日本の国家資格を保持している専門職の方でも、海外移住や海外転職を考える方は多いです。日本でのキャリアと違う道に進む人もいれば、同じ業界・関連職種に転職する人もいます。

これは日本で医師として活躍している場合も同様です。ただ医師の場合は一般職種と少し状況が異なります。いくら日本での豊富な経験や医療に関する知識があったとしても、海外で日本の医師免許は基本的に使えません。

医師として働きたいのであれば、国によっては学位を一から取得し直さなければなりません。その場合は語学力が必須となり、時間と労力、さらにはコストもかかります。

一方で、日本の医師免許の切り替え申請のみで医師として働ける国も存在します。そのような国を選べば、比較的容易に海外転職が可能です。

ここでは海外で医者になることを考えたとき、どのような国が狙い目なのか実際の求人を紹介しながら述べていきます。同時に、「どの専門科が有利なのか」「収入はどのくらいなのか」といった疑問にも応えていきます。最短ルートで海外転職したいという医師の方は必見です。

日本人医師が免許の手続き申請のみで働ける国

冒頭で述べた通り、日本の医師免許のライセンス切り替え申請を行うだけで医師として就労可能な国が存在します。中国・シンガポール・アラブ首長国連邦(ドバイ)・ベトナム・カンボジアなどがこれに該当します。そのため中国や東南アジアなどの国では、比較的容易に日本人医師の求人を見つけられます。

例えば以下では、グローバルな病院で日本人医師を募集しています。

勤務地はカンボジアのプノンペンです。日本人の患者だけでなく、カンボジア人、外国人の診察も行います。そのため基本的な英会話力が必要です。そのため、いろんな人種の人を相手に経験を積めるチャンスがあります。

応募資格は「医師免許を取得していること」のみです。土曜午後・日曜・祝日が休みなので「ゆっくり生活がしたい」という方に向いています。

内科や小児科の専門医は需要が高い

このとき日本人医師の需要があるのは、やはり日本人が多く住む街です。したがって、かかりつけ医(家庭医)としての役割を果たせる内科医や小児科医の求人が目立ちます。例えば以下のような求人です。

勤務地はベトナムのホーチミンです。内科・小児科・放射線科のいずれかの専門医を募集しています。月から金曜の終日、土曜の午前中の外来業務を担当します。デング熱やジカウィルス・セリアック病など、日本では診ることのない疾患を治療できます。

給与は年間で手取り1000万円と日本の常勤医師と大きく変わりません。しかも当直が無く、有休は全て消化できる環境にあるので、あくせく働かずに済みます。

英語が得意であれば好待遇の求人に応募できる

また、あなたが日常レベルあるいはビジネスレベルでの英語力がある、あるいは英語での診察が可能な場合は、以下のような好待遇での海外転職が可能です。

勤務地はシンガポールにあるインターナショナルな総合病院です。ここで、内科・小児科・外科・婦人科・整形外科・眼科・皮膚科などの専門医を募集しています。

応募資格は「3年以上の臨床経験」「日常レベルあるいはビジネスレベルの英語力がある」です。

休日は土曜日午後と日曜・祝日です。給料は月120万円(1シンガポールドル80円で算出)と高額です。また福利厚生には年間10万円程度の医療費(歯科も含む)まで含まれています。英語が得意であればこのような好条件の求人に応募できます。

医師免許の切り替えはできないけど、求人がある国も存在する

ここまで、日本の医師免許の切り替えが容易にできる国の求人を紹介してきましたが、そうでない国でも求人は見つかります。

例えば、マレーシアは日本の医師免許の切り替えは認められていません。しかし例外的にマレーシア政府が個人の日本人医師に対して許可を出した前例があるため、日本人医師が医療に従事する道があります。そのため以下のような求人があります。

勤務地はマレーシアのクアラルンプールです。日本人街にて医療を提供している医療機関で、まずは現地スタッフの指導や医療通訳、治療方針の策定、現地医師へのアドバイスなどを行います。そうしてマレーシアで医師ライセンスを取得できたら診察業務や治療にも従事します。

シフト制での勤務で週休1日です。初めから医師として従事できるわけではないので、医師免許を取れる前の月給は26~52万円です。それでも物価の安いマレーシアで生活していくには十分な収入です。

海外で産業医の募集は存在するのか

なお日系企業が多く進出する国では、「日本人駐在員の健康状態をチェックする産業医の募集があるのではないか」と考える医師もいると思います。しかし、残念ながら海外で日本の産業医の求人はありません。

その理由として、日本人医師が勤務するクリニックや病院などが存在する国では、わざわざ産業医を置かなくても日本と同様の医療サービスを受けられるからです。

実際に私が住んでいるオランダにある日系企業の多くは、駐在員とその家族は「日本人医師が在籍するオランダ国内の病院」で毎年健康診断を受けています。

また、そのような病院・施設がない国の場合は、一般的に駐在員は健康診断を受けるために年に1回、日本に帰国することができます。もちろん家族も同伴です。私の友人では、「健康診断による帰国のとき、航空券も会社が負担してくれるので有難い」と言っていました。

このように、海外赴任した駐在員に対しても健康管理をきちんと実施しているので、日系の海外支店にわざわざ産業医を置いていません。

海外勤務の医師の収入の分かれ目

ちなみに「海外で医者になりたい」と考えている場合、海外ボランティアを選択肢の一つとして挙げる方もいると思います。しかし海外ボランティアの医師の年収は驚くほど低く、「病気で困っている世界の子どもを助けたい」など強い信念と目的を持たなければ受け入れられないでしょう。

例えば医療ボランティアとして世界的にも有名な「国境なき医師団」の場合、平均年収は190~245万円程度といわれています。たとえ医師であってもボランティア活動の場合は十分な収入を得るのは厳しいです。ちなみに、以下は国境なき医師団の内科医の応募条件です。

世界の医療が十分行き届いていないエリアや難民キャンプでエイズや結核、栄養失調などの治療などを担当します。必須条件として「3年以上の臨床経験」「熱帯医学の学位または臨床経験」「フランス語および英語の両方で業務ができる」「マネジメントや教育の経験」が挙げられています。

これら全てをクリアすることはなかなか難しいですが、それでも内科医のポジションは競争率が高く派遣先がなかなか決まらないことがあります。

つまり、給与が安い上に登録してもなかなか海外で働くことはできないという状況です。一方で、ボランティアではなく日本の医師免許の切り替え申請が容易な国であれば、高額な給与の求人も見つかります。実際に年収2000万円以上の求人も存在します。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地は上海です。ここで内科・小児科・総合診療科の医師を募集しています。応募条件は「日本の医師免許を保持している」「臨床経験5年以上」です。語学力は特に求められません。

そして、年収はボーナスを含めて2000万円以上の提示があります。しかも夜勤はありません。ただし休日は祝祭日のみです。それでも日本の大学病院などで夜勤含めて多忙に働いている医師ほどのハードワークではないです。

アメリカやヨーロッパで医師を目指す場合は時間・労力・お金が必要

ただ医師としてグローバルに活躍したいと考えている方の中には「最先端の医療に触れたい」と考え、海外転職先としてアメリカやヨーロッパを希望する人もいると思います。

「医者の数は世界的に不足しているから、どんな国でも歓迎してもらえる」と考える方もいるかもしれませんが、実際にはそうではありません。これらの国で医師として働くには時間・労力・お金をかける覚悟が必要です。

アメリカ・カナダ・イギリスでは試験と審査が必要

アメリカやカナダ・イギリスでは国や州によって定められた試験を受けて、合格後に数年間の臨床研修を受ければ医師免許を取得できます。ただし、この試験のレベルは決して簡単ではなく難易度が非常に高いです。

また、併せて語学力も必須となり、試験に合格して臨床研修を済ませて医師免許がもらえるまでには、かなりの時間と労力・コストをかける覚悟が必須です。さらに、国の中でも州によっては外国人医師の免許取得数を制限しているところが存在します。

このような不確定要素が多い国で医師を目指すのは、リスクが大きいといえます。

どうしてもアメリカやヨーロッパなどで最先端の医学に触れたいのであれば、海外留学を目指すほうが確実です。その他、日本国内にある米軍基地での軍医のインターンという選択肢もあります。

ヨーロッパではEU圏内で自由に行き来でき、医師の需要は無い

一方でヨーロッパのEU加盟国では、基本的に自由に労働市場にアクセスできます。つまりEU加盟国の市民は、自国以外のEU圏内で就労ビザを取得することなく自由に就職できるのです。

私が暮らしているオランダでも、様々なEU国籍の外国人が働いています。彼らは「外国で働いている」という感覚は無く、日本でいう「北海道から東京に就職する」という感覚で就職先(国)を選んでいます。

これは医師も同じです。実際に私がホームドクター(家庭医)として登録しているクリニックでは、オランダ人以外のドクターをたくさん見かけます。参考までに、以下は私が通っているクリニックの待合室です。

ポーランドやクロアチア出身の医師が、より良い雇用条件を求めてオランダにやってきます。先進国で働くほうが高い給与水準になるからです。

こうした現状であり、ヨーロッパの先進国では十分な数の医師を集めることができるので医師不足には悩まされません。したがって日本人医師の需要はEUには無いのです。

まとめ

グローバル化が進み、専門職の人でも資格を活かして世界で働けるようになってきています。医師の場合も決して例外ではなく、中国・シンガポール・アラブ首長国連邦(ドバイ)・ベトナム・カンボジアなどの国では日本の医師免許の切り替え申請のみで医師として医療に従事することができるのです。

日本とは全く文化の違う環境で、日本では日常的に診ることのない病気を診察したり、外国人を治療したりと日本ではできない経験を積むことができます。

また、転職する国や求人を選べば今の年収を維持したまま海外転職することも可能です。しかも日本よりもゆったりと働ける可能性があります。

そこでより多くの求人を見つけるには、複数の転職サイトに登録することをおすすめします。「外国で働きたい」という医師の数は増加傾向にあり、求人が出てもすぐに埋まってしまう可能性があります。

そうならないためにも、担当者にきちんと希望を伝えて求人があればすぐに紹介してもらえるようにしておきましょう。医師として進むべきキャリアプランとして、海外でグローバルに活躍する医師を目指してみましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。