介護福祉士やケアマネージャー、ヘルパーといった介護関連の人材は、高齢化社会が進んでいる日本国内で常に不足しており、高い需要があります。それでは、海外ではどうなのでしょうか。
人口の高齢化が進んでいる国では、日本と同様に介護関連の仕事の求人が豊富にあります。「それなら日本での資格と経験を活かして海外で介護士として働きたい」と考える方もいると思います。このとき海外では、求人自体はあるものの日本人の需要はありません。
国によっては介護の仕事に就く場合、看護師の資格が必要になったりその国の学校を卒業している必要があったりとルールがそれぞれ異なります。また、介護を実践する上でコミュニケーションは必須なるので、語学力の乏しい人が海外で働くのは難しいです。
それでは「海外で求人を見つけることは不可能なのか」というと、方法はあります。海外で日本の介護関連の資格を活かして働く方法は以下の3つです。
- 日本の介護現場で得た知識・技術・経験を教える介護講師として海外で活躍する
- 海外にある日本人向け介護施設で働く
- 介護の仕事とは直接関係ないが、医療の知識を活かした仕事に就く
上記の3つの方法について、実際の求人票や注意点などにも触れながら詳しく解説していきます。
もくじ
海外で介護講師として働く
深刻な介護人材不足が続く日本は、フィリピンやインドネシア、ベトナムなどから外国人の介護人材を受け入れています。この中で最も受け入れ人数が多いのがベトナム人です。
このような背景から、ベトナムには日本の介護について指導ができる日本人の介護講師の求人があります。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地はベトナムのハノイあるいは中国です。
仕事内容は日本で介護職に就きたいと考えているベトナム学生あるいは中国の学生に日本の介護について教えます。講師経験が未経験であっても事前に国内で研修があるので問題ありません。授業時間は1日6~8時間程度です。
応募資格は「介護福祉士の資格を持っている」「実務経験がある(資格取得後5年以上)」「海外勤務が可能」であることのみです。現地では通訳がいるためベトナム語や中国語は求められません。
また、海外勤務では家具・家電付の住居が用意されているので生活費を抑えることができます。
このような仕事に就けば、海外で介護福祉士の資格を活かして働くことが可能です。さらには、帰任になってからも日本国内の介護系専門学校の講師として引き続き勤務できます。
「介護現場の仕事には少し疲れたけど、資格を活かして海外で働きたい」という方におすすめです。
東南アジアで介護業務に当たる求人例
一方で、現地スタッフへの指導・教育に加えて現地の介護施設で介護業務を担当する募集もあります。以下はタイのバンコクで新規事業立ち上げに伴うスタッフを募集しています。
仕事内容はタイ人への教育・訓練と介護業務です。応募条件は「介護経験1年以上」「初任者研修、実務研修修了者」「ヘルパー1あるいは2級」「介護福祉士」のいずれかに該当していることです。なお、介護福祉士の資格を保持していると優遇されます。
性別・年齢・語学力は不問ですので、介護経験さえあれば誰でも挑戦できるといえます。
日本人向け介護施設(老人ホーム)で働く
また、日本人向けの施設を狙うことも可能です。海外でも日本人が多く住むエリアには、日本から進出している日本人向けの介護施設があります。スタッフ全員が日本人ではありませんが、日本語が通じたり日本式の介護サービスを受けられたりします。
このような海外にある日本人向けの介護施設では介護関係の資格を持った日本人の需要があります。
例えば以下の求人では、アメリカのニューヨークの訪問介護事業で介護スタッフを募集しています。
応募条件は「25~39歳までの男女」「介護現場経験5年以上」「介護福祉士の国家資格保持者」です。介護福祉士の資格を持っていれば難しい条件ではありません。また、ニューヨーク在住の日本人向けサービスなので英語は話せなくても大丈夫です。
このような求人であれば介護の資格を活かして海外で働くことが可能です。特にアメリカは就労ビザの取得が難しいため、日本人向けの求人自体少ないです。しかし、専門スキルを持っている場合はこのような求人に応募できます。
ただ、常に豊富な求人があるわけではないので複数の転職サイトに登録し、募集が出たらすぐに応募する必要があります。
医療現場の知識を活かした仕事に就く
海外で介護の資格を活かす仕事は他にもあります。直接介護とは関係ないものの、医療現場での知識や経験を活かせる医療アシスタントの仕事です。
例えば以下の求人では、タイで医療現場経験のある医療アシスタンスコーディネーターを募集しています。
勤務地はタイのバンコクです。海外滞在中あるいは駐在している日本人のうち、病気などにより医療を受ける必要のある方へ電話でサポートを行います。
具体的には海外医療機関の手配、治療費支払い代行手続き、データ入力・報告書作成、医療機関や保険会社との調整、医療派遣者による帰国手配などの業務に従事します。
必須条件は「ビジネスレベルの英語力」のみです。ただし、医療現場経験者や医療資格保有者は優遇されます。したがって介護関連の資格を保有していると選考が有利です。
海外では、日本とは全く違う医療制度・保険制度があるので、旅行先でいきなり現地の病院を訪れても医療を受けることはできません。そこで、まずは対応してもらえる医療機関を探すためにコールセンターに電話します。
私も一度旅行先で病院に行く必要があり、このようなコールセンターに電話をかけたことがあります。すぐに近くの病院を紹介してくれて、事前にコールセンターから病院に電話をかけてくれていたのでスムーズに受診できました。
外国で怪我や病気をして緊急で病院に行きたい方にとって、このような医療アシスタントの存在は、とてもありがたいです。介護とは違う医療への携わり方ですが「困っている人を助ける」という意味において、やりがいは共通しています。
海外の病院内で医療スタッフとして働く
また前述したオフィスワークではなく、「病院など医療現場で働きたい」という方には以下のような求人がおすすめです。インドネシアのバリ島に新しくオープンした高級リゾートエリアにある病院であり、医療スタッフの募集です。
この病院の病棟は全室個室であり、ホテルスタンダードを目標としているきれいな病院です。日本人の患者さんに、安心して安全な医療を受けてもらうようサポートするのが主な仕事です。
応募条件は「電話対応で英語を不自由なく話せる」「夜勤が可能である」「最低1~2年間医療機関で従事した経験がある」「コミュニケーション能力が高く、医療専門用語を含んだ通訳が可能である」です。
介護経験の長い方であれば医療現場の専門用語はもともと知っていると思うので、メディカル英単語を勉強すれば問題ありません。
こちらの病院の周りは5つ星ホテルやレストランが立ち並んでおり、立地条件がよく、治安上の心配も必要ありません。海外の高級リゾート地で医療に携われる仕事に就ける恵まれた環境にあるといえます。
病院内には一般外来や救急、歯科センター、透析センター、コスメティックセンターもあり、幅広い医療知識を身につけられます。
介護福祉の海外ボランティア・インターンシップは意味がない
ここまで、様々な介護・医療関係の仕事を紹介してきましたが、中には介護に携われる海外ボランティアやインターンシップに関わりたいと考える人もいます。これについては、実際のところどうなのでしょうか。
結論から述べると、海外ボランティアやインターンシップに参加しても意味はありません。「海外の介護現場について知りたい」のであれば、ボランティアに参加せず上記のような求人に応募して海外で働くことをおすすめします。
まず、ボランティアやインターンシップは職歴にはなりません。そのため、あなたのキャリアアップにはつながりません。それだけでなく、ボランティアをするには高額な費用がかかります。
実際にカナダのバンクーバーにある高齢者施設では、海外ボランティアの募集があります。
活動内容としては、昼食やおやつ時間の準備、車いすや食事の補助、買い物・掃除、アクティビティーの準備などです。雑用に近い内容も含まれています。
もちろん日本とカナダの介護現場を実際に見比べることができるので興味深い内容かもしれませんが、参加費用は無料ではありません。
この場合、1週間ボランティア活動に従事するために17万円近くの費用がかかります。4週間であれば約26万円です。ホームステイの費用は含まれていますが、航空券は自腹です。
ここまでお金と時間をかけるくらいなら、実際に海外で働ける仕事を探したり、海外旅行をしたりする方がいいと思います。
例えば私の薬剤師の友人は海外旅行が大好きで、毎年色んな国へ一人旅に出かけています。そして滞在先で調剤薬局を訪れて、調剤風景や調剤室を見せてもらっているそうです。以下のような感じです。
もちろん全ての薬局が受け入れてくれるわけではないそうですが、快く見せてくれるところが多いと話していました。
このように、自分で行動することも大きな勉強につながります。
介護施設で働く海外インターンシップ求人
またボランティアと同様、海外の介護施設で働くインターンシップの求人もあります。
勤務地はアメリカのシアトルにある日系の介護福祉施設です。アクティビティーのサポートやお年寄りのエスコートなどを担当します。
日常会話レベルの英語力があれば応募可能です。期間は3ヶ月未満ですが給与は無給です。したがって、飛行機代・滞在費用・食費などは全て自分で賄わなければなりません。
自分の時間とお金を自己投資するだけの価値があるかどうか、参加前によく考えた方がいいと思います。
一方で先に紹介した介護の資格や経験を活かせる仕事に就けば、給料をもらいながら海外の介護現場について学べます。同時に職歴にもなるため、実際に海外転職したほうがあなたのキャリアにとってプラスになります。
まとめ
介護の需要は世界中にあるものの、日本人が介護関連の資格を活かして応募できる仕事は限られています。
しかし、介護の現場にこだわらず講師として活躍したり、医療アシスタント・スタッフとして従事したりすれば、これまでの経験や知識を活かせることができます。資格があることで選考が有利になったり待遇が変わったりするので、大きなアドバンテージにつながります。
ただし、常にあなたが就職したいと思える求人があるわけではありません。そのため複数の転職サイトに登録して気長に待つことも大切です。
なお海外ボランティアやインターンシップの求人はすぐに見つかりますが、お金と時間の無駄です。そのため海外で活躍したいのであれば、ボランティアなどは考えずに海外求人を保有する転職サイトを活用し、実際に働くようにしましょう。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。