日本の美容師は世界中で需要があります。技術力が高く、アジア人から欧米人まで幅広く対応できるからです。それではトリマーはどうでしょうか。
「海外の人はペットのヘアスタイルにそこまでこだわりはないだろう」と考える人が多いかもしれません。しかし、トイプードルなど毛の長いペットの飼い主は「少しでも上手い人にカットしてもらいたい」と願います。
そのため、日本人トリマーは美容師と同様、「手先が器用でカットが上手い」と世界中で評価されており、様々な国で求人があるのです。しかもそれなりの技術力があれば、高給を目指すことが可能です。
ここでは、海外転職を考えているトリマー・グルーマーのために「海外求人の特徴や注意すべき点」「トリミング業務だけでなくグローバルに活躍できるペット関連の職種・求人」について詳しく紹介していきます。
もくじ
トリマー・グルーマーの海外求人の特徴とは?
トリマー・グルーマーの海外転職を考えている人はまず、多くの求人票に目を通してみることをおすすめします。どんな能力が求められ、どんな環境・労働条件で働くことになるのか事前にきちんと調べておくと、ミスマッチが起こりにくく転職に成功しやすいからです。
より多くの求人を見つけるためには、複数の転職サイトに登録するいいです。一つの転職エージェントだけが握っている非公開求人などもあるので、まずは登録して転職サイトの担当者から紹介してもらいましょう。
それでは、ここでは日本人トリマーやグルーマーを海外で募集している求人について4つの特徴を紹介していきます。
- 語学力が低くても問題ない
- 海外トリマー・ドッググルーマーの給料はピンキリ!
- 講師業が兼任できれば、求人の選択肢が広がる
- トリマーならでは!ペット同行可のドッググルーマー求人
それぞれ詳しくみていきましょう。
語学力が低くても問題ない
海外転職の場合、職種によっては「英語が話せないと求人を見つけることは難しい」ということがあります。しかし海外勤務のトリマー・グルーマーを目指す場合、基本的に語学力は問題になりません。
実際に「語学不問」の求人が多いからです。そもそも動物を相手にカットをする上で、英語で話す必要はありません。
もちろん、スタッフ同士・お客さんとのコミュニケーションは必要になってきます。一方で、お客さんはペットの仕上がりにさえ満足すれば、たとえあなたの語学スキルが低かったとしても評価が下がることはないといえます。
語学力よりも技術力が重要なのです。例えば以下の求人をみてみましょう。
勤務地はインドネシアの首都ジャカルタ市内です。犬専門のトリマー担当を募集しており、学歴・語学共に「不問」との記載があります。
トリマー経験さえあれば応募できます。トリマー業務以外にも顧客対応・インドネシア人スタッフの教育に従事します。
給与は 20万円程度(1ルピア0.008円で算出)であり、住居が支給されます。その他、日本への一時帰国費用の支給、バリ島への休暇といった福利厚生が含まれています。
物価の安いインドネシアでは十分に生活していける給料です。居住費もかからないので貯蓄も可能でしょう。
海外トリマー・グルーマーの給料はピンキリ!
なお日本国内でトリマーとして働く場合、平均的な年収は180~250万円といわれています。売れっ子トリマーになればもう少し高い給料が期待できますが、独立して自分で店を経営する場合を除いて高給を目指すのは難しい職業です。
また、立ち仕事でハードワークなうえ、常に動物に噛まれてケガをするリスクを伴います。そのためトリマーの平均年齢は20代というデータもあります。
そうしたとき「少しでも高い給料で日本よりもリラックスした労働環境のもと、働きたい」というのであれば海外転職がおすすめです。
海外転職すれば、国内で働くよりも年収アップできるチャンスが広がります。ただ、海外であっても国によって給料が大きく異なるので、より多くの求人を確認することが重要になります。
例えば以下は年収440万円以上が提示される高収入トリマーの求人案内です。
勤務地はシンガポールです。トリミング・サロン業務全般を担当します。応募必須資格は「トリマーライセンスの資格保有者」「実務経験1年以上」です。
経験や英語力よりも「グローバルに活躍したい」という意思が尊重されます。
このとき月給は約27~37万円との提示があり、経験によって決まります。さらに、寮が完備されています。その他、「英語研修サポート」や「年に2度、1週間ずつの有給休暇」「年に1度の日本への往復チケット」が支給されます。
「給料が高く、福利厚生がこれだけ充実しているなら、かなりのハードワークなのでは?」と心配する人もいると思いますが、「週休2日・勤務時間は10時から18時」と決して厳しい労働条件ではありません。
シンガポールに住めば、休日に周辺国のタイやマレーシアに手軽に旅行することも可能です。このような企業に就職できれば、プライベートも充実させた海外生活を送ることができるでしょう。
・給料の低い求人もある
一方で前述した通り、海外求人の給料はピンキリなので月給が10万円を切るような求人も決して珍しくありません。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地はタイです。タイにある動物病院でトリマーの仕事に就きます。この求人では「英語が話せること」が必須条件となっています。そして月給は3.5万円(1バーツ3.5円で算出)です。
確かにタイは日本より物価水準が低く、日本ほどの収入はなくても生活していけますが、月給3.5万円で生活していくのは正直かなり厳しいです。
この求人は既にタイに在住しており、パートなどの仕事を探している人向けの求人だと考えられます。したがって、このように極端に給与の低い求人は避けなければなりません。
講師業が兼任できれば、求人の選択肢が広がる
なお、海外で日本人のトリマー・グルーマーの需要があるのはやはり、「その技術力が世界で評価されているから」ということは前述した通りです。
手先が器用なうえ、勤勉な日本人は世界トップレベルの技術を身につけているといっても過言ではありません。私自身、ヨーロッパで現地の美容室に行ったときカットの技術力の低さに驚きました。
「人種や髪質・髪色に合わせてカットの方法を適宜調整していくようなスキル」を海外の一般的な美容師さんは持ち合わせていません。これはトリマー・グルーマーであっても同じことがいえます。
このような背景から、トリマーを運営するオーナーは「現地スタッフに高い技術を伝授できる優秀な日本人トリマーを採用したい」と考えています。そのため、あなたにトリマーとしての講師経験があれば、さらに求人の選択肢が広がるのです。
例えば以下の求人であれば、グルーミング業務に加えて講師業を兼任できる人材を募集しています。
勤務地はオーストラリアのシドニーです。こちらのドッググルーミングサロンではグルーミング以外にグルーミングレッスンを提供しています。そこでグルーマー・講師を兼任できる人材を探しています。
応募資格は「トリマースクールを卒業後2年以上の実務経験」「講師経験」があることです。なお記載はありませんが、グルーミングレッスンには外国人も参加するので英語は必須になると考えられます。
勤務条件は月曜から土曜のうち3日以上の勤務です。ただ、オーストラリアは日本人が求人を探すこと自体難しい国です。しかし、トリマーの講師経験があればこのような求人に応募することができるのです。
トリマーならでは!ペット同行可のドッググルーマー求人
また、「海外転職したいけどペットがいるし海外に行くことはできない……」という人もいると思います。トリマーであればペットを飼っている人は多いでしょう。
しかしそんな人でも気軽に海外転職できるよう「ペットの同行を可」としている求人が存在します。例えば以下の求人がこれに該当します。
勤務地は香港です。1年中暖かい気候で食事もおいしいので、日本から渡航する国としては適応しやすいと言えます。また、日帰りでマカオや中国に遊びに行くことも可能です。
具体的な給与の提示はありませんが、住宅は含まれています。また労災保険に加入してもらえるので施術中のケガの際は補償が受けられます。また、通訳が在籍しているため語学力は不問です。勤務時間は12:00~21:00であり、そのうち1時間が休憩です。
応募資格は「日本での十分なトリミング経験がある」「一人でカットから仕上げまで可能」なことです。特にトイプードルのカットが得意な方は優遇してもらえます。
香港で求人票がある通り、香港でも日本人トリマーは大変人気があります。特にトイプードルのカットは技術力の差が表れやすいので高い需要があります。
トリマー未経験で海外転職は難しい
ここまで紹介した求人は全てトリマー経験者を対象とした内容でした。一方で「トリマーの資格は保有しているけど、実務未経験」という場合はどうなのでしょうか。結論から述べると、未経験者がいきなり海外でトリマーとして就職するのはかなり難しいです。
海外で求められるのは即戦力です。接客対応ができなかったり、「この犬種のカット方法は分からない」などの状況だったりすると困ります。
「それなら海外就職ではなく、インターンシップを利用してみるのはどうか?」と考える人がいると思います。しかし残念ながら、インターンシップであったとしても未経験では応募できません。例えば以下の海外インターンシップの求人内容です。
勤務地はアメリカ・ハワイのホノルルです。インターンシップとはいえ有給で働きます。ハワイにはグルーミングの学校が存在しないため、プロのグルーマーは貴重な存在です。そのためハワイは日本人向けの求人自体が少ない国の一つですが、このような有給インターンシップが存在するのです。
給与は月13.2万円(1ドル110円で算出)です。英語力に自信がなくても受付スタッフが通訳してくれるため問題ありません。
ただ、応募条件は「トリミング学校を卒業後、3年以上の勤務経験」です。インターンですら3年の経験を求めています。
しかし、ここまでの求人票を見て分かる通り、実務経験は5年未満でOKなサロンがほとんどです。そのため、未経験で海外就職を希望しているのであれば数年ほど、日本国内で経験を積むといいです。
トリマー・グルーマー以外に募集があるペット関連の海外求人とは?
また、あなたが海外転職において、トリミング業務にこだわらないのであればペット関連のグローバルな求人を検討してみることをおすすめします。前述した通りトリマーという職種は、ケガのリスクや体力勝負な面があり、長期的にキャリアを築いていくときに他のキャリアを考えても問題ありません。
そうしたときペットの輸入代行やペット用品の企画・営業といった職種であれば、年齢に関係なく働き続けられます。
ペットの海外輸出・輸入の代行
日本を訪れる外国人のためにペットの輸入代行を担当したり、日本から海外転勤するお客さんのためにペットを輸出代行したりする仕事の需要があります。
海外勤務という希望は叶わないですが、ペットと関わりながらグローバルに活躍できます。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地は千葉県です。ペットを始め、動物園に輸出入する動物まで取り扱うサービスを提供しています。書類の作成・検疫準備・申請業務・ペットの送迎・メール対応などが主な仕事内容です。
顧客は日本人だけではなく、訪日する外国人もいるので語学力を活かせます。
月給は15~25万円です。「シニア歓迎・年齢不問」との表記があるので、年齢に関係なく働き続けることができます。応募資格は「大卒以上」で未経験でも問題ありません。
当然ながら、ペット・動物の扱いに慣れているトリマーは選考において有利と考えられます。
海外出張アリ!ペット用品の企画・営業
また、ペット用品を取り扱う企業で企画や営業職の募集があります。ただ、この場合は海外勤務ではなく海外出張を通してグローバルに活躍することになります。
・語学力を活かせる!ペット用品の海外営業
「ペット関連の仕事で語学力を活かしてグローバルに活躍できる仕事に就きたい」という方にはペット用品の海外営業のポジションがおすすめです。例えば以下のような求人がこれに該当します。
勤務地は横浜です。国内勤務ではありますが、海外の展示会に行って買い付けを担当したり、海外メーカーを訪問して打ち合わせを行ったりとグローバルな環境に身を置くことができます。
出張以外にも日常的に英文メールのやりとりや資料の翻訳などに従事するため、英語力は必須となります。
こちらの企業では海外メーカーの育児用品・ペット用品の輸入・企画・開発・販売を手掛けています。海外営業のポジションでは海外メーカーとの価格交渉・パッケージデザインの変更・納品管理・販売促進などに従事します。
給料は月21~32万円で、経験・能力を考慮して決定します。その他、諸手当や賞与が支給されます。
・高品質ペット用品の企画提案営業
また現場でトリマーを経験していた方なら「こんなペット用品があればいいのに」という、多くのアイディアを抱えている人も多いと思います。
そんなアイディアを形にすることのできる仕事が存在します。例えば以下の求人をご覧ください。
勤務地は東京都です。ペット専門店やペットショップにペット商品の提案営業を行います。顧客の店舗に出向いて商品説明や勉強会を実施することもあります。その他、海外の展示会での買い付け業務といった海外出張も伴います。
応募条件は「社会人経験2年以上」です。英語力は必須ではありません。また想定年収は390~510万円と、一般的なトリマーに比べると、かなりの高収入が期待できます。
ペット用品を取り扱う企業で企画や営業職に就いた場合、直接ペットや動物と触れ合う機会は無いかもしれませんが、ペットを飼っている顧客の需要を知っているトリマーの経験は業務上役に立つといえます。
まとめ
トリマーという資格を活かして海外転職することは可能です。日本人はトリミング技術が高く、世界中で需要があります。たとえあなたに語学力がなくても求人は豊富に存在します。
また、現在の年収を上げたいと考えているなら、海外では年収アップのチャンスがあります。ただ、「長期的にキャリアを築いていきたい」という希望があれば、トリマー・グルーマー以外の職種に目を向けてみることもおすすめします。
ペット用品を取り扱うグローバルな企業で企画・営業に携わったり、ペットの貿易会社に就職したりすれば年齢に関係なく働き続けながらキャリアアップすることができます。
転職活動を成功させるためには、あれこれ悩む前にとりあえず行動に移し、できるだけ多くの求人に目を通すようにしましょう。このとき職種や国を絞りすぎないことも重要です。いくつかの転職サイトに登録して、どのような選択肢があるのかを検討してみましょう。
海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。
ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。
しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。
人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。