「一度は海外で働いてみたい」と思いつつも、なかなかその一歩を踏み出せずにいる方は多いのではないでしょうか。
「結婚して子どももいる」「自分の英語力ではグローバルに働くことはできない」「今の生活に満足している」など何かと理由をつけて、海外で働く夢を諦めている方も多いと思います。
しかし、結論から述べると転職して海外移住すること自体はそこまで難しいことではありません。あなたに覚悟と勇気があれば問題なく就職できます。
ただ、あなたのこれまでの経験や知識を活かし同じような職種・ポジションに絞りすぎると就職は難しくなるでしょう。しかしこれについても、頭を柔軟にして視野を広げれば、あなたのスキルを活かした仕事を見つけることは可能です。
ここでは、海外転職の際の疑問点や求人を見つける方法、海外で働く場合の職種などについて詳しく説明していきます。
もくじ
ビザの壁を乗り越えるための一番てっとり早い方法
海外に就職するとき、最初に必要なのは就労ビザの取得です。
まずは「ビザって何?」という方のために、ビザについて説明します。ビザとは、国が発行する証書のことです。例えば、海外旅行の場合、国によってはパスポートに加えて観光ビザが必要になります。この場合の観光ビザは「入国許可証」です。
一方で、外国人が外国で働く場合は基本的に「就労ビザ」の取得が必要です。「その国で働いてお金を稼いでもいい」という許可証になります。例えば、以下が就労ビザに当たります。
つまり、あなたが日本以外の国に転職するためにはその国の就労ビザが必要になるのです。就労ビザを取得する条件は国によって細かく異なるので一概にはいえませんが、何か特別なスキル・資格を持っている人を除いては容易ではありません。
その国の永住権を持っていたり、その国の人と国際結婚していたりする場合は基本的に就労ビザが与えられます。しかし日本に住んでいる日本人が海外で働く場合、就労ビザの取得をサポートしてくれる雇用主を探さなければなりません。
ただ現地の求人情報などをチェックするとほとんどの場合、既に就労ビザを持っていることが前提となっています。
例えば、こちらはオランダの現地で募集されている求人情報です。
このように、オランダの就労ビザを持っていないと応募することができません。
転職サイトを利用すれば海外居住での就労ビザ取得は容易
「そうしたとき、海外居住でどうやって就労ビザを取得するの?」とビザの壁にぶち当たります。しかしビザの壁を簡単に乗り越える方法があります。それは、海外転職エージェントを利用するということです。
例えば、以下は海外の求人を取り扱っている転職エージェントに掲載されている、飲食サービスに関する中途採用募集です。
ヨーロッパの中でもドイツ・デュッセルドルフでの勤務ですが、住宅手当以外にもビザサポートがあると記載されています。つまり、採用が決まったら就労ビザの取得をサポートしてくれます。
このように直接現地の求人情報を探して応募するよりも、転職サイトが取り扱っている求人から探した方が、就労ビザの取得については手っ取り早いです。
ただし、転職エージェントが取り扱っている求人全てに就労ビザのサポートが付いているわけではありません。就労ビザを持っていることを前提としている求人案内もあるので、まず最初に必ず確認する必要があります。
また、転職エージェントにはスカウトサービスというシステムがあります。これは転職サイトにあなたの経歴やスキルなどの情報を登録しておくことで、それを見た企業の人事担当者がスカウトの連絡を送ったり、人材紹介会社があなたにピッタリな求人を見つけたときに連絡してくれたりするサービスです。
毎日求人情報をチェックしなくても、企業側からアプローチしてくれる可能性があります。
ただし、「スカウトが来るまで待っていればいい」というわけではありません。自分で探すのはもちろんのこと、スカウトが来たら前向きに検討してみるとよいです。またスカウトの場合、内定をもらえる確率が高くなります。
このように転職サイトには、「就労ビザのサポート付きの求人情報を取り扱っている」「スカウトサービスがある」ことなどから、あなたの海外転職を効率的に進めることができるのです。
仕事は何がある?あなたのキャリアを活かすための方法
それでは、具体的な仕事探しについて確認していきます。「海外では、一体どのような仕事ができるのか」と疑問を持つ方は多いでしょう。海外であなたが就ける仕事としては、大きく以下の二つに分類できます。
- 日本語を活かした仕事
- 日本での経験・知識を活かした仕事
英語を話せる場合だと企業の選択肢が広がりますが、たとえ語学力が低かったとしてもこうした企業であれば問題なく転職できます。
日本語を活かした仕事は一般的
あなたの強みはやはり「日本語を話せること」です。日本語を活かした働き先として以下が挙げられます。
- 日本人学校や語学スクールなど教育機関
- 日系企業
- 日本食レストラン
それぞれ詳しくみていきましょう。
・語学スクールや塾などの教育機関
日本人が多く住む国には、現地に住む駐在員の子弟や国際結婚して日本人の親を持つ子ども達を対象として、日本語で教育するスクールや塾などの教育機関があります。
「でも、日本の教員免許持ってない……」と考える方がいらっしゃると思いますが、以下のように教員免許が不要な募集もあります。もちろんビザのサポート付きです。
こちらの募集はベトナムで「日本人の小学生向けに国語と算数を教える教師の募集」です。しかし、「教員免許などの資格不要」との記載があるため、誰でも応募できます。
他にも、以下のような募集もあります。
こちらは香港で日本語のみを使って子どもに日本語を教える仕事の募集要項です。子どもと接することが好きな方や何かを教えるのが得意な方に向いています。また、大学生の頃に家庭教師や塾講師のアルバイトをしていた経験などがあるとなお良いでしょう。
・日系企業
海外に進出している日系企業は数多く存在します。海外にあるとはいえ、顧客は日本人・日本法人であることが多いため現地で働いている日本人の需要が一定数存在するのです。
日系企業に勤める場合、日本人顧客への対応業務や日本企業への営業・一般事務などの職種があります。以下は5大総合商社に数えられる大手商社が実際に募集している事務職の募集要項です。
ベトナム・ホーチミンで営業サポート・事務の仕事を担当します。必須条件として何らかの特別な資格が指定されているわけではなく、社会人歴が3年以上あり、英語力が社内コミュニケーションレベルであれば問題ありません。
要求される英語のスキルが社内コミュニケーションレベルであれば、留学経験がなくても英会話できちんと勉強すれば身につくレベルといえます。大手商社の募集でさえ、高いレベルの人材は求めていないのです。
そのほかにも、同じベトナム・ホーチミンで日系企業に保険の営業を担当する仕事の募集があります。
未経験者でも挑戦できる職種となっています。金融業界や保険業界で働いていた経験があれば非常に有利に選考が進むと考えられます。
・日本食レストラン
日本食ブームともいえるほど、世界中で日本食への関心が高まっています。世界各国で日本食レストランが次々とオープンしており、キッチンスタッフやホールスタッフの募集があります。例えば、以下はミャンマーの高級百貨店の中に店舗を構える日系ラーメン店です。
海外の日本食レストランでは、ハイクオリティーな日本食の提供だけでなく、日本人によるきめ細かなサービス・おもてなしを提供したいと考えるレストランの経営者も多いです。そのため、日本人のホールスタッフの募集もあります。
以下は実際にドイツで募集のある日本食レストランの求人の詳細です。
未経験者でも問題なく、ビザ取得や住宅サポートまで行ってくれます。また、スタッフのほとんどが日本人なので「外国語ができなくても問題ない」という環境で働けます。
このような条件であれば、初めての海外でも安心して働けるのではないでしょうか。
資格を使った経験や知識を活かして転職する
日本でのキャリアや特別なスキルがあれば、それを活かした仕事に就きたいと考える方は多いでしょう。しかし、専門職の場合、その国の資格や免許が必要になってくるので同じ職種で働くことは難しくなります。
例えば看護師の資格を持っている人であっても、いきなり海外の病院で看護師として働くことはできません。海外で看護師として働くにはその国の看護師試験に合格する必要があり、さらに就労ビザの問題をクリアしなければなりません。
しかし、看護師としての経験を活かして海外で働くチャンスはあります。例えば、以下の求人案内は看護師の資格・経験を活かしてシンガポールに駐在し、海外の病院・ドクターに対して営業を展開する仕事です。
営業範囲は、シンガポールをベースにアジア全域・香港・台湾・オーストラリア・ニュージーランドと広範囲です。したがって様々な国に出張できる上、グローバルな経験を積むことができます。
「看護師は病院でしか働けない」という固定概念を捨てて、視野を広く持てばこのような海外で働くチャンスを見つけることができるのです。
今回は看護師を例に出しましたが、他の資格を必要とする専門職に就いている方も考え方は同様です。自分の専門分野の営業職やマーケティング職であれば、海外でもその国の資格無しで働けます。
また、専門職ではなくても例えば工場勤務の経験があるのであれば、海外工場の管理の職種に応募することが可能です。例えば、以下はフィリピン工場の管理を担当する求人の募集です。
必須条件は日常会話レベルの英語です。また日本の工場で経験を積んだ後、現地に出向くので現場経験という意味では問題ありません。
あなたのスキル・経験・知識を活かした仕事に就きたいのであれば、希望職種を絞りすぎてはいけません。同じ業界の中でも、様々な職種に目を通してみることをお勧めします。
海外転職の移住先はどんな国がある?
ただ、重要になるのは「どの国へ移住するのか」という点です。仕事探しや就労ビザの取得は転職サイトを利用すれば問題ないものの、国によっては外国人労働者の規制が厳しく、求人自体が少ないところがあるのです。
アジアであればシンガポール・中国・ベトナム・インドネシア・タイ・マレーシア・フィリピン・インドなどの求人が多く、先進国から経済成長が著しい国まで選択肢は様々です。
ヨーロッパであれば、日系企業の多いドイツの求人募集が目立ちます。一方で、日本人が多く住んでいるイギリスの場合、就労ビザの取得が難しいため、求人案内には以下のように「就労可能なビザをお持ちの方のみ」という条件がついている案件がほとんどです。
イギリスと同じ理由で、オーストラリアやニュージーランド・カナダ・アメリカ・ハワイの求人案内は少ない傾向にあります。
もしあなたに「この国に行きたい!」という希望があるのであれば、その国の求人案内を確認しましょう。求人自体が極端に少ない場合はチャンスが少なく、希望の職種を見つけることも難しいため他の国を検討した方がよいといえます。
英語が話せなくても海外転職は可能?
「海外で働いてみたいけど、英語に自信がない」という方は多いと思います。ただ、ビジネスの場で英語を流暢に話す必要はありません。少々文法が違っていても意思疎通が図れたら問題ないからです。
ここまで紹介してきた求人票を見て頂いても分かる通り、「日常会話レベルの英語力」「社内コミュニケーションレベルの英語力」といった程度の条件を設定している企業は多く、「TOEIC900点以上」といった高いレベルは求めていません。
そして日本人の場合、高校・大学を卒業している方ならきちんとした英語教育を受けています。話すことはできなくても文法を理解し、英単語をある程度は知っています。
ただ、英語を話す上で必要なのは文法や英単語の知識よりも、簡単な文を頭の中で作って口に出すトレーニングとリスニングの練習です。スポーツと同じで、練習することで自然と身につきます。
したがって、一から英語を学び直さなくても、会話の練習に重点を置けば英語力が向上します。「英語力をきちんと身につけてから海外転職に向けて動き出そう」と考えるのではなく、先に転職活動を始めることをお勧めします。
海外への移住が決まった時点で、英会話学習を始めると良いでしょう。最近ではオンラインで利用できる低価格な英会話レッスンもあるので、時間やお金をかけなくても英語力をアップさせることが可能です。
海外転職したいけど子連れで海外移住はアリ?
なお、中には単身・独身で海外転職するのではなく、家族を連れて海外へ移住するケースがあります。その場合、海外居住への覚悟がより大きくなるのではないでしょうか。
そこで現地採用の場合は、子どもの学校のことや治安・医療面の問題をクリアしていかなければなりません。
・子どもの学校
海外で子どもを学校に行かせる場合は、インターナショナルスクール・日本人学校(日本人が多く住む国にはあります)・現地校の3つから選ぶことになります。
ただし、インターナショナルスクールは小学校でも年間数百万円の学費がかかることがあり、会社からの補助が見込めない場合は現実的ではありません。
また海外にある日本人学校は日本国内にある公立の学校とは扱いが異なり、現地の国では私立に該当するため費用がかかります。
そのため現地採用での移住を考えている場合、現地校を選ぶケースが多いです。海外の環境で日本語以外の言語を子どもが習得してくれるのは良い機会といえます。ただ、その場合は現地の教育レベルや言語などについてよく調べておかなければなりません。
例えば、アメリカやイギリス・カナダなどの英語圏の場合は現地校も英語です。またアジアでもシンガポールや香港は現地校でも英語教育に力を入れているので、中国語に加えて英語を自然と身につけることができるでしょう。
また英語圏ではないヨーロッパの国の中には、教育レベルが高く、多くの小学生が英語を話す国も存在します。例えばオランダ人の場合、母国語はオランダ語ですがほとんどの人が英語を話せます。現地校に行ってもオランダ語と英語を身につけられるのです。
一方で、ヨーロッパの先進国でもフランスでは英語はあまり通じません。現地校に子どもを通わせた場合、あなた自身も先生とのコミュニケーションに苦労することが予想されます。
このように現地校に通わせた場合に身につく言語や、教育水準についてもよく調べておきましょう。
・治安の問題
日本ほど治安の良い国は世界的にみても珍しいです。日本のように子どもが一人で小学校に通えるほど治安の良い国は世界的にみてもほとんどありません。ヨーロッパの先進国でさえ、夜には女性や子どもが一人で歩くことは危険すぎる地域がたくさんあります。
銃撃事件や子どもの誘拐・強盗などの犯罪が、日本では考えられない頻度で起きています。気になる求人情報を見つけた場合は現地の治安面についてよく調べましょう。
子ども・家族を連れていく場合は、安心して暮らせる環境を保障できる国・地域を選ばなければなりません。
海外移住で認識するべき医療の問題
また、家族連れに限らず単身・独身の人についても医療問題については移住前に考えておくようにしましょう。
日本ほど国民に医療を手厚く援助してくれる国はありません。海外の多くの国では国民一人一人が自分で民間の医療保険に加入しています。保険に入っていない場合、医療を受けることすらできません。
例えば世界一医療費が高いといわれているアメリカでは、医療保険に入っていても風邪をひいて病院にかかっただけで十万円近く請求されることがあります。私の知り合いでアメリカに留学中、病気で入院し保険でカバーされず数千万円の請求がきたそうです。その知り合いは非常に裕福な家庭だったため支払えたそうですが、一般家庭だと破産してしまいます。
したがって、アメリカを含め医療費の高い国に就職する場合は福利厚生に医療保険が含まれているかどうか必ずチェックしなければなりません。例えばアメリカの場合だと個人で医療保険に加入すると、4人家族で月額10万円以上かかります。
そこで求人票をチェックするとき、以下のように福利厚生にも目を通しましょう。
こちらはベトナムの法人向け営業の募集要項です。福利厚生には「民間医療保険への加入」の記載があります。個人で医療保険に入る必要はないということがわかります。さらに健康診断も含まれているので健康面での心配は要りません。
さらに家族を連れていく場合、扶養家族全員の保険の加入を負担してくれるかどうかも必ず確認しましょう。
まとめ
海外への転職を考えたとき、「ビザは?」「職種は?」「家族は?」など様々な問題・課題が浮上してきます。この時点で諦めてしまったら、いつまで経っても次の一歩を踏み出すことはできません。
まずは海外の求人を取り扱う転職エージェントに登録して、求人を探してみましょう。このとき、仕事内容にだけ意識を向けるのではなく、「就労ビザのサポートの有無」「求められる英語のレベル」「福利厚生に医療保険の加入が含まれているか」といったことも必ずチェックするとよいです。
また職種については、あなたのスキルをそのまま活かすことにこだわらず、同じ業界で違う職種を探してみたり、あなたの得意なことや好きなことを活かせたりする職種を見つけましょう。
さらに、家族を伴っての海外移住を考えている場合は「子どもの学校」「治安面」などについても併せて調べなければなりません。
ただ、これらを一つ一つクリアしていけば「海外への転職はそこまで難しくない」ことが理解できたと思います。転職エージェントを利用すれば、実はそこまで苦労せずに実現できるのです。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。