転職において敢えて派遣や契約社員を選ぶ人がいます。「定時で帰りたい」「ストレスフリーで働きたい」「転勤したくない」など様々な理由があります。海外転職でも同様に考える人は多いのではないでしょうか。
海外転職の場合だと、「働く国を選びたい」「プライベートな時間を充実させたい」「お試しで海外就職を体験したい」「数年だけ、期間限定で働いてみたい」といった希望があると思います。
ただ海外派遣や契約社員に絞って探しても自由な働き方は実現できません。それよりも、派遣や契約社員にこだわらないで探した方があなたの希望を満たす求人が見つかりやすいのです。海外では派遣や契約社員、正社員の区別が曖昧だからです。
ここでは、「期間限定にて海外で働いてみたい」「ライフワークバランスのとれた働き方を実現したい」という人のために、海外転職ではどのような求人が存在するか、さらには求人の注意点について解説していきます。
もくじ
海外派遣の求人はほとんどない
派遣や契約社員にて海外で就労してみたいと考える人はまず、海外派遣の求人を探すと思います。一定期間のみ派遣されるので、気軽に挑戦できるのではないでしょうか。応募条件もハードルの低い条件であることが多いです。例えば以下のような求人があります。
日本で製造された大型の半導体装置を海外へ納品・設置に行く仕事です。出張先としてアメリカ・ヨーロッパ・中国・シンガポールなどがあります。1回の海外出張で2~3ヶ月間滞在します。
海外出張以外のときは国内工場にて半導体装置の製造を担当します。応募条件では半導体の専門知識や英語力は問われません。
雇用形態は派遣社員であり、時給1,350円です。残業代・海外出張手当などが支払われるので、海外出張時は月収40万円以上も目指せます。
専門知識・技術も語学力が不要で、未経験から半導体装置の技術者としてキャリアを築ける上、海外に派遣されるので魅力的に感じる人も多いでしょう。ただ、このような求人は常に存在するわけではなく、タイミング次第です。そのため、海外派遣に絞って求人を探してもほとんど見つかりません。
また先ほどの求人は現地で働くのではなく、国内からの出張になります。そのため、本当の意味での海外転職ではありません。
海外に正社員や契約社員の区別はない
そもそも海外では1~2年程度で転職するのは珍しいことではないので派遣や短期間にこだわる必要はありません。そのため現地採用の正社員求人へと選択肢を広げましょう。そうしたとき、以下のような求人が見つかります。
フィリピンにあるオンラインゲーム開発企業で「カスタマーサポート」「マーケティング」「Webライター」「Webデザイナー」「Web運営責任者」をそれぞれ募集しています。いずれのポジションも雇用形態は正社員です。
未経験・語学・学歴不問であり、熱意があれば誰でも挑戦できます。また、福利厚生には「英会話学校への学費補助」との記載があるので、海外で働きながら語学力を磨くこともできます。
このような企業で「1~2年経験を積んで英語力を身につけたあと、日本に帰国する」という選択も可能です。
ただし、求人票に「〇年以上働く意思のある方」「移住したいと考えている人」といった記載がある場合は長期間の雇用を前提としているので避けましょう。例えば以下のような求人がこれに該当します。
タイ・バンコクに本社を構える食品・建材商社にて、新規事業立ち上げ担当者(幹部候補)を募集しています。新規事業の立ち上げや周辺諸国への輸出・販売業務を担当します。
応募必須条件は「日常会話レベル以上の英語力」のみです。ただし、「タイで永住する覚悟のある方」「タイで根を張って頑張っていこうという気持ちを重視する」との記載があります。
そもそも幹部候補を探している求人であるため、数年間で辞めてしまう人材は求めていません。そのため、「お試しや期間限定にて海外で働いてみたい」という場合は、このような長期間の就労を前提としている求人に応募するのは止めましょう。
海外における契約社員・正社員の位置づけ
それでは海外において、契約社員と正社員はどのように区別されるのでしょうか。
日本国内で目にする求人票には必ず雇用形態の項目があり、「正社員」「契約社員」など明確に記載されています。一方で海外求人では記載のないことも珍しくありません。なぜなら国によっては契約社員と正社員の明確な違いが無かったり、契約社員からスタートするのが一般的であったりするからです。
例えばマレーシアの場合、契約社員と正社員の間に差がありません。そのため求人を選ぶ上で雇用形態を気にする意味がないのです。
また、入社時は契約社員からスタートするのが一般的な国も多いです。例えば私が暮らしているオランダでは、よほど優れた人材出ない限り最初から正社員として契約を結ぶことはありません。まずは半年間の試用期間があり、3回目の契約更新時に正社員への切り替え義務が会社側に発生します。
この3回目の契約更新時に「不要」とされる社員も多く、契約終了となれば失職することになります。労働者の立場が強いオランダでは正社員に切り替わると様々な法律によって雇用者は守られ、会社は簡単に解雇することができません。
私の知り合いの会社に、ほとんど会社に来ない現地スタッフがいて、「辞めさせたいけど正社員だから辞めさせることができない」と話していました。理由はどうであれ「病欠」とすれば、いくらでも休めてしまうのです。
また会社側が正社員を解雇する場合、丸2年間分の給与を支払わなければなりません。その会社では結局2年分の給与を支払ってその社員に退職してもらったそうです。つまり正社員に切り替える際、会社側は大きなリスクを伴うのです。
このように国によって契約社員・正社員の位置づけが大きく異なるため、気になる求人がある場合は、その国の雇用形態の制度を調べましょう。
また、転職エージェントの担当者に問い合わせるのも方法の一つです。エージェントから企業に問い合わせてくれるので確実です。
海外転職サイトの求人票を見るときに確認すべきこと
なお、海外勤務の求人票を見るときには雇用形態以外にも確認すべきことがあります。きちんと確認しなければ、「こんなはずじゃなかった」「内定をもらったけど辞退したい」という事態になりかねません。
時間と労力を無駄にしないためにもあらかじめ確認し、分からないことがある場合はエージェントに問い合わせましょう。
雇用形態について、海外転職の求人票で確認すべきこと・注意点は以下の通りです。
- 雇用形態に関係なくボーナスが貰える
- 休日の体系
- 応募必須条件は全て満たせなくてもOKな場合がある
それぞれ詳しく解説します。
ボーナスが支給されるかどうかは重要
日本で働く場合、派遣や契約社員には通常ボーナスが支給されません。しかし、海外の場合だと契約社員と正社員に明確な違いが無いため、雇用形態に関係なくボーナスが支給されることが多いです。
ただ、国によってボーナスの名前やシステムが異なります。例えば、ベトナムやタイでは基本給の1~2ヶ月分がボーナスとして年末や旧正月に支給されるのが一般的です。
また、シンガポールではボーナスは「AWS」と呼ばれ、基本給の1ヶ月分を支給することが多いです。
ボーナスは会社によって金額や時期が決まっていることが多いですが、フィリピンは国の法律でボーナスの支給が義務づけられています。「13ヶ月手当」と呼ばれ、業績や個人のパフォーマンスに関係なく基本給1ヶ月分が12月に支給されます。
さらに、インドネシアやインドでは宗教行事に合わせて「レバラン手当(イスラム教のお正月にあたる)」や「ディワリ(ヒンズー教の新年祭)の手当」が支給されるのが一般的です。
例えば以下のようにボーナスについての記載があります。
日系大手ゼネコン企業がインドネシア・ジャカルタで事務職を募集しています。日本本社へのレポート業務・駐在員のフォロー業務などを担当します。
雇用形態は「正社員」です。給与は手取り14~25万円との提示があり、さらにレバラン手当(基本給1ヶ月分)の記載があります。
ボーナスは貰えるに越したことはありません。ボーナスの表記は日本の求人に比べて分かりにくいですが、自分で調べたり、明記が無い場合は問い合わせたりしてみるといいです。
週休1日の企業もある
また派遣や契約社員にて海外就職を考える大きな理由として、日本の労働環境よりも「プライベートを充実させたい」という点を挙げる人が多いと思います。日本より長期休暇が長かったり、有給休暇を全て消化できたりする企業が多い一方で、週休1日の企業も存在します。
そのため、こうした会社は避けなければいけません。例えば以下のような求人がこれに該当します。
タイ・バンコクにある語学スクールです。ここで日本語教師を募集しています。雇用形態は正社員ですが2年毎に契約が更新されるため、契約社員と変わらないといえます。
また求人票には「週休1日」と記載されています。月給は約14万円(1バーツ3.5円で算出)との提示があり、全体的に待遇が良いとはいえません。
海外でライフワークバランスのとれた生活を送りたいと考えている場合は、このような待遇面にも目を通しましょう。
さらに、「週休二日制」と記載があっても必ずしも土日が休みとは限らず、毎週二日休みが保障されているわけでもありません。休日の体系が曖昧な場合は担当者に確認してもらうようにしましょう。
応募必須条件はクリアできない項目があっても応募可能
なお、応募必須条件に記載されていることを全て満たす必要があると考えている人が多いと思います。私自身、海外で就職活動するまでは同様に思っていました。特に、派遣や契約社員を希望する人の場合は勤務条件や能力について、海外転職にあたり悩んでいる人もいると思います。
しかし海外のエージェントの人と話したときに、「応募必須条件を全て満たす必要はない。むしろ全てクリアする人材なんて企業側も期待していない」と教えてもらい驚きました。
特に外資系企業では応募必須条件の項目が多く、非常に細かく記載しています。日本ではあまり見かけないような「会社から50km圏内に住んでいること」「5ヶ国語以上話せること」といった記載や、「ユーモアのセンスがあること」といった条件が加えられていることもあります。
例えば以下のような応募必須条件は一般的です。
このように海外の企業の場合だと、Qualifications(応募必須条件)に、非常に細かい条件が挙げられており、条件の一つに「sense of humor(ユーモアのセンス)」の記載もあります。
そのため、例えば「TOEIC700点以上」という記載があり、あなたのスコアが600点であったとしても諦める必要はありません。その企業で働きたいという熱意があるなら、応募してみるといいです。海外転職では、採用の基準は良い意味でも悪い意味でも適当です。
そこで海外転職ではあなたの可能性を限定せずに、チャレンジしていく姿勢が重要です。
まとめ
期間限定にて海外就労を実現させたい場合、派遣や契約社員を目指す人は多いです。しかし、海外派遣の求人は非常に少ないです。
また、海外では契約社員と正社員の区別が曖昧な場合が多いので雇用形態を絞る必要はありません。そもそも海外では数年おきに転職するのは一般的なので、1~2年の期間限定のつもりで海外就職してしまって問題ありません。ただし、幹部候補や移住を前提とした求人に応募するのはやめましょう。
一方で、海外でライフワークバランスのとれた生活を送りたいのであれば、雇用形態に加えて「休日体系」についても確認しておく必要があります。その他、ボーナスの有無や応募必須条件についても細かくチェックしましょう。
ただし、応募必須条件は全てを満たさなくても受けられる求人もあるので諦めずに挑戦していくといいです。このようにして海外求人を探せば、現地採用の正社員であってもあなたの希望する仕事が見つかります。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。