「海外で農業・酪農・牧場のいずれかに携わる仕事がしたい」と考えている方は多いです。

ただし、先進国だと求人が豊富にあるわけではありません。例えば、「フランスの農園で、住み込みで働きたい」「スイスの牧場で酪農の仕事がしたい」と考えても求人は存在しません。なぜなら日本人の需要がないからです。

一方でアジアであれば、農業分野は日本人の一定の需要があります。日本の農業は高齢化が進み衰退が進むことが問題視されていますが、世界で広がる日本食ブームを受け、ベンチャー企業や若者が一から農業に参入する動きがみられるからです。

そのため、日本の農業技術・農産物を世界に広げるアグリビジネスが活発な国では求人は見つかります。

ここでは農業関連の海外転職を考えている方のために、日本人の需要があるポジションについて求人を交えながら紹介していきます。また、「未経験から挑戦したい」「欧米諸国に就職したい」という場合は「どのように仕事を探せばいいのか」まで含めて説明します。

海外で需要があるのは、日本の農業技術をアジアで導入できる人材

自動車・家電・衣類など「Made in Japan」ブランドは世界で通用しますが、農作物も例外ではありません。「日本の農作物は安全・安心」というイメージがアジアの一般的な考えです。

アジアの一部の国では農薬まみれの農作物を市場に販売して、それを食べた国民が健康被害を受けるなど社会問題になっています。

そのため、例えば中国の富裕層は自国で生産された野菜を購入しません。価格が高くても安心して食べられる日本で栽培されたものが人気なのです。

日本の農家では基準値を超えるような農薬や肥料を用いたりせず、きちんと農作物を育てるノウハウを蓄積しています。また、アジアは湿気が多く虫がわきやすいので、似た環境である日本の栽培技術は導入する価値があります。

アジアの国では、このような日本のノウハウを現地の人に伝授できる人材の需要があるのです。例えば以下では、現地で野菜栽培の技術指導ができる駐在員を募集しています。

勤務地はフィリピンです。求人募集しているのは企業ではなく、公益社団法人の国際農業者交流協会です。いわば国の管轄下にあるため安心して海外赴任できます。応募必須条件は「英語で支障なくコミュニケーションが取れること」です。

東南アジアでの国際協力事業経験やJICA、NPO活動の経験があると選考において有利となりますが、必ずしも必要なわけではありません。

また、フィリピン・ベンゲット州で安全野菜栽培技術及び野菜の安定供給に必要な計画栽培・出荷などの指導業務や、報告書作成・スケジュール管理など事務的作業に従事します。

月給は30~40万円との提示があり、物価の安いフィリピンでは余裕を持って暮らしていける額です。また福利厚生には、予防接種や健康診断が含まれています。

駐在員としてフィリピンで農業開発に携われるポジションなので、魅力的といえます。

日本での経験を活かして海外で農業に携われる住み込み求人

また日本での農業経験があれば、海外の農場を管理するポジションを狙うことができます。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地はベトナムです。この企業はベトナムで生産された日本クオリティーの果物を香港など海外に販売しています。

募集されているポジションでは、日本の農家と連携してブドウ栽培の立ち上げに携わります。そのため、ブドウ栽培の経験が求められます。その他、自動車免許(マニュアル)、日常会話レベルの英語力が必要です。

給与について入社時は20万円以上であり、経験などを考慮して決定します。昇給やボーナスもあります。また、無料の寮が付いており住み込みで働けます。

しかも家族の帯同も可能であり、昼食・夕食まで提供されるため、生活費をほとんどかけず貯蓄にまわすことができます。

「海外で農業にチャレンジしたい」という方にはふさわしい求人です。

未経験から海外の農業関係の仕事に採用されるのか

ただ、「海外で農業や酪農・牧場の仕事に就きたいけど未経験」という方もいると思います。未経験の場合、求人の選択肢は減りますが、未経験でも応募できる求人は存在します。例えば以下のような求人です。

勤務地はタイです。無農薬バナナを栽培して日本の生協や自然食品店に販売しています。業務内容は「品質を確認する出荷管理」「提携農家の栽培情報管理」から「総務や経理財務管理などの事務作業」にも従事します。

農業の経験は求められていないので農業に興味があれば未経験でも挑戦できます。また、年齢も不問です。給与は22.5~26万円の提示があり、物価の安いタイでは十分暮らしていける収入です。

欧米で最先端農業技術を学べる求人は難しい

なお、海外での農業・酪農に興味を持っている方の中にはスマートアグリ(Smart Agricultureの略で、IT技術を駆使した生産性の高い農業のこと)など最先端技術を活用した農業を経験し、ノウハウを身につけたいと考えている人もいると思います。

欧米諸国は日本よりも農業技術が進んでいるといえます。日本の場合、狭い敷地に人と機械などのコストをかけているため生産性が低いですが、欧米諸国では広大な敷地を少人数で管理し、生産性の高い農業や酪農に成功しています。

ただし欧米諸国は日本とは気候が全く異なるため、そのまま身につけた技術が適用できるわけではありません。このような背景もあり、残念ながら日本の農業技術者の求人需要は欧米にはないのです。

したがって何かを学ぶのであれば、有料の農業研修やワーキングホリデー(バイト)、インターンシップに参加する方法を探しましょう。少なくとも、転職で欧米求人を見つけるのは困難です。

ヨーロッパの農園で働く方法

ただ、欧米の農園で働く方法が全くないというわけではありません。欧米諸国に農園を持っている日本の企業に就職すれば、海外赴任のチャンスがあります。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地は静岡県か長野県かスペイン(アンダルシア地方)です。最高品質のトマトの栽培を行っている農園でトマトの栽培・品質管理・商品開発を担当します。

また、ヨーロッパの中でも野菜の生産が盛んなスペインのアンダルシア地方に関連会社を持っており、海外転勤のチャンスがあります。ただし最初からスペインに赴任できるわけではなく、能力と意志によって決まります。

給与は月約19~23万円との提示があります(学歴などを考慮して決定)。農業の経験・年齢・学歴は問われません。

必要資格は「普通自動車免許(ミッション)」のみです。将来的にスペインに赴任できるチャンスがある農園で「イチから農業を学びたい」という方におすすめします。

海外出張を通してグローバルに農業と関わる方法もある

また中には「海外の農園で働く」という選択肢以外にも、日本に住みながら海外出張で海外の農業に携われる求人もあります。「子供がいるので海外赴任が難しい」「グローバルな仕事に就きたいけど、いきなり海外生活は不安」という方には、このようなポジションがおすすめです。

例えば以下のような求人であれば、海外を舞台に農業関係の仕事に就けます。

勤務地は大阪です。こちらの企業は芝刈機や草刈機などさまざまな緑地管理機械を輸出する事業を行っています。農業だけでなく、景観保全や環境保護にも貢献している製品です。このような機械をドイツ・フランス・イタリアやオーストラリア向けに営業する担当者を募集しています。

応募必須資格は「大卒以上」「英語ができる」「普通自動車免許証(オートマOK)がある」です。海外の取引先では基本的にコミュニケーションは英語なので、日常会話レベル以上の語学力が求められます。

また、求人票には「未経験者歓迎」の記載があるため、異業種からのキャリアチェンジも可能です。基本給は月額23~30万円で年に2回のボーナスが別に支給されます。また、出張手当も付くので農園で働くよりも待遇は恵まれているといえます。

社会的貢献度の高い求人

「海外の農業に関わりたい」と考えている人の中には、日本の農業技術を世界に広めて社会貢献したいという方もいると思います。そのような方には現場で直接技術指導するよりも、もっと広いフィールドで活躍できる農業のインフラ整備などに携われるポジションを探すといいです。

例えば以下のような求人です。

勤務地は東京都です。海外でのグローバルアグリイノベーションに従事します。アフリカ・アジア・中東・先進国・国内と、全世界を対象にアグリビジネスを加速するためのインフラ開発・スマートアグリ・食に関するヘルスケアビジネス開発に従事します。

そのため、アフリカ・アジア・中東など2~4週間の長期出張が定期的に入ります。

また、日本ブランド農産物の栽培・農業機械に関する研究や実証試験のサポート、マーケティングも担当します。

応募必須資格は「海外での事業開発に興味・意欲があること」のみです。また、海外で交渉できるコミュニケーション能力を保持していると、選考において有利になります。

海外で農業を中心とした事業開発に携われる非常にやりがいのあるポジションといえます。

まとめ

世界で広がる日本食ブームの影響と、海外の食の安全性の意識の高まりを受けて、今後も日本の農産物の需要は上がることが予想されます。それに伴い、日本で農業に携わった経験・ノウハウを持った人材は海外で働くチャンスは増えていきます。

海外赴任先はアジアが中心となります。「ヨーロッパで働きたい」という場合は、欧州に農園を持つ日本の企業の求人を探してみるといいです。

また未経験の場合でも、英語でのコミュニケーション能力が高ければ海外転職は可能です。日本の農家と連携して現地スタッフを指導できるからです。

さらに海外勤務にこだわらなければ、海外出張を通してグローバルに農業ビジネスに関わることも可能です。

このように海外転職では、さまざまな選択肢があります。まずは複数の転職サイトに登録して、幅広い求人に目を通すことから始めるといいです。実際の求人を見てから今後の人生プランを練っていきましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。