海外転職を考えている方の中には、企業の購買部門やバイヤーとして海外で活躍したいと考える方もいると思います。

購買部門であればメーカーなどの海外支店の求人があります。ただし、一般的には購買経験と語学力が必須になります。また勤務地はアジア圏です。

一方で、バイヤーを希望する場合は経験や語学力が求められないことが多いですが、海外勤務ではありません。基本的に日本からの出張となります。ただ、アジア以外にヨーロッパやアメリカへ出張する機会があります。

このように企業で仕入れを担当する購買部門やバイヤーの仕事で海外就職を考えている場合、勤務地や求められるスキル、雇用条件などが大きく異なります。

ここでは購買・バイヤーの経験者・未経験者に向けて、海外転職する場合のポイントを紹介していきます。

購買とバイヤーの仕事内容について

まずは未経験者の方のために、購買とバイヤーの仕事内容について解説していきます。購買もバイヤーも「企業の仕入れ業務」に従事します。ただし、仕入れるものが異なります。

購買部門の場合は、原材料や部品・設備・備品・消耗品などを購入するのが仕事です。購買部門に求められることは、質の良い資材を必要なときに必要量をできるだけ安く仕入れることです。

信用できる取引先から納期・コスト・品質など考慮しながら資材を調達します。私自身、メーカーの商品企画部門で働いていたときに購買担当の方に対して資材調達や納期の相談をする機会が多かったです。

メーカーの場合は製品の原価を下げることで利益が上がるため、購買部門は常に取引先との価格交渉に追われていたイメージがあります。

そのため、購買部門で働きたいと考えている方はプレッシャーに強く、交渉力・コミュニケーション能力の高い人が向いているといえます。

バイヤーは自社販売する商品をインポート(輸入)する

続いてバイヤーの仕事についてです。購買担当者は資材を調達するのに対し、バイヤーは既に出来上がっている商品を仕入れます。

例えば、アパレルメーカーなどでインポート(輸入)ブランドを取り扱っている会社では、バイヤーが海外で仕入れた商品を販売しています。出来上がった商品を買い付けるため、その商品が売れるかどうかはある意味、バイヤーの洞察力やセンスにかかっています。

ただ、「これがかわいい」といった独断的な理由で買い付けるのではなく、入念なトレンドリサーチを行い、売り場づくりのことまで踏まえた上で買い付ける商品を決定します。また、販売価格を想定しながら海外の取引先と価格交渉を行うのもバイヤーの重要な仕事です。

購買担当もバイヤーも自分が仕入れたものが市場で販売され、ヒット商品や流行のブームにつながれば大きな達成感を得られます。プレッシャーはありますが、その分やりがいの大きい職種といえます。

海外の購買部門に転職する場合、語学力は必須

前述した通り、購買担当者は資材の取引先と様々な交渉を行います。そのため海外の取引先の場合、英語あるいは現地の語学力(ビジネスレベル)が必須となります。例えば以下は日系大手メーカーの購買部門での求人内容です。

勤務地はベトナム・ハノイです。購買担当者として、調達先の開拓や材料の品質管理、材料発注在庫管理、部下マネジメントに従事します。

応募必須条件は「ビジネスレベルの英語力」「海外購買経験2年以上」「適正在庫管理や品質管理の知識」を有することです。ビジネスレベルの英語は社外との取引で必要となります。この求人では語学力・購買経験共に高いレベルが求められます。

年収は400~500万円の提示があります。しかも、会社保有のマンションに住めたり食事の補助があったりするため、家賃は不要で食費も抑えることができます。

物価の安いベトナムでは十分な待遇といえます。さらには帰国手当や渡航費用も会社が負担してくれます。上場企業ならではの充実した福利厚生です。

未経験から挑戦できる購買の仕事もある

基本的に購買部門の求人では、ある程度の経験を求められることが多いです。しかし「購買部門での経験が浅い」「購買未経験から挑戦してみたい」といった方でも挑戦できる海外求人もあります。

例えば以下は、日本大手居酒屋チェーンがアジアに初進出するため、購買(調達)スタッフを募集しています。

勤務地は経済成長の著しいインドネシア・ジャカルタです。まずは、飲食店において最も重要な食材・食品の調達先を探します。さらに、取引先から店舗までの物流ルートを選定して複数店舗への効率的な物流システムの構築を行います。

その他、日本や海外からインドネシアに輸出入する物品の管理も担当します。また、購買業務に加えて店舗管理も任され、現地スタッフの育成や店舗の発注管理などに従事します。

応募必須条件は「英語スキル(ただし日常会話レベルでOK)」「Excel操作スキル」のみです。英語力は日常会話レベルで問題ありません。人柄や意欲が重視されるため経験や学歴も問われません。

語学力・経験共にあまり求められない求人は少ないですが、探せばこのように見つかります。

購買部門の海外の勤務地はアジアが中心

ここまで紹介した求人は勤務地がアジア圏でした。他にもフィリピンや香港・シンガポール・タイなどの求人はありますが、ヨーロッパやアメリカでの求人は基本的に見つけることはできません。

その理由は、日本で売られる商品の原材料や部品などの多くの仕入れ先が生産工場のあるアジア圏だからです。そのため「海外の購買部門で働きたい」と考えている場合は、勤務地はアジア圏のどこかの国になると考えておいた方がいいでしょう。

「購買での海外転職=アジアの国で働く」となるのです。

バイヤーであれば未経験・語学力が低くても海外転職できる

一方で未経験から海外で仕入れの仕事に就きたい場合、購買を狙うよりもバイヤーに挑戦することをおすすめします。バイヤーの場合は未経験であったり、語学力が低かったりしても海外転職可能な求人が豊富にあります。

例えば以下は、未経験や語学力がなくても応募できるバイヤーの求人です。シンガポールで日本食の輸入販売をしている企業が日本食バイヤーを募集しています。

勤務地はシンガポールです。取扱商品を日本へ発注して、輸入手続きや価格設定を行います。また、日本へ出張して仕入れる商品を取引する各問屋との商談に携わります。この場合、交渉相手は日本の問屋になるため英語力は求められません。

応募条件は「35歳未満の独身男女」「4年制大学を卒業している」「2年以上シンガポールで勤務できる」ことです。なお、小売業や卸売業の実務経験者は優遇されます。

福利厚生には住宅手当や年に1度の健康診断が含まれます。海外の会社では、一般的に「年に1度健康診断を受けさせる制度」はありません。

「日本では年に1度、会社の費用で健康診断を受けるのが一般的」という話をヨーロッパの人に話したところ、驚かれたことがあります。「なんでそんな権限を会社が持つのか」と怒っていました。

個人を尊重する文化の強い国の人には理解できないようです。プライバシーを守りたい気持ちが強い上、海外の人は「病気になるのは自己責任」という考え方を持っています。したがって海外にある日系企業では、雇用している日本人に年に1度の健康診断を実施しない会社も多いのです。

また、これは直接的な福利厚生ではありませんが、このポジションの場合は日本出張の機会があるため、仕事を兼ねて日本に帰国することができます。海外で暮らしていると日本への帰省費用はそれなりに高いので、出張で日本に帰れるのは大きなメリットです。

海外出張がメインの買い付けバイヤーの求人が多い

ただバイヤーの求人は基本的に、海外出張ベースの勤務条件となっています。必要に応じて海外に買い付けにいきます。つまり、「海外在住でバイヤー職に就きたい」と考えている方には、希望を満たす求人は少ないです。

一方で、「世界の色んな国に行ってみたい」という方には向いています。また、出張のときのみ現地通訳が同行することが多いため語学力も求められません。

例えば以下の求人であれば、出張でパリ(フランス)、ミラノ(イタリア)、ニューヨーク(アメリカ)へ月1~2回のペースで渡航できます。しかも語学力は求められません。

勤務地は東京です。海外ブランド品を買い付けるバイヤーを担当します。ヨーロッパやアメリカで仕入れた商品を百貨店や量販店、専門店などの取引先に提案して卸します。つまり、営業スキルも必要です。

ただインセンティブがあるため、あなたの頑張り次第では年収1,000万円も夢ではありません。実際に入社2年の25歳の社員で年収1,000万円稼いでいる方もいます。

この求人では、トレンドをキャッチする洞察力とファッションセンスが求められます。応募資格は「20~30歳くらいまで」「何らかの社会人経験を持っている」「ファッションに興味がある」のみです。語学力や経験は問われません。バイヤー業務に慣れるまでは先輩社員に同行して出張するため、時間をかけて学ぶことができます。

海外出張は月1~2回で、ヨーロッパなら1週間、アメリカなら3~4泊程度です。スケジュールは自分で組むため、きちんと仕事ができれば残りの時間は自由に観光したり、ショッピングを楽しんだりすることもOKです。

「海外旅行が大好き」「ショッピングが大好き」という方には、とても楽しい環境で働けるといえます。

バイヤーアシスタントからステップアップすることも可能

「海外旅行は好きだけど、いきなりバイヤーとして海外に買い付けにいくのはちょっと不安……」という方には、バイヤーアシスタントをおすすめします。

例えば以下の求人であれば、一部上場企業のグループ会社で、まずはバイヤーのアシスタントとしてバイヤー業務を一から学べます。

勤務地は東京都です。アシスタント業務では「商品データの入力(商品管理に必要なデータ入力)」「商品入荷サポート(物流部門と連携して商品入荷のスケジュール管理、入荷データの作成)」「マーケットの情報収集(バイヤーが商品を仕入れするために必要な市場調査)」に従事します。

その他にも、在庫管理や貿易事務に近い通関書類のチェックも担当します。このような業務を通してバイヤーとしての感覚を養っていきます。

アシスタント業務を一通り覚えた後は、バイヤーへとステップアップできます。その際はパリやロサンゼルス(アメリカ)への海外出張があります。

応募条件は「基本的なPC操作ができる」ことのみです。バイヤーアシスタントなので、未経験から挑戦できます。ただ、英語やイタリア語、フランス語を話せたり、貿易実務経験があったりすると選考において有利になります。

また、アパレル販売員からのキャリアチェンジや数字に強く、タフな人を求めています。一部上場企業のグループ会社なので充実した福利厚生があります。教育体制も整っており様々な研修に参加でき、希望すれば会社負担でスクール通学も可能です。

学ぶ意欲のある方にとっては、成長できる環境が整っている企業といえます。

バイヤー業務に加えてモノづくりにも携える求人

ここまでで説明した通り、バイヤーの仕事は基本的に商品の買い付けです。ただ、中には「買い付けだけの仕事では物足りない」と感じる方もいるでしょう。そうしたときバイヤー担当の中には、商品企画も兼任した求人が存在します。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地は東京です。レディースアパレル商品の買い付けを担当します。月に1~2回、韓国や中国などに出張します。事前に入念なリサーチ・会議をして仕入れる商品を検討します。出張先では現地通訳が同行するため、語学力は求められません。

そして商品を買い付けるだけでなく、オリジナル商品の企画から生産依頼まで幅広く担当します。自分の企画した商品が店頭に並ぶのは、とてもやりがいのある仕事です。

私の友達も、このようなアパレル企業でバイヤー兼商品企画を担当していました。彼女はその後、キャリアアップして大手アパレルメーカーで自分が立ち上げたブランドを持つほどにまで出世しました。

今では有名芸能人のスタイリストとしても活躍しています。元々ファッションセンスが良く、おしゃれが大好きだった彼女にとって、自分の強みを最大に活かせる仕事に就けたから成功できたのだと思います。

アパレル販売員からこのような求人に応募して、ステップアップしていくのも楽しいのではないでしょうか。この求人の応募資格は「高卒以上(学生は不可)」「30歳以上39歳以下」のみです。経験者は優遇されます。

また、育児休暇が取得しやすい企業でもあり、女性にとって安心です。「育児休暇を一年で7名取得中」との記載があるため、妊娠・出産しても退職することなく働き続けられる環境が整っています。

アパレル業界でバイヤー・商品企画としてのキャリアを長期に渡り築いていきたいと考えている方にとっては、ふさわしい企業といえます。

・男性でも応募できる海外バイヤー兼商品企画の求人

前述した求人は女性を対象とした求人内容でしたが、男性でも応募できる海外バイヤー兼商品企画の求人もあります。例えば以下の求人では、スポーツ用品を調達するバイヤーを募集しています。

勤務地は東京都です。スイミング・スキューバダイビング・ゴルフなどのスポーツ用品を販売している会社で海外バイヤーを担当します。

出来上がった商品を買い付けるのではなく、商品を企画するところから携わり、海外の協力工場(台湾・中国・韓国など)で生産した製品を日本に仕入れるのが主な仕事です。

具体的には、企画部門と連携してマーケットのニーズをつかみ商品を企画します。品質・価格・納期の条件を満たす海外仕入れ先を選定して、発注した商品を日本に入荷するところまで、幅広い業務を担当します。

応募必須条件は「社会人経験3年以上」「ビジネスレベルの英語力(TOEIC700点以上)」「最低限のPCスキル」「海外出張ができる」です。

その他、中国語のスキル、貿易実務経験、営業経験、スキューバダイビングCカード(技能認定証)を有する方は優遇されます。

「スポーツが好き」なことに加え、バイヤーやモノづくりへの興味を持つ方に向いている仕事といえます。

また、東京都ライフワークバランスに認定された企業でもあり、平均残業時間が少なく働き方改革を積極的に実践しているため、働きやすい環境を期待できます。

まとめ

企業の仕入れ担当である購買部門もバイヤーも一見同じような職種に見えますが、求められるスキル・勤務条件・勤務地が大きく異なることが分かってもらえたと思います。

海外転職で購買部門を目指す場合は、日本である程度のキャリアがあり、さらに語学力の高い人におすすめです。求人自体がないわけではありませんが、未経験や語学力に乏しい人にとっては求人の選択肢が少なくなってしまいます。

そのため、購買よりもバイヤーを目指す方がスムーズに転職活動が進むといえます。バイヤーの場合は未経験や語学が苦手な方でも応募できる求人が豊富にあります。中には商品企画にまで携われる求人もあり、幅広いスキルを身につけられます。

ただその場合、海外勤務は少なく国内勤務で海外出張するケースが多くなります。「どうしても海外に住みたい」というケースは別として、海外旅行やショッピングが好きな方にとっては魅力的な求人が多いでしょう。

さらに、アメリカやヨーロッパなどアジア以外の国を頻繁に訪れる機会があるのは海外バイヤーならではだといえます。

そうして、あなたが購買部門かバイヤーのどちらを狙うか決まったなら、転職サイトに登録してみましょう。このときなるべく複数の転職サイトに登録した方が求人の選択肢が増えるため、納得いく転職につながることを期待できます。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。