海外転職する場合、自分の好きなこと・得意な分野にキャリアチェンジできたら転職の満足度が上がります。例えばワインや日本酒が好きで、既にソムリエや利き酒師の資格を保持している場合、その資格を活かして海外で働くチャンスがあります。

特に海外にある日本食レストランでは、日本料理のことをよく知っている日本人のソムリエや利き酒師の需要があります。また、世界的に和食ブームが広がる中、日本酒の輸出が急速に増えています。そのため、多くの日本酒メーカーでは海外営業担当の求人を募集しています。

また、海外のワイナリーを巡って日本に輸入するワインを仕入れるバイヤーの求人もあります。ただし、この場合は海外勤務ではなく、国内勤務で海外出張があるという勤務スタイルです。

このようにワインや日本酒の知識を持っている方なら、それを活かしてグローバルな職に就くことが可能です。ここでは、ワイン・日本酒関連の転職方法について紹介していきます。

海外でワイン・日本酒関連の仕事に就くなら、営業職かワインウェイターがおすすめ

海外でワインや日本酒関連の求人が多い職種は「営業職」「ワインウェイター」の2つです。

まず、営業職では日本のワインやお酒を海外で営業することになります。例えば以下の求人がこれに該当します。日本のワインを香港で広める仕事です。

勤務地は香港です。仕事内容は、香港のホテルやレストランなどに日本ワインを卸します。日本ワインを販売するだけではなく、ワイナリー訪問から仕入れ、配送、売上金回収まで幅広い業務に従事します。

営業では取引先の客層やメニューに合わせて適したワインを提案するので、ワインの知識や特性を把握している必要があります。そのため必須資格には「ソムリエ」の記載があります。その他、大卒以上・営業の経験者・日本語と英語が話せることが応募条件となっています。

福利厚生にはボーナスに加えて、「ダブルペイ(給与1ヶ月分)」との記載があります。ダブルペイとは、香港独自の福利厚生の一つで、ボーナスに加えて給与1ヶ月分を年に一度支給する制度です。

ボーナスの場合は個人の成績や会社の業績によって左右されるため、平等な賞与としてダブルペイという制度を設けています。このほか、携帯電話の支給やコンドミニアムの社員寮(一部自己負担)などの福利厚生が含まれています。

この企業は2003年に設立された企業ですが、香港以外にもマカオやシンガポール・カナダなどに拠点を置き、さらには北米やヨーロッパへの展開も予定しています。そのため、香港で経験を積んだあとに他の国への異動も期待できます。

ワインウェイターの求人は豊富にある

またワインウェイターの求人であれば、様々な国で求人があります。前述した通り日本料理に合ったワインを紹介するため、日本食をよく知る日本人のソムリエの需要があるのです。例えば以下は、オーストラリアにある高級日本食レストランでソムリエを募集しています。

勤務地はオーストラリアの主要都市の一つ、シドニーです。美しい港風景が見渡せるシドニーには、毎年世界中から観光客が集まります。

シドニーにある本格和食レストランでソムリエを募集しています。お客さんはオーストラリア人・観光客・シドニー在住の日本人と国際色豊かです。ソムリエとしてワインのアドバイスやサービスを提供します。

この求人の最大の魅力は、オーストラリアの就労ビザを保持していなくても申し込める点です。英語力やソムリエ経験があれば就労ビザを取得してくれます。

オーストラリアは移民が多く就労ビザを取得するのは難しい国なので、「オーストラリアで仕事を探している」という人にはチャンスです。

ソムリエ資格が無くても応募できるワインウェイターの求人

ここまで紹介した求人はソムリエ資格が必須でした。ワイン関係の仕事に就こうとするとソムリエ資格や専門知識が求められますが、中には必要のない求人もあります。

例えば以下は、タイのワインビストロで接客業務の求人を募集しています。

勤務地はタイの首都バンコクです。老舗ワインビストロで接客を担当します。ワインに関する知識は特に問われません。それよりも「簡単な英語力があること」「35歳未満」「飲食およびホテル経験者」「3年以上勤務できること」が応募条件です。

日常会話レベルの英語さえ話せれば、タイ語ができなくても問題ありません。このようなワインビストロで働けば「ワインに関わる仕事に就きたい」という夢を実現できます。

日本酒・ワイン両方の知識を活かせる求人

なおワインや日本酒に興味のある方の中には、「ワインだけでなく日本酒にも携わりたい」という方もいるでしょう。例えば以下であれば、新店舗の接客全般・日本酒とワインの仕入れ・管理に従事する求人を募集しています。

勤務地は、外食産業が過熱気味の香港です。接客に加えて、日本酒・ワインの仕入れと管理を担当します。お店の料理に合う良質な日本酒・ワインを選んで仕入れ、品質を保ち、お客さんに提供するのが仕事です。

利き酒師やソムリエの資格は必須ではありませんが、保持していると業務に活かせます。ちなみに「利き酒師」とは、日本酒のソムリエに値する資格のことです。利き酒師の資格は、良質な日本酒を識別できる能力、料理や季節に合わせた日本酒の提案力を保持している証明になります。

こちらの求人では、年齢・性別・経験などについて必須条件の記載は特にありません。健康で海外生活に興味があれば誰でも応募できます。

福利厚生には住宅手当や年に一度の帰省チケット補助などが含まれています。月の休暇は4日と少ないですが、その分給与は月35~56万円(1香港ドル14円で算出)と高めに提示されています。

香港には世界中からグルメな人が集まってくるため、飲食店のレベルは高いといえます。競争の激しい香港の飲食店で経験を積めば、それなりのキャリアを築けます。

ワインの買い付けバイヤーになるには海外出張が基本

基本的に海外勤務の場合、企業の営業職あるいはレストランで働く日本酒やワインのウェイター求人がメインになります。そのため「他の職種がいい」という方は海外勤務ではなく、海外出張のある求人を探してみることをおすすめします。

例えば、海外にワインを買い付けに行き、日本に輸入するバイヤーの場合、定期的に海外出張があります。以下のような求人がこれに該当します。

勤務地は東京都です。海外ワインのバイヤー業務に加え、商品企画も担当します。具体的には、フランスやイタリアのワイナリー・ぶどう畑を尋ねて、コンセプトに合ったワインを見つけ出します。

価格交渉・輸入ルートの確保・納期の調整まで行い、輸入したワインをどのように販売していくのかまで考えます。展示会や試飲会イベント、キャンペーンの立案といった販売促進活動にも従事します。

こちらの企業は外食産業用食品と酒類の商社です。輸入したワインをホテルやレストランに卸すだけでなく、プライベートブランドのワインも商品開発しています。さらに、ボトルやキャップのデザインまで手掛けます。将来的にはワイン以外の酒類全般の商品開発に従事する可能性もあります。

応募条件は「酒類関連の業務経験(年数や職種は不問)」「日常会話レベルの英語力」の2つを満たしていることです。仕事上、ワインの知識は必須になります。メーカーや酒飯店、貿易会社、商社で働いた経験があると優遇されます。

また、日常会話レベルの英語は必要ですが、フランス語やイタリア語は求められません。買付では貿易担当者が通訳するためです。ただ、ワイナリー関係者との会食やパーティーに出席することがあるため、簡単な意思疎通はできなければなりません。

月給は30~35万円の提示ですが、能力・経験に応じて加給されます。また、「年1回の昇給」「年に2回のボーナス」など待遇面は問題ないです。

海外バイヤー兼商品企画担当のポジションに就けば、一からワイン製品づくりに携さわれるので、やりがいの大きな仕事と言えます。

ワインブランドのマーケティング担当の求人

海外ワインバイヤーの仕事とマーケティングを兼ねた求人もあります。マーケティング経験があるなら、これまでのキャリアを活かして海外と関わる仕事に携われます。以下のような求人であれば、世界のワイナリーを巡りながらグローバルに活躍できます。

勤務地は東京です。輸入するワインのブランディング・販売促進活動などのマーケティング業務を担当します。出張先は提携先のワイナリーがあるヨーロッパ・アメリカ・チリなどです。ワインに合わせて最適なマーケティングを行います。

具体的には日本のマーケットに合った輸入製品を決めたり、一から商品開発したりします。また、担当ブランドの宣伝・PR方法・販売戦略も考えます。そのためマーケティングや営業企画関連の経験が求められます。

応募必須条件は「マーケティング経験(業界は不問)」「日常会話レベルの英語力」「高卒以上」です。提携先(現地のワイナリー担当)との調整や商談、また他部署(営業部など)との連携も重要なので英語力・コミュニケーション能力が求められます。

また、ワインの知識も必要です。ソムリエやワインアドバイザーなどの資格を保持している場合は、選考において有利になります。

現職の業界は問われないので、マーケティングの経験があり、なおかつ「海外でワイン関係の仕事に就きたい」と考えている方におすすめの求人です。海外勤務ではありませんが、「海外出張がある」「海外とのやり取りが多い」ことなどからグローバルに活躍できます。

海外出張ベースの海外営業職の求人

冒頭で「日本酒の輸出が急増しているため、海外営業担当の求人が豊富にある」と説明しました。少し余談にはなりますが、私がヨーロッパに住んで驚いたことの一つに、「ワイン・お酒の価格が日本に比べると驚くほど安い」ということが挙げられます。

レストランではビールと水の値段が同じ、あるいは水より安く提供されることも珍しくありません。また、スーパーなどでもワインやビールは低価格で販売されています。

例えば以下はスーパーの赤ワインコーナーの写真です。フランス産・イタリア産・スペイン産などのワインが、安いものでは200円台から高いワインでも1000円程度です。

ビールの場合、オランダの有名ビールブランド「ハイネケン」のビールは以下の写真のように500mlの大ボトル6本入りで840円(1ユーロ120円で算出)で、1本140円という低価格で販売されています。

さらに、セールのときだと半額になることも珍しくありません。日本のビールよりもあっさりしていて飲みやすく、私は個人的にハイネケンの方が好きです。それでいて、これだけ安く飲めるので消費者としては有難いです。

一方で、日本の料理酒や日本酒はヨーロッパではとても高いため、私は和食を作る場合でも料理酒ではなく白ワインを使って料理しています。私が料理に使っているこちらのスペイン産の白ワインは日本円で250円程度のものです。

それでも煮物や貝の酒蒸しには十分なおいしさです。

ワインやビールが低価格で販売されているヨーロッパのスーパーでは、日本酒を見かけることはほとんどありません。中華スーパーなどアジア専門店に行かないと購入できない状況です。

寿司などの日本食はスーパーでも売られていますが、日本酒はまだまだヨーロッパの人にとって一般的なお酒ではないのです。そういう意味でも日本酒メーカーの海外営業はまだまだ市場開拓の余地があるといえます。

そのため、日本酒メーカーの海外求人が存在します。例えば以下はヨーロッパ・アメリカ・アジアを飛び回る海外営業の求人です。

勤務地は山口県です。この会社は世界展開している日本の有名な酒造メーカーです。海外営業の強化のため求人を募集しています。

応募必須条件は「大卒以上」「ビジネスレベルの英語力」「消費財分野(個人や家庭で消費するもの全て)での海外営業経験」です。

食品業界での営業経験があると優遇されます。年収は600~800万円程度です。海外勤務ではありませんが、日本酒をさらに世界に広めることを目的として、海外を飛び回ることができる求人です。

日本の酒造メーカーでは、このような海外営業担当の求人を頻繁に募集しています。

海外ワイナリーで正社員の求人を見つけるのは難しい

ただ、海外でワイン関係の仕事に就きたいと考えている方の中には「ワイナリーで働きたい」と希望する人もいると思います。

しかし、一般的にワイン農家が求人を募集するのは、ぶどうの収穫期のみです。ぶどうの収穫期には、世界のどんな有名なワイナリーでも人手が不足します。そこで短期間のアルバイトを募集するのです。

世界中からワイン好きな若者が集まりアルバイトに参加するため、国際色豊かな環境で働くことができます。ただし、正社員として雇ってもらえるわけではなく収穫期のみのアルバイトなので長くても数ヶ月です。

中には、以下のように日本人オーナーのワイナリーで、日本人のアルバイトを募集しているところがあります。

勤務地はドイツです。ブドウの収穫と醸造仕込みを担当します。醸造所内に宿舎があるため住居を探す必要はありません。さらにここのワイナリーでは日本食レストランも併設されているため、食事まで用意してもらえます。

応募条件は「就労ビザ」「ワーキングホリデービザ」「学生ビザ」のいずれかを保有していることです。就労ビザの取得は難しいですが、ワーキングホリデービザであれば年齢(18~30歳まで)さえクリアしていれば後の条件は難しくありません。

そのためワーキングホリデービザを取得すれば、このような短期アルバイトに応募できます。もちろん日本人オーナー以外のワイン農家でも、収穫期の住み込みの求人はあります。

確かにワインの知識は身につきますが、ここでアルバイトをしたからといって職歴になるわけではなく、次の仕事にもつながりません。したがって短期アルバイトに参加するのであれば、その時間を転職活動に充てた方が賢明です。

ワイナリーを希望するのであれば国内勤務がおすすめ

「どうしてもワイナリーで働いてみたい」という方には海外ワイナリーで短期のアルバイトを経験するよりも、日本国内のワイナリーに正社員として就職することをおすすめします。

例えば以下のような求人がこれに該当します。

国内大手ワインメーカーの農園・醸造所に勤務します。そこで、農園・契約栽培地のブドウ栽培管理業務、醸造・熟成作業と工程管理業務から、ワイン生産ライン管理業務、品質保証業務、総務・経理・酒税納税管理に至るまで幅広い業務に従事します。

特別な資格やスキルは必須とされておらず、熱意と責任感のある方なら誰でも応募できます。ただ、ワイナリーでの栽培・醸造管理経験や農作業の経験等があれば歓迎されます。加えて、ソムリエ・ワインアドバイザー・ワインエキスパートの資格を有しているとプラス評価につながります。

給与は年収299~350万円と高額ではありませんが、本当にやりたいことを仕事にするのであれば満足のいく待遇ではないでしょうか。

ただ、このようなワイナリー勤務の正社員の求人は常に募集があるわけではありません。そのため、複数の転職サイトに登録して募集が掲載されたらすぐに応募できるようにしておきましょう。

まとめ

ワインや日本酒が好きで関連資格を持っている方なら、たとえ未経験分野であっても海外で働くチャンスはあります。海外で日本酒や日本ワインの営業職に就いたり、日本食レストランでワイン・日本酒ウェイターとして活躍できたりします。

一方で海外ワイナリーで働きたい場合、短期のアルバイトに参加するよりも日本から海外出張して海外ワイナリーを巡り、ワインを仕入れるバイヤーの仕事に就くようにしましょう。または、国内ワイナリーで正社員として勤務することをおすすめします。

世界で日本食ブームが巻き起こる中、日本酒を広めたり、日本食に合うお酒やワインを提案できたりする人材は需要が高いです。

日本酒やワインに関わる職種への海外転職を考えているのであれば、複数の転職サイトに登録してあなたの希望を満たす求人を探してみましょう。


海外転職を実現するときであっても、転職サイトを利用するのが一般的です。日本に居ながら転職活動をするのが普通なのです(海外在住者も同じく転職サイトを使い、現地で活動する)。

ただ、海外転職に対応している転職エージェントは少ないです。日本にある転職サイトはほとんどが国内求人のみに対応しているからです。ただ探せば、問題なく海外求人に対応している転職サイトを利用することができます。

しかし、海外求人はそれ自体がレアです。また、「アジアに特化している」「専門性の高い求人ばかり保有している」など、転職サイトごとに特徴があります。そこで、2~3社の転職エージェントを利用して、見比べながら求人を探さなければいけません。

人によって狙っている国や求人は異なります。そこである程度まで求人の条件を絞って転職活動をしましょう。そのために必要な「海外対応の転職サイト」の特徴や違いについて、以下で記しています。