今や日本のラーメンは海外で広く食べられるようになっています。欧米でもスーパーマーケットには日本のカップ麺が並び、街には日本のラーメン屋が何軒も営業しています。ラーメンはお寿司に並んで知名度のある日本食といえます。
私は5年以上ヨーロッパで暮らしていますが、この5年の間にも私の住む街に新しく日本人経営のラーメン屋が3軒オープンしました。連日、現地の人で賑わっています。それでも飽和状態には程遠く、ラーメン業界は今後もまだまだ世界展開の余地があるといえます。
そのため海外のラーメン業界へ海外転職を希望しているのであれば、活躍の場は豊富にあります。例えば、店長候補や新天地でのオープニングスタッフ、ラーメン事業の新規立ち上げに至るまで幅広い選択肢があります。
ここでは、海外のラーメン業界への転職を考えている人のために、海外のラーメン屋事情から求人情報、希望する仕事の見つけ方に至るまで解説していきます。
もくじ
海外転職したいなら知っておくべき海外のラーメン屋事情
海外のラーメン屋への転職を考えているのであれば、日本とは異なるラーメン屋事情について知っておく必要があります。あなたが海外で店長や店舗運営を任された場合に、日本と同じやり方が通用しないこともたくさんあるからです。
例えば、海外では日本人のラーメン職人がつくる本場のラーメンだけではなく、外国人が提供する「日本風ラーメン」も多く存在します。スープが薄味だったり甘かったり豆が入っていたりと、「日本のラーメンとして出さないで」と言いたくなるようなラーメンまで存在します。
「それなら日本の味をそのまま提供すれば必ず成功できる」と意気込む人がいるかもしれません。ただ、国によって文化的・宗教的な事情があり、その土地や国柄に合わせたラーメンを提供する必要があるのです。文化的・宗教的な事情とは何か、以下に具体的に挙げていきます。
・店の回転が悪い
店の回転が悪いのにはいくつかの理由があります。例えば、ヨーロッパの場合は熱い食べ物を食べる習慣が無いため、ほとんどの人が猫舌です。ホットコーヒーを注文してもぬるいコーヒーが出てきます。そのため、熱いラーメンを食べるのに非常に時間がかかるのです。
そもそもヨーロッパでは熱々のラーメンは出てきませんが、それでも日本人のように素早く食べられません。ちなみに私はオーダーする時、「熱いスープにしてください」とお願いしています。
また欧米人の場合、お箸を使うことにも慣れていません。一本ずつ掴みながら不器用に食べます。これも時間がかかる要因の一つです。ただ、欧米人が頑張ってお箸を使ってラーメンをすすっている姿は日本人からすると嬉しい一面でもあります。
また海外では、ラーメン屋は一人で足を運んでササっと食べるのではなく、「友人や家族と会話を楽しみながら食べるレストラン」という認識があります。
このような事情があり、ラーメン屋の回転率は非常に悪いです。そのため、人気店では長時間並ぶことも珍しくありません。
・ベジタリアンや宗教を考慮したメニューがある
日本人の中で口にできる食品が制限される人は少ないですが、海外ではベジタリアンや宗教上の理由から摂取できる食品が限られている人がたくさんいます。
そのような人たちでもラーメンを楽しめるよう、多くの海外ラーメン店ではベジタリアンラーメンや豚骨ではなくチキンベースのラーメンが用意されています。
また、ラーメン以外のサイドメニューに力を入れる店も少なくありません。例えば、唐揚げやたこ焼きであればイスラム教徒の人でも食事を楽しめます。実際に私のイスラム教徒の友人はたこ焼きにはまって、頻繁にお気に入りのラーメン屋に通っています。毎回ラーメンではなく、彼女はたこ焼きのみを注文するそうです。
・国によってラーメンの価格帯がバラバラ
日本ではラーメン1杯で1000円を超えると高いと感じますが、欧米ではラーメン1杯1000円以下で提供するのは難しいです。物価や人件費などのコストが日本と同じようにはいきません。
また、日本では無料で提供されるお茶や水も海外では有料です。そのため欧米では、ラーメンと飲み物代で2000円程度支払うのが平均的です。
一方で、東南アジアの国では現地の高級住宅街(日本人街など)またはデパートに出店し、日本と似た価格設定にしているケースが多いです。ローカル向けではなく、現地の外国人や富裕層を相手にするのが一般的です。つまり「庶民派的なラーメン屋」という位置づけではありません。
このように日本と同じような感覚は通用しません。
ここに挙げた海外のラーメン事情は一部であって、実際に現地で働いてみないと分からないこともたくさんあります。「日本での経験をそのまま活かせるわけではない」のです。
また、あなたがもし将来的に海外での独立開業を視野に入れているのであれば、実際に現地のラーメン屋で働くことが非常に重要になります。そうした経験を積むことで、将来の独立開業のためにアイディアを温存しておくこともできるでしょう。
海外事情を活かして転職を考えてみる
また、ここで挙げた海外事情やあなた自身がリサーチした情報をもとに、海外転職でやりたいことを考えるのもおすすめです。
例えばあなたが店長として店舗を任された場合、「どのようにすれば店の回転率を上げられるか」「どのようなベジタリアンメニューがウケるか」「イスラム教の人でもおいしく食べられるラーメンやサイドメニューはないか」といったことを考えてみるといいです。
選考の過程で、あなたが海外でやってみたいことを熱意を持って伝えられれば、採用の確率が高まるでしょう。
熟練のラーメン職人でなければ海外転職は難しいのか
なお、海外転職では「ラーメン職人としての経験が豊富でなければ仕事は見つからないのか」と心配する人もいると思います。確かに熟練のラーメン職人であれば就職先の選択肢は広がります。
特に事業立ち上げや事業運営など責任の大きいポジションに就く場合、ラーメン作りの基礎から熟知していることが必須条件になることがあります。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地はヨーロッパです。新規ラーメン事業を立ち上げるため、ラーメン店での経験がある人材を募集しており、スープづくりの経験は必須です。一店舗の責任者ではなく、イチから事業を立ち上げて店づくりを進めていきます。ビジネススキルや店づくりのノウハウを学べます。
ラーメン経験がなくても海外転職できる
一方で、「ラーメン屋でのアルバイト経験のみ」あるいは「飲食店での勤務経験のみ」という場合でも、応募できる求人は豊富に存在します。例えば、以下が該当します。
勤務先はマレーシア・クアラルンプールにあるラーメン店です。1店舗を管理・運営する店長を募集しています。飲食店やレストランでの経験が3年以上あれば応募することができます。
つまり、経験を問われずラーメン屋に海外転職することは可能なのです。これは、ラーメン以外に多くのサイドメニューが存在するからです。また、語学力も問われません。
外国で独立開業し、ラーメン店をもつ
さらに場合によっては、全くの未経験でもイチから独立までサポートしてもらえる求人も存在します。例えば以下のような求人がこれに該当します。
この求人の場合はいきなり海外勤務ではなく、まずは日本国内でラーメン作りの技術を身につけます。その後に台湾へ渡り、店長としてお店を切り盛りします。3年間ラーメンの修業を積めばお店オリジナルのラーメンレシピを伝授してもらい、その後に独立開業することも可能です。
「日本でラーメンのアルバイト経験しかないし、海外で開業する自信がない」という人は、イチからラーメン作りを学び、独立開業までサポートしてもらえるお店に転職するのが賢明です。
このように海外のラーメン店に転職する場合、アルバイト経験レベルでも就職先は見つかります。独立開業に向けての準備も可能です。ただ熟練のラーメン職人だと、より大きな仕事を任される可能性が高まります。
アジアだけでなく、ヨーロッパ・アメリカでも求人がある
海外転職をする際、行ってみたい・暮らしてみたい国やエリアに絞って求人を探すことは基本的にはおすすめしません。なぜなら一般的な職種(営業・サービス業など)の場合、海外求人がアジアに集中しておりアジア以外の国に絞ると選択肢が極端に減ってしまうからです。
特に欧米は就労ビザの取得が難しいため、現地に住んでいて就労ビザを既に持っている日本人を対象とした求人がメインとなります。ただラーメン業界の場合は、現地でラーメン職人を探すことが難しいため、就労ビザが下りやすく日本から人材を採用しやすい傾向にあります。
またラーメン店の場合、様々な国で海外展開されているのでヨーロッパ・アメリカ・オセアニアの国々でもそれぞれ求人を見つけることが可能です。そのため、ラーメン業界に限っては海外転職サイト上であなたが住んでみたい国・エリアを絞り、求人を探してみるのも有効な方法の一つです。
例えばアメリカに絞れば以下のような求人が見つかります。
アメリカ北部のデトロイトに開業のラーメン店でオープニングスタッフを募集しています。2~12カ月間は日本国内の店舗で接客・調理方法・店長業務などの運営ノウハウを学びます。その後、渡米して店長として新しい店舗を任されます。
「ラーメン店でのアルバイト経験しかない」あるいは「店長経験が無い」という場合でも応募可能です。また、アメリカ勤務ですが英語力は不問です。通常、アメリカではビジネスレベルの英語力を要求されるものの、そうした条件がありません。
ラーメン店の海外求人では語学力不問の方が多い
なお、海外転職で一番不安になるのが語学面ではないでしょうか。ただ、ここまでの求人を見てきても分かる通り、英語力や現地の言語力を必須とする求人の方が圧倒的に少ないです。
なぜなら、注文を聞く程度の英語力は誰でも簡単に身につけられるからです。お客さんの目的はあなたとのコミュニケーションではなく「おいしいラーメン」です。そのため会社の採用担当者はあなたにラーメン職人としての腕、あるいは職人や経営者としてのポテンシャルがあるのかを重要視します。
つまり、「現地で働いてから語学スキルを磨いてくれたらいい」と考えているのです。実際に以下の求人のように、語学学校へ通って語学力を高めるサポートをしてくれる会社も存在します。
ニュージーランドでオープンする日本人経営の本格ラーメン屋で幹部候補を募集しています。接客・レジ・キッチンと店舗の管理全般を任されます。5年で店長クラスの技能を習得します。
この会社の場合、英語レベルが日常会話以下の人は、語学学校のサポートをしてくれます。語学学校に合わせてシフトを組み、英語力を磨ける時間を確保してくれるのです。海外でのキャリアをスタートさせながら同時に語学力を磨けます。
参考までに、私が住んでいるヨーロッパの町で数年前にラーメン屋をオープンした日本人店長の英語力は片言レベルです。それでも従業員を指導し、お客さんと楽しそうに会話しています。
ラーメンという大きな話題があれば、スタッフやお客さんとの意思疎通は問題なくできます。このラーメン屋は連日行列ができる大人気店となっています。
つまり、「語学力が低い」という理由でラーメン業界への海外転職を諦める必要はありません。
まとめ
世界で日本食ブームが拡大する中、ラーメン業界はまだまだ成長の余地があります。新たに世界展開する会社も多く、豊富な求人を見つけられます。どうしても行きたい国があるのであれば、まずはエリアを絞って求人を探してみるのもいいです。
就職先は店長のポジション、事業の立ち上げ、オープニングスタッフなど様々な選択肢があります。「メニュー開発に関わりたい」「お店づくりに携わりたい」「ラーメンの作り方をイチから学びたい」など、あなたのやりたいことが実現できる求人を探すといいです。
また、現地でラーメン職人としての腕を磨き、さらには現地の風習や文化に触れて経営ノウハウを学んだら将来的に独立開業を考えることも可能です。
海外のラーメン業界で転職を考えている場合、日本での経験や語学力に関しては気にする必要はありません。やりたいことに向けて多くの求人に目を通し、海外転職に向けて後は挑戦するのみです。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。