日本人整備士の腕は海外でも十分通用します。実際、海外転職サイトには求人が豊富に存在します。ただし、求人のある国はある程度限られてくるものの、問題なく海外で働けるのです。

燃費が良く壊れにくい日本車は、世界中で人気があります。これは日本人整備士の腕が優れている意味が大きいです。

私であれば日本でずっと国産車に乗ってきましたが、ヨーロッパに来てから外国製の車のクオリティーの低さに驚きました。新車でもすぐに壊れ、修理に出しても治らないまま戻ってきたこともあります。車の性能も整備士の技術も日本に比べると低いのです。

このような背景から世界中の日本製中古車マーケットは大きく、日本人整備士・板金塗装技術者には高い需要があります。さらに転職時、語学力が低くても問題ありません。また、現場での実務以外にも「講師やインストラクターなど現地の整備士育成に携わる仕事」の求人も多く見受けられます。

「海外で暮らしてみたい」「グローバルな整備士になりたい」という整備士や板金塗装技術者は、躊躇しないで海外転職に挑戦してみることをおすすめします。ここでは、整備士での海外求人の特徴や仕事内容について紹介します。

整備士・板金塗装の海外求人は東南アジアと南米に集中している

整備士の海外求人は、東南アジアと南米に集中しています。なぜなら、これらの国で日本の中古車が高い人気を得ているからです。新車を買う余裕のない人たちにとって、中古車であっても日本車は壊れにくい上、燃費が良く高品質で安心なのです。

例えば、以下は私が南米・ボリビアのウユニ塩湖へ旅行したときの様子ですが、このときはトヨタの車でした。

また、日本人は車を比較的大切に使用するため、傷みが少ない点も人気の理由の一つです。海外旅行したことのある方なら分かると思いますが、海外ではホコリまみれの車や、ボコボコに凹んだ車がたくさん走っています。また、日本の駐車場のようにきれいに駐車されている国はありません。

車の検査・点検・整備・修理といったメンテナンスがきちんとできれば、日本製中古車は寿命が長く高い価値があります。そのため、日本車のことをよく知っている日本人整備士や板金塗装技術者はこれらの国々で重宝されるのです。

それでは東南アジアや南米でどのような求人があるのか見ていきましょう。以下は実際にミャンマーで募集されている整備士の求人です。

ミャンマーにある整備工場の工場長候補として、自動車整備事業の立ち上げを担当します。応募資格は「自動車整備の実務経験があること」のみで、学歴や年齢は問われません。

物価は日本の1/10とも言われるミャンマーで、月給30~40万円との提示があります。さらには社宅完備・海外赴任手当含めた様々な手当・送迎車まで用意されている高待遇案件です。ただし、駐在期間は2~3年で一度帰任し、希望があれば再赴任できます。

実はミャンマーには車検制度がありません。そのため、現地スタッフでは高度な技術が必要な日本車の整備・メンテナンスができず、日本人整備士を高待遇で駐在させる必要があるのです。

あなたが日本の小さなガソリンスタンドやディーラーで働く整備士であっても、このような海外整備事業のリーダーとして活躍できる求人はビッグチャンスといえるのではないでしょうか。整備士としてグローバルにキャリアアップを図りたい方におすすめです。

・南米に常駐の整備士

他には南米もまた、日本製中古車のニーズが高い地域です。例えばブラジルの北に位置するスリナム共和国では、国内の車の約9割が日本車といわれています。そのため以下のような求人があります。

スリナムの首都パラマリボで整備士として、「現地メカニック作業後の完成検査」「故障車の修理・整備」「お客さんへの説明」「現地スタッフ指導」などに従事します。

日本車が愛されているスリナムでは、日本でスキルを身につけた整備士は一目置かれる存在です。「日本人整備士が在籍している」というだけで付加価値が加わり、現地の人から信頼度が上がるので高い需要があります。

そのような場合、「数少ない日本人整備士の仕事量が多くなるのではないか?」と心配する方もいるかもしれません。しかし、この求人の場合だと1日の平均対応台数は1~3台、完成検査7~8台と決してハードワークではないです。残業もほとんどありません。

応募資格は「高卒以上」「国家試験2級自動車整備士の資格」のみです。語学力については「英語あるいはオランダ語での日常会話に抵抗が無い方」との記載があり、高い語学力は求められません。

また、給与は月30万円以上です。これに加えて住宅手当や年2回のボーナス、車の支給、年に1回の航空券支給といった福利厚生があります。これが最低条件のため、日本で整備士として勤務するよりも高待遇で働けるのではないでしょうか。

さらに、年に1回1カ月もの長期休暇を取得できます。日本に一時帰国したり、南米や北米を旅行したりも可能です。日本で整備士として勤務するよりも高待遇で働けるのではないでしょうか。

また、ジャマイカ共和国やガイアナ共和国への海外出張もあります。このように南米では日本車のマーケットがどんどん広がっているので、今後スリナム以外の南米の様々な国での求人も増えていくと考えられます。

「整備士の講師」という選択肢も可能

なお、整備士の海外転職の選択肢として、現場で整備士として勤務する以外に、「インストラクターや講師として活躍する道」もあります。例えば以下のような求人です。

勤務地はベトナムの首都ハノイです。トレーニングセンターにて、日本で就職する予定のベトナム人整備士の教育を担当します。日本の小さな整備工場では、人手不足により「外国人整備士を採用したい」と考える企業が数多く存在します。

一方で発展途上国の勤勉な若者は、「日本で働いて、より多くの収入を得たい」と日本語や日本の文化、そして日本の技術を熱心に学んでいます。このようなニーズから、ベトナム人整備士を対象に日本の技術をトレーニングできる講師の需要があるのです。

具体的には「日本企業への就職に必要な技能のトレーニング」「日本文化や働き方についての授業」「教育プログラムの考案」などを担当します。

現場で車と向き合う整備士の業務とは異なりますが、日本で働くことに意欲を持った若者を育てられる、社会貢献度の高い仕事といえます。応募資格は「2級自動車整備士の資格」「3年以上の整備士の経験」があることです。

日本で働く予定のベトナム人を対象としているので、日本語での授業ができるため語学力は不問です。

現地で働く整備士を育成する求人もある

また、「日本で勤務する整備士の育成」ではなく、現地で働く整備士の育成に取り組む求人も見られます。例えば以下のような求人です。

勤務地はミャンマーです。ミャンマーで現地整備士を教育するインストラクターたちの教育に携わります。「日本車の整備作業」「業務効率化」「レイアウト検討」「ワークフロー」などについて教えます。

日本の中古車マーケットが広がっているミャンマーでは、日本車への対応ができるよう現地のインストラクターに高い技術を身につけてもらう必要があるのです。

応募資格は、整備士業務全般に携わっていることです。語学力については問われません。年収は350~400万円であり、これとは別に交通費や年に2回の日本への一時帰国費用が支給されます。また、居住費も無償提供と手厚い待遇です。

「人に何かを教えることが得意・好き」という方は、このような指導者としてのポジションを探してみるといいです。

一方で、ここまでで紹介してきた求人を見て分かるように、現場で働く整備士の求人票には、業務内容の一つに「現地スタッフの指導」が含まれています。日本車需要の高い国へ海外転職する場合、現地の整備士に技術を伝授する業務は必須ともいえます。

整備士・板金塗装の海外転職では、語学不問の求人がほとんど

なお、「海外転職をしたいけれど、英語に自信が無い」という方もいるでしょう。しかし自動車整備士や板金塗装の求人の多くが「語学力不問」です。あなたのメカニックなスキルが重要であって、たとえ語学が苦手でも大きな問題にはなりません。

中には「通訳がつく求人」も存在します。以下のような求人がこれに該当します。

ミャンマーにある自動車整備工場で整備と板金塗装の技術指導者をそれぞれ募集しています。実際に作業をしながら現地スタッフに技術を教えていき、社内教育プログラムの作成にも携わります。

応募資格は、「5年以上の実務経験があること」のみです。年齢や学歴は一切問われません。また、通訳がつくので語学力も不要です。「日常会話レベルの英語力も自信がない」という方は通訳付きの求人に応募することをおすすめします。

さらに給与は25万円からで、加えて年に1回の一時帰国費用が支給されます。一方で、ミャンマーはビザの関係上70日間以上滞在することができません。そのため70日おきにタイへ出国します。その際の旅費も会社負担です。2か月に1回程度、隣国のタイに会社負担で旅行できるのも魅力的な求人といえます。

アメリカなど欧米での自動車整備士・板金塗装の求人はあるのか

なお東南アジアや南米の求人は多いと述べましたが、欧米諸国の求人は見つかるのでしょうか。残念ながら欧米で整備士関係の求人を見つけるのはかなり難しいです。アメリカやヨーロッパなどの欧米諸国では就労ビザの取得が厳しいのが大きな理由の一つです。

ただ、ワーホリ(ワーキングホリデー)で探せば話は別です。ワーホリの場合、年齢制限や就労期間の厳しい決まりをクリアできればワーホリビザで就労できます。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地は、ニュージーランドのオークランドにある日本人経営の整備・板金塗装工場です。ここで自動車整備と板金塗装に従事します。応募資格は「ワーホリビザを自分で取得できる」「英語で簡単な意思疎通ができる」ことです。

給与は月20~23万円で、ここにボーナスが加わります。また、夜間指定英語学校の学費補助があるので英語力を磨くには良い機会です。

ただし、ワーホリで就職する場合、期間が限られているので「そのまま就職して現地に永住する」というような甘い希望は持たない方がいいです。

「短期間でいいから海外で就労経験を積みたい」のであればワーホリで就職するのも良いですが、数年以上の滞在を考えているのであれば長期雇用を前提とした求人に応募するべきです。そうすれば、ビザなどの問題に頭を悩まさずに確実にキャリアが積めます。

海外出張にて活躍する求人はほぼ存在しない

また一方で、「日本国内に勤務しながら海外出張のある整備士に転職したい」と考える人もいます。これであれば、国内で活躍しながら欧米諸国などでも経験を積めるように思えます。

しかし残念ながら海外出張を伴うポジションの求人は少ないです。基本的には海外勤務になります。ただ、海外研修のある整備士の求人はあります。例えば以下のような求人です。

勤務地は兵庫県尼崎市です。求人票には「海外研修」の記載があります。「海外での自動車整備の仕事内容や日本との違い」などについて肌で感じながら学びたいのであれば、このような海外研修のある求人に応募するのも選択肢の一つです。

まとめ

高いスキルを身につけた日本人整備士は、日本製中古車のマーケットが大きい国において非常に貴重な存在です。現地の整備工場だけでなく、整備士を育成する講師としても活躍することが可能です。

その際に語学力は求められず、日本である程度の実務経験があり、技術を身につけていれば年齢・学歴不問で応募できます。

また、自動車整備士は国内外において人材が不足しているので、複数の海外転職サイトに登録するだけでも「スカウト機能(企業や転職エージェント側からあなたに応募の依頼を出す機能)」により、応募の声がかかります。

もちろん転職サイトを利用しながら、自分自身でどのような求人があるのかを事前にチェックしておくことも重要です。今後も日本製中古車のマーケットは広がっていくと考えられるので、グローバルに活躍したい自動車整備士・板金塗装技術者にとってはチャンスです。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。