「海外で働いてみたいけど、英語が得意なわけではないし、特別なスキルも持っていないし……」という方には、コールセンターの仕事をおすすめします。

コールセンターの求人はアジアを中心に豊富にあり、あなたの希望を満たす求人を見つけるのは難しくありません。しかも、特別なスキルやこれまでの経験・語学力などが求められない案件も多く、学歴・性別・年齢不問といった日本人であれば誰でも挑戦できる求人が存在します。

ただ、「海外で楽な仕事をして、プール・ジム付きのコンドミニアムに住みながら贅沢な生活が送れる」というわけではありません。海外で生活すること、コールセンターで働くことならではのデメリットも数多く存在します。

いい面ばかりに惹かれて海外転職してしまうと、「こんなはずじゃなかった」などと後悔することになります。あらかじめメリット・デメリットを知った上で求人を探していきましょう。

また、向こう1~2年のことだけ考えるのではなく、「どのようにキャリア形成を図っていけばいいのか」という長期的なプランを視野に入れることで、海外転職の成功率が高まります。

ここでは、コールセンターの求人が増えている事情から、業界・仕事内容まで詳しく紹介していきます。またコールセンターのメリット・デメリット、キャリア形成を実現していく方法について述べていきます。

アジアを中心にコールセンターの海外求人が増えている

あなたはBPOという言葉を知っているでしょうか。「Business Process Outsourcing」の略であり、業務の一部を専門業者に外注することです。例えば膨大なデータ入力やデザイン業務、郵便物の準備・発送など自社以外でもできる作業を外部に委託するのです。

私が以前勤めていたヨーロッパの会社ではBPOを活用しており、データ入力・管理から経理に至るまで、多くの事務作業をフィリピンのBPO企業に外注していました。

こちらがきちんと指示をすればフィリピン人は正確かつ迅速に対応してくれます。私の上司は「時差があるのもありがたい」と話していました。退社するまでに依頼すると翌朝には業務が完了していることも珍しくないからです。

自社内で残業を誰かにお願いするよりも低コストかつ効率的なのです。BPOを活用することで、自分の業務に専念できる上、「必要な時だけ依頼できる」ため人件費を最小限に抑えることができます。

BPO企業の多くは、人件費や法人税が安い国で優秀な人材を集めて事業を運営しています。特に、マレーシア・タイ・フィリピンには海外から多くのBPO企業が進出しているのです。

その中で最も多い業務が「コールセンター」です。コールセンターといっても、旅行・航空・医療・IT・ネット通販・不動産など様々な業界があります。そのため、日本での経験を活かして同じ業界に海外転職することも可能です。

例えば旅行業界であれば以下のような求人があります。

勤務地はタイ・バンコクです。世界大手ホテルチェーンのカスタマーサービスでアドバイザーを募集しています。仕事内容としては、ホテルの会員権を持つ日本人オーナーに対し、予約やプロモーションの案内を行ったり、顧客データを管理したりします。

応募必須資格は「日本語ネイティブ」「英語ビジネスレベル(社内で使用)」です。英語力を活かしたい方におすすめです。

給与は約21万円(1バーツ3.5円で算出)との提示があります。また、年に1度の昇給査定・インセンティブがあるので、頑張った分だけ給料に反映されていきます。

・イギリス大手航空会社でコールセンター業務

また、航空業界であればイギリス大手の航空会社が日本人のコールセンター業務担当者を募集しています。

勤務地は香港です。航空券の予約・変更・発券業務が主な仕事内容です。その他、問い合わせに対応します。

応募必須条件は「日本語ネイティブ」「英語ビジネスレベル」です。月給は約22.5万円(1香港ドル15円で算出)以上との提示があり、経験・能力に応じて決まります。航空業界・旅行業界での経験があると優遇されます。

・医療、保険関連のカスタマーサポート

その他、医療業界であれば以下のような求人が存在します。

勤務地はタイ・バンコクです。医療保険会社でカスタマーサポートを募集しています。

具体的には、日本人旅行者や駐在員が海外で病気やケガをしたさいに電話対応を行います。必要に応じて、海外医療機関・医療派遣者による帰国の手配をしたり、報告書の作成やデータ入力したりなど幅広い仕事に従事します。

応募資格は「日本語ネイティブ」「日常会話レベルの英語スキル」「パソコンの基本操作スキル」があることです。

日本での事務経験や医療現場経験者・医療資格保有者などは選考において優遇されます。給与は基本給が約19万円(1バーツ3.5円で算出)で、年2回のボーナスが加わります。

このように、コールセンターには様々な業界が存在するので日本でのキャリアを活かして海外転職も可能です。

海外のコールセンターで働くメリット・デメリット

テレビやインターネット上では、海外のコールセンターに勤務しながら華やかな海外生活を送る日本人の特集をよく見かけます。実際にそのような情報を目にして海外転職に興味を持った方も多いでしょう。

ただ、海外のコールセンターでの仕事はメリットだけでなく、デメリットも存在します。それぞれ詳しく紹介していきます。

海外コールセンターのメリット

まずはメリットについてです。

・学歴、年齢、語学不問の求人がある

海外求人の場合、職種によっては「英語ビジネスレベル必須」など語学力が求められるケースが多いです。しかし、コールセンターの場合は日本語のみで働ける企業が数多く存在します。

例えば以下の求人であれば学歴・語学・経験・性別・年齢不問です。

勤務地はフィリピン・セブ島です。教育事業・コンサルなど多事業を展開する企業において、まずは日本語コールセンター業務に従事します。研修やマニュアルが完備されているので社会人経験が無くても問題ありません。

求人票には「語学力不問」「経験・スキル・学歴不問」「年齢・性別不問」との記載があり、「グローバルに活躍したい」という熱意があれば応募可能です。

月給は約14~28万円程度(1ペソ2.3円で算出)との提示があり、待遇も決して悪くありません。さらに、「家賃補助」「3か月毎の昇給」「年1度の日本帰国サポート制度」など充実した福利厚生が含まれています。

しかも将来的に英語を習得すれば、マルタ共和国やアメリカへの転勤のチャンスが用意されています。今は特別なスキルが無くても、このような企業に就職すれば世界を舞台にグローバルに活躍することが可能です。

・他の職業に比べて待遇がいい

ちなみに海外求人の中でも、コールセンターでは待遇が良くなりやすいです。ただ語学・スキル・学歴不問の中でもコールセンター以外の海外求人の場合、低賃金が提示される求人も少なくありません。例えば以下の求人では、特別なスキルや条件を求められないホテルのフロント業務の求人票です。

勤務地はパラオ共和国です。パラオ内のリゾートホテルで日本人顧客に対応するフロント業務を行います。

ただし月給は約5.5万円(1米ドル110円で算出)からのスタートです。しかも週休1日です。食事や住居が支給されるので生活はしていけますが、低賃金で働かなければなりません。

一方で、コールセンターであれば週休2日が基本であり、未経験・語学力不問で月給20万円以上もらえる求人が豊富に存在します。つまり、待遇のいい職種といえます。

・留学しなくても英語力を磨ける

また、「語学力を身に着けたい」と日本での仕事を退職して留学を選択する方がいます。その選択肢が間違っているわけではありませんが、海外のコールセンターに就職すれば英語力を無料で磨きながら働くことができます。

その期間のキャリアが途絶えることはなく、新しいビジネススキルを得ることも可能なので効率がいいといえます。

コールセンターの福利厚生では、英会話レッスンを無料で提供している企業が多く存在します。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地はフィリピン・セブ島です。コールセンターにて商品の受注業務・顧客問い合わせ対応・データ入力・SNS更新・翻訳業務などに従事します。

日本語がネイティブであれば誰でも応募できます。さらには、英語無料レッスンが付いています。また、日本人だけではなく、フィリピン人スタッフも多く在籍しており、社内イベントも充実しているので日常的に英語に触れる環境が用意されています。

月給は約16.5万円(1ペソ2.2円で算出)ですが、留学することを考えると給料をもらいながらビジネス英語を習得できるので効率がいいです。

海外コールセンターのデメリット

コールセンターの仕事はオフィスワークであるため、華やかなイメージを持っている人もいるかもしれませんが、デメリットも存在します。

また、語学・スキル不問など誰でも挑戦できる職種である一方、向き不向きが存在します。例えばカスタマーサービスの場合、無茶な要求やクレーム対応によって神経をすり減らすことがあります。人によっては精神的に疲れてしまうことも少なくありません。

・夜勤があるため、年齢を重ねるとしんどい

また、コールセンター業務の多くは夜勤が存在します。カスタマーサービスでは24時間対応が一般的だからです。例えば以下の求人のように夜勤を含んだシフト制で勤務するコールセンターがあります。

勤務地はマレーシア・クアラルンプール郊外です。大手通販サイトの出品者のサポート業務に従事します。具体的には在庫管理・WEBページの商品の修正・変更などです。

応募条件は「高卒以上」「日本語ネイティブ」のみであり、給与は月額14~20万円(1リンギット27.35円で算出)です。

ただし、勤務時間は24時間シフト制(週休2日)です。一般的に夜勤のある職種は若いうちはいいのですが、年齢を重ねると体力的にしんどくなってきます。また生活リズムが乱れやすいため健康面でも注意が必要です。

したがって長期的に海外で働きたいと考えているのであれば、コールセンターの中でも夜勤のない求人を探すといいです。

・キャリア形成が明確でないポジションだと、いつまでも昇格や昇給が望めない

さらに、コールセンターという職種は、キャリア形成の意識を高く持っていないとステップアップや昇給が難しいといえます。

求人票にキャリア形成が明確に示されたポジションや目標とするキャリアプランを描いてから転職活動を進めるようにしましょう。これについては後ほど詳しく説明します。

コールセンターの求人が豊富!マレーシアが熱い理由とは?

コールセンターの求人はアジアを中心に多いのですが、特に日本人の求人が集中しているのはマレーシアです。これはマレーシア政府がBPO企業を積極的に誘致していることが背景にあり、「コールセンター業界では日本人は取り合い状態」とまでいわれています。

そのためコールセンターでの海外転職を検討しているのであれば、マレーシアの求人を探してみるといいです。その理由を以下に挙げました。

日本人が多く暮らしている

マレーシアには親日家が多く、日本人が生活しやすい国の一つです。また1年を通して暖かい気候であるため、過ごしやすい国といえます。食事も安く、日本人の口に合うテイストなので安心して渡航できる要因につながります。

私自身、ヨーロッパで生活していると食生活には正直うんざりすることがあります。食文化が低い上に外食すると高くつくのです。「ご飯が安くておいしい」というだけでも有難いことです。このような背景から海外転職先にマレーシアを選ぶ日本人が多いのです。

また、日系企業が多く進出していることも日本人が増えている大きな要因です。さらにリタイア後の海外移住先としてもマレーシアは常に上位に入る人気国です。

日本人が多く暮らしていることで「孤独感を味わいにくい」「日本語で話せる仲間・同僚がたくさんいる」というメリットがあります。一方で、日本人が多いと発生するトラブルやストレスなども存在します。

豪華なコンドミニアムに住める

東京で暮らす場合、どれだけコールセンターで頑張って働いたとしてもプール付きのコンドミニアムに住むのは厳しいです。しかし、マレーシアであれば、日本では考えられないような高級物件に住むことができます。

例えば以下の求人ではコールセンターの求人票内に「プール&ジム付きの社宅に関する福利厚生」が記されています。

勤務地はクアラルンプール郊外です。大手旅行会社のカスタマーサポートに従事します。日本人あるいが日本に住んでいる外国人からの航空券やホテル予約に関する問い合わせの対応を行います。具体的にはキャンセル手続きやオーバーブッキングの対応などです。

応募必須条件は「高卒以上」「英語が基本会話レベル以上」のみです。トレーナーによる研修があるため未経験でも問題ありません。

月給は17~24万円程度と日本と大きく変わらない給与水準といえます。しかもこの給与内で以下のようなコンドミニアムで暮らすのは普通です。

また、前述した通り日本人が多く生活しているため、こちらの企業の日本人社員数は約120名です。初めての海外生活も安心して過ごせます。

コールセンターでキャリア形成を図りやすい

また日本人向けの求人が多いマレーシアでは、求人の選択肢が幅広いためコールセンター業務からキャリアアップしていくことも可能です。

例えば以下のような求人であれば、「マネージャー」というポジションで更にビジネススキルを磨いていけます。

大手外資系コールセンターでオペレーションマネージャーを募集しています。

具体的な仕事内容は「SV(スーパーバイザー:オペレーターの教育やマネジメントをする監督の立場にある人)からの報告や情報の確認」「労務管理と働き方の改善・取り組み」「収支計画」「現場のヘルプ」「研修やマニュアルの作成」といったコールセンター部門を取りまとめる業務です。

このようなポジションでは長年の現場経験やビジネスレベル以上の英語力(TOEIC800点以上)、プロジェクトマネジメント能力が求められます。

役職になるので月給は約42~56万円(1リンギット28円で算出)との提示があり、マレーシアの給与水準からするとかなりの高収入といえます。

コールセンターの現場スタッフから開始して、いずれはこのような役職や幹部といったポジションを目指せるようにキャリア形成することも可能です。求人票に具体的なキャリアアップ例が示されていたり、「幹部候補」などの記載があったりすると、その企業で長期的にキャリアを築いていけます。

キャリア形成で必須なのは「現場経験を積むこと」「英語をビジネスレベルに引き上げること」「マレーシア・多国籍の文化を理解して受け入れること」です。

ビジネスレベルの英語力は福利厚生に含まれている無料英会話レッスンなどを活用し磨いていけばいいです。また、マレーシア・多国籍の文化を理解して受け入れるには日本人とばかり付き合うのではなく、なるべくマレーシアの人・現地の外国人と接点を持つようにしましょう。

例えばマレーシアはイスラム教徒の多い国なので、「豚肉を食べない」「ラマダン(断食)」の習慣があることを理解しなければなりません。(ただし中華系マレーシア人も多く、スーパーでは普通に豚肉を入手できます。)

日本で暮らしていると、日本は単民族国家なので異文化を受け入れる機会が少ないのですが、マレーシアのような国際色豊かな国ではそのような環境に適応していく必要があります。

まとめ

「語学に自信がないけど、海外で就職してみたい」という方には、海外のコールセンターに就職することをおすすめします。未経験・語学不問で応募できる求人が豊富に存在するからです。

また、アジアを中心に様々な業界のコールセンター部門が存在するので、日本での経験を活かして転職することも可能です。ただ、単なる憧れだけで海外転職を決意するのは危険です。

コールセンターには「待遇がいい」「自然に英語を身につけられる」というメリットがある一方で、「夜勤があるため体力的にきつい」「キャリア形成を図りにくい」といったデメリットが存在します。そうしたデメリットをよく考えた上で求人を探すようにしましょう。

より多くの求人に目を通して、長期的なプランを立てた上で自分に合った求人を選ぶといいです。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。