WEBサイトのデザインや広告・商品パッケージをデザインするWEBデザイナー・グラフィックデザイナーといった仕事はクリエイティブな職種です。単純作業を伴う仕事は今後AIや機械に奪われてしまう可能性がありますが、創造力が求められるデザイナーは安泰な領域といえます。

そのような意味で、今後も需要が減ることはない職種です。それでは日本国内で働くWEBデザイナーやグラフィックデザイナーは海外でも需要があるのでしょうか。結論としては、問題なく求人があります。

既に国内でWEBデザイナーやグラフィックデザイナーとしてのキャリアのある方であれば、海外転職の求人は選べる状態にあります。ただし求人の選択肢を広げようとするのであれば、年齢は若ければ若いほど有利です。

したがって、「海外で働いてみたい」と考えている方は早めに行動しましょう。ここではWEBデザイナーやグラフィックデザイナーの海外求人が多い理由や希望に沿った求人の見つけ方について説明していきます。

WEBデザイナーとグラフィックデザイナーの海外での需要

WEBデザイナーとグラフィックデザイナーは、両者とも「クリエイティブな能力を求められる」という意味では共通している部分もありますが、実際には違う職種です。WEBデザイナーはオンライン上のデザインを扱う一方で、グラフィックデザイナーは紙の媒体を扱います。

ただいずれにしても、日本でキャリアのあるWEBデザイナーとグラフィックデザイナーは、他の職種に比べて容易に求人が見つかります。その理由として以下が挙げられます。

  • コストを抑えられる
  • アジアに進出している日系企業からの需要がある
  • 現地スタッフ教育指導

それぞれの理由や背景について詳しくみていきましょう。

現地採用するとコストを抑えられる

いまでは東南アジアに拠点を移したり、新しい会社をアジアに設立したりするIT関連企業が増えています。「日本で会社を経営するよりも、人件費や税金が安いなど会社の運営コストを抑えられる」「グローバルに展開しやすい」ことなどが、その目的として挙げられます。

例えば以下の求人では、日系のWEB開発・運営会社がWEBデザイナーとグラフィックデザイナーを募集しています。

勤務地はタイです。日本で展開する化粧品やサプリメント・食品・雑貨などのECサイト(オンライン通販サイト)の開発と運用を顧客となる企業に提供している日系IT企業です。

日本人スタッフとタイ人スタッフが80名働いています。ただ、仕事は原則日本語で行われるためタイ語や英語などの語学力は求められません。

WEBデザイナーの仕事内容は、新規WEBコンテンツの構築や制作、既存コンテンツの改善、コンテンツ運用及び更新、広告バナー(WEB上の広告リンク)、LP(商品販売ページ)制作などです。

応募資格はWEBデザイン経験者やHTMLとCSSのコーディングスキル、JavaScriptやjQueryの設置スキルを持っていることです。

一方で、グラフィックデザイナーはグラフィックデザインの制作や管理全般を担当します。顧客企業の販促ツールや商品パッケージのデザインを行います。必要資格は、紙媒体デザインの経験が2年以上あることのみです。

ここで、「コストを抑えることが会社の目的であるなら、タイでの年収は現地水準になるのでは?」と心配する方がいると思います。

もちろん求人の中にはタイ水準で給与が提示されることもありますが、WEBデザイナーやグラフィックデザイナーといった専門職の場合、現地タイ人の年収とはかけ離れた高収入が提示されます。

この求人の場合だと、WEBデザイナー・グラフィックデザイナー共に年収380~470万円(1バーツ3.46円で算出)です。日本の給与とも大きく変わらず、物価の安いタイではかなり贅沢に暮らしていけるでしょう。

さらに福利厚生には、女性の産休はもちろん、男性の育休まで含まれています。安心して家族と海外赴任できる環境が用意されています。このようにたとえ人件費の安い国に渡航しても、日本の雇用形態とは変わらずに生活できます。

このように専門技術を持った日本人スタッフには日本水準の給与が提示されますが、それ以外の現地スタッフはタイ基準の給与で雇うことができるなど、人件費を抑えられます。また、オフィスの賃貸料や税金の支払いなどを抑えられるため、日本の企業が東南アジアに拠点を置くメリットは大きいのです。

アジアに進出している日系企業からの現地デザイナーの需要がある

日本からアジアに進出しているのは、IT関連企業だけではありません。日本食ブームに乗る外食チェーンや現地に生産工場を持つ日系メーカー、旅行会社などもアジアに進出しています。

このような日系企業は、現地に住んでいる日本人のWEBデザイナーやグラフィックデザイナーに仕事を依頼します。現地に住んでいる人がどのような感性を持っているのかを理解しており、さらには日本人同士でやり取りがスムーズにできるからです。したがって現地で働く人材の需要があるのです。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地は中国の上海です。中国展開する日系企業に対して、WEBプロモーションやデジタルマーケティングコンサルタントなどのサービスを提供している会社です。

WEBデザイナーを求人募集しており、顧客(日系企業)の希望に沿ったWEBサイトの設計を担当します。必要要件はWEBデザイン・WEB制作経験です。顧客は日系企業のため、中国語は求められません。

なおグラフィックデザイナーも同様に、アジア展開する日系企業での求人募集があります。例えば日本の大手外食チェーンがグラフィックデザイナー&フォトグラファーを募集しています。

勤務地はインドネシアの経済の中心地であるジャカルタです。高級ショッピングモール内にあるオフィスに勤務します。この会社ではインドネシアで新店舗を開設するにあたり、デザインとフォトグラファーを担当する人材を探しています。

デザイン業務は、店内の装飾からメニューブックのデザイン、チラシやロゴデザイン・広告パネル・WEBデザインなど多岐に渡ります。フォトグラファーとしての業務は、メニューに載せる料理や店内の写真を撮影し加工作業まで担当します。

一から新店舗のデザインに携われるポジションなので、非常にクリエイティブな業務内容といえます。また、この求人の最大の魅力は経験・学歴が問われないことです。マイクロソフトOfficeの基本操作ができて、日常会話レベルの英語を話せれば応募可能です。

このように現地の日系企業からの需要があるのです。

現地スタッフ教育指導で必要

また東南アジアの新興国で、現地スタッフの教育・指導に従事する日本人の需要があります。例えば以下の求人では、ベトナム人スタッフに日本で培ってきた経験やスキル・ノウハウを継承するWEBデザイナーを募集しています。

勤務地はベトナムの大都市ホーチミンです。この企業では顧客のプロジェクトに参加するベトナム人スタッフを採用し、教育するサービスを提供しています。

日本人WEBデザイナーは現地でベトナム人を採用し、教育します。また、顧客のプロジェクトに参加している現地スタッフのサポートまで担当します。教育やサポートだけでなく、あなた自身が顧客案件に参加することもあります。

ここで「現地スタッフとのコミュニケーションでベトナム語が必須なのでは?」と心配する方もいるかもしれませんが、通訳が常駐しているため問題ありません。

応募資格は「大卒または専門卒以上」「職務経験2年以上」「HTML5・CSS3・JavaScript・WordPressによるWEBサイトコーディングができる」ことです。英語やベトナム語力は問われません。

残業はほぼ無く、定時退社だと17:20に終業します。年収は250~600万円(能力と実績を考慮して決定)との提示があり、物価の安いベトナムで食費や居住費は抑えられるので、ゆとりのある生活を送ることが期待できます。

ちなみに、ベトナム料理のレストランだと250円程度、日本料理レストランでも1500円払えば十分な料理を楽しめます。ちなみに、以下は私が実際にベトナムで出向いたときに食べたベトナム料理です。

また、福利厚生には日替わりランチやスナック・カップ麺・ヨーグルト・コーヒーなども含まれています。このような恵まれた環境でのんびり仕事をできるのも海外転職の魅力の一つです。

フリーランスとして海外移住するのは難しい

WEBデザイナーやグラフィックデザイナーの中には、企業での正社員ではなく「フリーランスとして海外移住を考えている」という方もいると思います。

いまでは在宅ワークやテレワークといった働き方の多様化が進み、フリーランスとして「日本や海外から仕事をもらいながら場所や時間に縛られず、海外で自由に働きたい」と希望する方も多いでしょう。しかし、実際のところ日本から海外に渡ってフリーランスとして生計を立てていくのは難しいです。

「日本で既にクライアントをいくつか持っている」「世界で認められる実績がある」という場合は別として、WEBデザイナーやグラフィックデザイナーがフリーランスとして現地で活躍するのは無理があります。

そこで、まずは渡航したい国の企業に就職してキャリアを積んでいくことをおすすめします。フリーランスの道を選ばなくてもWEBデザイナーやグラフィックデザイナーの海外求人は豊富にあるため、あなたの希望に沿った求人を見つけやすいといえます。

またフリーランスとして働く場合、国によっては就労ビザの取得が求められることがあり、これが大きな障壁となります。しかし企業に就職してしまえば基本的に会社が就労ビザを取得してくれます。例えば以下のような求人がこれに該当します。

勤務地はアジアの国際都市ともいえるシンガポールです。グラフィックデザイン・WEBデザイン・広告業全般のアートディレクションに従事します。こちらの企業は日系の広告代理店です。日本の航空会社や旅行会社、電気メーカー、商業施設との取引があります。

この求人の場合、「就労ビザ・労働許可書付与」の記載があるように、会社が就労ビザを取得してくれるので、ビザに関する心配は要りません。

特にシンガポールで働く場合、フリーランスであっても基本的に就労ビザの取得が必要です。したがってこのような求人を見つけてシンガポールで働くのが最も賢明といえます。「実務経験が5年以上」「基本的な英語の読み書きができる」「40歳未満」の3つの条件をクリアしていれば応募できます。

希望に沿った求人を見つけるには?

なお次の仕事を見つけるにあたり、あなたにはいくつかの条件・希望があると思います。特に海外転職の場合、国内で求人を探すときよりもさらに条件が複雑になります。

ただ、あなたの希望を全て叶える求人を探すのは難しいので「これだけは譲れない」という希望・条件をリストアップしてみましょう。

このとき転職サイトに登録して担当コンサルタントに希望を伝えるといいです。もちろん1つの転職エージェントに絞るのではなく、複数のサイトに登録するのがコツです。転職サイトによって保有している求人案件が異なるため、複数のサイトに登録した方があなたの希望により近い求人が見つかります。

ここでは、以下のような希望がある場合の求人をそれぞれ紹介していきます。

  • 英語力を活かしたい
  • 勤務地を自由に選びたい
  • 南国リゾートで働きたい
  • 未経験から挑戦したい

それぞれ詳しくみていきましょう。

シンガポールやマレーシアなど英語力を活かせる求人

ここまで紹介してきた求人は顧客が日系企業であるため、英語力は求められませんでした。しかし、「英語力を活かして海外転職したい!」という方もいると思います。

語学力が高いとその分、就職先の幅は広がります。例えば以下はアメリカやヨーロッパ・東南アジアの情報発信を手掛けるWEBデザイナーの求人募集です。

勤務地はマレーシアのクアラルンプールです。自社サイトの企画・運営に携わります。WEBデザインだけでなく、コーディングやSEO対策も含めたホームページ制作全般に従事します。北米・欧州・東南アジアをターゲットとした情報発信を手掛けるため、英語力を活かせます。

月給は25万円以上で経験・能力を考慮して決定されます。物価が日本の3分の1といわれるマレーシアでは25万円以上の給与をもらえれば贅沢に暮らしていけます。

またこの求人では、プール・テニスコート付きの高級社宅が用意されます。日本の都心部の狭いアパートに住んでいた方なら、このような社宅はとても豪華に感じられるでしょう。日本に比べ住居のグレードが上がるのも、海外転職の魅力の一つです。

自宅・海外・東京を選べるノマド求人

またクリエイティブ職では、時間や場所にとらわれずに働くスタイルの「ノマドワーカー」がたくさんいます。海外で暮らしながら「ノマドワーカー」として働きたいと考えている方には以下のような求人がおすすめです。

会社はシンガポールに所在しています。ただ、働く場所は「シンガポール」「東京」「自宅」のいずれかで選べます。この求人ではWEBデザイナーを募集しています。

具体的な仕事内容は「UI&UX(ユーザーがパソコンやスマートフォン・タブレットを通して閲覧できるサービスなど)のデザイン」「スマホアプリデザイン」「WEBサービスのデザイン」「LPのデザイン」などです。

そのためPhotoshopやIllustrator、Adobe XD、Particle Designer、Unityなどの専門ソフトを使える必要があります。デザインを通して、「ユーザーに情報を伝えベネフィットを感じてもらう」のが最大のミッションです。したがってマーケティングの知識も求められます。

WEBデザイナーとしての専門知識やスキルを求められるポジションですが、仕事は個人に任されており自由なスタイルで働くことができます。

そのためこの企業では「有休取り放題」にしています。きちんと仕事をして成果を出していれば、いつどこで働いてもかまいません。ノマドワーカーに憧れているWEBデザイナーにおすすめの求人です。

南国リゾートで働けるクリエイティブ職の求人

「海外で働きたい」と考える方の中には「グローバルな経験を積みたい」といったキャリアを積むことを目的としている方もいる一方で、「プライベートな時間を確保して楽しみたい」という方も多いのです。

そうした方には南国リゾート勤務の求人がおすすめです。南国で生活する人たちは楽観的でのんびりした気質の人が多いです。日本のようにハードワークを強いられ、ストレスを溜めこむ生活とは程遠い日常を送れることが期待できます。

例えば以下の求人であれば、リゾート地で働けるグラフィックデザイナーを募集しています。

勤務地はインドネシアに浮かぶ常夏の島、バリ島です。広告制作やメニュー・ポスターなどの印刷物を作成するのが仕事です。応募必須資格は「30歳くらいまで」「実務経験2年以上」「日常会話レベルの英語力」です。

一年中暖かい気候の中で働きながら、アウトドアスポーツを楽しんだり、ビーチに行ったりとプライベートな時間を充実させることができます。

未経験から挑戦したい場合におすすめの求人

ここまで紹介してきた求人は、基本的にWEBデザイナー・グラフィックデザイナーとしての経験やスキルが必要でした。しかし、中には「未経験だけどクリエイティブなデザイナー職に就いて海外で活躍したい」と考える方もいます。

ただ、実際に未経験からいきなり海外で仕事をできる求人はありません。その場合は日本で知識・スキルを身につけて、海外転勤のある会社を選ぶことをおすすめします。例えば以下のような求人がこれに該当します。職種はWEBデザイナーです。

勤務地は埼玉・千葉・東京・神奈川の関東エリアです。入社後3ヶ月はパソコンの基礎知識・ビジネスマナーについての研修を受けます。その後、画像の加工・企業HPの更新や修正・広告バナーのデザイン・サイトの企画・キャラクターデザインなど初心者でも手掛けやすい業務を担当します。

また、ある程度のスキル・経験が身についたら企業のホームページや製品のPRページ作成に従事します。この企業では初心者を受け入れ、入社後一人前に成長できるよう様々な教育プログラムを用意しています。

その一環として、海外インターンシップ制度も設けられており、台湾やフィリピン・シンガポール・イギリス・ハワイでインターンとして働くことができます。

さらにWEBデザイナーとしてのスキルを身につけたあと、ITエンジニアにキャリアチェンジする制度も整っています。このような制度を利用すれば、働きながら様々なスキルを身につけることができます。

さらには海外転勤の可能性もあるので、「未経験からWEBデザイナーをスタートさせて将来は海外で働きたい」という方にピッタリの求人といえます。

まとめ

国内で、ある程度のキャリアを積んだWEBデザイナーやグラフィックデザイナーであれば、海外転職では豊富な求人があることを分かってもらえたと思います。

「日系企業を顧客とした語学力を求められない求人」「グローバルに展開する英語力が必須の求人」「高度な専門知識やスキルが求められる一方で自由なスタイルで働ける求人」「南国でのんびり勤務できる求人、高級社宅に住める求人」など幅広い選択肢があります。

そして選択肢をより広げるには、複数の転職サイトに登録することが重要です。また、WEBデザイナーやグラフィックデザイナーの実務経験が無いとしても海外転職は不可能ではありません。上記で紹介したように経験を問わない求人や日本でスキルを身につけたあとに海外に赴任するという求人もあります。

そのためクリエイティブ職として海外転職を実現するためには、「これだけは譲れない」という転職条件をリストアップして、複数の転職エージェントに伝えましょう。そうして紹介された求人の中から、あなたに合いそうな案件を選ぶと良いです。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。