駐在中、あるいは海外赴任を終えて日本に帰ってきた方の多くが転職を検討します。
海外の文化を理解し、海外で外国人含めた現地スタッフの部下をまとめ、仕事をしていた駐在経験者は帰国後も市場価値が高いです。そのため、かなりの好待遇での転職を実現できるようになります。
転職を考える駐在経験者の中には「また駐在を狙いたい」という人もいれば、「もう海外はこりごり」と考える人もいるでしょう。いずれにせよ、駐在経験を活かしてキャリアアップすることは可能です。
それでは、駐在経験者はどのような仕事に就くことができるのでしょうか。ここでは、転職サイトに掲載されている実際の求人票を掲載しながら紹介していきます。
もくじ
駐在中や海外赴任後に転職する駐在員が多い4つ理由
駐在期間中あるいは、帰任後に転職を検討する方が多いのはなぜなのでしょうか。大きく4つの理由が挙げられます。
- 海外経験で、有利にキャリアアップ・年収アップできる
- 外国の文化に触れ、価値観が変わる
- 日本で暮らしたいと考え、駐在中に転職する
- 駐在中や駐在後にうつになることがある
それぞれについて、詳しく解説していきます。
海外経験で、有利にキャリアアップ・年収アップできる
海外に赴任し、現地スタッフをまとめたり海外のお客さんと取引したりした経験のある駐在経験者は転職において市場価値が高まります。
まず、海外で働くとなると多少なりとも英語や現地の言葉を使ってコミュニケーションできるようになります。また、海外でローカルスタッフに仕事を指示して正確に業務を進めてもらうのは想像以上に大変なことです。
日本人は多くの人が丁寧に正確に仕事をしますが、海外の現地スタッフは目を疑うようなミスを平気で犯します。
したがって駐在員は現地スタッフの業務過程を定期的に見直し、できるだけミスを起こしにくい工程に改良することも大切です。
また、「どのようにしたら彼らがモチベーションを高められるか」「どうしたらもっと合理的に業務を進められるか」といったことも考えながら仕事を進めなければなりません。
このようなマネジメントの経験があれば、日本で転職するときに有利になり高収入を提示されます。
実際のところ、駐在経験が数年間あると応募できる仕事の幅が広がります。後に求人票でも紹介しますが、駐在経験があればそれまでの業界とは関係ない分野の仕事にも就くことができます。
グローバルな人材が欲しい企業では、海外で働いていた駐在経験者は業界に関係なく活躍できると考えているからです。
特に20代で駐在経験し、日本で転職する場合はとても有利です。若くて経験のある人材は高い需要があります。このような理由から海外赴任後に退職してステップアップする駐在員の方はたくさんいます。
中には「駐在させてもらったし、帰任後すぐに転職するのは会社に申し訳ない……」と転職を躊躇する方は多いです。しかし、転職を考えているのであれば駐在経験後なるべく早い時期に転職することをおすすめします。
駐在経験して数年経ってしまうと、駐在中の海外の感覚や語学力が低下してしまうからです。帰国してすぐの、いい意味で海外に染まっている状態の方が「グローバル人材としての価値がある」と評価されます。
外国の文化に触れ、価値観が変わる
海外で生活すると価値観は大きく変わります。日本では当たり前のように受け入れていたことが、海外では「当然ではない」というケースが山ほどあることに気づきます。
例えば、日本の会社員の場合、昼休みに同僚とランチをとるのは普通のことです。しかし、海外では昼休みになってもデスクでりんごをかじりながら多くの社員が仕事を続けています。
私がヨーロッパの会社で働いたとき、最初はこの光景に驚き、現地の同僚に理由を聞きました。すると「早く家に帰りたいし、昼食食べると午後の仕事の効率が下がるから」と答えた衝撃は今でもよく覚えています。
日本では残業が当たり前であり、昼休みはランチを食べて休憩するのが当たり前だと思い込んでいましたが、海外では考え方が全く違うのです。
彼らの優先事項は「仕事を早く終わらせて家に帰って、家族とゆっくり過ごすこと」なのです。私はその日以来、昼休みをわざわざ取ることを止めました。午後に集中して仕事をしたいとき、昼食は軽く済ませるようにしています。
いま挙げた例は一つの例であって、数年以上海外で生活していると多くの文化の違いに気づき、その国のカラーに少しずつ染まっていくのです。つまり、日本にいた頃とは価値観が大きく変わってしまいます。
そのため、海外赴任後に日本で働き始めると駐在前までは当たり前だった会社のルールや残業・飲み会などが受け入れられなくなってしまうことがあります。
その結果、「また海外で働きたい」と思ったり、「日本の文化が浸透していない外資系のグローバル企業に転職したい」と考えたりするようになります。
日本で暮らしたいと考え、駐在中に転職する
反対に「日本でずっと働きたい」という理由で駐在中に転職する方もいます。私の知り合いにも、数人の駐在員が駐在期間中に転職活動して日本に帰ってしまいました。
例えば独身男性で駐在していた方は、「若いうちに日本で早くお嫁さんを探したい」という理由で転職活動を開始し帰国しました。また他にも、親の介護が必要になって転職して帰国する方もいます。
「海外から日本での転職活動は大変なのでは?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、みなさんスカイプ面接で選考を進め、最終面接のみ日本に行って面接を受けたと話していました。
何度も日本に足を運ぶ必要はないので、駐在中に海外にいたとしても転職活動は物理的に無理な話ではありません。
また、駐在の任期を経て帰国後、「もう海外はこりごりだから海外転勤のない会社に転職したい」と考える方もいます。
海外で生活するとその国の良さはあるものの、一方で日本の良さに気付くこともたくさんあります。例えば「治安の良さ」です。日本は世界的にみてもかなり治安の良い国です。小学生が一人で通学したり、夜に女性が一人で歩いたりすることも可能です。
しかし、海外では子どもを一人で登校させると親の育児放棄を疑われたり、夜22時以降は女性が一人で歩くと命の危険が及んだりする国が存在します。
治安の悪い国で駐在する場合、家族の移動まで含め、会社運転手付きの車を手配します。ある意味、自由が奪われた生活を送らなければならないのです。
他にも日本のようにお客様優先の国は存在しません。例えば、海外では配送サービスが驚くほど悪いです。
まず、ネットで注文した商品が行方不明になることは日常茶飯事です。留守の間に荷物が届いた場合は玄関に置かれていたり「近所の人に渡した」というメモが貼られていたり、日本では考えられない適当さが目立ちます。
のびのび働ける国は働き手にとってはメリットが大きいですが、お客さんの立場からすると「サービスが悪い」と感じることが多くなります。
私は海外で、「働き手とお客さんが対等な関係にある」ことを理解し、受け入れられるようになりましたが、これが受け入れられなければ海外生活ではストレスが溜まってしまいます。
このように海外での生活を窮屈に感じた駐在経験者は「海外転勤は嫌! 日本で生活したい」と考えるようになります。
駐在中や駐在後にうつになることがある
場合によっては駐在中や駐在後にうつになり、転職を考える方がいます。これには、正反対の事情があります。
駐在中にうつになる方は「赴任先の国が合わない」という理由でうつになります。私も駐在中にうつになって帰国した方を知っています。その人は帰国後すぐに転職したそうです。
海外では現地の国に馴染めないと孤立してしまいます。特に独身や単身で海外赴任している方は、一人で過ごす時間が長くなるため、うつになりやすい傾向があります。
一方で駐在後にうつになるのは、「日本の生活が合わなくなってしまった」という理由です。例えば、タイの駐在員で日本に帰ったあと、「奥さんがうつ病になってしまった」という話を聞いたことがあります。
タイなど物価の安い国では、駐在員はプール付き・運転手付きの豪邸に住み、お手伝いさんを雇えば料理・洗濯・掃除・子供の世話まで家事全般を行ってくれます。そのため、奥さんは日本での生活に戻れなくなってしまうことがあるのです。
こうした場合、再びタイ駐在などアジアで働ける仕事に転職したり、タイで現地就職したりする方もいます。このように様々な理由から駐在中や海外赴任後に転職する方がいるのです。
駐在帰りで転職する、転職サイトの求人票とは
それでは、駐在中や駐在後に転職するときはどのような求人を選べばいいでしょうか。ここでは、実際に駐在経験を活かした転職先について、求人票を交えながら紹介していきます。
前述したように、帰任後は「再び海外駐在が狙える企業」に転職したいと考える人もいれば、「日本国内で駐在経験を活かした仕事に就きたい」と考える人もいるでしょう。
そこで「再び海外駐在の可能性がある求人」「海外転勤のない求人」の2つに分けて紹介していきます。
駐在が楽しい!再び海外駐在を狙える求人
駐在の後、別の会社に転職してもう一度、駐在員のポジションを狙うことは難しいことではありません。むしろ駐在経験者は会社としても安心して海外赴任を任せられます。
ただし、同じ国を希望する場合はビザの再取得が難しかったり、優遇を受けられない可能性があったりするので注意が必要です。
例えばオランダの場合、駐在員は5年間税金上の優遇を受けられます。これは雇用している企業にとって人件費を抑えられるため、非常に大きなメリットがあります。
しかし5年の任期を経て日本に帰国し、別の会社に転職して再びオランダで駐在員として赴任した場合、既に5年間の優遇を受けているので税金の優遇は受けられません。
つまり、企業としてあなたをオランダへ赴任させる場合、他のスタッフに比べてコストがかかってしまうことになります。
同じ国を希望する場合は、「現地の事情をよく理解している」というメリットがある一方で、このようなデメリットがある場合も考えられます。そのため事前によく調べ、場合によっては他の国の求人を狙うこともおすすめします。
・再び海外駐在を狙える求人
そうしたとき、例えば以下の求人は駐在経験があれば応募できます。自動車業界トップメーカーであるホンダの海外営業職の中途採用の募集要項です。
北米・中国・アジア・中近東・欧州・アフリカに駐在できるチャンスがあります。自動車業界での経験は問われず、ビジネスレベルの英語力に加えて、メーカーまたは商社での海外営業経験・貿易実務経験があれば応募できます。
仕事内容としては、事業計画の取りまとめや部品の輸出・管理、貿易実務、現地法人のサポートなど海外出張をしながら海外事業を推進する営業を担当します。その後、再び海外駐在に就くチャンスがあります。
駐在経験があれば、世界的なグローバル企業で活躍できるのです。
駐在経験が必須の求人が存在する
続いて紹介するのは同じく、一部上場の日系グローバル企業です。海外拠点の営業・技術サービスのマネジメントを担当する幹部候補ポジションの中途採用募集です。
前述の求人の場合は、駐在がいつになるのか具体的に明記されていませんでしたが、こちらの募集では「半年から1年の国内研修後に海外駐在」との記載があります。
赴任先はアジア・ヨーロッパ・オセアニアのいずれかです。必須条件として「商社あるいはメーカーでの海外駐在経験(国は問わない)」「上級レベルの英語」が求められます。つまり駐在経験がないと応募すらできません。
・幹部候補での駐在員の転職もある
最後に紹介するのは、老舗企業のニチバンで幹部候補として海外営業の求人です。
海外事業部で販路拡大に向けて販売代理店や関係先と交渉したり、現地スタッフのマネジメントを行ったりします。駐在先はタイのバンコクかドイツのデュッセルドルフのいずれかです。入社後、1年程度で海外赴任の予定です。
応募必須条件は「半年以上の海外駐在経験者(営業職)」と「上級レベルの英語」のみです。前職で取り扱っていた商材や業界は問われません。
このように大企業で再び、海外駐在員としてキャリアアップできるチャンスがあります。
日本で生活!駐在経験を活かした海外転勤のない求人
一方で前述した通り、「日本で生活したいから海外転勤のない会社に転職したい」と考える方がいます。その場合でも駐在経験を活かしたポジションを見つけ、キャリアアップすることは可能です。
まず紹介するのは、海外人材支援事業の事業責任者の中途採用募集です。
日本のサービス業における人材不足を解消するため、海外の若手人材(主に東南アジア)を育成し、日本の会社に紹介するという社会貢献度の高い仕事内容です。
日本のサービス業関連団体や東南アジアの大学・外務省などとやり取りをして、交渉から契約までのビジネススキームを構築していきます。生産性の高い組織をつくり、マネジメント・採用・教育など全般的に仕事を担当します。
「必須条件は英語で交渉をまとめた経験」と「不確実な状況の中で事業を推進した経験」の二つです。海外駐在経験または5名以上のマネジメント経験があれば有利となります。
勤務地は東京新宿区なので海外転勤はありません。年収は800万円から1000万円と収入アップが期待できます。
・専門スキルを活かした転職
また駐在経験に加え、マーケティング経験があれば以下のような、化粧品会社大手の資生堂の中途採用に応募できます。
資生堂ブランドの海外市場開拓や育成戦略立案を担います。現地とコミュニケーションをとりながらグローバル戦略を立てグローバルツールボックスを開発し、商品開発を進めていきます。
応募必須条件は「マーケティング経験5年以上」「5名以上をまとめたプロジェクトリーダー経験」「英語でのビジネスミーティング・資料作成・プレゼンテーション」です。
さらに海外駐在経験や海外営業の経験があると評価されます。勤務地は東京の汐留です。
・国内での海外営業という方法もある
最後に紹介するのは三菱自動車での海外営業・交渉の中途採用募集です。
業務内容としては担当国の営業とマーケティング企画、損益管理を担当します。必須条件は自動車に興味があること、海外ビジネス経験、TOEIC700点以上などです。そして、海外駐在経験は選考で有利になります。勤務地は東京都です。
日本の大手企業なので福利厚生が充実しており、育児休業や介護休業・ボランティア休業など手厚い制度を利用することができます。
このように駐在経験を活かしてキャリアアップを図りながら、海外転勤のない仕事を見つけることも可能です。
まとめ
海外駐在経験者は転職において有利な立場で選考を進められます。自分で企業サイトをリサーチして求人を見つける方法もありますが、転職エージェントを利用すれば自分の希望に合った求人を見つけやすいです。
もしあなたが海外赴任の後に少しでも転職を考えているのであれば、勤めている会社に遠慮することなくなるべく早く行動することをおすすめします。
再び駐在を狙いたい人はもちろん、国内勤務を希望する人も、あなたが思っている以上に簡単に希望に合った求人が見つかります。
海外勤務経験があれば、語学の面で有利なだけでなく、外国人との交渉やローカルスタッフの育成・マネジメントといったスキルも身につきます。こうした能力はどんなグローバル企業でも活かせるため、仕事の幅が広がり良い条件で転職できます。
そのため駐在員の経験があるなら、キャリアアップ・収入アップを求めて転職サイトを活用しても問題ありません。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。