海外転職を考えたとき、求人が見つかるのかという不安以外にも、住んだことのない国でどのようにして住まいを見つければいいのか悩む方がいます。

特に語学が得意でない場合、不動産探しで躓きます。また家賃の交渉を自分でするとなると大変です。しかし転職サイトが取り扱う求人の中には、あらかじめ社宅や寮が完備されているものがあります。

特に語学が苦手な人、海外経験の無い方は社宅付き・寮完備・住み込みの求人を探しましょう。「プライベートな時間をゆっくり過ごしたいから、寮や社宅はちょっと……」という場合でも、現地での生活に慣れ言語も不自由なくなってから、ゆっくり物件を探して好きな所に引っ越しすれば問題ありません。

ここでは、海外の不動産事情から社宅・寮のこと、さらには実際に掲載されている社宅完備の物件まで注意点も踏まえながら紹介します。

社宅付き・寮完備の求人がおすすめの理由

冒頭でもお伝えした通り、語学が苦手な方、海外経験のない方には寮があらかじめ完備されていたり、社宅付き、住み込みが可能だったりする求人をおすすめします。

その理由として、日本とは異なる外国の不動産事情があります。

日本との違いについて具体的に挙げていけばキリが無いので、海外転職する上で重要なポイントに絞って以下の項目について説明します。

  • 大家さんの権限が強い
  • 不動産業者が適当
  • 家賃が上がっていくことがある
  • 水回りのトラブルが多い

それぞれ詳しくみていきましょう。

外国では大家さんの権限が強い

日本の賃貸の場合、大家さんよりも住人が権限を持っています。住人の都合で引っ越すのは自由ですが、大家さんの都合で退去させられることは、よほどの事情がない限りありません。

しかし、海外の国によっては大家さんの権限が圧倒的に強いです。例えばヨーロッパでは、「家を売ることにしたから来月出て行って」といわれることは決して珍しいことではありません。

私の友人の中にも、大家さんが離婚することになって「所有不動産を分けるから売却したい」といわれ、翌月に引っ越しを余儀なくされた方がいます。

また、オーナーに妊娠したことを告げたら突然、「売ることにしたから出て行ってくれ」といわれた知り合いの夫婦もいます。しかし、引っ越した後に住んでいた不動産を確認してみると売られた形跡はなく、また貸物件だったようです。単純にオーナーは子どもがいる夫婦に物件を貸したくなかったと考えられます。

このような友人以外にも、オーナー都合で引っ越しさせられた話は海外に住んでいるとよく聞きます。私自身、大家さんから連絡が来るたびに、「退居依頼だったらどうしよう」とビクビクしています。

このとき社宅であれば、会社の所有不動産なので急に出て行けといわれる心配はありません。また、賃貸だったとしても会社が契約していれば別の賃貸アパートを探してくれます。

不動産業者が適当

日本ではあまり考えらないことですが、適当な不動産屋が普通に営業しています。例えば、私の主人の会社の専属ハウスエージェント(賃貸不動産の仲介会社)は全く仕事をやる気がなく、私が希望する不動産の条件を提示して「これで探してほしい」と依頼しても、何週間も返事をよこしませんでした。

結局、そのハウスエージェントに任せても話が進まないので不動産サイトをチェックして自分で物件を探し、それぞれ個別にアポイントをとりました。

このように不動産屋の当たり外れも多く、自分で行動しなければ希望を満たす物件は見つからないでしょう。メールなどで問い合わせるより、街にある以下のような不動産屋を直接訪問し賃貸物件を探してもらうと、きちんと対応してもらえることが多いです。

仕事が適当なことも多いため、基本的に「この人はきちんと仕事をしてくれるのか?」と疑い、複数社に掛け合うといいです。

毎年家賃が上がっていくことがある

日本で家賃が毎年上がっていくことは稀なケースですが、不動産市場の高騰や物価上昇が続く国では毎年家賃が上がっていきます。

物価上昇指数などを元に家賃が上げられるのですが、最終的な金額を決めるのは大家さんなので「家賃は言い値」ともいえます。入居時の家賃交渉はこちらも強気で出られます。しかしオーナーの権限が強い国では、住人が「今年の家賃の値上げ幅は高すぎる」とクレームしても「払えないなら出て行け」といわれて終わりです。

例えば、私の友人は毎年月額50ユーロ(約6,000円)以上の値上げを要求されて、結局支払うのが厳しくなって引っ越していました。ただ、これが社宅や寮であれば家賃は相場よりもかなり安いはずです。また家賃の大幅な値上げは無いでしょう。

特に、ヨーロッパやアメリカの都市部、オーストラリアやニュージーランド・シンガポール・香港などには不動産が高騰しているエリアがあります。

このような地域・場所で海外転職を考えている場合は、「社宅や寮はあるのか」「無い場合は家賃補助があるのか」を必ずチェックしなければなりません。「給与が高い!」と思っても、家賃を全てあなたが支払わなければならない場合、手元にお金がほとんど残らない事態もあり得ます。

水回りのトラブルが多い

日本の家で水回りのトラブルが頻繁に起きることは珍しいことでしょう。しかし海外では頻繁に発生します。

例えば私はヨーロッパに住んでいますが、ヨーロッパなどでは築100年以上のアパートや家を今でも使用しています。特にヨーロッパの人は古い外観を好むので、古い建物をそのまま使い内装だけ修繕して住めるようにしている物件がたくさんあります。

また、建物が比較的新しい物件でも内装を全部自分で手掛けてしまうオーナーもいます。このように古い建物であったり、内装を素人が手掛けていたりすると見た目は問題ないのですが、水漏れなどのトラブルが生じやすくなります。

そのたびに大家さんを呼んで治してもらうのは大変です。中には、「あなたの使い方が悪い」と修繕費を請求するオーナーもいます。そうなると現地の言語で交渉する必要があり、コミュニケーションに慣れていないと困ります。

「それなら引っ越せばいい」と考える方もいるかもしれませんが、海外では日本のように「引っ越し業者に依頼するのが当たり前」ではありません。そもそも引っ越し業者が存在しない国すらあります。多くの国では引っ越しは家族や友人に協力してもらい、自分たちで済ませるのが一般的です。

大型家具のみ運ぶ業者はいますが、日本のようにパッキングまで済ませてくれるような引っ越し業者はまず無いと考えておいていいでしょう。あったとしても非常に高額です。

したがって居住選びは慎重に行わなければなりません。そういう意味で社宅や寮が付いている求人であれば安心です。「プライベートな時間・空間を確保したいから社宅や寮は嫌!」という方でも、とりあえず寮に入って、後からゆっくり物件を探せばいいです。

海外不動産に住むメリット

ここまでで、日本と外国の不動産事情の違いを述べて悪い印象ばかり与えてしまったかもしれません。しかし、海外の不動産にも良いところがあります。

まず、日本の都心部のマンションに住んでいた人が欧米エリアで物件を探すと、部屋の広さに驚くと思います。実際に私が今住んでいるアパートは日本で住んでいた家の5倍以上のスペースがあります。

また賃貸の場合、日本とは違って家具付き物件が多く、インテリアがオシャレで統一感があります。もちろん、この傾向は欧米に限らず東南アジアでも同様です。

例えば以下は、実際に私が物件を内見したときに撮影したものです。

海外で初めて不動産の内見したとき、私がこれまでに住んだことのないオシャレな家にワクワクしました。天井が高く開放的な家が多かったです。また、家具付きの場合、電化製品や食器類まで含まれているので一式揃える必要はありません。

以下のように、テラスに屋外用の家具が設置されている物件もありました。

こちらはホテルのようにベッドメーキングされています。

社宅や寮の場合は、こちらに選択肢があることはあまりありませんが、自分で物件を探せばこのようにいくつか内見して気に入った住居を選ぶことができます。

社宅・寮付きで語学不問の求人を紹介!

ここまでで、「社宅や寮が完備されている」ことは海外経験の無い方や語学が苦手な方にとって、非常に有難い条件であることが分かったと思います。それでは実際に掲載されている語学力不問の社宅・寮付き求人を紹介していきましょう。

こちらの求人はアジアで勤務できる、ビジネスホテルの海外支店幹部候補の求人募集です。

勤務地はタイ・ベトナム・韓国・インドネシアから選べます。仕事内容は、ホテルの新規オープンの立ち上げ、現地スタッフの採用・指導・営業に至るまでホテル運営に伴う業務全般を担当します。

求める人材として「高卒以上、簡単なPC操作ができる方」とあるので難しい条件ではないです。さらに未経験者でも応募できます。業界経験者や接客・管理職の経験があると有利です。

そして最も注目すべき点が「社員寮・賃貸アパート有(本人負担1~2万円)」の記載があることです。

社員寮か会社が契約した賃貸アパートに住むことができ、毎月の負担は2万円までに収めることができます。居住費がこれだけで抑えられれば給与を貯蓄に充てられるでしょう。

欧米求人でも寮完備がある

続いて、ヨーロッパ勤務で寮完備の求人をご紹介します。

ドイツのベルリンにあるラーメン屋で店長候補を募集しています。「英語に自信がない」という方でも、基本の英語力があれば大丈夫です。ラーメンの調理経験が5年以上あるいは日本食の調理経験、セントラルキッチンでの経験があれば優遇されます。

店長候補として店舗運営全般の業務を担当します。調理、在庫管理、発注、商品開発、スタッフの教育、労務管理などマネジメントを任されます。

また、3ヶ月間はビザなしで滞在できるので応募する前に一度お店を体験しても良いとのことです。海外勤務だと事前に職場見学をできないことが多いため、ミスマッチを防ぐ有難い制度といえます。

重要なのは、交通機関でお店から20分のところに独身寮がある点です。また家族連れの場合は住居探しのサポートがあります。

さらに、まかないまで用意されるので、実際に生活する場合は居住費・食費を抑えることができます。

コンドミニアムなど豪華な住宅も可能

続いて紹介するのは「せっかく海外で暮らすなら素敵な住まいがいい」という方におすすめの求人です。

大手通販会社のカスタマーサポートの求人案内です。勤務地はアジアでも人気のマレーシア・クアラルンプール郊外です。通販サイトで商品購入したお客様の問い合わせの対応を行います。

具体的にはメール・電話などを使って商品の変更・キャンセル・問い合わせの対応を行います。応募条件は「日本語ネイティブの方」のみなので誰でも応募できる求人といえます。

そしてこちらの求人の最大の魅力は、社員寮がプール・ジム付きのコンドミニアムな点です。家賃は2週間まで無料で、その後は2LDKの2人部屋で月22,000円です。

マレーシアやシンガポールの求人には、このようなプール付きのコンドミニアムが寮や社宅として用意されているケースがあります。日本では住むことのできないオシャレな住居で暮らしながら働くことができるのは大きな魅力だといえます。

さらに、こちらの求人には無料の英語クラスが開催されているので英語スキルを磨けます。マレーシアはシンガポールや香港と同じように英語が通じる国としても知られており、多国籍スタッフと一緒に仕事をすることで貴重な国際経験が積めます。

ちなみにマレーシアは物価が安いため生活費が日本ほどかからず、寮や社宅が用意されていれば毎月10万円以上の貯金が可能です。

貯蓄したい方には住み込み型の求人がおすすめ

最後に紹介する求人は「住み込み型の求人」です。大型クルーズ客船で世界一周の船旅をしながらシェフとして活躍します。

105日かけて世界一周しながら1200人の食事を提供します。1年中船の上で勤務するわけではなく、東京本社での勤務もあります。

ただし応募するには、「調理師資格」と「初級レベルの英語力」が必要です。多国籍のシェフと共に働き、世界各国の料理に触れられるので料理人としての経験・スキルを磨けます。寄港地では食材を買い付けるだけではなく観光も可能なので、旅行好きの方には魅力的な求人です。

福利厚生には「全泊・食事付」と記載があるので船上での宿泊費・食事代は不要です。ちなみに地上勤務の場合、月35,000円でシェアハウスを借りられます。

船上シェフとして長年勤務すれば国際経験を積めるだけでなく、かなりの貯金もできるでしょう。

もちろん、こうした住み込み求人では豪華客船に限らず「ホテルでの住み込み求人」「リゾート地での海外勤務」などもあり、あなたのスキルに合わせて自由に選べるようになっています。

まとめ

社宅や寮に住むメリットとして、多くの方が「家賃にお金をかけず、貯蓄に回すため」と経済的な面を考えると思います。しかし、海外では不動産事情が日本とは大きく異なります。海外経験の無い方や語学が得意でない方が物件を探し、ストレスなく住み続けることは難しいといえます。

一方で、社宅や寮が完備されていると、経済的な理由以外に大きなメリットがあります。

もしあなたが自分で不動産を探す場合、上記に挙げた点を意識しながら賃貸物件を見学するようにしましょう。日本と同じ感覚で不動産を探しても希望に沿う物件はなかなか見つかりません。すぐに決めようとは思わず、マンスリーマンションなどに住みながら時間をかけて探すことをおすすめします。

永住や長期間の滞在を考えているなら家を購入するのも問題ありません。このとき日本のように地震や湿気の多い国は家が傷みやすく、中古物件になると一気に価値が下がります。一方で、ヨーロッパなどでは古い家の方が、不動産価値が上がる国もあります。しばらく住んで売ったとしても不動産の価格はそこまで下がらないでしょう。

いずれにしても、社宅や寮完備の海外求人を探すのは、海外転職を実現するうえで重要なポイントの一つになります。そこで転職サイトに複数登録するとき、担当者には条件の合う社宅付きの案件を紹介してもらうようにしましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。