海外への転職を考えたとき、まず始めに「どんな求人があるのか」をインターネットで検索したり、海外転職を専門とする転職エージェントに登録したりする方が多いのではないでしょうか。人によっては、実際に海外転職した人のブログを読み漁ることもあります。

まずは正しい情報を集めることが大切です。インターネットからの情報だけでは偏りがあったり、事実とは異なる内容の記載があったりします。さらに、あなたが行きたいと考えている国は就労ビザの関係により、あなたが就ける仕事を見つけられないかもしれません。

また、転職エージェントが開催する海外転職向けのイベントとして、セミナーやフェア、説明会などに参加するのは意味があるのでしょうか。

ここでは海外転職イベントに参加する際の5つのメリットや、具体的なセミナー内容、活用方法について詳しく紹介していきます。

海外転職フェアに参加する5つのメリット

まず、海外転職向けのイベントに参加することで得られる5つのメリットを紹介します。

  • 現地の情報に触れられる
  • モチベーションをアップすることができる
  • 自分の課題を明確にできる
  • 仲間ができる
  • 海外転職者の体験談が聞ける

転職フェアは日本国内で主に開催されていますが、それぞれについて詳しくみていきましょう。

・現地の情報に触れられる

セミナーの中には国やエリアが限定されているものがあり、そのようなセミナーを受ければ現地の生活情報に触れることができます。文化の違いや国民性・安全性など実際にそこで働いている方が生の声を聞かせてくれます。

渡航前に本やインターネットなどから現地の情報を得ることはできますが、やはり実際に現地に行くと日本との違いにカルチャーショックを受ける方は多いと思います。

私自身、オランダに渡航してしばらくの間、環境に慣れるのにとても苦労しました。渡航した時期が冬の真っ只中だったからです。日本の場合は真冬でも日照時間が大きく変わることはなく、晴れる日もあります。

しかしオランダの真冬は、極端に日照時間が短く、ほとんど晴れる日がないので太陽に当たらない日々が続きます。日照時間が短いことも晴れないことも知っていましたが、実際にその環境に身を置くと想像以上に辛く、頭がおかしくなりそうになります。

参考までに、以下は実際のオランダの冬です。このような、どんよりとした雰囲気が続きます。

オランダに限らず、寒さの厳しい国に渡航することを考えているのであれば、日本の冬とはまた違うということを覚悟しておいた方がいいでしょう。

いま思えば渡航する時期を1ヶ月でも遅らせていれば状況は大きく違ったと思います。もちろん仕事で赴任する場合は、あなただけで時期を決められるわけではありません。しかし一緒に家族が同行する場合などは、渡航時期の融通が効くはずです。

このように現地に住んだことのある日本人なら、分かること・アドバイスできることがたくさんあります。転職活動の中で、現地の情報を得られる機会があれば積極的に参加することをおすすめします。

・モチベーションをアップすることができる

海外への転職となると、積極的に行動できない方も多いでしょう。「いつかは海外で働きたい」と思っていても、高齢になり50歳を過ぎてしまっては現実的ではありません。

海外転職を考えるのであれば、早めに行動に移すことをおすすめします。転職市場では、年齢が若い人ほど有利なためです。そうしたとき、海外転職関連のセミナーに参加することで海外就職を現実的に感じられるようになります。

自分が海外で働いている姿がイメージできるようになり、モチベーションを高められます。

・自分の課題を明確にできる

「海外で働いてみたいけど、いろんな問題があるし現実的には難しい……」と考えている方も多いでしょう。しかしセミナーに参加することで自分に何が足りていなくて、何を準備しないといけないのか、といった多くの課題を明確に洗い出すことができます。

課題が明確になれば、一つ一つクリアして転職のための行動を進めていくのみです。

また、海外転職の動機については、ただ「海外に住んでみたいから」という漠然とした理由ではなく、「なぜ自分は海外で仕事がしたいのか」という目的を明確にすることも大切です。

このときセミナーに参加することで、自分と向き合い、「目的を達成するために、どのように海外転職活動を進めていけばいいのか」が見えてきます。

・仲間ができる

セミナーに参加することで同じ目標を持った仲間に出会えます。情報交換をしたり、お互いの進捗状況を報告し合うことで、よい刺激を受けたりすることができるでしょう。

・海外転職者の体験談が聞ける

ブログなどで海外転職体験談を読むことはできますが、やはり実際に話を直接聞くのと比べた場合、触れられる情報量には限りがあります。

またセミナーなどの場合は、体験者への質問も可能なので、あなたが知りたい疑問点を質問できます。

実際に開催されている海外転職イベントやセミナー内容

それでは、具体的なイベントやセミナー内容について紹介していきます。

まず、あなたが海外転職に関わる基本的なことが知りたいのであれば以下のようなセミナーに参加するとよいです。

国別に、「ビザの事情、どのような職種があるか、語学力がどのくらい必要なのか」など、海外転職の準備や流れについて説明してくれます。

東京での開催ですが、週末・祝日なのでわざわざ仕事を休む必要はありません。定員が10名と少人数なのでじっくり話を聞くことができ、さらには相談も可能です。

また、「遠方に住んでいるため、わざわざ東京まで出向くことができない」という場合には、インターネットで受講するタイプのセミナーがあります。以下のようなオンラインセミナーがこれに該当します。

セミナーコンテンツは前述した内容と大きく変わりませんが、実際にアジアや欧米に転職した事例についての説明もあります。

また質疑応答の時間も設けられているので、オンラインとはいえ一方通行的な参加にはなりません。

国・地域別のセミナーもあり、相談できる

ただ実際のところ、国によって「転職活動を進める上での注意点やポイント」が異なるため、既にあなたが行きたいと考えている国やエリアがあるのであれば、国や地域別の転職フェアに参加するといいです。

例えば、アメリカであれば以下のようなセミナー内容になります。

こちらは東京で祝日・週末に開催されているアメリカ就職セミナーです。「ビジネスレベルの英語力」「45歳以下」「大卒あるいは高卒以上で就業経験が1年以上」の条件をクリアすれば参加可能です。アメリカで就職したいと考えている方にとって、有用な情報を得られます。

また「ビジネスレベルの英語力はない」という方は、以下のセミナーであれば参加できます。

こちらはアジア10か国(フィリピン、マレーシア、シンガポール、タイ、インドネシア、ベトナム、インド、台湾、香港、中国)の情報をまとめて収集できます。

あなたのキャリアを活かした転職先を相談することも可能です。

このように海外転職セミナーでは、インターネットだけでは得られない貴重な情報を収集できたり、同じ目標を持った仲間に出会えたりできます。

特に就労ビザについては国によって取得条件が異なり、法律がころころ変更されます。例えばオランダの場合、2015年に法律が改正されて日本人は就労ビザの取得が不要となりました。

しかし他国から「日本人がビザ不要なら、うちの国も」という要望が相次ぎ、対応しきれなくなったオランダ政府は結局2017年に、再び「日本人も就労ビザを取得しなければならない」と変更したのです。

また、アメリカであれば政権によって就労ビザの取得要件が大きく変わります。このように制度や法律は国によって度々改正されるので、常に最新情報を得る必要があります。

海外で開催される説明会に参加してみるのは?海外の就職事情を紹介

こうした転職フェアは東京や大阪などの都市部で主に開催されています。しかし日本国内だけではなく、海外(現地)の転職エージェントが開催する就職説明会も存在します。

自分が住みたいと考えている国を視察すると同時に、「現地で求人を探そう」と海外のキャリアフォーラムに参加しようと思う方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、参加条件として「海外の大学を卒業していること」「留学経験」「既に就労ビザを持っていること」「ビジネスレベルの英語力」などが求められます。

以下は、実際にイギリスのロンドンで開催されたキャリアフォーラムです。

ここにある通り、留学の経験や海外の大学を卒業していないと参加条件を満たすことができません。

仮にこのようなキャリアフォーラムに参加できたとしても、国によっては英語以外に現地の言語を話せる必要があるなど、日本からいきなり現地に行って仕事を探すのは厳しいです。

例えば以下は、実際に募集されているオランダでの求人内容です。

オランダにある企業が募集している「日本向け海外営業の求人」です。流暢な日本語・英語力に加え、1~5年の営業経験、さらに就労ビザを持っていることが最低条件です。

日本に住んでいる方で、この条件を満たす人はほとんどいないと思います。また、多くの求人票で給与が最初から提示されている求人案件は少なく、全てあなた自身が英語あるいは現地の言語を使って交渉することになります。外国人を相手にこのような交渉を進めるのは、並大抵ではないエネルギーが必要になるでしょう。

そのため直接、海外での説明会に参加しても、「一般的には就職しにくい」という現状があるのです。

「海外転職イベントへの参加=求人が見つかる」というわけではない

ここまで、海外転職イベントへの参加について紹介してきました。ただ、国内で開催されている説明会に足を運んだからといって、必ずしも求人が見つかるわけではありません。

あなたが積極的に行動をとらなければ、希望を満たす条件の求人は見つかりません。そこで、海外転職を専門とした転職エージェントに複数登録することをおすすめします。

実際のところ、人によってこれまで経験してきたことは異なりますし、語学力も違います。

例えば「英語力はないが、過去の海外での経験を活かして活躍したい」という人がいれば、「得意な英語を活かした仕事に就きたい」という方もいます。中には「未経験分野でもいいので、とにかく海外で仕事がしたい」という人もいるでしょう。これらの場合、それぞれの人に合った求人を見つけなければなりません。

そこで転職サイトを利用すれば、自分の条件や経歴・国やエリアを絞って求人を探すことができます。

日本での転職サイト利用は利点が多い

実際のところ、日本ほど就職エージェントが充実している国は珍しいといえます。そもそも海外では、キャリアフォーラムの数自体、ほぼ見かけません。海外では、転職エージェントを利用する人の数が圧倒的に少ないからです。

例えば私が住んでいるオランダでは、オランダの転職エージェントを通して就職活動を進める人は、よほどのスキルを持っている人材か高学歴のエリートのみです。したがって、日本人がオランダの転職エージェントに登録しても、「何の連絡も来ないのが普通」だと思って良いでしょう。

ではオランダ企業を含め、欧米の会社がどのようにして人材を集めるのかというと、それは「コネ」です。

例えば、私の主人の会社(ヨーロッパにある会社)に入社してくるローカルスタッフ(現地の国の人)は、入社方法がほぼコネによるのだそうです。コネという言葉を耳にすると聞こえが悪いかもしれませんが、要は友人や兄弟娘や息子など、社員が身元を保証する人を紹介して人材を集めます。

ちなみにこちらがオランダの会社の様子です。

<写真>

ただ、日本に住みながら現地にコネを作るのは現実的ではありません。そこで、転職サイトを利用するのです。日本の転職エージェントであれば、先ほどのような異常なほどハイレベルな求人ではなく、未経験者でも応募できる求人案件を見つけることができます。

例えば以下の求人票は、マレーシアのクアラルンプールでカスタマーサポートの仕事を担当する求人票です。

未経験でも応募でき、語学研修があるため「英語力に自信がなくても大丈夫」と記載されています。

また、あらかじめ給与が提示されているので賃金交渉の必要はありません。さらに、ビザ・航空券の手配・部屋探しのサポートから健康保険の加入といった手当まで含まれており、至れり尽くせりです。

研修中はプールや専用ジムが完備されているコンドミニアムが用意されているため、女性に魅力的な求人内容といえます。

他にも、例えば飲食店での調理の経歴が既にある場合、以下のような求人によってアメリカのカリフォルニアで正社員として働くチャンスがあります。

アメリカはビザの取得が非常に難しい国の一つです。ただ6年以上の飲食店の経験があれば、ビザを申請できると記載されています。月給や保険料についても提示されています。

また営業の経験があれば、以下のようなタイ勤務の中途採用求人に応募可能です。

応募条件は「高卒以上」「日常会話レベルの英語力」「B to Bの営業経験」の3つのみです。

さらに、渡航費用や年に2回の帰省費用、住宅や車の手配(家賃・維持費も会社負担)、海外赴任手当といった手厚い福利厚生が完備されています。

月給も提示されており、ボーナスは平均年4ヶ月分との記載があります。豊富なキャリアや特別なスキルを求められる駐在員クラスの条件といっても過言ではありません。

あなたが仮に同じ企業の求人を直接見つけたとして、転職サイトを通さずにここまでの条件を交渉するのは至難の業です。これだけ求人内容が充実しているのは、転職エージェントが求職者にとって働きやすい環境や条件を用意するように企業と既に交渉しているためです。

このように転職サイトを利用することで、自分の経歴や条件に合った求人を見つけることができます。またほとんどの場合、就労ビザ取得のサポートが付いている求人が紹介されているので、「条件はピッタリなのに就労ビザの問題をクリアしないから応募できない……」といった問題に直面することはありません。

また、給与や福利厚生などの条件があらかじめ提示されているので、あなたが交渉する必要もないのです。仮に交渉しなければならない場合は、両者の間に転職エージェントが入ってくれます。

ただ、転職エージェントはそれぞれ強みがあります。「ある程度キャリアを有する人材や専門職に就いている人を対象とした海外転職サポートを得意としている」「ヨーロッパの求人案内が豊富にある」「未経験の方でも海外転職しやすい求人を多く扱っている」など、それぞれ得意分野があるのです。

そこで、いくつもの転職エージェントに登録しておくことで幅広い選択肢の中から求人を見つけることができます。3社以上の転職サイトを利用して、あなたの希望や条件を満たす求人を探すことをおすすめします。

まとめ

海外での転職を考えている場合、転職エージェントが開催する就職フェアやセミナーに参加しても問題ありません。

モチベーションアップや課題・目的意識を明確にできるといったメリットに加えて、国毎の就労ビザや生活情報などの正確な最新情報を得られる貴重な機会となります。

ただし、セミナーへの参加だけでは意味がなく、具体的な行動に移さなければ転職は実現できません。そこでイベントやセミナーに参加すると同時に複数の転職サイトに登録して求人情報を探してみましょう。

日本は転職エージェントが充実しており、求職者にとって非常に恵まれた環境だといえます。転職サイトを利用して、希望する国・職種に就けるよう中途採用の求人募集を探すといいです。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。