおいしいです。ただ、「毎日食べたい」とは正直思いません。お店にバラエティー豊かな商品が並んでいる日本のパン屋さんの方が魅力的に感じます。

ちなみに以下はヨーロッパのパン屋の写真です。

クロワッサンやチョコデニッシュパン、キャラメルナッツパイなど甘いパンは安くておいしいです。ただデニッシュやピザ系のパンはかなり高い値段設定です。また、国によってオリジナルのパンやパンの文化があります。

そのため、「海外のパンを知る」「海外の人気パン屋のマーケティング法を学ぶ」「グローバルな店に展開するためのヒントを探す」といった目的があるのであれば、海外に行くのもいいと思います。ただ、修行でなくても視察で十分です。

パン職人としての技術を磨きたいのであれば、海外に渡航しなくても日本にある「自分が一番お気に入りのパン屋さん」で修行経験を積むのが一番ではないでしょうか。

ただし、修行ではなく「自分の技術をグローバルに活かしたい」「海外で自分の店を開業したい」「海外で生活したい」という方には海外転職はおすすめです。

日本のパンは世界で通用する味なので、その技術を持ったあなたが海外で活躍できる場は豊富にあります。

パン製造経験があれば、英語力が無くても海外転職できる

パン職人は専門技術職です。パンの製造過程において、他のスタッフと多くのコミュニケーションをとる必要はありません。また指示や依頼内容はだいたい同じなので、英語が全く話せなくても必要な単語をいくつか覚えれば、仕事を進める上で困ることはありません。

そのため、英語力を特に求めない求人が豊富にあります。例えば以下はタイでパン職人を募集している求人票です。

勤務地はタイのバンコクです。大手チェーンレストランやコンビニ・ホテル・カフェに卸す新商品のパン開発と、現地タイ人スタッフの技術指導が主な業務です。また、仕事に慣れたら生産管理も担当します。

必要資格には性別・年齢・言語の全てにおいて「不問」の記載があります。ただし、社内公用語はタイ語のため、入社後はタイ語の勉強が必須となります。必須スキルは「3年以上パン屋でパン製作経験」または「パティシエ経験」です。

選考段階では語学力は一切求められません。また新商品開発に携われるので、自分の開発したパンが市場で販売されることに大きなやりがいを感じられる仕事といえます。

通訳の付いたパン職人のポジションもある

パン職人としての技術を現地スタッフに教えるために、通訳が用意されたポジションが存在します。5年以上の製パン経験があれば以下のような求人に応募できます。

勤務地は中国です。仕事内容は「パン類食品開発」「製パン技術指導」「店舗サポート」「展示会サポート」などです。応募必須条件は「製パン経験5年以上」「菓子パン・食パン・デニッシュなどが得意」です。専属通訳がいるため英語や中国語は求められません。

また、年齢制限もなく「定年を過ぎていても大歓迎」との記載があります。その他、寮が無料、国内交通費全額支給、不定期的ボーナスの支給など福利厚生も充実しています。

このようにパン職人として海外で働く場合、語学力は求められないケースが多いです。それどころか、通訳が用意されている好待遇な求人まであるのです。

語学力を活かせるパン職人の求人もある

もちろんビジネスレベルの英語力が必要な求人も存在します。例えば以下のような求人です。

シンガポールにあるパン屋でベーカリーシェフを募集しています。仕事内容は、お店またはセントラルキッチンでの製造業務全般・売上管理・計数管理・スタッフの育成と指導です。高い品質と安定した味の商品が提供できるようにローカルスタッフに指導するのも大きな役割の一つです。

このようなポジションの場合は、スタッフとの密なコミュニケーションが必要なため英語力が必須となります。その代わり月給は40万円以上と高額です。英語が得意なパン職人は、このような語学力とあなたのスキルを活かせる求人に応募するといいです。

求人数の少ない国でもパン屋の求人は存在する

なおパン職人の求人だと、営業職や事務職など一般的な職種では見かけない国での求人が存在します。例えば中東のアラブ首長国連邦に属するドバイは求人数が豊富にある都市(首長国)ではありませんが、パン屋の求人はいくつか存在します。

例えば以下のように、アブダビのパン屋でシェフ1名とアシスタント2名を募集しています。

シェフは製パン業務だけでなく、外国人のスタッフのマネジメントまで担当します。アシスタントはシェフのサポートに従事します。

シェフの応募資格は「パン屋でのマネジメント経験がある」「アシスタントはパン屋での窯焼き経験」が必要です。英語力については特に記載がありませんが、シェフの場合は現地スタッフへの指導も行うので、ある程度英語を話せる必要があります。

福利厚生には2年に1度の帰国費用と1ヶ月の休暇が含まれます。海外で仕事をすると日本に長期間なかなか帰国できないので、1ヶ月ものバケーションがもらえるのは恵まれているといえます。

日本人が憧れる南国リゾート地でも働ける

なお日本人の中で常に高い人気を誇るハワイ(アメリカ)は、「日本からの求職希望者が多い」「就労ビザの取得が難しい」ことなどから、なかなか仕事が見つからないエリアになります。

そのようなハワイでも、パン職人としての経験があれば働くことができます。例えば以下のような求人があります。

勤務地はハワイの中心地であるホノルルです。パンの製造・パンの製造技術の指導・衛生管理・原材料在庫管理などキッチン業務全般を担当します。

応募必須条件は「日本のパン屋でプロのパン職人として製造経験がある」のみです。ただ現地スタッフの管理育成が必要なため、それなりの腕が求められます。

また、月給は約33~44万円(1ドル110円で算出)です。さらに医療保険が全額会社負担なので、医療費の高額なアメリカでも安心して生活できます。

一方で、パン職人は早朝に起きて働かなければなりませんが、気候が安定していて朝日の美しい南国ハワイなら、それも苦にはならないでしょう。

日系パン屋で幹部候補生の募集

前述した通り、アメリカは就労ビザの取得が厳しい国の一つです。しかしアメリカのロサンゼルスにおいても、経験豊富なパン職人の求人があります。しかも将来的には幹部を目指せるポジションです。

こちらはアメリカ・ロサンゼルスで5店舗のベーカリーショップを運営している会社です。現地に住んでいる日本人だけでなく多国籍のお客さんから支持を得ているパン屋です。日本独自に発展したパンは、海外でも広く受け入れられているのです。

パン工場での製造・衛生管理・新商品開発・物流管理・計数管理を担当することになります。応募条件は「パン職人として経験豊富である」「粉からパンを作る経験がある」ことです。求人票には「英語よりも腕とやる気」のある方を求めています。

高いパン製造技術があれば英語力は問題にはなりません。ただし、ゆくゆくは様々な人種のスタッフ60名を指導していくポジションなので、渡航後に英語を勉強する覚悟は必要です。

このようにパン職人に留まらず、現場のマネジメントなどによってステップアップしていき、幹部を目指せるキャリアパスがはっきり示されている求人は魅力的といえます。

インターンやワーホリでも製パン経験が必要

なお、「まだパン職人としての実務経験が無く、これからパン職人として経験を積みたい」という人の中には、海外のインターンシップ(インターン)やワーキングホリデー(ワーホリ)で技術を磨くことを検討している方もいると思います。

しかし、残念ながらインターンやワーホリであってもパン職人としての技術や経験が求められます。例えば以下では日系パン屋で有給インターン生を募集しています。

アメリカのシアトルにある高級住宅街にあるパン屋に勤務します。仕事内容は製パン作業です。社内はほとんどが日本語のため、英語力は日常会話レベルで問題ありません。応募条件は「パン職人としての経験があること」です。

有給インターンなので最初の3ヶ月は14万円程度、4ヶ月以降は16万円程度(1ドル110円で算出)の給与がもらえます。ただし、物価の高いシアトルでこの給与では正直、生活は楽ではありません。また、雇用期間は12ヶ月と決まっています。

このようなインターンに応募しても、即戦力を求めているので、一からパン職人としての技術が身につくわけではありません。そもそも未経験では応募できないのです。

その上、ほとんど日本語で仕事ができるため「英語の勉強にならない」「給与は安くお金も貯まらない」ということでメリットはないといえます。

未経験可能な上に語学学校サポートの付いたパン職人の求人

ただインターンやワーホリでなくても、一般求人で未経験から挑戦できるパン職人の求人があります。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地はアメリカのボストンです。パン職人としてパン製造を担当しますが、未経験の場合は一からトレーニングしてくれます。応募資格は手先が器用でスピーディに丁寧に仕事ができることのみです。

英語力は不問です。しかも、福利厚生に語学学校のサポートまで含まれているので「語学力の向上」「パン製造の技術を取得する」という二つの目的を叶えることができます。

まとめ

日本で経験を積んだパン職人であれば、世界で活躍する場があります。そこに英語力は求められません。あなたの腕だけで海外転職できてしまうという、とても恵まれた状況です。

ここで紹介した通り、多くのポジションで、製パン業務だけでなくマネジメントや教育・指導、新商品開発といった幅広い仕事に従事できます。パン職人としてだけでなく、語学力やビジネススキルまで身につけられます。

つまり海外転職を実現すればパン職人として大きくキャリアアップできるのです。ちなみに上記で紹介した求人は全て、複数の転職サイトから見つけています。このように幅広い選択肢のある求人を探すには、まず複数の転職サイトに登録してください。

当然、転職エージェントによって強みとしている国・エリアがあります。そこでなるべく選択肢を広げ、あなたの納得できる求人を選ぶといいです。

日本国内に留まっておいしいパンを作り続けるよりも、日本のおいしいパンの技術を世界に広めて、世界に誇れるパン職人を目指しましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。