語学が得意な方なら、「海外で通訳や翻訳の仕事に就きたい」と考える方は多いです。ただ、「海外で通訳として仕事を得るのは狭き門」「ネイティブレベルの語学力が必要」「日本での優れた実績がないと海外転職は無理」と諦めている方もいるでしょう。

実際のところ、海外で翻訳や通訳のポジションに就くのは、そこまで難しいことではありません。ただし、「翻訳・通訳のみに専念できる求人」というのは求人数が少なくなります。翻訳・通訳は業務の一つであり、秘書や管理・総務など他の職種を兼任する求人がほとんどです。

そのため、「翻訳・通訳に専念して仕事がしたい」という方には海外勤務は難しいでしょう。そのような方では、日本国内で字幕翻訳や同時通訳といった翻訳・通訳に専念できる仕事を探すといいです。

一方で、「他の職種を経験しながら翻訳・通訳にも携わりたい」という方には海外の求人は見つかりやすいといえます。ここでは、海外勤務で翻訳・通訳に携わる求人を紹介していきます。また未経験からでも挑戦できる医療通訳の仕事から、字幕翻訳の仕事に至るまで幅広く触れていきます。

翻訳・通訳に専念できる海外求人は少ない

冒頭で述べた通り、海外勤務の場合は翻訳や通訳業務に専念できる求人数は少ないです。特殊な専門知識が必要であったり、数ヶ月間の短期のものや英語以外の言語が必要であったりする求人がほとんどです。

ただ短期間であれば、海外勤務の通訳の求人があります。例えば以下のような求人がこれに該当します。

スポーツクラブの海外遠征の通訳業務を担当します。ドイツ人コーチの通訳を担当するためドイツ語は必須です。加えて英語力も求められます。

海外遠征先はヨーロッパです。数ヶ月間の海外遠征期間のみの契約となるため通訳業務に専念できますが、正社員を望む方やキャリアを築いていきたい方には向いていません。

特殊な専門知識が求められる駐在案件

また中には、翻訳・通訳のポジションで海外駐在案件も存在します。以下の求人はアメリカ駐在で翻訳・通訳に従事する人材を募集しています。ただし、技術系の特殊な専門知識が必須です。

勤務地はアメリカのカリフォルニアあるいはその他の州です。生産工場や会議・技術研修などにおける同時通訳業務、文書の翻訳業務が主な仕事内容です。

応募資格条件は、「日本語か英語が母国語」「製造関連での技術系通訳経験が3年以上、あるいは自動車メーカーでの通訳経験2年以上」「アメリカ駐在が1年以上可能」です。アメリカに駐在して翻訳・通訳に専念できるポジションですが、製造技術系の専門知識が求められます。

国内勤務であれば海外出張を伴う翻訳・通訳業務の求人が存在する

ただし国内勤務であれば、上記のような特殊な求人ではなく、一般的な翻訳・通訳業務メインの正社員の求人を見つけられます。例えば、以下のような募集です。

勤務地は東京都です。ゲーム企画部で英語の翻訳・通訳を担当します。具体的にはエストニアやルーマニアスタッフなど海外取引先企業とのスカイプ会議での通訳や、契約書・書類の翻訳作業、英語での調べものなどが業務内容です。

また、世界各国で行われる打ち合わせやイベントの海外出張に同行します。海外勤務ではありませんが、海外に滞在できるのは大きな魅力といえます。応募条件は「英語が流暢(TOEIC865点以上)」「社会人経験が3年以上」「急な出張にも対応できる」ことです。

英語が得意で、なおかつゲーム好きの方におすすめの求人です。このように国内勤務の求人であれば翻訳・通訳に専念できる求人が豊富に存在します。

翻訳・通訳業務が中心の海外勤務の求人

なお、翻訳・通訳に専念できる海外求人は少ないと述べましたが、ゼロではありません。例えば以下のような求人であれば翻訳・通訳業務を中心としたポジションに就けます。

こちらの求人もマレーシアに存在するゲーム関連企業です。世界40か国から200人ものゲーム好きが集まり、プロジェクトを進めている国際色豊かな会社で翻訳・通訳に従事できます。具体的には「メールや書類などの日英・英日翻訳」「会議通訳」「ローカル管理業務」などです。

応募条件は「日本での就労経験がある」「日常会話レベル以上の英語力」です。さらにゲーム業界での実務経験や通訳・翻訳経験があると選考において有利です。

ただし、このような求人は少ないので、選択肢を増やすためにも「翻訳・通訳に専念できる求人」に絞るのはおすすめしません。

翻訳や通訳の海外求人は他の職種と兼任するポジションが基本

それでは翻訳・通訳業務に加えて他の職種を兼任する求人には、どのようなポジションがあるのでしょうか。これには、以下のようなものが存在します。

  • 秘書
  • マーケティング
  • 人事・総務・法務
  • カスタマーサポート

それぞれの求人について詳しく見ていきましょう。まずは翻訳・通訳を担当する秘書の求人です。

勤務地はフィリピンです。大手日系企業の社長秘書として働きます。経理・人事・総務との社内通訳やローカルスタッフとの会議の通訳に従事します。専門知識が必要になる通訳ではなく、社長の英会話コミュニケーションをサポートする程度の通訳です。

翻訳業務としてはメールや社内ドキュメントの簡単な翻訳を担当します。その他、社長のスケジュール管理やオフィス内の管理業務全般、日本からの出張者の対応にあたります。

応募必須条件は「TOEIC700点以上の英語力」のみです。通訳や翻訳業務が未経験であっても応募できます。翻訳・通訳業務を担当しますが、専門知識やネイティブレベルの英語力は求められません。

「得意の英語力を活かして未経験から翻訳・通訳の仕事に挑戦したい」という方におすすめです。ちなみに月給は約21万円との提示があり、日本の物価の3分の1といわれているフィリピンで生活するには十分な給与といえます。

秘書・マーケティングを兼任した翻訳・通訳の求人

またCEO秘書として翻訳・通訳を担当しながら、さらにマーケティングに従事する求人もあります。以下ではマーケティング会社が秘書を募集しています。

勤務地は香港です。仕事内容は「CEOの秘書業務全般」「業界や競合会社の情報収集及び分析・資料作成といったマーケティングに関わる業務」「商談時の通訳・翻訳業務」の3つです。

応募必須資格は「秘書・マーケティング・事業企画などの経験がある」「パワーポイントでの資料作成が得意」「通訳や翻訳が得意(英語ビジネスレベル)」です。

月給は最大63万円(1香港ドル14円で算出)の提示があります。香港は不動産価格が世界一ともいわれているので、住宅費がかなり高くつきますがこのくらいの月給があれば安心です。

翻訳・通訳スキルだけでなく、マーケティングの経験を積めるのはあなたのキャリアにとってもプラスに働きます。

人事・総務・法務を兼任した翻訳・通訳業務がある求人

また、翻訳・通訳業務に加えて人事・総務・法務の経験を積める求人もあります。例えば以下の求人がこれに該当します。

勤務地はインドネシアのジャカルタです。日系企業向けのコンサルティング会社で通訳・翻訳のほか、総務・人事・法務面での補助に従事します。

応募資格は「英語かインドネシア語の能力がある」「5年以上の長期勤務が可能」「4年制大学を卒業している」です。未経験からでも応募可能なので、英語が得意な方で翻訳や通訳の仕事、人事・総務・法務に興味のある方はおすすめです。

月給は約27万円(1米ドル110円で算出)と、インドネシアでは十分な給与が提示されています。

翻訳業務を含むカスタマーサポートのポジション

その他、カスタマーサポートというポジションの募集もあります。例えば以下はITサービスを提供する会社での募集要項です。

勤務地はシンガポールです。仕事内容は「カスタマーサポート全般」「ITサービスの契約内容の照会」「契約発効と更新の手続きのサポート」「簡単な翻訳業務」です。必要資格は「カスタマーサポート経験」「ビジネスレベルの英語力」であり、翻訳経験は問われません。

このポジションの場合、翻訳業務はメインの仕事ではなく、カスタマーサポートが中心となります。しかしシンガポールはアジアの中で就労ビザの取得が難しい国の一つであり、高度な専門知識や技術を求める求人が多く見られます。

このような求人であれば、翻訳にも携わりながら働くことができます。

医療通訳なら未経験からでも応募できる求人が多い

なお、海外で通訳として働く選択肢の一つとして医療通訳もあります。医療通訳と聞くと「高度な医療知識が必要なのではないか」「英語以外の言語が必要なのではないか」「これまでの経験が求められるのではないか」と考える方が多いと思います。

しかし実際に募集のある求人要項をみてみると「未経験OK」「英語のみ」という内容がほとんどです。むしろ「翻訳・通訳未経験だけど、海外で仕事を探している」という方に医療通訳はおすすめです。

日本人の在住者や旅行者が多い国では、医療機関を受診する際に日本人医療通訳の高いニーズがあります。私自身、海外で5年近く暮らしていますが病院受診するたびに「コミュニケーションが難しい」と未だに感じます。

自分自身や子どもの症状を医師に正確に伝えるためには、専門用語やある程度の医療知識が必要になります。参考までに、以下はヨーロッパの病院の待合室の写真です。日本の病院に比べて広々している印象を受けます。

また、薬をもらう場合も日本とはシステムが異なったり、説明が不十分だったりするので困惑することが多いです。調剤薬局では、こちらから質問しないと基本的に薬の説明はしてくれません。例えば以下の写真は実際に処方してもらった塗り薬です。

日本のように袋に入れられているわけではなく、薬のパッケージにシールが貼られてそれで終わりです。シールに使用方法が記載されています。

また日本とは異なり薬剤師ではなく、テクニシャンとよばれるスタッフが薬の受け渡しを担当しています。専門的な質問をすると「分からないから薬剤師に聞いてくる」と言われます。

このように医療制度・文化・言語が異なる外国で医療を受ける場合、同席してくれる現地の医療通訳がいると、安心して医療サービスを受けられます。人から感謝される職種なので、やりがいの大きい仕事といえます。

それでは実際の求人をみていきましょう。例えば以下の求人であれば、タイの病院で医療通訳を募集しています。

タイ・バンコク中心部にある総合病院で日本人の医療通訳を募集しています。医療通訳として日本人患者さんの心配や疑問の解消を手伝うのが仕事です。

応募資格は「日本語と英語で意思疎通ができる」のみです。必須ではありませんが、カスタマーサービスの経験があればプラス評価となります。年齢や性別は問われません。

医療通訳業務以外も担当するメディカルアシスタントの求人

他には、医療通訳以外に保険会社への提出書類を作成したり、現地スタッフを管理したりするメディカルアシスタントの求人があります。以下の募集がこれに該当します。

勤務地はフィリピンです。セブ・マニラ・アンへレスにある病院で日本人向けの医療サポートを行います。業務内容は「日本人患者さんのサポート」「簡単な医療通訳」「保険書類作成」「現地スタッフ管理」です。

応募必須条件は「日常会話レベル以上の英語力」「社会人経験がある」「Word・Excelなど基本的なパソコン操作ができる」です。

高い英語力も業界経験も問われないので初心者でも挑戦しやすい求人です。給与は月額約16.5万円(1フィリピンペソ2円で算出)であり、別途1.5万円の住宅手当が支払われます。物価の低いフィリピンで生活していくには十分な給料です。

充実した研修のある医療コーディネーターのポジション

しかし、「いくら英語が得意でも、いきなり医療通訳が務まるか不安」という方もいると思います。そのような方には研修制度が充実している求人に応募することをおすすめします。

例えば以下の求人であれば医療コーディネーターを募集しています。日本でいう医療事務に近い仕事ですが、充実した研修制度が用意されているので安心して挑戦できます。

勤務地はマレーシアです。日本人向けの病院・クリニックですが、日本人以外の様々な国籍の患者さんが来院します。そこで、受付・電話対応・保険引受審査・医療通訳・薬の準備と提供・会計業務などを担当します。

このような幅広い業務に従事しますが、「入社時研修」「医療通訳研修」「おもてなし研修」「院内勉強会」といった充実した研修が用意されているので心配いりません。また、チューター制度もあり、仕事以外にも生活面やプライベート面で、いつでも相談できるため安心です。

応募条件は英語力があることのみです。未経験であっても医療の知識がなくても応募できます。月給は13.5~21.6万円(1リンギット27円で算出)です。

日本で医療事務に従事する場合、専門学校に通ったり資格を取得したりしても正社員として就職するのは難しいといわれています。さらに、就職してから受け取る月給も20万円前後といわれているので、マレーシアで医療コーディネーターとして就職した場合と比べても、給与面で大きな差はみられません。

一方でこのような求人は、英語さえできれば誰でも挑戦できるポジションです。海外生活に憧れている人であれば、日本で医療事務を目指すよりも海外の医療コーディネーターに応募した方が賢明です。

医療ツーリズムに携わる求人もある

医療通訳を考えている方の中には「医療ツーリズム(医療サービスを受けることを目的に海外に渡航すること)」関係の仕事に就きたいと希望する方もいると思います。その場合だと以下のような求人があります。

勤務地はベトナムです。医療ツーリズムサービスの提供・国際医療支援を行っている施設で事務スタッフとして働きます。

具体的には、メールや電話などでの日本関係機関とのやり取りや資料とりまとめ業務・社内連携業務などです。応募必須資格は「事務作業の経験が3年以上」「英語スキル」があることです。医療事務の経験があると選考において有利に働きます。

ただし、「英語力を活かして医療に携わりたい」という方には向いていますが、「翻訳や通訳に携わりたい」という方には物足りないポジションになる可能性があります。

海外(日本)映画やドラマに携われる字幕翻訳の求人はあるのか

また翻訳が得意な方の中には、海外映画・ドラマの英日翻訳や日本のアニメ・映画の日英翻訳・字幕制作に携わりたいと考える方がいると思います。

ただ、海外勤務で映画やドラマの字幕翻訳に携わる求人は残念ながらありません。また、「在宅で翻訳の仕事をしたい」と希望する方もいるかもしれませんが、十分な実績がある場合を除いて在宅で翻訳家として活躍できる求人はありません。

一方で国内勤務であれば、以下のような求人が見つかります。

  • 海外映画やドラマの字幕制作ディレクター
  • 海外ニュースの日本語翻訳

それぞれの求人についてみていきましょう。

洋画や海外ドラマの字幕制作ディレクター

洋画や海外ドラマの字幕制作に携わりたい方には以下のような求人がおすすめです。

勤務地は東京都です。翻訳家との間に入り、字幕ディレクションを行います。具体的には関係者との打ち合わせや交渉・翻訳の原稿チェック、修正依頼・スケジュール管理などに従事します。

応募条件は「高卒以上」「英語が得意」です。「海外映画やドラマをよく見る」という方にとっては、楽しみながら仕事ができるといえます。また、未経験でも問題ありません。

海外ニュースの日本語翻訳

一方で、「字幕制作ではなく翻訳自体に携わりたい」という方には以下のような求人があります。

勤務地は東京都です。海外ニュースの日本語翻訳とニュース配信までの業務を担当します。具体的には「海外ニュースのリサーチ」「海外ニュースの日本語翻訳」「大手海外ニュース通信社との取引」「海外ニュースの原稿・字幕制作」「映像編集」などに従事します。

応募必須条件は「TOEIC700点前後の英語が堪能な方」のみです。充実したサポート体制が整っているので実務未経験でも挑戦できます。このような仕事に就けば、翻訳業務をメインに従事できます。

月収は23~30万円との提示があります。交通費は別途支給です。また、社員食堂も完備されています。

まとめ

英語が得意で、翻訳・通訳に携わる仕事に就きたいと考えているなら、海外転職では豊富な選択肢があることが分かってもらえたと思います。あなたが専門知識を持っていれば、通訳・翻訳に専念できる海外駐在の求人が存在します。

また、専門知識がなくても海外で募集のある秘書・マーケティング・総務・カスタマーサービスといった職種では職務内容に翻訳・通訳が含まれています。

一方で、「翻訳や通訳の仕事に就きたいけど未経験」という場合は医療通訳がおすすめです。「通訳未経験・医療知識無し」でも挑戦できる求人が豊富にあります。

その他、得意の英語力を活かして海外映画や日本アニメに携われる仕事も存在します。国内勤務ですが字幕翻訳など語学スキルを存分に活かせるポジションです。

このように英語力を活かした転職の場合、豊富な選択肢があります。あなたにマッチした求人を見つけるために、まずは複数の転職サイトに登録しましょう。それぞれの担当コンサルタントにあなたの希望を伝え、納得のいく求人が見つかるまで根気強く転職活動を継続させるといいです。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。