ハードワークで働いているのに賃金レベルは低く、うんざりしている柔道整復師や鍼灸師、整体師の方は多いのではないでしょうか。日本では整骨院や整体・鍼灸院は既に飽和状態になっており、厳しい経営状態の治療院も存在します。その結果、劣悪な労働環境に身を置いている人も多いと思います。

しかし、柔道整復師・鍼灸師・整体師の活躍の場は日本国内だけではありません。薬物治療や手術などに頼らず、自然治療で病気や身体の不具合を治したいと希望する患者さんは世界中に存在します。

また海外だと、日本のように整骨院や鍼灸院が飽和していないので競争が激しくならず、整った労働環境が期待できます。また日本では当たり前に受け取られる施術サービスが、海外だと予想以上に感謝されることもあります。

そのため、こうした日本の柔道整復師・鍼灸師・整体師は海外転職が可能です。ここでは柔道整復師・鍼灸師・整体師が海外就職する場合の転職術について解説していきます。

整体師の海外就職で陥りがちな間違い2つ

海外で働くことを考えたときに「誰もが思いつくけれど、おすすめできない就職法」とその理由について述べていきます。以下に、それらの海外就職で陥りがちな間違いを2つ挙げました。

  1. 海外で新たに資格を取り直す
  2. 海外でいきなり開業する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

海外で新たに資格を取り直す

日本で国家資格を保持していると、その資格を活かして海外で働きたいと考えるのは当然です。ただ、いくら日本で身につけた高いスキルと経験を持っていたとしても、あなたの行きたい国で日本の資格や免許が使えなければプロフェッショナルとして働くことはできません。「それなら現地でイチから資格を取り直そう」と考える人がいます。

ただし、現地で資格を取り直す場合、現地の学校に通う必要があるため、まずはその国の言語を習得しなければなりません。母国語以外の言語で授業を受けるのは大変だからです。また、勉強面をクリアできたとしても、その他にお金の問題もあります。学費と生活費が必要になり、これまでの貯金を全て費やすことになります。

また柔道整復師や整体師の場合、日本独自の資格になるのでアメリカやヨーロッパでは「カイロプラティック」や「オステオパシー」といった類似の資格を新たに取り直さなければなりません。

ちなみに私が住んでいるオランダでは、日本の整骨院にあたるクリニックはフィジオセラピストと呼ばれる理学療法士が開いています。

腰痛や肩こり、産後のトラブルなどでホームドクターを受診すると、まずはフィジオセラピーの紹介状を渡されます。日本よりも理学療法士の活躍の場が広く、整体師や柔道整復師に近い施術も提供しています。このように国によって事情が異なります。

さらに無事に資格を取得できたとしても、今度は「確実に就職口があるのか」「就労ビザは下りるのか」という問題をクリアしなければなりません。

お金と時間をかけてイチから資格を取得できたとしても海外で働ける保証はどこにもないのです。そのため、時間・労力・お金をかけて資格を取り直すのはハイリスクといえます。

海外でいきなり開業するのは微妙

ただ、国によっては日本の資格をそのまま活かせる場合があります。例えばオランダでは日本の資格をそのまま活かして柔道整復師や鍼灸師、整体師として開業し施術できます。実際にオランダで開業している日本人の柔道整復師・鍼灸師・整体師は存在します。

実際にこのような治療院は日本人だけでなく現地のオランダ人からも人気があります。ただしこの店舗はいきなり海外でオープンしたわけではなく、既に日本に拠点を持つ治療院の海外支店です。

オランダのような国で独立していきなり治療院を開業することも可能ですが、資金力や高いスキルと経験が必須になります。企業のサポート無しで、現地の人々の性格や文化などをよく知らずに開業しても失敗してしまうリスクが高いです。

海外で経験を積み、現地の事情をよく知ってから開業することをおすすめします。

日本の会社の海外拠点に就職するのがおすすめ

それでは海外で働くにはどう行動したらいいのかというと、日本の会社の海外拠点を就職先に選ぶのがベストになります。資格をそのまま活かせるだけでなく、就労ビザに悩まされることがありません。また、応募条件さえクリアすればすぐに海外転職できます。

ただし海外転職の場合は、日本の国内勤務の求人数ほど豊富にありません。海外拠点数自体が少なく求人を見つける機会が減ります。そのため複数の海外転職サイトに登録しておくことをおすすめします。求人が見つかればその都度あなたに連絡してくれます。

例えば柔道整復師であれば以下のような求人があります。

勤務先はタイ・バンコクにある鍼灸整骨院です。日本で開業している整骨院の海外支店で院長を募集しています。日本人が多く住むエリアで主に日本人を対象としているので、語学力は特に求められません。

柔道整復師の資格があれば誰でも応募できます。しかも経験が浅い場合でも日本の治療院でしっかり研修が受けられるので心配要りません。月給は35万円と、日本での給与より下がるかもしれませんが、タイの物価は日本より安いので余裕のある暮らしが実現できます。

また、日本のように整骨院が飽和しているわけではないので競争が激しくない分、日本の労働環境に比べてのんびりと働くことが期待できます。このようにいきなり開業しなくても、鍼灸整骨院の院長として海外転職も可能なのです。

整体師の海外求人は豊富にある

ちなみに柔道整復師・鍼灸師・整体師の中で、海外で一番求人が多いのは整体師です。整体師は日本にて柔道整復師・鍼灸師として働くことはできませんが、逆は可能です。そのため、柔道整復師あるいは鍼灸師の資格を持っているのであれば、求人の選択肢を広げるために整体師の仕事も含めて就職先を探すといいです。

また国家資格の保有者だと、「高い専門知識がある」ということで選考においても有利になります。例えば、整体師であれば以下のような求人があります。

勤務地はシンガポールあるいはグアムです。東洋の古式整体施術などを提供するサロンで働きます。仕事内容は施術以外にも店舗運営・売上管理・スタッフ育成などのマネジメント業務に従事します。

求人票には「残業月5時間程度」との記載があるのでプライベートも充実させて働くことができます。また、施術をする上で英語は最低限話せれば問題なく、語学力は特に求められません。

・店長候補として経営ノウハウを身につけることも可能

また将来的に海外での独立を考えている場合、「治療院の院長の求人が見つからない」というときは、整体サロンで店長としての経験を積むと良いです。実際に以下のような求人があります。

勤務地は台湾です。日本式整体・マッサージ技術による施術を行います。同時に店長候補としてのスキルを習得して店長を目指します。経営方法や顧客対応など店長に必要なノウハウを学べるため、いずれ独立して開業を考えているのであれば、このようなポジションで経験を積むといいです。

ダブルライセンス以上あれば海外就職で有利になる

ちなみに、あなたが複数の資格を取得していれば海外就職で有利になります。具体的には以下の資格の複数取得です。

  • 柔道整復師
  • 鍼灸師
  • あん摩マッサージ指圧師
  • 整体師

これは、海外の治療院や整体サロンの多くが整体・鍼灸などの複合サービスを提供しているからです。

ちなみにヨーロッパで訪問看護師として活躍している私の知り合いは整体師関係の資格をいくつか持っており、看護業務に加えて整体施術サービスも提供しています。1時間50ユーロ以上しますが人気があり、実際に私も産後の骨盤矯正のために依頼したことがあります。

ダブルライセンス以上を取得していればそれだけ業務範囲が広がり、現場で重宝される人材となります。当然、就職先のチャンスも広がります。例えば以下のような求人の応募必須条件をクリアできます。

勤務先はタイ・バンコクにある整骨・鍼灸院です。ここで、柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・整体師を募集しています。姿勢分析とカウンセリングを中心に、筋肉・骨・インナーマッスルの治療を行い患者さんの痛みを素早く取り除いていきます。

応募必須条件は「柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の資格を保持」「実務経験2年以上」です。複数のライセンスを取得している必要があります。

こうした求人も存在するため、資格を複数保持している方だと、幅広い知識と様々な施術サービスが提供できるため海外転職で大きな強みとなります。

まとめ

日本で長時間労働を強いられ、毎日あくせく働いている現状に不満を感じているのであれば、海外転職に目を向けてみましょう。柔道整復師・鍼灸師は国家資格ですが、日本以外の国でも活躍の場があります。

このとき、海外で新たに資格を取り直すことや急いで開業することは考えずに、日本の企業の海外支店に就職するといいです。いまの資格のまま、海外転職が可能なのです。

そのためには、海外転職サイトを利用してあなたの希望条件を伝えておくと良いです。

海外に目を向けると新たな可能性が見えてきます。海外転職でグローバルな経験を積めば、将来的に海外で開業も可能です。整った労働環境であなたのスキルを磨くチャンスであり、アジアやヨーロッパを含めて幅広い求人に申し込むことができます。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。