世界中で日本食ブームが広がり、多くの国で日本食料理が食べられるようになりました。お寿司から始まり、ラーメン・天ぷら・焼き鳥・お弁当など日本の食文化が世界に浸透しています。

このような日本食ブームが続く中、日本から海外に出店する飲食店も増えています。日本で調理師として働いている方なら、「海外の焼肉店や鉄板焼きレストランで働けるのでは?」と考える方もいるでしょう。

実際に焼肉屋や鉄板焼きレストランの海外求人は、アジアから欧米諸国に至るまで豊富にあります。また、調理スタッフとして勤務する場合、高い語学力は問われません。

日本国内で既に調理師として経験を積んでいる方にとって自分の得意な分野、好きなことを活かして海外で働けるチャンスです。

一方で「飲食店は未経験」という方でも海外求人があります。特に焼肉屋ではお肉に関する細かい知識は必要ですが、寿司や天ぷらのように高い調理技術が不要なため、未経験や調理師免許無しでも応募できる求人があるのです。

ここでは焼肉・鉄板焼きレストランの海外求人を探す上で気をつけるべきポイントや、どのような求人があるのかについて紹介していきます。

焼肉・鉄板焼きの海外求人を探す上で気をつけるべきこと

海外求人を探す上で注意すべき点として、「日本と同じ部分」「日本とは全く異なる部分」があることを知っておく必要があります。

例えば、日本と同じこととして、飲食店に就職すると生活が不規則になります。勤務時間はお昼過ぎから深夜まで働くことも珍しくありません。夜が中心になるので、一般的な企業勤めの生活の時間帯とは大きく異なります。

また、土日出勤や休みが少ないことも覚悟しておく必要があります。週休1日か多くても休みは週に2日です。

「海外で働けば日本よりのびのびした環境で勤務できるのでは?」と期待して海外転職を考える方もいるかもしれません。しかし、飲食業界へ転職を考えているのであれば、勤務時間や休みなどの労働環境は日本と大きく変わらないと考えていた方がいいです。

海外にある日本食レストラン全てに求人があるわけではない

続いて日本と異なる点です。日本食ブームによって海外には様々な日本食レストランがオープンしていますが、その全ての経営者が日本人であるわけではありません。むしろ、日本人以外のオーナーの方が多い国もあります。

例えばオランダで日本食レストランとして一番店舗数の多いチェーン店の経営者は、中国人です。したがって店内では基本的に中国人が働いています。以下の写真はその日本食レストランです。

お店の名前は「SHABUSHABU(しゃぶしゃぶ)」ですが、メニューにしゃぶしゃぶはありません。お寿司や唐揚げ・ラーメン・うどん・焼肉などの日本食が食べ放題で、3500円程度です。メニューは以下のような感じです。

ヨーロッパでは基本的に飲み物は有料なので、日本のように無料で水やお茶が出てくるわけではありません。そのため飲み物代を含めると4000円は超えます。

つまり、決して安いレストランではありません。それでも連日、オランダ人やアジア人でにぎわっています。ただ、日本人が作る日本食とは程遠い品もあります。

例えば、うどんはパプリカが入っている上に、とろみのある甘くてぬるいダシに浸かっていたり、お味噌汁の中にマッシュルームが入っていたりします。

間違った日本食が外国人に広められているのは残念に感じますが、このようなチェーンレストランの普及によって日本食の知名度が上がったのは事実です。

また、他にもオランダでは日本式焼肉店も人気です。こちらの経営者は韓国人です。私も一度食べに行きましたが、店内で働いている日本人はいませんでした。しかし、以下のような日本の焼肉が食べられます。

ただ、焼肉のタレは日本の焼肉屋とは違います。ちなみに私が海外で生活していて最も恋しくなる日本食が焼肉です。

ラーメンやお寿司は海外でも十分おいしいお店が身近にあります。しかし焼肉は肉質で勝負が決まるといっても過言でない世界です。

ただ、欧米人は脂身の少ない赤味の肉を好むため、日本人が焼肉や鉄板焼きに使う霜降りの肉は流通しないのです。また、動物愛護の点からも「牛を無理矢理太らせて脂身を増やすのはかわいそう」という声があります。

そうはいっても、日本食ブームによって和牛のおいしさが徐々に評価されているので、これからは欧米人も霜降りのお肉を好むようになってくるかもしれません。つまり焼肉も鉄板焼きも、まだまだマーケットが大きくなる分野ではないかと考えています。

私の友人のグルメな外国人は「日本食レストランに行くときは、経営者が本当に日本人かどうか調べる」と話していました。そのため本物の日本食を求める外国人も多く存在するということになるのです。

このように、日本人以外が日本食レストランを経営しているケースが多いため、「日本食レストランの数に比例して、日本人の求人があるわけではない」ということを知っておく必要があります。

調理スタッフの場合、高い英語力は求められない

なお冒頭でも述べた通り、調理スタッフとして働く場合、語学力は重要ではありません。それよりもあなた自身の人間性や調理経験が重視されます。

ホールスタッフとなると現地のお客さんとコミュニケーションをとる必要があるため、それなりに語学力が必要になってきます。しかし厨房で調理をする場合は調理に集中するため、言語力が低くても支障をきたすことはないのです。

例えば以下の求人では、高級和食店の調理スタッフを募集しています。

勤務地はタイのバンコクです。求人票には「語学力は不問!」と記載があります。接客はタイ人が行う上、スタッフの中にはタイ語と日本語が話せる方が働いているため、言葉のスキルは問題になりません。調理に専念できる環境が用意されているのです。

このように、語学力よりも料理の腕前の方が重視されます。ただ、語学力が高いに越したことはありません。マネージャー職など役職者になってくると現地スタッフの指導・管理が必要です。また、海外で生活していく上でも現地の言葉を学ぶ必要はあるでしょう。

海外でいきなり独立はおすすめしない

ちなみに日本で既に豊富な調理経験がある方なら「海外就職よりも海外で店をオープンさせたい」と考える方もいるでしょう。しかし、いくら腕に自信があったとしても日本とは状況が異なります。

例えばヨーロッパでは日本人が日本食レストランをオープンしようとすると、必ず中国人に邪魔をされると聞きます。店舗契約させてもらえなかったり、開店まで辿り着けないようなトラブルが起きたりするそうです。

このようなトラブルに巻き込まれると資金を失うだけでなく、精神的にもまいってしまいます。日本から「この国は日本食が人気だから」と決めて現地に乗り込んでも上手くいかない可能性があるのです。

そこで、まずは興味のある国の日本食レストランの店舗に就職して独立の機会を待ちましょう。さらにいうと、実際に料理を提供しないと現地の人の好みや文化を理解することはできません。

また後ほど紹介しますが、求人の中には独立をサポートしてくれる会社もあります。そのような会社に就職すれば、安心して自分の店を持つことができるでしょう。

実際に海外で本格的な高級日本食を提供し、半年先まで予約が取れないほど人気の日本食料理の板前さんがいるのも事実です。ただし、いきなり海外で店をオープンしたのではなく、日系企業の高級日本料理店で働いて、そこで経験を積んでから独立した方が大半です。

「将来的に自分の店を持つ」と決めているにしても、まずは日本食レストランの料理長や店長を目指しましょう。

調理経験を活かして焼肉・鉄板焼きレストランに海外就職するには?

それでは日本で調理師免許を持ち、既に調理経験が豊富な場合はどのような求人に応募できるのでしょうか。以下は「料理長や副料理長といったポジションにキャリアアップしたい」という方におすすめの求人です。

勤務地は中国の上海です。日本式七輪焼肉店で料理長あるいは副料理長として調理業務・スタッフ指導などに従事します。働き方や料理に細かいルールはないため、日本で働くよりも自由度が高いといえます。また、オリジナルメニューの開発も任されます。

ただし、前述した通り週休1日、拘束時間は最長12時間(休憩を含む)との記載があるため、ハードワークは覚悟しなければなりません。一方で、まかない付きなので食費は抑えられます。

必須条件は「調理経験があること」のみです。また、もしも経験が浅かったとしても料理の腕の立つ方、中国語や英語が話せる方は優遇されます。

さらに「将来は海外で独立したい」と考えている方は、独立支援のサポートもしてくれます。このようなポジションに就職できれば「副料理長・料理長として腕を磨き、いずれ海外で自分の店を持つ」といった明確なキャリアプランを描けます。

アメリカの高級エリア、ビバリーヒルズにある求人

アメリカは就労ビザが最も取りにくい国の一つなので、日本の転職サイトで求人自体あまり見かけません。しかし、日本食の焼肉レストランであれば、アメリカで働くチャンスがあります。

例えば、以下は高級住宅街として有名なビバリーヒルズの求人です。

アメリカのカリフォルニア州にあり、1年を通して天気の悪い日がほとんどありません。気候に恵まれたエリアで、これまでの経験を活かして働くことができます。

こちらの求人では、ビバリーヒルズで絶大な支持を得ている焼肉店の店長を募集しています。調理はもちろん、店のマネジメント、ホスピタリティ溢れる日本人らしいサービスの提供に従事します。

勤務時間は13~23時です。途中で休憩を挟むので実働は8時間です。またシフト制で週休は1.5~2日あり、夏季休暇や冬季休暇もあります。

募集要項には「プライベートな時間を大切にしてほしいので残業はほぼ無い」と記載されています。労働環境の整備に力を入れているため、ストレスなく余裕を持って働くことが期待できます。

また、応募資格は「調理経験者」のみです。日常英会話ができると積極採用されます。実はこちらの会社ではシンガポールでも同時に料理長候補を募集しています。

仕事内容は和牛の成型(形状を整えること)、仕込み全般、お肉と相性の良い逸品料理の開発、新たなオリジナルメニューの開発、部下の育成などです。選考において、調理経験者は優遇されます。

シンガポール店では13~24時までの勤務ですが週休2日制を採用しています。

またシンガポールやアメリカ以外に、イタリアやベトナムにも出店しており世界各国で経験を積むことも可能です。

一般キッチンスタッフで働ける求人

ここまで紹介した求人は料理長や店長クラスの求人でしたが、一般スタッフの求人もあります。以下はマレーシアのクアラルンプールにある焼肉店でキッチンスタッフを募集しています。

仕込み作業・各種メニューの調理・盛り付けなどのキッチン内業務全般に従事します。応募資格は「調理師免許を持っており、飲食店での調理経験が3年以上あること」です。

勤務時間は13時半から25時の中でシフト制をとっています。また、4週6休ですので、休みは少ないです。

一般スタッフで月給は25万円以上、副料理長や料理長クラスは月給30万円以上が提示されます。日本よりも物価の低いマレーシアでは高給です。

その他、福利厚生には無料のコンドミニアム(社員寮)が用意されています。それに加えて、食事補助もあるので生活費はかなり安く抑えることができます。

さらに将来的には副料理長や料理長としてのステップアップも可能です。「経験を積みながらキャリアアップしたい」と考えている方には魅力的な求人といえます。

夫婦で海外勤務を実現することも可能

海外にある焼肉・鉄板焼きレストランだと、基本的に営業時間は夜のみです。ここまでの求人をみて分かるように勤務時間は午後から24時前後になります。

もしあなたが結婚している場合、「海外で生活の時間帯が異なると相手に申し訳ない」と海外勤務の夢を諦める方も多いと思います。

しかし海外求人の中には夫婦で就職できるものもあります。例えば以下のような求人がこれに該当します。

シンガポールにある高級焼肉店で店長候補を募集しています。接客・発注・ローカルスタッフの指導・調理サポート・新メニュー開発・プロモーション開発・売上管理、報告などが仕事内容です。

応募条件は「飲食店での勤務経験が2年以上(焼肉・鉄板焼きであれば優遇)」「英語でのコミュニケーション意欲がある(応募時点で話せる必要はない)」です。なお、焼肉・鉄板焼きの調理経験者は選考において有利になります。

また、「夫婦での応募も歓迎」との記載がある通り、夫婦で海外就職が可能です。「将来は独立を考えている」という夫婦にピッタリな求人です。

福利厚生には住宅補助やまかない、年に1回の渡航費補助なども含まれています。海外で働くと飛行機代の負担が大きいため、気軽に日本に帰れません。しかし、このような航空費の補助があれば、最低1年に1回は帰省できるので魅力的な福利厚生といえます。

また夫婦で海外転職となると、「子どもが生まれたらどうするの?」「子連れで渡航も可能なのか」といった不安を覚える方も多いと思います。

しかし共働き世帯が80%を超えるシンガポールでは、子どもが生まれたとしても女性が無理をせず働ける環境や制度が整っています。メイドを雇ったり、有休を上手く利用したりすれば夫婦で働きながら子育てをすることは日本ほど難しくありません。

むしろ毎年日本から、世界でも有数の教育先進国シンガポールに教育移住する家族もいるくらいです。夫婦で揃って海外就職できる上に子どもに世界最高峰の教育を受けさせられるメリットは大きいといえます。

調理未経験・調理師免許がなくても働ける焼肉・鉄板焼き屋

ここまで紹介した求人は調理経験が必要なものばかりでした。ただ、中には「調理未経験でも焼肉屋なら海外就職も可能ではないか」と考える人もいるでしょう。

実際に海外にある日本の焼肉レストランでは、調理未経験であっても応募できる求人があります。以下はドイツを中心にオランダやスペインなどにも日本食レストランを展開している企業の募集要項です。

居酒屋やラーメン屋、そして和牛焼肉の店舗で同時に人材を募集しています。勤務地はドイツのデュッセルドルフです。

私自身、この企業が運営するラーメン屋に行ったことがありますが、常に行列ができています。しかも並んでいるのは日本人ではなくほとんどがドイツあるいはヨーロッパの人です。

これだけ現地で受け入れられている飲食店の焼肉店舗でキッチンスタッフとして働けるチャンスがあるのです。しかも調理未経験者歓迎であり、入社後は現地で丁寧に調理技術について教えてもらえるため、問題ありません。

ちなみに、デュッセルドルフには日本人街があり、多くの日本人が生活しているため世界でも住みやすい都市の一つです。初めての海外勤務、初めての調理の仕事となる方にとっても恵まれた環境で働けるといえます。

イタリアで未経験から調理スタッフとして活躍できる求人

なお、一般的に海外求人はアジアがメインとなりますが、他にもヨーロッパなどで求人が存在します。イタリア・ミラノでも焼肉ダイニングの調理スタッフを募集しています。

調理全般からお店の運営に関わることまで幅広く従事します。応募資格には「資格の必要なし」との記載があるため、調理師資格も調理経験も求められません。料理経験よりも人物を重視して採用します。「異業種からの応募も大歓迎」とあるように、一から情熱を持って学べる方なら誰でも応募できます。

「そうはいっても即戦力になれるか不安」と感じる方もいるでしょう。しかし渡航前に日本できちんとした研修を受けるので問題ありません。研修では精肉から内臓まで全ての部位をさばいたり、部位ごとの調理法を学んだりします。

同時に日本酒・ワイン・野菜の知識から包丁さばき・テーブルマナー・店舗運営・メニュー開発に至るまで幅広い知識・技術を習得します。

日常会話レベルのイタリア語が話せるとアドバンテージになります。このように、調理未経験からイタリアで調理スタッフとして働ける求人があるのです。

日本で経験を積んでから海外赴任できる求人もある

「調理未経験だし、いきなり海外で働くのはちょっと……」という方には、日本で十分な経験・スキルを身につけたあとに、海外店舗の責任者として海外赴任する選択肢もあります。

例えば以下は未経験者歓迎の中途採用募集です。

入社後は日本国内の店舗で経験を積みます。調理はもちろん、スタッフの管理・育成・発注管理などマネジメント能力を身につけます。その後、海外勤務を希望すれば渡航のチャンスがあります。

海外店舗にはニューヨークやハワイ店があります。日本で働いている間に英会話の勉強も進められるので、スムーズに海外での生活を開始できるでしょう。

このようにいきなり未経験からの海外勤務ではなく、時間をかててゆっくりスキルを身につけてから渡航する方法もあります。

まとめ

日本の焼肉・鉄板焼きレストランで調理経験のある方は、たとえ語学力が低かったとしても海外就職のチャンスはいくらでもあります。

選択肢はできるだけ多い方がいいので、まずは複数の転職サイトに登録して担当者に条件を伝えましょう。その中で、どの国で働きたいのか、勤務時間や休日日数、社宅などの福利厚生も比較してあなたに合った求人に申し込むことをおすすめします。

一方で調理未経験の方は未経験から挑戦できる調理スタッフから開始して徐々にキャリアアップを目指しましょう。

また「いきなり海外で未経験の仕事に就ける自信がない」という方は、海外店舗を持つ国内の焼肉店あるいは鉄板焼きレストランに就職して経験・スキルを身につけ、海外赴任のチャンスを待つといいです。

このようにして焼肉・鉄板焼きレストランの求人を探し、海外転職を実現させましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。