「人生100年時代」といわれる中で定年退職を迎えた方、あるいはもうすぐ迎えようとしている方は、今後の人生設計について色々考えると思います。中には早期リタイアしてセカンドライフを検討している方もいるでしょう。

65歳などで定年を迎えたとしても、100歳まで生きるとなるとまだ35年以上の人生が残っている計算になります。「定年後は趣味に没頭する」「のんびり田舎で暮らしたい」という方がいる一方で、「まだまだ働きたい」と考える人もいます。

しかも健康寿命が延びていることもあり、定年後も元気に働けるシニアの方がたくさん増えています。そのような場合は国内だけでなく、海外での就労を検討してみてはいかがでしょうか。50代・60代で新たな一歩を踏み出すのは決して珍しいことではありません。

ここでは、リタイア後あるいは50代・60代で次の人生設計を考えている方のために、海外転職について説明していきます。「語学力は必要なのか」「どのような国でどんな職種の募集があるのか」「シニアには何が求められるのか」「待遇はどの程度か」などの疑問に答えていきます。

「定年後に海外で働く」という選択肢

生活費の安いマレーシアやタイ、フィリピンなどで老後を送りたいと考える日本のシニア層は増加傾向にあります。しかし、まだまだ再就職が可能な年齢で年金生活を送るのは、もったいないと共に危険でもあります。

「物価の安い国だから日本の年金だけで優雅に暮らせる」と考えていても、移住先の物価が上昇すれば生活の質を下げなければなりません。また、南国での年金暮らしがハッピーとは限りません。

私の母の友人で定年後にマレーシアに移住した夫婦がいますが、「毎日退屈で日本に一時帰国することだけが楽しみ」と話しているそうです。その夫婦はかなり経済的に余裕があるのですが、とにかく「することがない」と嘆いています。

実際に、移住したものの「退屈」という理由で日本に帰国する人もいます。

一方で単に海外へ移住するのではなく、再就職という形で移住した場合はどうでしょうか。経済的にも安心な上、生活が充実します。外に働きに出て、身体・頭を動かすことは健康的にも良いことです。

また定年を迎えるまで会社で働いてきたシニア世代には熟練のスキルや知識があり、海外での市場価値は高い存在といえます。

現地スタッフの指導や新たな事業の立ち上げに関わる仕事など、やりがいのある仕事を任せてもらえます。実際に50代・60代で海外転職を実現して、現役で働いている日本人は世界中にいます。

また、子供が巣立つまでは海外転職が難しいと考えるかもしれませんが、子供が独立してある程度自由になったシニア世代であれば、いつでも海外で新たな挑戦をすることが可能です。

シニア世代の海外転職のハードルは決して高くありません。「定年後に海外で就職する」という選択肢を検討してみましょう。

語学力に自信がなくても問題なし

ここで、「海外転職の場合、英語が必須なのでは?」と不安になる方がいるかもしれませんが、英語が話せなくてもOKなポジションも多いです。例えば以下のような求人がこれに該当します。

この求人は「語学力不問」「年齢不問」と記載があります。勤務地はハノイにある高級ホテルの日本食レストランです。ここで和食料理人を募集しています。仕事内容は和食や寿司の調理・衛生管理・技術指導・新メニュー開発などです。

応募必須条件は特に無く、料理人として日本で身につけた技術があれば挑戦できます。しかも「60歳以上のベテランも大歓迎」との記載があるため、年齢に引け目を感じる必要はありません。

また、月給は33万円(1ドル110円で算出)との提示があります。しかもホテル内に従業員用の住居・ジム・プール・社員食堂(3食)・洗濯と掃除サービスまで用意されています。これらは全て無料で利用できるので、生活費がほぼかからず給与のほとんどを貯蓄することも可能です。

・専属通訳が付く求人もある

また、専属の通訳が配属されるポジションもあります。例えば以下のような求人です。

この求人ではマーケティング計画ディレクターを募集しています。勤務地は中国の河北省ですが、中国語は求められません。専属の通訳が配属されるからです。

ここで、自動車ブランドマーケティングに従事します。応募必須条件は「5年以上の自動車ブランドマーケティング・企画経験」です。

この企業では福利厚生・待遇が良く、年収は1,000万円程度の提示があります。加えて「住宅と車の提供」「日本への帰省費用負担」が含まれます。

50代以降の海外転職でこれだけ好待遇の仕事が見つかれば、かなり優れているといえます。

定年後の海外転職でも熟練のキャリアがあれば、再就職は可能

前述した通り、50歳・60歳以降でも熟練のキャリアがあれば、海外でも仕事を見つけられます。特に海外での駐在経験があったり、ビジネスレベルの英語力があったりすると、求人の選択肢が広がります。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

ベトナム・ハノイで日本企業向け建設営業の統括ポジションを募集しています。応募必須条件は「建設業界での豊富な営業経験」「東南アジアの駐在経験」「ビジネスレベルの英語力」です。ここで副社長として大きな仕事を任せてもらえます。

年収は600~1,000万円との提示があります。その他、作業所手当・交通費全額支給・住宅手当・引越し手当など諸々の補助が付きます。

熟練のキャリアに加えて駐在経験・高い英語力があれば、このような好待遇の求人を見つけることができます。

特殊なスキルが求められる求人

ただし、シニアの海外転職において駐在経験や高い語学力は必須ではありません。大学を卒業後、30年以上会社勤めを経験していた方なら何かしらの専門分野があるはずです。あなたが培ってきた経験を活かして海外就職するのが最も近道です。

例えばあなたに金属加工現場での技術的な現場経験・マネジメント経験があれば、以下のような求人に応募できます。

勤務地はタイ・インドネシア・マレーシア・ベトナム・インド・メキシコ・中国のいずれかです。勤務地の希望は聞いてもらえますが、必ず希望通りに赴任できるとは限りません。ただポジションは工場長であり、製造・技術・品質に関する工場全般の管理を担当します。

応募必須条件は「鋼材の加工・金属部品工場で技術系の現場実務とマネジメント経験」「流暢ではなくてもコミュニケーションが取れる英語力」です。

年齢制限は45~57歳です。経験豊富で40代後半以降の人材を求めていることが分かります。年収は600~850万円との提示があり、早期リタイアしてこのような求人に転職できれば、収入維持あるいは収入アップが期待できます。

専門資格を持っていれば年齢不問の求人が見つかる

または、あなたに特殊な専門資格があるのであれば、60代で定年後の転職においても求人が見つかりやすいです。例えば以下では、1級建築士の資格を保持したプロジェクトマネージャーを募集しています。

勤務地はタイです。建設現場での業務管理に従事します。この企業では既に日本人が7名在籍しており、全員がシニアです。しかも応募条件には「50歳以上」の記載があります。さらに「定年退職者歓迎」と書かれています。

1級建築士などの専門資格があれば、50歳以降でもこのような求人が見つかるのです。

・自動車整備士の資格があれば南国リゾート地で再就職が可能

なお、「リタイア後はビーチリゾート地で暮らしたい」と夢を抱いている人もいるでしょう。南国リゾート地でも専門資格を保持していれば仕事が見つかります。例えば自動車整備士の資格があれば以下のような求人に応募できます。

勤務地はダイビングスポットや多くの観光地を持つパラオ共和国です。ここで、自動車整備部門のマネージャーを募集しています。空港送迎用バスと普通自動車の点検・整備などに従事します。

応募条件は「自動車整備士資格保持」「35歳以上で健康」のみです。また、「定年後の方も大歓迎」の記載があるので安心して応募できます。

さらに、毎月約5万円(1ドル110円で算出)の家賃補助、年に1度の日本帰国にかかる航空券支給などの充実した福利厚生もあります。

ちなみに、ここで紹介した求人はあくまで一例であって、これらの職種の求人が多いというわけではありません。あなたの専門分野を活かした求人は探せば見つかります。

ただし、そのためには多くの求人に目を通す必要があります。したがって、なるべく複数の求人サイトに登録することをおすすめします。

50代以降、未経験の海外求人は少ない

シニアでの海外転職を考えたとき、中には心機一転して「全く新しい業種に挑戦したい」と未経験業種を希望する方もいます。ただし、未経験者にチャンスが多いのは基本的に20代の若者あるいは30代前半までです。企業はリタイアしたあなたに長年の経験を求めています。

そのため、異業種への挑戦は難しいです。ただ求人数は少ないですがゼロではありません。例えば以下では、定年後も働きたいという人も含めて人材を募集しています。

勤務地はラオスです。ラオス工場の工場長やお客さんとの商談を担当します。対象年齢は30~65歳と幅広いです。縫製関係で職歴があれば優遇されますが、やる気があれば未経験でも挑戦できます。

月給は33万円(1ドル110円で算出)との提示があり、住居費・医療保険は会社が負担してくれます。その他、年に1回の帰国航空券も会社が負担してくれるので経済的に不自由はしません。

熱い想いを持って「新天地で新たな職種に挑戦したい!」という方は、このような求人に応募してみるといいです。

未経験業種で海外出張のある職種を狙う選択肢もある

その他、「海外暮らしでなくても、頻繁に仕事で海外に行けるような職種に就きたい」という方には海外添乗員という選択肢があります。例えば以下の求人であれば未経験でもOKです。

この求人では海外添乗員として時給制(1,040円から)で勤務します。1ヶ月ごとにシフトを組むのでライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができます。

添乗員の場合、時給だけでなく深夜割増手当や連続添乗割増手当など様々な手当が支給されます。

また、未経験からいきなり海外ツアーを任されるのではなく、研修(新人研修・海外研修など)を受けたのち、国内のパッケージツアー・団体旅行の添乗員を経験し、徐々にステップアップしていきます。1年くらいで海外添乗員としてデビューすることも可能です。

この求人の大きな特徴として、学歴も経験も不問ということが挙げられます。しかも年齢は55歳くらいまでOKです。実際に50代の男女も活躍しています。

早期リタイアを考えている旅行好きの方に、このような仕事に就くことをおすすめします。

まとめ

リタイア後の海外転職は決してハードルの高いものではないことが分かってもらえたと思います。たとえ語学力に自信が無くても、長年培ってきた経験・スキルがあれば、あなたの能力を十分に活かした求人が見つかります。

しかも実際の求人票を見て分かったと思いますが、給与や待遇などの条件も悪くありません。むしろ収入アップを目指すことも可能です。それだけ50代・60代を過ぎた健康な日本人の需要があるのです。

「留学してみたいと考えていたけど、いつの間にか歳をとってしまった」「海外で暮らしたいという憧れがずっとあった」というような方は、セカンドライフとして海外での再就職に挑戦してみるといいです。

あなたの専門分野を活かした転職が望ましいですが、異業種への挑戦も不可能ではありません。しかし基本は、これまでの経験を活かした再就職を考えましょう。そうしたとき、まずは複数の転職サイトに登録して、求人をチェックすることをおすすめします。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。