海外転職を考えたとき、「いくらくらい給料がもらえるのか」というのは誰もが気になります。日本の労働ストレスから解放され、海外でのんびり暮らしたいと思っていても、給与が低すぎて生活が苦しいようであれば海外転職する意味がありません。

特に東南アジアなど、日本に比べて物価の低い国では給与水準は低くなります。ただ、企業は外国人を雇用する上で「就労ビザ」を取得する必要があり、そのビザの取得条件に最低給与額(かなり高めの水準)が定められている国が多いため、現地水準の給料になることは一般的にありません。

ここでは海外転職した場合の給与について知りたい人のために、月給・年収や手取り、求人の確認するべきポイントなどについて、具体的に紹介していきます。

現地の日本人の給与相場を調べる

海外転職の場合、渡航する国によって給与事情が大きく異なります。ただ、どのくらいの年収が期待できるのか調べるとき、現地の平均収入はあまり参考にならないことがあります。なぜなら日本人の給与相場とはかけ離れていることがあるからです。

・就労ビザの条件で最低給与額が決まっている国がある

冒頭で述べた通り、就労ビザの取得条件として日本など先進国からの労働者には最低給与水準を設けている国があります。この場合、現地の給与水準に比べて高く設定されている国が多いです。

これは、自国の雇用を守るためであり、海外から簡単に安い労働者を雇用できるようになると、現地で暮らす人が仕事を見つけにくくなってしまうからです。

例えば、マレーシアでは外国人を現地採用する場合の給与はRM5,000以上、つまり日本円で15万円以上(1RM30円で算出)という決まりがあります。シンガポールの場合だと、26.4万円(1シンガポールドル80円で算出)以上となっており、これより低い額を提示されることはありません。

また、先ほど紹介したのは現地採用での就労ビザですが、駐在員ビザとなるとさらに高い額が設定されやすいです。これについては国によって異なり、改定されることも多いので、あなたが行きたい国の条件を調べてみるといいです。

給与交渉は転職エージェントの担当者に任せる

なお海外の場合、求人票に給与が記載されていないことも珍しくありません。給与交渉は本人と会社で行うことがあります。このとき交渉力に長けていないと個人と会社では、なかなか希望する額をもらうことは難しいです。ただ、転職エージェントを使う場合は給与交渉まで担当者がしてくれます。

このとき、「全て担当者任せ」ではなく、現地の日本人の給与相場を調べておくことで、あなたの適正額を提案できます。例えば、海外転職サイトの求人票の中には給与額の幅について記載があります。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務先はベトナムにある日系大手機械メーカーです。ここで日系の自動車業界や機械系企業を対象に機械加工の営業を担います。

応募必須条件は「社会人経験3年以上」「法人営業経験」「英語コミュニケーションレベル」のみです。法人営業経験さえあれば業界未経験であっても応募できます。

月収は22~33万円(1米ドル110円で算出)との提示があり、経験次第ではそれ以上も可能となります。つまり年収にすると提示額に120万円以上もの開きがあるのです。

あなたがこの範囲の中でどの程度の希望額を伝えればいいのかは、様々な転職サイトで類似の求人を探して比較したり、エージェントの担当者と話し合ったりして決めるといいです。

給料だけで判断せず、福利厚生を考慮する

ただ、その求人の良し悪しを給料だけで判断するのは危険です。給料がいくら高くても、その他の補助が全く無いと結局手元に残るお金が減ったり、貯金が全くできなくなったりする可能性があります。

特に海外で暮らす場合、「年に1度くらいは日本に一時帰国したい」と希望する人が多いと思います。このとき現地通貨では十分に貰っていても、日本への飛行機代を捻出するのが厳しいこともあります。

他には、住居は高額な費用になりがちです。海外転職なのでほぼ確実に賃貸になると思いますが、家賃補助があるとそれだけ実質的に給料が上乗せされているといえます。例えば以下のような求人は福利厚生が優れています。

募集しているのは日本創業の家具メーカーのベトナム現地法人です。既存顧客と商談を行う家具販売の営業を担当します。必須条件は「営業経験3年以上」のみです。

月給は22万円(1米ドル110円で算出)との提示があります。また、半年ごとに帰国手当が付与されるので、1年に2回会社の補助をもらって日本に帰省することが可能です。さらに朝食と昼食が支給されるほか、夕食も指定レストランであれば会社が負担してくれます。

社宅もあるので食費・居住費をゼロにすることもできます。しかも、民間医療保険もあります。そのため、給与の22万円のうち大部分を貯金に回すことが可能です。年間150万円以上、貯蓄することも十分にできます。

このような会社に就職できれば、実際にもらう給与以上の価値があるといえます。

現地の所得税・保険料なども考慮する

ただ、国によっては所得税が非常に高かったり、医療保険が含まれていないために自己負担が大きくなったりすることがあります。例えば、欧米では所得税がかなり高いです。具体的にはオランダだと、一番収入の低いクラスでも37.1%の所得税を支払わなければなりません。

そのため、ユーロを日本円換算して「高い給料がもらえる」と感じても、実際手元に残るのはわずかです。さらに物価や家賃も日本より高いため、ゆとりある暮らしを実現しようとすると、それなりの給与を提示してもらわなければなりません。金額ばかりに意識を向けず、手取りを考えるようにしましょう。

また、医療保険が高額な国も存在します。給与額だけで判断せず、現地の医療保険事情についても詳しく調べることをおすすめします。例えばアメリカでは、医療保険が任意であることは有名です。

なお、海外求人では「医療保険付き」は決して珍しくありません。以下の求人のように健康保険だけではなく、社会保険まで加入・負担してくれる求人も存在します。

ドイツ・フランクフルトにある日本食レストランで調理人を募集しています。調理・接客などを担当します。

応募条件は特に無く、年齢・経験・性別など一切問われません。給与は約26~37.5万円(1ユーロ125円で算出)との提示があります。これに加えて、現金チップ・ボーナス・社員寮などが支給されます。

福利厚生には「健康保険・失業保険・介護保険・年金に加入」との記載があります。特に海外移住を検討しているのであれば、このように社会保険まで納めてくれる企業で働くと安心です。

給料は上がる?下がる?職種毎の給料例を紹介

それではここからは職種毎に給料例を紹介していきます。日本の給料より上がるのか、下がるのか気になる人は多いでしょう。

これについては、当然ながらケースごとに異なります。日本では給料が低い職業であったとしても、海外では高給料になることもあります。一方で逆もあります。

  • 日本よりも給料の相場が高い職種
  • 未経験だとどんな職種があり、どのくらいの給与がもらえるのか

そこで、上記2点を詳しく解説していきます。

日本よりも給料の相場が高い職種

海外求人の中には日本よりも海外の方が給与の相場が高い職種があります。例えば、経理やITエンジニアの仕事がこれに該当します。海外の日系企業でスキルを持った日本人の需要があるからです。

・経験があれば駐在も可能

先ほど例として挙げた経理であれば、日本よりも高収入が目指せます。駐在案件も多く、お金の管理はやはり信頼できる人材を日本本社から海外赴任させたいと考える企業が多いのです。例えば以下のような求人がこれに該当します。

タイにある日系商社での経理マネージャーでのポジションです。経理業務全般を担当することになります。駐在員として海外赴任するため、「年収は600~800万円」と高待遇です。社会保険・健康保険も全て支給されます。

日本では安い給料になりがちな事務職ですが、途上国でこうした高給取りが可能です。ちなみにマネージャー(責任者)とはいっても、東南アジアで働く日本人は新卒でも全員がマネージャー職以上での就職になるため、この求人は経理経験さえあれば応募できます。

・駐在でなくても経験者は高待遇

もちろん、人材不足の業界であれば駐在でなくても待遇が良いです。前述の通り、ITエンジニアは世界的に人材が不足しているので海外求人も豊富にあります。日本で経験があるITエンジニアは高収入を目指せます。例えば以下のような求人が見つかります。

勤務先はアメリカにある日系通信キャリアです。インフラ系システムエンジニアの「ネットワークエンジニア」「プロジェクトマネージャー」「サーバー設計・構築」の各ポジションで募集があります。

「5年以上の経験」「ビジネスレベルの英語力」があれば応募条件をクリアできます。年収は440~1100万円(1米ドル110円で算出)です。

このように経理やITエンジニアといった職種であれば、日本で転職活動するより待遇のいい海外求人が見つかります。

未経験から目指せる職種の給与例

一方で未経験の場合だと、海外転職で就けるポジションは限られてきます。職種として求人が多いのは、営業・カスタマーサポート・WEB関係・事務・アシスタントなどです。

この中で高い給料が期待できるのは「営業職」です。営業はインセンティブが付くこともあり、頑張った分だけ給与に反映されます。ベース賃金も高めに設定されています。例えば以下の求人だと未経験でも「年収270万円以上」に設定されています。

勤務先は大手損保企業のベトナム支店です。ここで、日系企業に対して既存営業と新規営業を担当する保険アドバイザーを募集しています。

英語力・経験・学歴などは一切問われません。年収は270~380万円との提示があり、能力・経験に応じて決定します(現地の平均年収の6倍以上)。さらに社会保険・医療保険・ボーナスが付与されます。

一方で、営業以外の職種は給与が低めに設定されている求人も多いです。例えば以下のような求人がこれに該当します。

募集があるのは日系大手ネット広告代理店のフィリピン法人です。ここでネット広告の運用担当を募集しています。

英語力が日常会話レベル以上であれば未経験であってもチャレンジできます。月給は9.2~19.8万円(1ペソ2.2円で算出)であり、全くの未経験であれば10万円程度の月収になりますが、コンドミニアムが提供され、光熱費等も会社が負担してくれます。

年に1度日本帰国のための航空券も支給されるので十分生活はしていけます。また年に2回昇給があります。

さらに、英語のレッスンが就業日に1日2時間受けられます。このような英語レッスンを利用すれば、半年程度でビジネスレベルの英語力を身につけることができるでしょう。またWEB広告のスキルも同時に身につくので、ある程度キャリアを積めば英語力とWEBスキルを武器に転職も可能です。その際は大幅な年収アップが見込めます。

このように初任給は低くてもスキルを身につけられるポジションであれば、就職する価値は十分あります。

まとめ

求人を選ぶとき、給与に重きを置くのは自然の考えです。ただ、「いくらもらえるのか」ばかりに目を向けず、たとえ給料が少なくても他に給与に置き換わる福利厚生まで含めて検討しましょう。

一時帰国手当やボーナス、居住手当、医療保険、社会保険の有無など、福利厚生がどれだけ充実しているのかは重要です。さらには、スキルや英語力が身につく環境なのかどうかを求人から判断しましょう。あなたが渡航したいと考えている国の所得税・物価・各種保険制度についても調べるのも重要です。

なお、転職サイトを利用すれば担当者が給与交渉まで行ってくれます。そのとき、あなたの適正給与額を提示するためにもここまで述べたポイントに加えて、日本人の給与相場を調べておきましょう。そのためには複数の転職サイトを利用し、より多くの求人に目を通しておく必要があります。

情報収集をきちんとすることで、納得のいく給与で雇用契約を交わすことができます。海外転職では年収だけでなく、その他の項目も含めて総合的に判断しましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。