日本の自動車業界は市場規模が大きく、国内で転職を検討している場合は多くの求人を見つけられます。営業・販売・技術・生産管理・企画・マーケティングなど様々なポジションの職種があるでしょう。
一方で海外の自動車業界で仕事を探すとなると、事情が少し異なります。そのため国内で求人を探すような感覚で転職活動を開始すると失敗してしまいます。
例えば、「大手自動車メーカーの海外営業を狙う」「欧米勤務の求人に絞る」「海外支社のマーケティング部門に就きたい」といった方向性ではダメです。そもそも、このような求人はほとんど存在しないからです。
まず自動車業界での海外転職では「営業職」と「技術職」の求人が中心となります。また理由については後述しますが、勤務国はタイが多いです。さらに、自動車メーカーではなく自動車用部品の製造・販売企業に就職するのが一番簡単です。
このように、求人数が多く可能性の高いポジションを狙って転職活動を進めると成功しやすくなります。ここでは、自動車業界で海外求人を探すコツについて詳しく説明していきます。
もくじ
トヨタや三菱など大手自動車メーカーの海外求人を狙うのは難しい
自動車業界で海外勤務を考えたとき、まず狙いたくなるのは大手日系自動車メーカーの海外赴任枠ではないでしょうか。例えば世界トップクラスの自動車メーカーであるトヨタでは、2000人以上の海外駐在員を赴任させています。
「これだけ多くの社員がいるのであれば海外駐在の求人もあるのでは?」と思うかもしれませんが、自社内で駐在員候補はいくらでも賄えます。むしろ手を挙げる希望者が多く、優秀な社員を海外赴任させられます。つまり、国内の自動車業界では、経験を積んだ中途採用の人材を募集する必要はありません。
もちろん、あなたに既に豊富な海外経験があれば話は別であり、例えば以下のような求人に応募できます。
世界トップクラスの自動車メーカーであるホンダの海外営業ポジションです。担当エリアは中国・北米・欧米・アフリカなど様々です。定期的な海外出張や将来的な海外駐在のチャンスがあります。このようなポジションで成果を出せば、海外駐在への道も難しくないでしょう。
ただし、担当エリアや海外赴任先を自分で決めることはできません。大手企業の場合はこのような雇用条件となることが多いです。
なお、応募必須条件は「海外営業と貿易実務経験」「ビジネスレベルの英語力」があることです。既に海外営業経験や貿易取引経験がないと、このような求人には応募すらできません。「これから海外経験を積みたい」という方は、大手日系自動車メーカーの海外営業や海外駐在ポジションを狙うのは現実的ではないのです。
自動車求人の多くは自動車部品企業であり、タイに集中
それではどのような海外求人が多いのかというと、「自動車メーカーとの取引がある自動車部品企業」です。
大手自動車メーカーは自社で駐在員候補を育て、海外へと赴任させます。一方で、自動車部品企業は日本で経験を積んだ人材を募集して、海外で現地採用あるいは駐在員採用することが多いのです。自動車部品企業は現地にある大手自動車メーカーに営業をかけて工場に部品を卸します。
これら自動車関連企業の多くはタイに集中しています。なぜなら、タイは「アジアのデトロイト(世界一の自動車工業都市として栄えたアメリカの都市)」を目指して世界中の大手自動車メーカーの工場誘致に力を入れているからです。日本企業ではトヨタや日産、ホンダといったメーカーの現地工場があります。
同時に、それらの工場に卸す自動車部品企業があり、日系自動車メーカーだけでなく世界の自動車メーカーを顧客として取引をしています。そのため、自動車部品企業のタイ勤務の求人が多く見られます。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務先はタイ・チョンブリーにある自動車部品を扱う商社です。自動車メーカーを中心に営業活動を行います。
応募必要条件は「英語日常会話レベル」「営業経験」があることです。自動車業界での営業経験があれば選考において有利に働きます。
日本で営業経験があり、「タイで長く働きキャリアを積んでいきたい」という方はこのような求人に応募するといいです。
タイ以外の海外営業の求人もある
もちろん、海外営業において求人が存在するのはタイだけではありません。自動車業界以外の業界の営業も担当する場合は、ASEAN地域内の様々な国で働けるチャンスがあります。例えば以下のような求人がこれに該当します。
募集ポジションは精密樹脂部品を取り扱う企業の海外営業です。自動車業界だけでなく家電・電子業界への営業も担当します。勤務地は中国もしくは東南アジアの各拠点です。またASEAN地域での海外出張も伴います。
この求人は駐在員としての採用です。そのため運転手付き自動車の支給であったり、住居支給であったりと好待遇です。
応募条件は「社内コミュニケーションレベルの英語力」と「法人営業経験」があることです。自動車業界での経験があるとプラス評価になります。
一方で、駐在員ポジションでの採用なので待遇は良いですが、勤務先はあらかじめ決まっているわけではありません。そのため必ずしも希望する国に赴任できるわけではないのです。
なお「赴任する国が決まっているほうがいい」という場合、現地採用の求人を探すといいです。例えば以下のような求人です。
勤務先は中国・ 深圳市にある自動車部品メーカーです。日系自動車メーカーのフォロー・新規顧客開拓・営業管理などに従事します。
このような企業だと、あらかじめ勤務先が決まっているのでミスマッチが生じにくく安心です。
国内勤務の海外営業でグローバルに活躍することも可能
なお、海外転職以外にも「日本国内で転職して海外営業を担当する」という選択肢もあります。海外出張の多いポジションに就けばグローバルに活躍することが可能です。出張以外にも日常的に海外顧客とのやり取りがあるので、日本で働きながら国際経験を積めます。
また国内勤務の海外営業担当であれば、ヨーロッパやアメリカなど海外勤務の求人を見つけにくい国や幅広いエリアを担当することができます。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地は岡山県です。自動車用部品の海外営業担当を募集しています。海外顧客に対するルート営業と新規開拓営業を担います。タイ・バンコクとアメリカ・デトロイトに海外拠点があり、2~3カ月に1週間程度の海外出張が発生します。
応募条件は「自動車関連業界での営業経験」「上級レベルの英語力」があることです。基本的に海外メーカーに対して営業をかけるのでビジネスレベルの英語力が求められます。
このような企業に就職すれば、1つの国にとどまらず海外を飛び回りながら自動車業界で営業活動ができます。また、このようなポジションで海外営業経験を積めば、冒頭で紹介したような日本の大手自動車メーカーの海外営業職への転職も将来的に可能です。
自動車業界の技術職は海外転職で求人を見つけやすい
ここまで、自動車業界の海外営業の求人を中心に紹介してきました。ただ実際のところ、海外営業よりも技術職の方が求人は豊富に存在します。しかも技術職の場合は語学力が求められないケースが多く、ハードルが低いといえます。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務先はタイ・チョンブリーにある精密ダイカスト部品メーカーです。ここでは「機械加工技術者兼管理者」「鋳造技術部門長」「品質保証部門長」の3ポジションを同時募集しています。それぞれ専門的な知識と経験が求められます。
ただし求人票にも記載があるように、語学不問であり、日本語のみで業務が遂行できます。
また、駐在員への切り替えチャンスや海外他拠点・グループ会社の経営層へのキャリアアップも目指せるポジションなので、「高待遇で上を目指したい」という人に最適です。
外資系の自動車部品会社へ就職も可能
なお、海外転職先は日系企業だけではありません。ジャパニーズクオリティーは世界から高い評価と信頼を得ているため、外資系の自動車部品メーカーが日本の高い品質を求めて、日本人技術者を募集することがあるのです。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地はインド・デリーです。この企業は日系自動車メーカーとの取引が多く、日本人技術者による高品質な製品を提供しています。募集ポジションは、冷間鍛造と切削加工による自動車用構成部品の生産管理を任せられる技術責任者です。
必要条件として10年以上の経験が求められるものの、基本的には語学不問で通訳スタッフを付けることも可能です。英語に自信がなくても、日本で十分な経験があれば日系企業に限らず外資系企業でも活躍できます。
経験不問でも生産管理職に就ける
一方で、「技術者として自動車業界での海外転職を考えているが経験が浅い」という人もいるでしょう。そうしたとき、求人数は少ないですが経験不問の技術職のポジションを見つけることも可能です。
例えば以下の求人であれば未経験からでも挑戦できます。
勤務先は自動車部品などの加工会社のタイ現地法人です。ここで生産管理として「生産計画の策定」「進捗管理」などに従事します。
応募必須条件は「大卒以上」のみです。日本語が話せれば問題ありません。
このようにたとえ未経験あるいは日本での経験が浅くても、海外で技術者としてイチからキャリアを築いていくことも可能です。
技術があれば高収入を目指せる
ちなみに日本で長年の経験を持ち、技術と知識を身につけた人材であれば海外転職によって年収アップも可能です。例えば以下の求人のように年収1000万円以上を目指すことができます。
中国の自動車工場にて生産技術者を募集しています。品質管理企画・生産技術企画・生産ラインの改造企画指導などを担当します。
応募必要条件は、大手自動車メーカーでエンジニア・生産技術・品質関連業務の経験があることです。こちらも語学力は不問です。また、給与は700~2000万円以上という高額提示です。契約内容や能力を考慮して決まります。
自動車業界で技術者としての十分な経験があれば、海外転職でこれだけの高待遇で働くことが可能です。
まとめ
自動車業界での海外転職を考えたとき、日本の大手自動車メーカーは求人数が少なく、就職するのが難しいです。そこで、狙い目は自動車部品企業になります。駐在員採用に加えて、現地採用であっても駐在切り替えのチャンスがあります。このとき、勤務先はタイになるケースが多いです。
もし「一つの国にとどまりたくない」「欧米諸国の担当がいい」という場合は国内勤務の海外営業職がおすすめです。ただしビジネスレベルの英語力は必須となります。
また自動車業界の場合、営業職よりも技術職の方が海外求人を見つけやすいです。英語が苦手であっても、通訳が付いたり日本語のみで業務可能だったりするポジションが多いです。十分な経験があれば、年収1000万円以上の好待遇を目指すことも可能です。
一方で経験が浅い場合でも「経験不問の技術職」などがあるので諦めずに探してみましょう。
このように自動車業界で海外転職を検討している場合、求人数が多い転職サイトを利用し、いくつものポジションを狙いながら就職活動を進めるのが賢明です。まずは複数の海外転職サイトに登録して求人を見てみましょう。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。